最近、SNSなどでよく見かける言葉にサイドFIREやコーストFIREなんて言葉があります。
どちらもFIREの新しい概念なんですよ。
今回はこの2つのFIREと従来のFIREの違い、達成目安、シュミレーションなどを見ていきます。
従来のFIREと新しいFIREの違い
まずは従来のFIREとの違いを見ていきましょう。
従来のFIRE(完全早期リタイア)
まず、従来のFIREは完全早期リタイアです。
「FIRE=Financial Independence, Retire Early」
それぞれの言葉の頭文字なんですよ。
Financial:経済的
Independence:独立
Retire:リタイア
Early:早期
極力支出を抑え、資産を積み上げ、資産からの取り崩しで生活する考え方です。
一般に「年間支出の25倍(4%初期引出し)」が一つの目安として知られます。
4%ルールはBengen(1994)やTrinity Studyなどの研究が背景。
ただし前提(米国市場、30年、資産配分等)があり、普遍の正解ではない点に注意
一般的な早期リタイアとの違い
早期リタイアというとビジネスや宝くじが当たったり、遺産で悠々自適な生活をしているとか、投資で成功して配当生活とか不動産投資で大家生活といった特別な人が対象と考える人が多いかもしれません。
しかし、FIREの場合は少し違います。
一般の方が生活費を節約して工夫して貯蓄したり、投資したり経済的な独立を目指す感じです。
リタイア後も完全にリタイアするのではなく自分のやりたい仕事や必要に応じた分だけ仕事するケースが多いですね。
そのため、早期リタイアするタイミング(資産)も人それぞれなんですよ。
従来のFIREについて詳しくはこちらの本がおすすめです。
新しいFIREの潮流(ゆるやかに目指す)
従来の「一気に完全リタイア」に対し、働き方を緩めつつ自由度を上げる派生形が注目。
代表がサイドFIREとコーストFIREです
サイドFIREの概要とメリット・デメリット
次にサイドFIREについて詳しく見ていきましょう。
サイドFIRE とは
資産運用益+パート・副業等の労働収入を組み合わせ、生活費を“半分リタイア”状態で賄う考え方。
一般の説明として、完全に働くのではなく働く量を調整して自由度を高めます。
コーヒーショップのバリスタのような働き方から「バリスタFIRE」とも言われたりします。
メリット
主なメリットは以下の通り。
- 必要資産が少ない:生活費の一部を労働収入でカバーできるため、フルFIREより目標資産が低くなる。
- 心理的ハードルが低い:仕事ゼロではないため、社会的つながり・適度な収入を維持。
- 市場環境の悪化耐性:取り崩し比率を抑えられる。
特に大きいのが必要資金が少なくて済むってことでしょうね。
デメリット
次にデメリットです。
- 労務リスク:働き先や単価が不安定になり得る。
- 社会保険・税務の複雑さ:収入水準により制度適用が変わる(後述)
- “半端”に感じる可能性:完全リタイアを期待する層には物足りないと感じる人も。
ルール変更や景気によってはリスクがあるのがデメリットということですね。

コーストFIREの概要とメリット・デメリット
次にコーストFIREです。
コーストFIRE とは
今ある資産が“積立をやめても”目標年齢までに複利で増え、老後資金を満たす状態。
つまり、その時点以降は生活費は就労収入で賄い、老後用の追加積立は不要という発想です。
自由にお金が使える状況ってことですね。
なお、計算はこんな感じです。
コーストFI額 = FI目標額 ÷ (1+実質成長率)^(リタイアまでの年数)。
メリット
メリットは以下の通り。
- キャリアの自由度:積立プレッシャーが減り、やりたい仕事にシフトしやすい。
- 市場下落時の“買い増し強迫”から解放:必要なのは「維持」であって「追加」ではない期間が作れる。
デメリット
デメリットは以下の通り。
- 前提のブレに弱い:実質リターン・インフレ・予定支出が変わると計画崩れ。
- 医療・介護など不確実支出への備えは別途必要。
計算の設定によりますが、計算の目論見が外れる可能性が怖いところですね。
複利で考えると実質成長率の設定次第で大きく目標金額ばブレますね。

達成に必要資産額とシュミレーション
それではサイドFIRE、コーストFIREを達成するために必要な資産額をシュミレーションしてみましょう。
取り崩し安全率の考え方
歴史的研究(Bengen 1994、Trinity Study)からFIREは「初期4%引出し」が知られますが、前提や将来期待が変化する中で、Morningstar 2024は30年・90%成功確率基準で“3.7%”を提示。
保守的目安として3.7%/従来の4%の両方で試算します。
サイドFIRE いくら必要?(半分リタイア 生活費の目安)
公的統計の家計調査2024年平均より、
- 二人以上の世帯:月300,243円(名目+2.1%)、
- 単身世帯:月169,547円。生活費の目安として参照します(年齢構成や家族構成は各自調整)。
例1:単身・生活費18万円/月、労働収入12万円/月
- 年間支出:216万円、年間労収:144万円 ⇒ 不足72万円/年
- 必要資産(3.7%):約1,946万円
- 必要資産(4%):1,800万円
注:医療・住居の個別差は要調整
つまり、3.7%で計算しても約1,946万円あれば単身でサイドFIREが可能ってことです。あくまでも目安で、その人の状況により異なりますのでご注意ください。
例2:夫婦など二人以上・生活費30.0万円/月、世帯労収20.0万円/月
- 年間支出:360.29万円(統計値×12)、年間労収:240万円 ⇒ 不足120.29万円/年
- 必要資産(3.7%):約3,251万円
- 必要資産(4%):約3,007万円。
夫婦ふたりの場合だと約3,251万円が目安となります。
サイドFIREの早見表(生活費×労働収入×必要資産)
月の生活費から必要資金を算出してみましたので参考にしてください。
ケース | 月の生活費 | 月の労働収入 | 年間不足 | 必要資産(3.7%) | 必要資産(4.0%) |
---|---|---|---|---|---|
A | 180,000 | 100,000 | 960,000 | 25,946,000 | 24,000,000 |
B | 180,000 | 120,000 | 720,000 | 19,459,000 | 18,000,000 |
C | 220,000 | 120,000 | 1,200,000 | 32,432,000 | 30,000,000 |
D | 260,000 | 160,000 | 1,200,000 | 32,432,000 | 30,000,000 |
あくまで目安であり、税・保険・住居費の変動は各自の条件に合わせて上乗せ・調整してください。
コーストFIREの計算式と具体例
次にコーストFIREをみていきましょう。
計算式は以下のとおり。
式:コーストFI額=FI目標額÷(1+実質成長率)^年数。
例:30歳→60歳引退、実質年3%、老後必要FI目標6,000万円
- コーストFI額 ≒ 2,472万円(=6,000万÷1.03^30)
- 35歳なら ≒ 2,866万円、40歳なら ≒ 3,322万円、45歳なら ≒ 3,851万円
到達=積立停止OKを意味しますが、支出増・リターン低下に弱い点は要注意
年齢 | リタイアまで年数 | コーストFI額(実質3%) |
---|---|---|
30 | 30 | 約2,472万円 |
35 | 25 | 約2,866万円 |
40 | 20 | 約3,322万円 |
45 | 15 | 約3,851万円 |
日本で実現するためのポイント
FIREはアメリカで話題の概念なので計算式や利率などもアメリカの前提となっています。
日本で実現するためのポイントも確認しておきましょう。
健康保険・厚生年金の“線引き”を理解
短時間労働者の社会保険適用は段階的に拡大。
2024年10月からは従業員51人以上の事業所等で、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上等の要件で健康保険・厚生年金の加入対象となります(学生除く等の条件あり)。
政府は企業規模要件の縮小・撤廃や「106万円の壁」賃金要件撤廃の方針も示しています(段階的実施)。
サイドFIREで社会保険付きの時短雇用”を狙うなら、こうした制度変更の進捗を確認しましょう。


NISAやiDeCoの活用
2024年から新NISAが恒久化。非課税保有枠の拡充により、積立期の効率が上がる制度的追い風があります
ただしコースト到達後は、追加投資の必然性は低下。
生活防衛資金・不確実支出(医療・介護・教育・住居)の比重を見直しましょう。
また、iDeCoのルールも定期的に変わってきているので要チェックです。
私はかなり残高が貯まってきたので、受け取るときを考え掛け金を最低限まで抑えました。

取り崩し率は固定でなく可変の発想も
Morningstar 2024は前提に応じ柔軟化(ダイナミック支出)の有効性も分析。
固定4%だけに頼らず、3.7%を基準に状況で調整する視点が安心ですね。
“半分リタイア 生活費”の把握が最優先
家計調査の平均は参考値に過ぎません。
ご自身の実支出(住居/交通/教育/保険/税金)を洗い出し、最低限必要額(ベース)+変動費(変動)で管理をしましょう。
特に住居(賃貸or持家の固定費)は長期の成否を左右します

キャリア設計(サイドFIREに相性の良い働き方)
社会保険適用のライン(週20時間、賃金要件など)を満たしつつ、専門性や単価が落ちにくい仕事を選ぶ。
スキル維持・アップデートは人的資本への再投資。
サイドFIREは“縮小再生産”ではなく持続可能な働き方にアップデートする戦略です。
サイドFIREは学び直しとも相性が良いでしょう。

よくある質問
最後によくある質問を見ておきましょう。
サイドFIRE とは?FIREとの違いは?
完全リタイアを目指す従来FIREと異なり、サイドFIREは労働収入を残すセミリタイア。
必要資産が少なく始めやすい。
コーストFIRE とは?計算のコツは?
現時点の資産が積立ゼロでも目標年齢でFIに到達する境界=コーストFI額。
実質リターン・年齢・老後支出の3点を必ず入れる。
FIREと違いや比較をひとことで
サイドFIRE=取り崩し+労働収入。
コーストFIRE=積立停止+就労収入で現役期を過ごし、退職時点で資産は自然到達。
まとめるとこんな感じですね。
タイプ | 収入源 | 積立の扱い | 取り崩し開始 | 向く人 |
---|---|---|---|---|
従来FIRE | 運用益中心 | 完了(到達後は積立なし) | 早期から | 仕事ゼロの自由を重視 |
サイドFIRE | 運用益+労働収入 | 到達後も必要に応じ | 早期から(少額) | 自由度と収入のバランス |
コーストFIRE | 老後部分は複利成長 | 積立停止(達成後) | 退職後 | 今を大切にしつつ老後も確保 |
まとめ
今回は「サイドFIRE・コーストFIREとは?違い、達成目安、シュミレーションを解説」と題してサイドFIREとコーストFIREについてみてきました。
サイドFIREは“収入の柱を少し残す”ことで必要資産を下げ、心理的・制度的な現実解を取りやすい。
コーストFIREは“十分積んだら積立を止める”選択肢。キャリアの自由度が増す一方、前提のズレへのモニタリングが必須。
いずれも生活費の見える化→安全率の併用(3.7%/4%)→社会保険・税の設計が王道。焦らず“自分の最適速度”で進めましょう。
なお、FIREを謳った悪質な情報商材屋なども多くSNS上では見かけますのでお気をつけください。

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