IPO(新規株式上場)投資に財務分析は必要なのか?

先日のソフトバンクのIPOはかなり大きな話題となりました。過去最高規模の新規上場となりましたが、残念ながら初値は公募価格を上回ることをできませんでしたね。

ソフトバンク株価の今後についてはこちらを御覧ください。

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ソフトバンク株価

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宝くじとIPO投資

IPO投資とは新規上場企業への投資をすることですが、いろいろな手法があります。公募でゲットして初値やしばらくしてですぐ売ってしまう手法、セカンダリーで入って儲ける手法、長期的に大きく儲ける銘柄を見つける手法などなどです。

IPOの初値やしばらくの株価は基本的に需要と供給で決まります。そのため、IPOに財務分析なんて必要ないと考えている方も多いようです。もちろん初値売りや数日のうちに売ってしまう場合、セカンダリーで儲ける場合ならそれも正しいと思います。

しかし、長期的に大きく儲ける銘柄を見つける手法の場合にはIPOでも財務分析は必要であると考えます。それは新規上場企業の中には地雷といえる企業がかなり混じっているためなのです。私は基本的にIPO投資でも財務分析は行って戦略を考えます。当選してからじっくり見る場合が多いですけどね。

今回はIPOの財務分析について考えて見ましょう。

新規上場企業は玉石混淆である。


まず押さえておきたいのが新規上場企業は玉石混淆であることです。玉石混淆とはすぐれたものと劣ったものが区別なく入り混じっていることをいいます。簡単に言えば宝玉と石ころが混じり合っているってことですね。実際に石ころの方が多いでしょう。俗に言う地雷企業ですね・・・

新規上場のために賞与を出さない会社

例えばこんな会社がありました。

新規上場準備をしていた会社でほぼ上場が決まっていました。一応上場基準は満たしていたものの直近の業績があまり良くありません。そこでその社長がとったのが賞与を出さないということです。

賞与を出さなければ経費が押さえられますから決算書で言えば営業利益が増えますね。

しかし、賞与を出さなければ従業員のモチベーションやモラールは下がってしまいます。今の人不足の状況なら優秀な人ならば転職は容易ですから出ていってしまうかもしれません。つまり、短期的に見れば営業利益が増えますので決算書は多少良く見えるかもしれません。しかし、長期的に見れば会社にとってマイナスとなってしまう行為なのです。

こういう会社は新規上場しても買いたくないですよね。

普通は監査法人や主幹事あたりがそのあたりも指導してほしいところなんですけどね・・・

新規上場前のお化粧する会社

次は実際によく問題になっているケースです。

新規上場を実現するために決算書にお化粧する会社です。お化粧っていうときれいな感じに聞こえると思いますが、悪い言い方をすれば粉飾決算です。これも実際によくある話です。たまに摘発されていますね。でもこれって摘発されるのはかなり一部なんですよね・・・

なぜ粉飾決算をするのかというと上場基準を満たすためというのと、より高い株価で上場するためです。そのため上場前から粉飾決算に手を染めてしまう企業があるのです。

上場基準とは上場するための基準のことで取引所ごとに定められています。例えば下記のようなこんな感じです。(一部抜粋)

監査法人や主幹事が見破れないのがおかしいと考える方もお見えでしょうが、循環取引といった手法では形式上は正規の取引と変わりませんし、必要な書類はすべて整っているため見破るのはそれほど容易なことではなかったりするのです。それを主導している上場企業まであります。さすがにどことは書けませんが(笑)

JASDAQの場合(スタンダード)

株券等の分布状況
(上場時見込み)
  1. 公募又は売出し株式数が1,000単位又は上場株式数の10%いずれか多い株式数以上
  2. 株主数 200人以上
流通株式時価総額
(上場時見込み)
5億円以上
純資産の額
(上場時見込み)
2億円以上
利益の額又は時価総額
(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)
 次のa又はbに適合すること

  1. 最近1年間の利益の額が1億円以上であること
  2. 時価総額が50億円以上

JASDAQの場合(グロース)

株券等の分布状況
(上場時見込み)
  1. 公募又は売出し株式数が1,000単位又は上場株式数の10%いずれか多い株式数以上
  2. 株主数 200人以上
流通株式時価総額
(上場時見込み)
5億円以上
純資産の額
(上場時見込み)
利益の額又は時価総額
(利益の額については、連結経常利益金額に少数株主損益を加減)

マザーズの場合

株主数
(上場時見込み)
200人以上
(上場時までに500単位以上の公募を行うこと)
流通株式
(上場時見込み)
  1. 流通株式数 2,000単位以上
  2. 流通株式時価総額 5億円以上
  3. 流通株式数(比率) 上場株券等の25%以上
時価総額
(上場時見込み)
10億円以上
事業継続年数新規上場申請日から起算して、1年前以前から取締役会を設置して継続的に事業活動をしていること
純資産の額(上場時見込み)
利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額) ー

東証二部

株主数
(上場時見込み)
800人以上
流通株式
(上場時見込み)
  1. 流通株式数 4,000単位以上
  2. 流通株式時価総額 10億円以上
  3. 流通株式数(比率)上場株券等の30%以上
時価総額
(上場時見込み)
20億円以上
事業継続年数新規上場申請日の直前事業年度の末日から起算して、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること
純資産の額(上場時見込み)連結純資産の額が10億円以上
(かつ、単体純資産の額が負でないこと)
利益の額又は時価総額 (利益の額については、連結経常利益金額)次のa又はbに適合すること

  1. 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上であること
  2. 時価総額が500億円以上

(最近1 年間における売上高が100 億円未満である場合を除く)

地雷企業を避けるためには財務分析をしよう

もちろん上記に挙げたようなのは一部の企業ですがそんなに少なくない割合であると思われます。

これらを見破るためにははやり財務分析が必要です。

ただし、それらを簡単に見破られるわけはないのです。監査法人や主幹事が見破れていないのですから。(あえて見逃しているケースも少なからずあるでしょうが・・)

それでもちょっと怪しいな・・・って地雷を避けることはできますのでそれらのポイントをいくつかご紹介しましょう。

期ごとの経営指標の変化を見る

まず、経営指標の変化を見てみましょう。これが直近で急によくなっているケースはちょっと怪しいです。

もちろん本当に良くなって上場する場合もありますので一概にはいえませんけどね。

同業他社と経営指標を比較してみる

次に同業他社と経営指標を比較してみましょう。

同業他社と比較して極端に違った経営指標がある場合はちょっと要注意ですね。

もちろんビジネスモデルが違えば同業他社でも経営指標の数字は違って当然ですからその辺りは加味する必要がありますけどね。

キャッシュフロー計算書をじっくり見る

もう一つがキャッシュ・フロー計算書をじっくり見ることです。キャッシュ・フロー計算書はお金の動きを見るもので粉飾決算がしにくいと言われています。そのため粉飾決算を見破るには最適なんです。

特に営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)に着目して損益計算書と比較してみるとよいでしょう。

キャッシュ・フロー計算書の詳しい見方は下記記事を御覧ください。

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まとめ

今回は「IPO(新規株式上場)投資に財務分析は必要なのか?」と題してIPO投資における財務分析について考えてみました。

IPO投資でも公募で当選してすぐ売るという方法やセカンダリーで短期的に儲けるのを狙うなら財務分析は必要ないでしょう。しかし、優良な企業を見つけて長期的に投資をするつもりならしっかり財務分析をすることが必要です。

実際、新規上場企業には地雷企業が多く含まれています。しっかり地雷を避けられるようにしておきたいところです。

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新規上場(IPO)前のお化粧
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