2022年の日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳となっています。
多少ピークよりは下がっていますが、世界的に見てもトップとなっています、
合わせて健康に暮らせる寿命「健康寿命」は女性が75.38歳、男性が72.68歳(2019年調査)と伸びています。
今後もこの流れはしばらく続くと予想されていますね。
標準生命表も改定されていますね。
11年ぶりに標準生命表が改定されました。これにより生命保険各社が標準生命表を元に計算をしている生命保険は値下げ、医療保険や年金保険は値上げの方向に動いているようです。あんまり関係ないや、って思う方も多いかもしれません。[…]
そこで心配になるのが自分が高齢になったり、認知症になってしまった時、現在の株や不動産などの資産を適切に投資判断して守れるのかです。
国民の金融資産の約6割を60歳以上の人たちが持っている現状の日本ですからその影響は自分の心配だけでなく株などへの影響は計り知れません。
今回は、歳を取っても今と同じように投資判断ができるのかについて金融ジェロントロジー(金融老年学)の考え方に基づいて考えていきたいと思います。
金融ジェロントロジー(金融老年学)とは
金融ジェロントロジー(金融老年学) とは長寿が経済活動や社会経済に与える影響を、医学や経済学、心理学などから多面的に研究する学問のことを言います。
アメリカでは早くから存在する考え方で、日本では2017年11月に、金融庁が公表した金融行政方針で「高齢投資家の保護については、これまでも販売会社における態勢整備が進められているが、ファイナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)の進展も踏まえ、よりきめ細やかな高齢投資家の保護について検討する必要があると考えられる。」との項目が盛り込まれたことで注目が集まり始めました。
認知症患者が増える予想も
金融ジェロントロジー(金融老年学)が注目されている理由として認知症患者数が増えると予想されていることが大きいです。
2025年に700万人まで増加すると推計されているのです。
医療技術が進歩して寿命や健康寿命は伸びていますが脳の分野は遅れているということなのでしょうかね・・・
認知症とまではいかなくても高齢になれば認知機能は徐々に低下すると言われています。
高齢により認知機能が低下すると資産運用に与える影響
高齢により認知機能が低下すると資産運用には以下のような影響を与えると言われています。
選択肢が多すぎると選択が難しくなる
これは個人型確定拠出年金(イデコ)の35本制限でも言われていたことですが、よりその傾向が強くなるようです。
ですから単純な選択肢を与えられてしまうと乗ってしまいやすくなるのです。
銀行などからしてもいい鴨かもしれません。
先日、金融庁が投資信託を販売する銀行・証券会社に対して比較可能な共通KPIと考えられる3つの指標を公表することを発表しました。3つの指標は以下の通り。・ 運用損益別顧客比率・ 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン[…]
相手の表現によって自己の決定が左右される
また、相手の言葉や表現によって自己の決定が左右されやすくなると言われています。
ですから言葉巧みに近寄ってくるオレオレ詐欺やマルチ商法に引っかかる高齢者が多いのかもしれません。
意思決定の判断が遅れがちに
また意思決定の判断が遅れがちになるとも言われています。
また、選ばなかったことに後悔をしにくくなります。
さらに手に入れたものは手放したくない価値を高く感じやすくなります。
つまり、、、損きりができなくなるってことですね。
ポジティブ情報は記憶、ネガティブ情報は忘れる
タチが悪いですが良い情報(ポジティブ情報)は記憶し、悪い情報(ネガティブ情報)は忘れてしまう傾向にあります。
これも悪徳商法などに引っかかってしまう要因かもしれませんね。
60代から80代の現役投資家が感じている現状
実際60代から80代の現役投資家が感じている現状は下記の通りです。
出所「金融ジェロントロジーにおける資産運用に関する調査」より
投資判断が一番障害があるとのことですね。
続いて理解・認識、個別商品の管理と続いています。
高齢になると預金にする傾向
野村アセットマネジメントが2018年1月に出した「金融ジェロントロジーにおける資産運用に関する調査」によると現投資家の4割が認知機能が低下したら運用をやめて預金にすると回答しています。
一方、どうして良いのかわからない方も4割いる結果となっています。
徐々に預金を増やすのはありだとは思いますね。
株式市場を考えるとこのインパクトもかなりのものになりそうです。
出所「金融ジェロントロジーにおける資産運用に関する調査」より
高齢者の資産運用はどうしたら良いのか?
それでは高齢者の資産運用はどうしたら良いのでしょうか?
いくつか考えられますので順番に見ていきましょう。
成年後見制度
まず考えられるの成年後見制度です。
成年後見制度とは認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。
出所:総務省 成年後見制度とは
つまり、判断力が不十分な場合に財産などの管理を任せてしまおうという制度です。
成年後見人は、判断能力の程度に応じて家庭裁判所が選任します。
家族を後見人する場合もありますが、一般的には弁護士や司法書士を選択する方が多いようです。
ただし、これ大きな弱点があります。
それは成年後見人が株式などリスクのある金融資産に投資することが禁じられていることです。
ですので使い方次第というところでしょうか。
ただし、あまり普及していないのが実情です。
横領等もよく聞く話ですし、手数料も支払う必要がありますしね。
家族信託
2007年にスタートした「家族信託」という方法もあります。
家族信託とは、財産管理の手法の一つで、保有する資産(不動産・預貯金等)を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。
家族信託は高齢者の資産を柔軟に運用したり、組み替えられます。
任意後見制度支援信託
もう一つ三井住友信託銀行が始めた「任意後見制度支援信託」という方法です。
このサービスでは、本人が生活する分を差し引いた金銭を、信託銀行に信託することで、後見人による財産の横領を防ぐことができます
任意後見制度支援信託は、任意後見制度をご利用される方の財産を信託で管理することで、任意後見制度をサポートするための信託です。任意後見契約が発効した後は、お預け入れいただいた金銭信託からの払い戻しには任意後見監督人の同意が必要となりますので、安全・確実に財産の保護を図ることができます。また、日々の生活に必要な資金などを定期的にお受け取りいただくこともできますので、任意後見人が担う財産管理のご負担も軽減することができます。
出所:三井住友信託銀行「任意後見制度支援信託」
出口戦略を決めておく
自分でできる方法としてはあらかじめ出口戦略を決めておくことも考えられます。
投資は何歳まで、いくらまで、といった具合ですね。
もともとイデコやつみたてNISAあたりはそんな設計になっていますね。
自分ルールを構築
自分の理解できないものには手を出さないなど色々自分ルールを決めておけば自分自身の認知力が低下してもある程度対応できます。
現在88歳のウォーレンバフェットさんがいまだに一線で活躍されているのですから。
相続できる資産、できない資産
なお、相続は資産によってできないものもあります。
そのあたりもあらかじめ考えておきたいところ
詳しくはこちらを御覧ください。
まとめ
金融ジェロントロジー(金融老年学)はまだまだこれからの学問でこれからどんどん研究が進むでしょう。
一方、高齢者を狙った悪徳商法もどんどん巧みになってきています。
それらに対応するためにも高齢者の心理や認知の変化に対応するような金融サービスの登場が待たれますね。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。