年金制度改定で老後も働いたほうがお得に??在職定時改定を解説

新型コロナウィルスの影に隠れてあまり目立っていませんが、年金制度の一部が改正されることになりそうです。

今回の改正では75歳まで年金を繰り下げることができるようになることに注目が集まっていますが、もう一つ大きな変更があります。(75歳までの繰り下げはあくまで任意です)

それは「在職定時改定」です。

ちょっとわかりにくそうな名前の制度ですね。

今回はこの在職定時改定について解説していきます。

在職時定時改定とは

本来、厚生年金は働いた分(年金を払った分)だけもらえる年金も増える仕組みとなっています。

しかし、現在の制度だと65歳以上の方が仕事をしつつ、年金をもらっている場合に、70歳時もしくは、退職して1ヶ月後のどちらか早い時期にしか年金額の計算し直しがされません。

例えば70歳まで働くとなると65歳から70歳まで納めた厚生年金分は70歳になるまでもらえる年金には反映されないということになるのです。

つまり、制度上タイムラグが生じてしまっていたのです。(老後に働くことをあまり想定していない設計となっていた。)

これはかなり損ですよね。

そのため、それを理由に老後に働くのを辞めてしまうなんてことも実際にありました。

しかし、そんな制度上の不備?が今回見直され新しい制度として「在職定時改定」が登場したのです。

毎年年金額が再計算

在職定時改定の導入が決まると65歳以上の方については、在職中であっても、年金額の改定を定時(毎年1回)に行うこととなります。

在職定時改定例

出所:厚生労働省 年金局 在職定時改定の導入より

つまり、65歳から70歳まで働くとしても年に1度年金額が再計算されますので、少しずつ年金額を増やしていくことができるようになるのです。

どれだけ年金額が増えるのか

1年間働いた場合の概算の増加額が以下のとおりです。

在職定時改定の効果

出所:出所:厚生労働省 年金局 在職定時改定の導入より

  • 月額10万円:年7000円(月500円)程度
  • 月額20万円:年13,000円(月1,100円)程度
  • 月額30万円:年20,000円(月1,600円)程度

例えば月額20万円の報酬で1年働いていた方は在職定時改定で翌年から年13,000円(月1,100円)程度年金が増えることになります。

さらに厚生年金の加入状況等によってはその他、要因によって増える可能性もあります。

今までは70歳になるまでは増えませんでしたから大きな違いですよね。

つまり、老後で働く際のプラスになる制度なのです。

在職定時改定は厚生年金の制度

ただし、ちょっと注意してほしい点があります。

在職定時改定は厚生年金の制度です。

ですから老後に自身で開業して個人事業主になったような場合には対象になりません。(自営業でも厚生年金適用事業所になれば対象)

また、今回の年金改定でかなり減りますが、厚生年金適用外の事業所に勤務する場合も対象となりませんのでご注意ください。


合わせて理解しておこう定年後の年金

在職定時改定の件を理解するのに理解しておきたいこととして定年後の年金の話があります。

いろいろな制度がありちょっとややこしいですが、損をしないためにもこの辺りの制度は網羅的に理解しておきたいところです。

在職老齢年金

まずは在職老齢年金です。

在職老齢年金とは70歳未満の人が厚生年金に加入しながら働いた場合や、70歳以上の人が厚生年金保険のある会社で働いた場合に、老齢厚生年金額と給与額(ボーナスを含む・総報酬月額相当額)に応じて老齢厚生年金額が調整される制度のことです。

つまり、年金をもらっている方が働くと年金を調整される(減らされる)制度ってことですね。

在職老齢年金について詳しくは下記記事を御覧ください。

ちなみにこちらの在職老例年金も今回の年金改正の対象となっています。

具体的には60~64歳の減額の対象となる基準が給料と年金を合わせた月収「28万円超」から「47万円超」へ引き上げられます。(国会で通れば)

高年齢雇用継続基本給付金

もう一つが高年齢雇用継続給付金です。

高年齢雇用継続基本給付金を簡単に言えば定年後働く際に給料が下がった方にその一部を援助する制度です。

定年後も給料は変わらない方もお見えですが、多くの方は嘱託になったり、肩書きが無くなったりして給料が大きく下がります。

その部分を補填してくれるイメージでしょうか。

ちょっと厄介なのが高年齢雇用継続基本給付金の申請は基本的に勤務先に手続きしてもらいます。

会社にやってもらう仕組みなのですが、こちらから言わないと対象なのを気づかれない場合が多い制度なのです

必ず自分が対象なのかを確認しておきましょう。

高年齢雇用継続給付金について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

特別支給の老齢厚生年金

最後は特別支給の老齢厚生年金です。

日本の社会保険制度はかなり複雑ですが、その中でも一番わかりにくいのがこれかもしれません(笑)

特別支給の老齢厚生年金とは簡単に言えば年金がもらえる年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に導入された暫定的な移行期間用の制度です。

年金が60歳からもらえると聞いていて老後設計してきた人がいきなり「やっぱり来年から年金は65歳から支給な」って言われたら困ってしまいますよね。

そういう方を救済するために段階的に支給年齢を引き上げることを目的とした制度なのです。

対象となるのは以下の方です。

○男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
○女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
○老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
○厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
○60歳以上であること。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

まとめ

今回は「年金制度改定で老後も働いたほうがお得に??在職定時改定を解説」と題して在職定時改定について解説してきました。

とても大きな改正となりますので老後に働くことを考えている方はぜひ理解しておきたいところですね。

ちなみに在職定時改定等の年金制度改正法案は2020年の通常国会に提出されています。

在職定時改定等はそれが通れば 2022 年 4 月 1 日施行となっています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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