SBIがソーシャルレンディングを自主廃業、撤退へ。何が原因で問題が起きてしまったのか?

先日もお伝えしたSBIホールディングスが子会社であるSBIソーシャルレンティングで大きな損失が出てしまった問題

損失は全額補填してくれることになりましたが、SBIホールディングス自体は自主的な廃業および同事業からの撤退となりました。

今回はソーシャルレンティング投資への啓蒙の意味も込めて何が原因で起きてしまったのかを考えてみましょう。

SBIホールディングスの発表内容

まずはSBIホールディングスの発表内容から見ておきましょう。

 当社ウェブサイトにおいて、2021年4月28日に、当社貸付先の重大な懸案事項に関し、第三者委員会の調査報告の公表、併せて再発防止策の策定等につきお知らせさせていただきました。また、投資家保護について万全を期すべく、本件関連ファンドについての未償還元本相当額の償還に係る手続について進めさせていただいております。本償還にあたっては、すでに対象ファンドの99.94%(出資額ベース)について投資家の皆様よりご同意をいただいております。(2021年5月23日現在)

 さて、当社の今後の業務運営に関して、第三者委員会調査報告書の内容をもとに検討を重ねた結果、当社ソーシャルレンディング事業の継続は困難と判断し、本日付の当社取締役会において、全既存ファンドの償還を条件として、自主的な廃業および同事業からの撤退を決定いたしました。
当社は本年3月より新規ファンドを通じた貸付けをすでに停止しておりますが、今後は、新規ファンドの募集及び新規投資家の登録受付を全面的に停止するとともに、投資家の皆様の保護に万全の措置を講じるべく、今般新設した債権管理に特化した「アセットマネジメント部」を中心に、既存ファンドの管理・回収に注力してまいります。

 今回の事案につきましては、投資家の皆様をはじめ、関係する皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを、あらためて深くお詫び申し上げます。

出典:SBIソーシャルレンディング株式会社 当社の今後の業務運営について

つまり、ソーシャルレンディング事業の継続は困難で、全既存ファンドの償還を条件として、自主的な廃業および同事業からの撤退を決定したということです。

今後の他のソーシャルレンディングにも大きな影響を与えそうな話にはなっています。

なお、ソーシャルレンディングってなに?って方はこちらの記事を御覧ください。


廃業するまでなってしまった問題はなんだったのか?

それでは今回起こったSBIソーシャルレンティングの問題はどのようなものなのでしょう。

端的に言えば貸出先が資金を事業以外に流用して焦げ付かせていたということです。

具体的なものは以下のような内容です。

 第三者委員会の報告書によると、SBISLは太陽光発電関連会社「テクノシステム」(横浜市)が手がける開発工事案件に約380億円を融資したが資金が目的外の用途に使われ、返済が滞った。SBISLは、テクノシステム関連の業務をほぼ1人の担当者に任せきりで、工事の進捗(しんちょく)を定期的に確認していなかった。

出典:読売新聞オンライン SBI子会社に業務停止命令へ…ずさんな管理体制、多数の投資家に損失

つまり、貸付先との間で投資家に提示した資金使途と異なる支払いなどが問題となったのです。

投資家としたら話が違うじゃないかということです。

具体的な内容も今回の件を追求した雑誌や報告書を見る限りかなりえげつない内容となっていました。

営業と審査を同じ人が

そもそもの原因はここに貸し出してしまったのが問題です。

ただし、SBIソーシャルレンティングとしてもそういった事業者を見抜けなかったのは問題ある点ではありますね。

しかし、それも起こるべくして起こっているのです。

SBISL の貸付審査体制の最も大きな問題は、ファンドの組成を担当する営業部門(商品開発部)が、貸付審査も合わせて担当していることで

出典:SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)より

営業を担当した人が貸し付け審査も兼ねているというのです。

銀行などでは当然この部分は明確に分けられています。

営業は売上(成績)を上げたいですから当然、審査を通そうとしてます。

審査は貸し倒れになっては困りますから中立な立場で基準に則って審査をします。

これで適正なところに貸し出しをするという流れとなるのですが、営業=審査ではその牽制作用が働かなくなってしまうんですね。

起こるべくして起こった話ともいえるでしょう。

財務諸表の分析が充分に行われた形跡がない

個人的に怖かったのが以下の内容です。

そもそも SBISL の融資審査では、財務諸表の分析すら十分に行われた形跡がない等、融資審査の基礎的な知見に欠けていた。 また、不動産案件や発電所案件についてのプロジェクト・ファイナンス に対する審査は、高度な専門性が求められるものであるにも関わらず、 SBISL は、こうした審査の知見を備えた担当者を配置していなかった

出典:SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)より

そもそも融資審査の知見もない人が財務諸表の分析すら十分行わず審査していたというのです。

前述のように営業担当が審査をしていたということですし、そりゃあこうなるわな・・・って感じとしか言いようがありません。

一人で380億円の融資の審査・モニタリングを担当

また、SBIソーシャルレンティング側も報告書によると一人の担当者だけでその案件を進捗管理等をしていたということですから、規模を考えると善管注意義務を十分に果たしていなかったと言われても仕方ない部分もありますね。

審査・モニタリング体制の不備は、慢性的な人員不足を原因とし て引き起こされた側面が強い。 実際に、A 社関連ファンドの担当者は、案件組成の検討、対外折衝、審 査・モニタリングを含めて原則一人の人員で案件を担当しており、加えて、 A 社案件以外の多くの業務も担当していた。当委員会のヒアリングにおいて も、商品開発部の職員からは、常に目の前の業務をこなすことに精一杯で 深く考える余裕はなかった、A 社に対するモニタリングを実施しなければな らないといった問題意識はあったものの業務過多でできなかった旨の発言 があった。

出典:SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)より

380億円の案件の案件組成の検討、対外折衝、審査・モニタリングを一人で担当とはすごい状況だったのがわかります。

また、1社だけでなく他も担当していたようですからそれはムリがあって当然と言えるでしょう。

営業優先、過大な収益目標

東芝の粉飾決算問題のときにも同様の話がありましたが、営業優先かつ過大な収益目標があったことも大きな要因のようです。

経営トップの営業優先志向、貸付残高を是が非でも上げるとの強い姿勢は、そのまま SBISL の企業組 織の姿勢(企業風土)となり、いわばこれが会社の「正義」となった。上場を控えた状況の中、上記のような経営トップの姿勢に体を張って異を唱 えることは、事実上極めて困難な状況となっていたものと思われる。

出典:SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)より

ちなみに数字を見ると投資家受けしそうなものが並びます。

2020 年 3 月期売上高は 848 百万円(前期比 114%)、営業利益は 244 百万円(前期比 104%)

2021 年 3 月期売上高目標 1,119 百万円(前期比 131%)、営業利益目標を 402 百万円(前期比 164%)

と大きく伸びる計画となっていたのです。

しかし、 2020 年 6 月末時点で、第一四半期(2020 年 6 月末)の営業利益実績は、約 10 百万円程度と、目標を大きく下回るものであった。このため、経営トッ プは、第二四半期の営業利益目標を大幅に引き上げ、年間営業利益目標の 約半分 200 百万円を上期(2020 年 9 月末)で社員一丸となって達成する号令を発していた。

出典:SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)より

上場達成するためにかなりムリな目標を掲げて社員を鼓舞していた状況のようです。

そのため、審査等も甘くなってしまった可能性がありそうですね。

上場前の話でよかったのかもしれません・・・

具体的な報告書は以下を御覧ください。※PDFですからご注意ください。

>>SBI ソーシャルレンディング株式会社 第三者委員会 調査報告書(公表版)

ソーシャルレンディングへの投資は慎重に

今回のSBIソーシャルレンティングの問題はソーシャルレンティング業界全体の問題と捉えてもよいかもしれません。

ソーシャルレンティングは過去にもなんどかトラブルが発生しているんですよ。

今回のSBIソーシャルレンティングにはSBIホールディングスが親会社であるため全額補填されました。

しかし、他の場合はそうではありません。

主なトラブルをご紹介しましょう。

みんなのクレジット事件

まずは2017年に発生した「みんなのクレジット」事件です。

これは、投資家から集めた資金を無断で同社の社長や関係会社に融通していたという問題です。

これにより業務停止命令を含む行政処分が下されています。

ちなみにみんなのクレジットは調べてみましたが、現在はWEBページもないようですね。

maneo事件

次は2018年に発生した「maneo事件」です。

maneoマーケットは当時ソーシャルレンティングの最大手だったんですよ。

老舗かつ最大手で起こった問題ということで当時話題になりました。

maneoマーケットで「グリーンインフラレンディング」(2021年3月8日債権者破産申立)という会社への融資ファンドとして、最大14%というかなりの高金利で約130億円集めます。

目的は太陽光発電や水力発電への投資といった当時話題のものでした。

しかし、実際は投資家から集めたお金はグループ企業への増資など他の目的で使われていたことが発覚したんですね。

これにより行政処分勧告が出されています。

まとめ

今回は「SBIがソーシャルレンディングを自主廃業、撤退へ。今回の問題は何が原因なのか?」と題してSBIソーシャルレンディングの自主廃業となってしまった原因について見てきました。

ソーシャルレンディングの仕組み自体は面白いと思います。

しかし、前述したような事業者リスクや投資先リスクを回避するのはかなり難しい投資なのかなと感じています。

今後も同じような話がどうしても出てくるでしょう。

今回はSBIソーシャルレンティングは自社が損失を被り、自社廃業という決断をしましたが、多くはそうならなず投資家が損をする形で終わる可能性が高いです。

ですからソーシャルレンディングの投資は慎重に行いたいですね。

「自分が理解できないものに投資するな」というウォーレンバフェットさんの言葉があります。

ソーシャルレンディングは投資先の情報が限られていますし、しっかり理解しての投資なんて困難ですしね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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SBIソーシャル レンディングが 自主廃業、撤退へ。 今回の問題は 何が原因なのか? (1)
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