最近、空売りファンドが空売りした上で「レーザーテックは不正会計(粉飾決算)をしている可能性が高い」との趣旨のレポートを出して大きな話題となっていますね。
レーザーテックは下記のとおり、否定していますし、真偽はわかりませんが、空売りファンドが指摘するというのは初めてきいたパターンです。
レーザーテックは6日、海外空売り投資家のスコーピオン・キャピタルから不正会計の疑いを投げかけられていることに対し「適切な会計処理を実施している」と反論した。スコーピオン側が5日、レーザーテクの製品の需要動向や会計処理について疑いを指摘するリポートを公表していた。
出典:日経新聞 レーザーテック「会計処理は適切」 海外ファンドに反論
しかし、粉飾決算の話はかなり古くからあるんですよ。
大きな事件で言えば海外のエンロンやワールドコム、日本でのライブドア、オリンパスなどです。
他にも粉飾決算に絡んだ大小様々な事件が定期的に報道されていますね。
しかし、これだけいろいろな問題が何度も発生してもいっこうにそれらの行為は減らないのです。
今回はなぜ粉飾決算をするのかを企業側の論理、個人投資家こそ知っておきたいそういった粉飾決算の手法と見分け方について見ていきたいと思います。
粉飾決算とは
粉飾決算とは売上の架空計上、収益や経費の計上時期の操作、在庫の過大計上などで利益を水増しして会社の決算書をよく見せる行為のことです。
多いのは赤字企業が黒字に見せるなんてケースですね。
ちなみに広い意味で脱税や裏金つくりのために決算書を悪く見せるのも粉飾決算の一種と捉える考え方もありますが、今回は決算書をよく見せる粉飾決算を中心に見ていきます
粉飾決算は刑事罰あり
粉飾決算は刑事罰があるれっきとした犯罪です。
金融商品取引法では
とされています。
粉飾決算にはかなり重い罰則があるのです。
さらに行政罰や民事責任も発生してきます。
ライブドアなんかが典型ですが、民事での賠償金もかなりすごかったですよね・・・
なぜ粉飾決算が行われるのか
発覚する度に大きな問題となる粉飾決算。
罰則や損害賠償の話だけでは済まず、イメージ悪化によってそれが致命傷となり会社自体が消えてしまうというケースまであります。
それでも粉飾決算をする企業は減らないのです・・・
それはなぜなのでしょうか?
対株主対策
まず上場企業で多いのが株主対策です。
ほとんどの場合は社長や役員の保身ですね。
業績が急落すれば役員は株主から責任を追求されます。
そのため、少しでも決算をよく見せるために粉飾をしてしまうのです。
中には配当を出す余力はないのに業績をよく見せて配当を出すなんてケースも。。(かなりやばい状況です)
また、後述する金融機関や取引先の関係がさらに絡んでいる場合もありますね。
上場条件をクリアするため
また、粉飾決算は新規上場企業(IPO)でもよくあります。(あまり露呈していませんがあからさまに怪しいところもあり・・・)
新規上場基準を満たすためやより高い株価で上場するための粉飾です。
上場するための準備を手伝う企業の中にはそういった行為を指導しているところも実際あります。
そこが株主にいたら絶対そこのIPOには参加しませんね。。。さすがにどことは書けませんが(笑)
上場基準とは上場するための基準のことで取引所ごとに定められています。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
対金融機関、取引先対策
次に金融機関や取引先との関係維持のためです。
金融機関からお金を借りていると経営状況が悪化すると既存の融資を引き上げられたり、条件を改悪されたり、新規の融資が受けられなくなったりします。
企業によっては死活問題となりかねませんのでそれを防ぐために少しでも決算書をよく見せるのです。(金融機関も露骨なのは当然見破ります)
対取引先でも同様です。大きな企業はある程度の業績があることを取引条件としているケースがよくあります。
そのため、その水準を維持するために粉飾決算をしてしまうのです。
名前は出せませんがある超大手企業と私が昔いた会社は取引していました。
しかし、業績悪化してその水準を超えられませんでした。
するとその超大手企業の役員から粉飾決算をするようの指示がきたことも実際あります・・・かなり具体的な指示でしたから他でも常習化しているのでしょう。
私が昔いた会社の話について詳しくは下記記事を御覧ください。
また、公共工事を請け負っている企業などでは少しでも有利に公共工事を請け負うために粉飾をしているなんてケースもあります。
建設業などは経営事項審査(経審)という制度があり、露骨に点数がついてしまうためです。
付いた点数によっては入札そのものに参加できなかったりしますからね。
これらは中小企業、零細企業で本当によくある話です。
脱税の場合は税務署等が摘発しますが、粉飾決算は基本的に余分に税金を払ってくれている話ですから税務署は相手にしませんからね・・・
しかし、これ中小企業、零細企業だけの話ではなく、それなりに大きな企業や、上場企業でも実際よくある話なんですよ・・・
粉飾決算を企業が何故してしまうのかというのは下記の本を見るとかなりよくわかります。
カネボウ、ライブドアなど過去の粉飾企業がどのように行われたかがかなり詳細にわかりますよ。
粉飾決算のよくある手法
粉飾決算を個人投資家が見破るためにはそもそもどういう手法(手口)があるのかを知っておく必要があります。
代表的な手法を見ていきましょう。
循環取引
まずオーソドックスな粉飾決算手法が循環取引ですね。
過去の粉飾決算事件の多くがこれが絡んでいます。
仕組みは簡単です。
名前の通り、取引を循環させるんですよ。
実際は自分が売った商品が戻ってきているだけなのですが、これにより売上と利益を水増しさせるのです。
帳簿や書類上ではA社はB社に商品を売って、C社から別の商品を仕入れている形となっているので監査法人でも見破りにくいというのがポイントです。
ちなみにほとんどの場合はB社とC社は社長同士が友人関係だったりしてグルです。また、そもそもB社とC社はそもそもペーパーカンパニーというケースもあります。粉飾決算用に複数のペーパーカンパニーを持っているなんてところも・・・
在庫の過大計上
次によくあるのが在庫の過大計上です。
簿記の勉強したことがない方にはちょっと理解しにくいかもしれませんが、在庫が増えると経費(売上原価)が減るのです。
売上原価は以下の計算で求められます。
簡単に言えば年度始めにあった在庫とその期に仕入れた商品から期末に残っている在庫の差額がその期で売れた商品という考え方です。それが売上原価となります。
この計算式に当てはめて考えればわかりますが、期末に残っている在庫が増えればそれだけ売上原価が減るのです。(利益が増える)
期ズレ
次に多いのが期ズレです。
例えば3月決算の会社ならば3月中に売り上げたものは3月の売上計上となります。4月に売り上げたものは4月の売上となります。
それをずらすのです。本当は4月に売り上げたものなんだけど書類上は3月中に売り上げたことにして売上をかさ増しするのです。
また、経費で本来は3月中に発生したものなんだけど4月に発生したことにして経費を下げて利益を増やすなんてこともあります。
その他手法
他にもいろいろなやり方があります。
例えば完全な架空売上を計上したり(相手科目は売掛金)、経費を仮払金や貸付金といった他の項目に計上して利益を増やしたりなどです。
粉飾決算を見破る方法
上記のような粉飾決算の企業に投資をするのはかなりリスクがあります。
個人投資家であってもしっかり見破っておく必要があるのです。
完全に断定するのは難しいですが、怪しいくらいは個人投資家でも判別可能です。
そんな方法をご紹介しましょう。
4半期ごとの経営指標の変化を見る
まずは四半期ごとの経営指標の変化を見てみましょう。
これが直近で急に変化しているケースはちょっと怪しいです。
もちろんビジネスモデルを転換したなど本当になにかしらの理由で大きな変化があるケースもありますけどね。その場合には決算短信等になにかしらのコメントが入っているはずです。
在庫の過大計上の場合
例えば架空在庫の計上などで在庫を過大計上していれば在庫に関わる指標に影響がでます。
在庫回転率(棚卸資産回転率)や在庫回転期間(棚卸資産回転期間)ですね。
循環取引や期ズレの場合
循環取引を繰り返していたり、売上や経費の期ズレをすれば売上総利益率や営業利益率など各利益率に大きな変化がでる場合が多いです。
ただし、ずっと粉飾決算しているような会社には通用しません。
同業他社の経営指標と比較してみる
次に同業他社と経営指標を比較してみましょう
同業他社と比較して極端に違った経営指標がある場合はちょっと要注意ですね。
もちろんビジネスモデルが違えば同業他社でも経営指標の数字は違って当然ですからその辺りは加味する必要がありますけどね。
キャッシュフロー計算書をじっくり見る
もう一つがキャッシュ・フロー計算書をじっくり見ることです。
キャッシュ・フロー計算書はお金の動きを見るもので粉飾決算がしにくいと言われています。そのため粉飾決算を見破るには最適なんです。
特に営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)に着目して損益計算書と比較してみるとよいでしょう
キャッシュフロー計算書の作成はある程度の簿記知識が必要ですが、読むだけならパターンで認識が可能です。
詳しくは下記記事を御覧ください。
まとめ
今回は「個人投資家こそ知っておきたい粉飾決算の手法と見分け方」と題して粉飾決算についてみてきました。
特に個別株に投資している方は粉飾決算をしっかり見破っておかないと大きな損失を被ってしまう可能性があります。
そのような企業にひっかからないようにしっかり分析してみてくださいね。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。