最近、インフルエンサーやブロガーなどが「口座を登録するだけで1,500円」などを必死に販促しているのをよく見かけます。
また、SNSでは少し前に「フォロー&リツイートで現金○万円」なんてのも流行りましたね。
様々な場面で目にする“現金プレゼント”キャンペーン。
副業やポイ活に関心がある読者にとっては、まさに“ノーリスクでお得”に見えます。
しかしその裏では、企業にとっての顧客獲得コスト(CAC)や個人情報の再販ビジネスが巧妙に設計され、場合によっては金融詐欺や情報漏洩につながる危険も。
今回は現金プレゼントキャンペーンの裏側を考えてみましょう。
登録するだけで現金プレゼントとは?
登録するだけで現金プレゼント。
これは大小関係なく様々な企業が実施しています。
条件は企業やキャンペーンによって異なりますが、「アプリDL+口座開設」「初回ログイン」など手軽で、副業・ポイ活ユーザーの関心を強く引く設計になっています。
金融機関など信頼性の高い事業者でも、個人情報と引き換えに報酬を支払う構造は同じ。違いは情報の活用範囲と管理体制にあります。
なぜ企業はお金を配るのか ─ 目的とビジネスモデル
企業がお金を配ってまで口座登録者などを増やそうとするのは、顧客獲得コストとLTV(ライフタイムバリュー)日本語にすると顧客生涯価値の関係によるものです。
簡単に言えばお金配って口座登録してもらっても将来的には儲かる計算が成り立っているってことですね。
例えば1,000円の現金をプレゼントして口座登録してもらうとこんな計算になります。
指標 | 例 |
---|---|
顧客獲得コスト(CAC) | 1,500円/人 |
現金プレゼント額 | 1,000円 |
平均LTV | 12,000円 |
1,000円の現金はコストではなく「広告費」。
顧客が将来生む手数料や利用料(LTV)で十分回収できます。
口コミ効果やSNS拡散で追加の広告コストゼロになるため、下手な広告を打つよりも企業側には合理的なんです。
個人情報の価値と再販ビジネス
真っ当な企業は上記の通りの目的ですが、もう一つ目的がある企業があります。
それは個人情報です。
名簿屋では個人リスト1件あたり5〜10円で売買されるのが相場といわれています。
投資に絡んだり、情報商材など怪しいサービスを利用した人の名簿などだとさらに高くなるとか・・・
昔あった豊田商事事件では被害者の名簿が高値で売買され何度も詐欺被害にあったなんて話もありますね。
100万人の応募=リスト仕入れコスト500万〜1,000万円。
広告換算すると破格の安さで、情報再販やターゲティング広告に活用される余地が大きい。
ちなみに個人情報保護法改正(2023年)で利用停止請求権が拡大し、違法・不当利用への制裁が強化されています。
しかし、もともと個人情報の売買が目的のような企業の場合はそんなことはお構いなしだったりするのが現状です。
私の個人情報不正利用の事例
私もある投資系の企業の口座を作ったら勧誘電話が激増しました。
うさんくさいワンルームマンション投資なんてしょっちゅう掛かってきますし、下記のような完璧な詐欺電話すら掛かってくるように。

証拠がないので断定的なことは言えませんが、そこの会社から情報が漏れてる可能性がかなり高いと思っています。
なぜなら住所の表記を微妙にいつもと違う感じで書いたのはその時だけなんですが、たいていその住所で向こうは把握しているんですよね。。。(あえてではなく間違えただけなのですが)
ちなみにこの記事を書いたきっかけは某ブロガーが、その迷惑電話のきっかけになったであろう投資系の企業のキャンペーンを紹介をしているのを見たからです笑
危ないお金配りキャンペーンを見抜く6つのチェックポイント
それでは危ないお金配りキャンペーンを見抜くコツはどんなところにあるのでしょう?
企業情報は公開されているか
運営会社の住所・代表者・問い合わせ先を確認しましょう。
怪しい企業はそれらを伏せています。
また、公開されている場合はいろいろな角度からググって(Google検索)みることも有効です。
会社名
商品名
住所
電話番号
FAX番号
メールアドレス
社長の名前
担当者の名前
などなど。
すでに悪い評判が出回っているケースはこの段階で回避できるはずです。
電話番号が携帯電話のみだったり、メールアドレスがフリーメールの場合、怪しいポイントの一つです。
私が人事をやっているときは応募者のメールアドレスやメールアドレスの文頭で検索を掛けてみてましたね。
同じようなアドレスで詐欺をしていればでてくるかもしれません。
また、住所が分かればグーグル・アースやグーグル・ストリートビューなんかで見てみるのも効果的です。
WEBサイトやグーグルマップの口コミも参考になりますね。
過剰な情報入力を求められていないか
どこまでの情報を求めているのかも注意しましょう。
現金受取に不要なクレジット情報の登録などは赤信号。
年収や資産の項目や必要ないのに運転免許やセルフィーの確認がある場合もかなり怪しいです。
SNS公式マークの有無/フォロワーの質
インフルエンサー装った偽アカは要注意。
公式マークがあるのか、いいねはリツイートの数などもチェックしましょう。
最近は盛り上がっているように見せるためのサクラ業者も多くなっています。

当選連絡がDM経由のみ
外部サイトへ誘導し口座情報を打たせる手口に注意。
疑って掛かることが必要でしょう。
“参加費”や“手数料”を要求
前払いや振込要求は典型的な詐欺パターンですね。
口コミ・レビューが過度に高評価
生成AIやサクラレビューも疑う視点を。
ちなみにAmazonなどだとサクラをチェックするサイトなんかもあります。
実例で学ぶ ─ 金融詐欺&個人情報悪用ケーススタディ
過去には様々な事件がありました。
よくある詐欺のパターンはこんな感じです。
ケース | 概要 | 主なリスク |
---|---|---|
Case 1:Twitter “現金配布”→LINE誘導 | 現金1万円が当たるとフォロワーを釣り、DMでLINE登録させ情報商材を販売。NHK取材で実態が暴露。 | 料金未払い・個人情報転売・高額商材購入 |
Case 2:Instagram偽インフルエンサー当選DM | 当選通知と称し銀行口座・IDセルフィーを要求。リンク先でフィッシング | 口座乗っ取り・身分証悪用 |
Case 3:Twitter偽著名人アカウント | 有名人になりすまし現金10万円配布を装う。口座登録後、暗号資産詐欺サイトへ誘導。 | 資金送金・暗号資産損失 |
合法とグレー/違法を分ける法律知識
関連する法律も知っておきましょう。
法律 | 主なポイント | 違反リスク |
---|---|---|
景品表示法(改正2024→施行2025/10/1) | 不当表示への課徴金算定を強化。再犯は1.5倍課徴金。適格消費者団体が裏付資料開示を要請可。 | 課徴金+刑事罰(100万円以下) |
個人情報保護法(改正2023) | 不当利用停止請求・漏洩報告義務の拡大。第三者提供停止も請求可。 | 行政処分・罰金・損害賠償 |
資金決済法/金融商品取引法 | 電子マネー・暗号資産を賞品にする場合、届出や広告規制の対象に。 | 無登録営業・出資法違反など |
特に今回の話で重要なのは景品表示法と個人情報保護法でしょう。
これを軽視しているケースはほぼ黒でしょうね・・・(無知識なケースもありますが)
景品表示法に違反する典型パターン
カテゴリ | 違反になりやすいポイント | よくある現金プレゼント例 |
---|---|---|
過大な景品(プレミアム) | 上限を超えた金額・商品を配る | 会員登録(取引価額=100円とみなされる)だけで 500円 を全員に付与 ⇒ 上限は 200円 なのでアウト |
不当表示(優良誤認) | 実態より品質・性能を良く見せる | 「セキュリティ万全!情報は暗号化」と謳いながら実際は常時平文保存 |
不当表示(有利誤認・二重価格) | 本当は常時その価格なのに「今だけ○円還元」と誤認させる | 通常ポイント0.5%のサービスを「本日限定5倍」と掲げるが、前週も同条件 |
ステルスマーケティング | 広告と示さずインフルエンサーにPR投稿を依頼 | #PR等広告である旨を付けず「神キャンペーンで1万円もらえた」と実況 → 2023/10/1以降は違法 |
クローズド懸賞/総付景品の上限
取引の価額 | 総付景品の最高額 | 一般懸賞(抽選)の最高額 |
---|---|---|
1,000円未満 | 200円 | 20倍 (上限10万円) |
1,000円以上 | 取引価額の20% | 20倍 (上限10万円) |
単なる会員登録やサイト来訪は「取引価額=100円」と見なされるため、もれなく配る場合は 200円が限界
誰でも応募できる“オープン懸賞”(購入条件なし・抽選)はプレゼント額の制限なしだが、あくまで“抽選”が条件
「登録者全員に1,000円」は総付景品扱い→即アウト、という構造です。
ちなみに銀行などがやっているもう少し金額が大きいプレゼント企画は入金額の条件があると思います。
それがあると200円が上限ではなくなりますのでもう少し高い金額のキャンペーンも行われています。
なお、普通預金取引において通常行われる「最低」の取引額が100円を超えるのであれば、その額を取引価額とすることができるが、既存預金者の「平均」取引額を取引価額とすることはできない。
出典:全国銀行公正取引協議会 景品規約に関する照会事例
住宅展示場などの来場特典が豪華なのは成約した場合の取引金額が大きいために問題ない形ですね。

こんな現金プレゼントは危険信号
以下のような現金プレゼントは違法の可能性が濃厚なので、基本的に参加しないのが吉でしょう。
登録者全員に500円以上配布
- 総付景品の上限(200円)超過で即違反
「抽選で1万円×1名」なのに当選者を公表しない
- 抽選の実施事実を証明できず、不当表示に該当しやすい
フォロー&RTだけで全員に暗号資産付与
- 暗号資産は「金銭その他の経済上の利益」に該当。上限管理が必要
インフルエンサーが「実際にもらえた」と宣伝するがPR表記なし
- ステマ規制で広告主が処分対象
個人情報保護法に違反する典型パターン
次に個人情報保護法についてみてみましょう。
個人情報保護法が「効いてくる」4つのタイミング
まず、キャンペーン応募で “ここに当てはまった瞬間” から法律の網に入ります
タイミング | 具体例(登録で現金プレゼントの場合) | 根拠条文・改正ポイント |
---|---|---|
①「個人情報」を取得した瞬間 | 氏名・メール・銀行口座・端末IDなどを入力フォームで収集 | 法2①:特定個人を識別できる情報はすべて個人情報 |
② データベース化した瞬間 | 応募者リストをExcelやCRMに保存し検索できる状態にした | 個人情報データベース等に該当=取扱事業者となり義務が発生(旧5,000件要件は2017年撤廃) |
③ 第三者に提供した瞬間 | 景品発送を委託する配送会社へリストを渡す/広告会社へアップロード | 提供記録の作成・本人同意またはオプトアウトが必須(2022改正で記録開示請求も可能) |
④ 漏えい・目的外利用が起きた瞬間 | ハッキングで流出/同意なく別商材のDMを送付 | 2022改正で漏えい報告+本人通知が義務化、目的外利用は利用停止請求の対象 |
そもそも「個人情報」扱いになるデータとは?
氏名・住所・電話・メール・銀行口座・SNS ID・Cookie や端末識別子など、1項目でも「生存する個人」を識別できれば個人情報に該当します。
“単体では分からなくても他の情報と容易に照合して特定できる”場合もアウト。
キャンペーンで「グレー→違法」になるパターン
パターン | 何が問題? |
---|---|
目的外利用 | 「現金振込のため」として集めた口座情報を別サービス勧誘に流用 ⇒ 利用停止+損害賠償リスク |
同意のない第三者提供 | 名簿業者へリストを売却。オプトアウト手続きも未届 ⇒ 委員会から命令・罰金(最大1億円) |
漏えい報告怠慢 | 流出を認識しながら報告・通知を怠る ⇒ 行政処分+刑事罰(個人は1年以下の懲役等) |
クロスボーダー無対策 | 海外クラウドに移転し保護水準の説明なし ⇒ 報告義務違反で改善命令 |
特に多いのが「目的外利用」と「同意のない第三者提供」ですね。
キャンペーン規約に「利用目的」「第三者提供」「問い合わせ窓口」の3点の項目がなければ要注意です。
逆に「適用外」or 義務が軽いケース
ケース | 理由 |
---|---|
完全匿名加工情報 | 特定の個人を再識別できないように統計化(法改正で創設)。生成時の安全措置は必要 |
個人利用の家計簿アプリで自分だけが使う名簿 | 業務利用でない個人・家庭内利用は除外 (法57ⅰ) |
保有期間が短く即時削除 | “保有個人データ” には当たらず開示請求義務なし。ただし取得時の目的明示・安全管理は必要 |
まとめ
今回は「登録するだけで現金プレゼントキャンペーンの裏側を考えてみよう」と題して現金プレゼントキャンペーンについて考えてみました。
現金プレゼントは広告費というビジネス視点で設計されている可能性が高いです。
個人情報は1件数円〜数十円で流通する資産。
引き換えに得る金額が本当に割に合うか冷静に比較をしましょう。
景品表示法×個人情報保護法の“適法ライン”を理解するだけでリスクは大幅に減ります。
違法なことをしようとしている会社はだいたいその2つの法律を適当に扱っているんですよ。
ぜひ知っておきたいところですね。

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