Xで話題の遺族厚生年金の見直し(一部廃止)について解説

X(twitter)で大きな話題になっているのが遺族年金の見直し(一部廃止)についてです。

まだ検討中の話ですが、大荒れな感じですね。

今回はこの件を解説したいと思います。

遺族厚生年金とはどういう制度か

まずは、今回の話の前提となる遺族年金(遺族厚生年金、遺族基礎年金)について解説しておきましょう。

遺族年金を簡単に言えば国民年金や厚生年金保険料の被保険者(今入っている人)の方や被保険者であった人(前に加入していた方)が亡くなったときに、その遺族が年金を受け取れる制度です。

遺族年金は種類や給付条件、受け取れる方などややこしいところがありますので、順番に解説していきましょう。

遺族年金の種類

遺族年金と一括りに言っても実は大きく分けて2つの種類があります。

遺族基礎年金遺族厚生年金です。(以前は公務員の方の「遺族共済年金」もありましたが 平成27年10月に「遺族厚生年金」に一元化)

自営業者など国民年金のみ加入されている方は遺族基礎年金が対象となります。

会社員の方などで厚生年金に加入されている方は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえます。

ただし、他の年金がもらえるケースなどにはどの年金をもらうのかを自分で選択をしたり、併給調整といって支給額を調整するケースもあります。

このあたりがちょっとややこしい制度ですね。

これは公的年金では、国民年金、厚生年金保険、共済組合等から、2つ以上の年金をうけられるようになったときは、いずれか1つの年金を選択することになっているためです。基本的にダブってはもらえないんですよ。

遺族年金と障害年金の選択
出典:日本年金機構「年金の併給又は選択」より

例えば上の図のように遺族年金と障害年金という両方がもらえる状況だったとします。

この2つは支給事由が異なっています。このケースのように2つ以上の年金を受け取れる際には自分でどちらを受け取るのかを選択します。

また、今まで遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けていた方が、60歳になって特別支給の老齢厚生年金などを受けられるようになったときも同様です。

遺族給付と老齢給付をあわせて受けることはできません。

ですから自分でどちらかを選択することになります。

遺族年金と特別支給の厚生年金の選択

出典:日本年金機構「年金の併給又は選択」より

遺族厚生年金がもらえる人

今回改正の話が出ているのは遺族厚生年金です。

現状の遺族厚生年金の支給要件は以下のとおりです。

死亡した者によって生計を維持されていた、(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)、55歳以上の夫父母祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。)

出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より

ちょっとややこしいのでもう少し噛み砕いて説明すると妻は年齢に関わらず受給できる

子、孫は18歳の年度末まで受給できる。障害等級1or2級の場合は20歳まで)

夫、父母、祖父母については被保険者が死亡時に55歳以上であることが条件となります。

また、遺族厚生年金を受給できる期間は以下のとおり。

夫の死亡時30歳以上もしくは子のある妻は一生涯受給可能
夫の死亡時30歳未満の妻で、子がいなければ5年間のみ受給可能
障害等級(1級、2級)に該当しない子と孫は18歳年度末まで
障害等級(1級、2級)に該当する子と孫は20歳まで
夫と父母、祖父母は60歳から一生涯受給可能
どちらも妻と夫ではかなり条件が違うことがわかると思います。
例えば子どもがいない女性は、30歳以上で再婚しなければ遺族厚生年金を一生涯もらえます。
一方、夫は55歳以上じゃないとそもそももらえないんですよ。

中高齢寡婦加算

また、中高齢寡婦加算というルールもあります。これは以下に該当する妻は金額が加算されるルールです。

次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、584,500円(年額)が加算されます。

夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
・遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき
出所:日本年金機構「遺族厚生年金」より

こちらは妻しかそもそももらえない制度ですね。

今回は遺族厚生年金の支給要件と中高齢加算について改正の議論が出ている感じですね。

既存のルールについて詳しくはこちらの記事で解説しております




遺族厚生年金の男女間格差解消を目指す

まずは今回出ている改正案を見ておきましょう

受給期間を5年間に

「遺族厚生年金」は、厚生年金に加入している会社員などが亡くなった場合に配偶者らに年金が支給される制度ですが、子どもがいない夫婦の場合、受け取る要件に男女差があり、
▽女性は、夫が亡くなった時に30歳未満だった人は5年間、30歳以上だった人は、生涯にわたって受け取れる一方、
▽男性は、妻が亡くなった時に55歳未満だった人は受け取れません。

厚生労働省は、今の制度は夫が働いて妻を扶養するという世帯が多かったことを背景につくられたもので、共働き世帯が中心となっている実態にそぐわないとして、男女差を解消する方向で検討に入りました。

具体的には、配偶者が亡くなった時に60歳未満で子どもがいない人について、性別にかかわらず受給できるようにし、期間はいずれも5年間とする方向です。

ただ、男女の就労環境には今も差があることから、妻の受給期間の5年間への短縮は段階的に行うほか、すでに受け取っている人は制度改正の対象としない方針です。

また、5年間の受給額を現行制度よりも増やすことも検討されています。

出典:NHK WEB 遺族厚生年金 子どもがいない夫婦の男女差なくす方向で検討へ

つまり、条件によっては一生涯もらえた子供のいない方の遺族厚生年金の受給期間を5年間に制限をされます。

また、男性の場合には55歳以上しかもらえなかったものが年齢制限をなくします。

つまり、男女とも配偶者が亡くなった場合に5年間受給できる形となるってことですね。

また、ニュースソースでは書いてありませんが、収入要件についても議論されています。

その分、5年間の受給額を現行制度よりも増やすことも検討しているようです。

事実婚で再婚せず受給する不正問題

この改正について反対意見も多いですが、いろいろな弊害があったんですよ。

男女間格差、年齢格差もそうですが、遺族厚生年金をもらっている方がパートナーがいても再婚しないという話なんかもありました。

妻の遺族厚生年金は再婚をしなければ永久にもらえますので、事実婚(内縁関係)で止めて結婚しないんですよ。(本来、事実婚もだめですが隠しているケースが多い

ある有名人の方が同居している内縁関係の人がいるのに遺族厚生年金の不正受給をしているなんて報道があったこともありましたね。(その後、摘発はされたという報道はでていないようですがどうなっているのでしょうか)

中高齢寡婦加算の廃止?

また、中高齢寡婦加算についても議論がされています。

女性のみというのは不公平ということで、こちらも男性をOKにするか、そもそも廃止するかといった議論のようです。

また、40歳から65歳までという期間を短くするという話もでています。

まだ議論の段階なのでどのようにまとまってくるかはわかりませんが・・・




まとめ

今回は「Xで話題の遺族厚生年金の見直し(一部廃止)について解説」と題して遺族厚生年金の見直しについてみていきました。

まだ議論の段階なのでどのように決まってくるかはわかりませんが、ちょっと歪になっていた制度を修正する形になりそうです。

反対意見が多いのでどうなるか・・・

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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