確定拠出年金の運用商品数の上限が35本に。この制限は必要なのか?

日経新聞に下記のような記事が出ておりました。確定拠出年金の運用商品数の上限を35本に決めるとのこと。今までは下限は決めてありましたが、まさか上限を指定してくるとは。今回はこの件について書いてみたいと思います。

厚生労働省は確定拠出年金(DC)制度について、企業が従業員に提供する運用商品数の上限を35本にする方針だ。2018年6月までに新制度を始める。運用に詳しくない加入者は商品が多すぎると選択しづらいため、提供する商品数を制限することで効果的な運用を促す。 出所:日経新聞

なぜ確定拠出年金の商品数に上限を決めるのか?


企業型確定拠出年金の商品数の現状

企業型の商品数の平均は18.4商品とのこと。平均が18.4で上限が35本だと引っかかる企業は少なそうですね。

ちなみにiDeCo(個人型確定拠出年金)の商品数はSBI証券で61本ありました。今回記事になっているのは企業型確定拠出年金の話ですのでそのままiDeCo(個人型確定拠出年金)にも適用されるのかはわかりません。しかし、もし適用されればSBI証券は半分近く商品を減らす必要が出てきてしまいます。確かにSBI証券は同じインデックスをベンチマークにしている商品が複数あったりしますのでその辺りは削っても良いのかもしれません。しかし、ダウをベンチマークにしてる商品や中小海外株、綺麗に8資産に分散している商品など他のiDeCoで扱ってない面白い商品あってそれらを削ると魅力が減るな・・・と個人的には思います。SBI証券「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」

運用商品数に制限を加える理由(厚生労働省の意見)


運用商品の数に制限を加える理由として厚生労働省は

運用に詳しくない加入者が商品が多すぎると選択しづらいため

と言っています。

確かに心理学的にこのような考え方があります。

行動回避・先送りに関連する行動バイアス

消費者は情報や選択肢が多すぎる判断に迷ってしまう。また選択をしないと言う判断をしやすくなる

お店でたくさんの魅力的な商品があると迷って結局買わずに出てきてしまうときが誰にでもあると思いますがそれと同じです。

また、アメリカで401Kについてこのような研究もあります。

  • 運用商品が増えると従業員の加入率が低下する
  • 運用商品が増えると不利な商品を選択する人が増える

プランが10本増えるごとに株式に投資しない人が2.87%増え、しかもそれ以外の人たちの株式組み入れ比率も3.28%低下し、代わりに債権やMMFの比率が高まる

出所:社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会 資料より

面白い研究ですね。加入率が低下するのは前述の行動回避・先送りに関連する行動バイアスの影響で選択しない人が増えるのかな?ってわかりますが、不利な商品を選ぶ人が増えるんですね。しかもなぜか債権やMMFが増えるとは・・・これも選択できず安全な方に流れるからなのでしょうかね?

以上のように厚生労働省のやろうとしていることもごもっともなのです。

確定拠出年金の商品数の制限について私の意見


私は投資知識がありますので思うことかもしれませんが

商品数や商品の内容に制限をするのはやめてほしいなって思います。

積立NISAもその方向のようですが・・・

社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会でも下記のような意見も出ています。

加入者の中にはきちんと理解して、運用商品も広い運用商品の中から選びたいという人も現実にいて、そういうきちんと勉強している人の行動が余り勉強もしていない人の合理的な選択のために狭められるというのは、本末転倒ではないか?個々の労使が決めればいいことではなかろうか?知識のない人たちが選びやすくする、合理的に選択させるという1点だけを理由に数を制限するというのはいかがなものか?

私も全く同意見なんですよね・・・

教育の場を増やす

合理的に選択できないからって商品数に制限かけるよりも選択に必要な知識を教育する場を増やしていくべきだと思います。

商品数減らして加入者増やしたところで単になんとなく選ぶだけだったらばその人の知識は増えていきません。

この確定拠出年金をスタートに投資をする人を増やしたいという考えも政府にはあると思います。

それを促す勉強する機会こそ必要だと思うのです。

セット商品を用意する

また、選択がわかりにくければセット商品を提供すれば良いと思うのです。

例えばこれくらいのリスクを許容できる人ならばAセット

リスク取りたい人ならばBセットのように

あらかじめアセットロケーションを組んだセット商品をいくつか用意。

例えば年金機構と同じアセットロケーション組んでるセットとか面白いと思います。

こうすれば行動回避・先送りに関連する行動バイアスも回避できるはずなんですよね。

もうすでにバランス型とかはそういうリスクごとに分けた商品がありますのでそちらで選んでもらえばいいだけの話だと思うのです。

競争原理が働かない

また、運用商品等に制限をかけてしまえば運用会社同士の競争も起きにくくなってしまうでしょう。

日本の投資信託とアメリカのETFでは信託報酬の利率が雲泥の差となっていますしね。

そしてもう一つ大事なことがあります。

中途半端な制限

今回上限35本と出ていますが行動回避・先送りに関連する行動バイアスの観点からするとそれでは多すぎです。

今の企業型確定拠出年金もデフォルトの定期預金のままの人がかなりの割合で多いと聞いています。

もし、本当の意味で投資知識ない人を対象にするなら下記10商品だけで良いと思うのですが・・・

日本株式

先進国海外株式

新興国株式

日本債権

先進国債権

新興国債権

日本REIT

先進国REIT

新興国REIT

定期預金

それでもわかりづらいもっともっと絞るなら下記5つだけにすれば良いと思うのです。

日本株式

先進国海外株式

日本債権

先進国債権

定期預金

なんか中途半端なルールになってる気もしています。

まとめ


確定拠出年金はとてもよい制度です。加入者も順調に増えているそうです。せっかく伸びているのですから規制をかけるのではなく、もっと選択肢が広がる方向に持って言ってもらいたいな。。。って思います。昨日書いたマンガ、アニメで勧誘しようとしていたりなんか明後日の方向で努力してますよね・・・

 

確定拠出年金については下記ブログも書いています。合わせてご覧ください

大予想。SBI証券で残る35本の商品はこれだ(改正DC法によるiDeCo商品数上限)

マンガでわかるiDeCO開始。これって手数料の無駄使いじゃないの??

私のiDeCo(個人型確定拠出年金)投資戦略

個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)やつみたてNISAの第一歩はアセットアロケーションを決めること

個人型確定拠出年金(イデコ/iDeCo)とは。メリット・デメリットをわかりやすく解説

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