企業が内部留保を抱えているのが問題・・・
そんな発言聞いたことありませんか?
有名政治家、経済評論家、経済ジャーナリストを名乗っている方さえそんな発言をよくしています。
最近も某大臣がこの手の発言をして炎上していました。
過去には現総理の高市氏も同様の発言をしています。
そんな内部留保の議論を聞いているといつも疑問に思ってしまうことがあります。
この手の発言している人「内部留保」ってなにか本当に理解しているのか?ってことです。
実際になんか見当違いなことを言っているな、簿記理解できてないだろうな・・・っ方が多いんですよ。
今回はそんな内部留保について今回は詳しく解説していきたいと思います。
内部留保とは?現金と混同すると企業を読み違える
まず押さえておきたい事実があります。
決算書に「内部留保」という勘定科目は存在しません。
法律で定義された用語でもないため、絶対的な定義もありません。
一般には、企業が稼いだ利益のうち配当などで社外に流出させず、企業内部に蓄積した部分を指し、実務上は貸借対照表(B/S)の純資産の部にある「利益剰余金」を内部留保と呼ぶ扱いが定着しています。
財務省の法人企業統計を引用した報道も、この利益剰余金ベースです。(出典:財務省「法人企業統計からみえる企業の財務指標・利益剰余金」)
利益剰余金は過去に会社がどれだけ稼いだかを示すいわば企業の履歴書です。
過去からの利益の蓄積ですから業績が良ければ増えていって当然なんですよ。
ここで、簿記を知らないと必ず引っかかるポイントがあります。
利益剰余金はB/Sの右側(純資産)の科目です。
右側は「そのお金がどこから来たか」を示す欄であって、「今それがどんな形で存在しているか」を示す欄ではありません。今どんな形かを示すのは左側(資産)です。
わかりやすいように家計にたとえます。
あなたが10年間で500万円を貯めたとします。
この「500万円貯めた」という事実が右側。
その500万円が普通預金にあるのか、投資信託になっているのか、車購入代金として消えたのかが左側です。
内部留保をめぐる誤解は、まさにこの飛躍で起きています。
貸借対照表の左右を分けると分かりやすい
貸借対照表は、会社の財産と、その調達のもとを示す決算書です。左側の資産には現預金や土地、設備など。
右側には借入金などの負債と、資本金や利益剰余金などの純資産を並べます。
| 用語 | 決算書で見る場所 | 表していること |
|---|---|---|
| 内部留保・利益剰余金 | 純資産の部 | 利益の蓄積 |
| 現金・預金 | 資産の部 | 手元にある現金や預金 |
| 借入金 | 負債の部 | 借りて調達した資金の返済義務 |
利益剰余金には、過去の利益がどれだけ積み重なったかが表れます。
しかし、それに見合う資産が現金なのか、工場なのかは、この科目だけでは判別できません。
同じ金額だからといって、左右の科目が一対一で結びつくわけでもないんですよ。
毎年の利益と積み上がった残高
例えば、配当を出さず、毎年黒字を続ける会社を考えてみてください。
毎年の利益が横ばいでも、利益剰余金の残高は増えます。
基本形は、次の式です。
期末の利益剰余金 ≒ 期首の利益剰余金 + 当期純利益 − 利益剰余金からの配当
これは説明用の式で、組織再編などによる他の増減は省略しています。
実際の増減理由は「株主資本等変動計算書」で確認できます。
「過去最高の内部留保」という見出しは、それだけで異常事態を示すものではありません。
残高が増えた理由と、その資本で何をしているか。投資家が知りたいのは、その先ですね。
内部留保は現金ではない。投資しても残る仕組み
ここからは、内部留保を分かりやすく理解するため、簡単な会社をつくってみましょう。
以下は実在企業の事例ではなく、会計の仕組みを説明する仮例です。
株主が1,000万円を出資し、会社が税引後で1,000万円を稼いだとします。
配当はゼロ。取引代金の受け払いも済み、資産は現預金2,000万円だけになった場面から始めます。
この時点で、資本金は1,000万円、利益剰余金も1,000万円です。
すでに現預金と内部留保の金額は違いますね。
土地と商品を買うと、何が減るのか
次に、事業用の土地を1,500万円、商品在庫を300万円で購入。
どちらも現金で支払い、取得時の税金・手数料や評価損などは省略します。
| 貸借対照表の項目 | 購入前 | 購入直後 |
|---|---|---|
| 現金・預金 | 2,000万円 | 200万円 |
| 土地 | 0円 | 1,500万円 |
| 商品在庫 | 0円 | 300万円 |
| 資産合計 | 2,000万円 | 2,000万円 |
| 負債 | 0円 | 0円 |
| 資本金 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 利益剰余金 | 1,000万円 | 1,000万円 |
現預金は200万円まで減りました。
それでも内部留保は1,000万円のままです。
お金が消えたのではなく、土地と商品に姿を変えたから。
この会社に対して「内部留保を1,000万円もため込んでいる。投資に回せ」と批判したらどうでしょう。
すでに事業に資金を投じたことを、見落としてしまいます。
反対の例もあります。
会社が銀行から500万円借りれば、現預金は500万円増えますが、借りただけでは利益剰余金は増えません。
手元のお金が増えることと、利益を稼ぐことも同じではないのです。
設備投資が永久に利益へ影響しないわけではない
ここは、誤解を解く側も説明を省けません。
機械や建物は、一般に購入時に資産として計上し、使用に応じて減価償却します。
減価償却とは、取得にかかった金額を期間に分けて費用にする処理のこと。土地は減価償却の対象外です。
償却費が発生すれば、他の条件が同じなら利益は小さくなります。
在庫も売れたときには売上原価に回り、売れ残って価値が下がれば評価損が生じる場合があります。
つまり、資産の購入と、費用の発生はタイミングが違うという話です。
「現金が出ていったら、その分だけ内部留保も減る」とは限りません。
逆に、内部留保が残っているからといって、その金額を明日引き出せるわけでもない。
先ほどの会社が急に大きな支払いを求められたら、資産の売却や借入れが必要になるかもしれません。
賃上げ・配当・自社株買いは内部留保にどう響く?
「それなら、内部留保を使った賃上げは無理なの?」と思うかもしれません。
ここで「賃上げはできない」と答えるのも、話を飛ばしています。
賃金の支払いには現金が必要です。
その資金を確保できるかと、賃上げが利益剰余金にどう反映されるかは、分けて考えましょう。
「賃上げに回せ」がかみ合わない理由
よく聞く主張です。
心情としては理解できますが、会計処理としては噛み合っていません。
費用になる給与を増やせば、他の条件が同じなら当期の利益は減ります。
その結果、賃上げをした翌期以降、利益剰余金の「増え方」が鈍るだけです。
内部留保そのものが減るのは、賃上げによって当期が赤字になった場合に限られます。
赤字になるまで賃上げしろ、というのが本当に望ましい政策なのか。
私が株主なら、そういう会社には投資しません。
つまり、「内部留保を取り崩して賃上げ」という表現は、ストックとフローを取り違えています。
言いたいことが「利益をもっと人件費に配分せよ」なら、そう言えば済む話です。
実際、その主張自体は議論に値します。
わかりすいように事例で説明しましょう。
期首の利益剰余金が1,000万円の会社を例にします。
配当やその他の変動はなく、賃上げなどによって税引後利益が100万円から70万円に減ったと仮定しましょう。
| 比較するケース | 当期純利益 | 期末の利益剰余金 |
|---|---|---|
| 賃上げ前の計画 | 100万円 | 1,100万円 |
| 賃上げを反映した計画 | 70万円 | 1,070万円 |
給与増加額と税引後利益の減少額が同額という意味ではありません。
賃上げ後も、内部留保は前年より70万円増えています。
ただし、賃上げをしない場合より30万円少ない残高です。
これが「残高が減る」と「増えるペースが鈍る」の違い。
内部留保が増えている会社でも、賃上げをしている可能性はあります。
一方、「賃上げをしても内部留保には関係ない」と断言するのも不正確。
利益を通じた影響まで消してしまうからです。
では内部留保はどうすれば減るのか
利益剰余金をダイレクトに減らす方法は、主に配当です。
配当を出せば、その分だけ利益剰余金が減り、同時に現預金も減ります。
自社株買いも同様に純資産を圧縮します。(取得自体では直接減らさず、自己株式として株主資本を控除する)
ここに、内部留保批判の皮肉があります。
内部留保を減らせと言うと、企業が取れる最も効率的な手段は増配と自社株買いです。
そして、その恩恵を受けるのは株主です。
労働者に還元させるつもりの政策が、結果として資本を持つ人にお金を流す。
トマ・ピケティが指摘した資本収益率と経済成長率の関係を思い出すと、格差はむしろ広がりかねません。
内部留保が過去最高の654兆円という数字から分からないこと
2026年9月1日公表の法人企業統計では、2025年度の利益剰余金は654兆8,228億円でした。
対象は金融業・保険業を除く全産業です。
| 年度 | 利益剰余金の残高 |
|---|---|
| 2023年度 | 600兆9,857億円 |
| 2024年度 | 637兆5,316億円 |
| 2025年度 | 654兆8,228億円 |
アベノミクスが始まった2013年度の約328兆円からは2倍近い水準で、増えていっています。
数字だけ見れば、確かに膨らんでいます。批判したくなる気持ちも分かります。
ただ、これは現金残高でも、自由に配れる資金でもありません。
内部留保と設備投資は同時に増えている
同じ調査によると、2025年度の設備投資は57兆8,999億円。
ソフトウェアを含み、金融業・保険業を除いた金額です。前年比4.3%増で、比較可能な2001年度以降の最高額でした。
内部留保が増える一方で、設備投資も増えている。
この二つは、会計上も実際の統計上も両立します。
ただし、これで日本企業の投資は十分だと証明できるわけではありません。
設備投資額は名目値であり、物価の影響も受けます。
必要な投資額や投資の成果も、この数字だけでは分からないためです。
この統計から直接確認できるのは、「内部留保が増えたから、企業は投資していない」という説明が成り立たないこと。
十分か、不十分かを論じるには、追加の材料が必要になります。
「内部留保のうち何割が現金」という説明にも注意
利益剰余金と現預金の金額を並べ、割り算をすることはできます。
ただし、それだけで内部留保の使い道を特定できるわけではありません。
現預金には借入れで調達したものもありますし、資産は出資や過去の利益なども合わせて支えられています。
貸借対照表の左右を、特定の資金ごとに色分けすることはできないのです。
さらに、法人企業統計は法人単体の数値を集めた統計です。
海外子会社までまとめた連結決算の数字と、そのまま混ぜて比較しないようにしてください。
全企業の合計を、特定の会社の賃上げ余力に置き換えることもできません。
読んだニュースの数字は、いつの、どの企業を対象にしたものなのか。
金額の大きさに驚く前に、この条件を確かめたいですね。
内部留保課税の議論で、私が引っかかるところ
私は以前、テレビで有名政治家と経済評論家が内部留保と給料を結びつけて話すのを見て、違和感を覚えました。
企業にお金があるという印象と、決算書で確認できる事実の間に、飛躍を感じたんですよ。
賃上げしてほしいという気持ちは理解できます。
引っかかったのは、内部留保の残高を、そのまま使えるお金のように扱う説明でした。
土地や設備に資金を投じた会社も、同じ数字で批判されてしまうからです。
政治家や評論家が内部留保を「余った現金」と決めつけ、そこに課税すれば解決すると訴える。
そんな説明なら、簿記の基本を理解していないと指摘されても仕方ありません。
内部留保の残高では、経営者の仕事は採点できない。
私はこの点を外した議論に賛成できません。
企業を批判するなら、実際の資金配分や経営判断を見て批判したいのです。
課税対象が何かで、企業の対応は変わる
ただし、課税を提案する人が全員、内部留保を誤解しているとも断定できません。
制度の対象や控除を見ずに、一括して片づけるのも雑な議論です。
例えば、課税対象を変えるだけで、次のように論点も変わります。
| 課税対象として想定するもの | 確認すべき論点 |
|---|---|
| 利益剰余金の累積残高 | 投資済みの企業の納税資金をどう考えるか |
| 現預金の残高 | 運転資金や借入金で増えた分をどう扱うか |
| 一定期間の利益の留保額 | 配当や投資・賃上げにどんな控除を設けるか |
これは特定の政策案の要約ではなく、議論を点検するための整理です。
私が懸念するのは、投資や雇用を増やす目的と、税の仕組みがかみ合わない設計。
仮に投資済みの利益剰余金にも課税するなら、企業は納税用の現金を別に確保しなければなりません。
また、利益剰余金からの配当で課税対象を減らせる設計なら、賃上げより配当を選ぶ誘因も考えられます。
いずれも制度次第の可能性であり、「課税すれば給料に回る」と自動的には決まりません。
二重課税の指摘
利益剰余金は、基本的に税引後利益の蓄積です。
そこにもう一度課税すれば、二重課税になります。
参考までに、東京都で資本金1億円超の法人の法定実効税率は2018年4月以降30.62%で推移してきました。
2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、法人税額の4%を課す防衛特別法人税(基礎控除年500万円)が加わり、実効税率はさらに0.7〜0.8ポイント程度上がる見込みです。
つまり、利益の3割強はすでに税として納められた後にさらに課税しようとしているってことなんですよ。
内部留保課税はすでに存在している
意外に知られていませんが、日本には内部留保に課税する制度がすでにあります。法
人税法第67条の「特定同族会社の留保金課税」です。
- 対象:原則として資本金1億円超の特定同族会社(資本金5億円以上の大法人の完全支配下にある会社は、資本金1億円以下でも対象)
- 課税留保金額=留保金額-留保控除額
- 留保控除額:所得基準額(所得等の40%)、定額基準額(年2,000万円)、利益積立金基準額のうち最も多い額
- 税率:3,000万円以下の部分10%、3,000万円超1億円以下15%、1億円超20%
(出典:法人税法第67条、国税庁タックスアンサー「特定同族会社の特別税率」)
オーナー社長が配当を出さずに会社へ利益を貯め、個人の所得税を回避することを防ぐ制度です。
平成19年度税制改正で資本金1億円以下の法人が対象外となったため、実際の対象法人はごく限られています。
新しく内部留保課税を作ろうという議論をする前に、既存のこの制度がどこまで機能しているかを検証するのが筋ではないでしょうか。
経営者に求めたいのは、資本をどう生かすかの説明
東京証券取引所は2026年4月、資本コストや株価を意識した経営の要請を更新しました。
成長投資、適正な手元資金、株主還元の優先順位を検討し、資本の配分方針を説明するよう求めています。
私が知りたいのも、「内部留保は現金ではない」という説明の先です。
どの事業へ投資し、どんな成果を目指すのか。手元資金はいくら必要なのか。
投資先が乏しいなら、株主還元をどう考えるのか。これなら会社ごとの説明を比べられますね。
利益剰余金が同じ二社でも、設備の稼働率や売上の伸び、資金の回収状況が違えば、評価は変わるはずです。
内部留保の多さは調べるきっかけにはなっても、その会社を買う理由までは与えてくれません。
ただし、この点検だけで株価上昇は予測できません。
内部留保が厚くても業績悪化や割高な株価で損失は生じますし、現金の多さだけで増配も約束されません。
短期売買のタイミングや、単一指標で買い銘柄を決めたい人には向かない方法です。
内部留保を減らせばよい、という議論では企業の仕事は見えません。
残した資本が、将来の稼ぐ力につながっているか。
投資家として内部留保をどう読むか
ここからは実践編です。
個人投資家として、内部留保をどう使えばいいのか。
右側と左側をセットで見る
決算短信のB/Sを開いて、以下2つを並べます。
- 純資産の部の「利益剰余金」
- 資産の部の「現金及び預金」
前掲のマトリクスのどこに位置するかを確認します。
利益剰余金が厚いのに現預金が薄い企業は、稼いだ利益を投資に回している可能性が高い。
その投資先が何なのかを、固定資産の内訳で追いかけていきます。
稼ぐ力とセットで見る
利益剰余金が厚いだけでは評価できません。
ROE(自己資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)を確認し、その厚い自己資本がリターンを生んでいるかを見ます。
東証がPBR1倍割れ企業に改善を求めた背景にも、この構造があります。
厚い純資産が低いROEを生み、低いROEが低いPBRを生む。
株主還元による純資産の圧縮が求められているのは、そのためです。
業種で相場観を持つ
内部留保の適正水準は業種で大きく違います。
設備が重い製造業と、身軽なサービス業を同じ物差しで比べても意味がありません。
同業他社と並べて初めて、厚いか薄いかが判断できます。
この見方が向かない人・注意点
正直に限界も書いておきます。
利益剰余金は取得原価ベースの積み上げなので、含み損益は反映されません。
バブル期に買った土地を持つ企業は、簿価と時価が大きくかい離しています。B/Sの数字だけで企業価値を判断するのは危険です。
また、この分析は個別株投資を前提としています。
投資信託やETFで分散投資をしている方が、構成銘柄の内部留保をいちいち追う必要はありません。時間対効果に合いません。
短期売買をされる方にとっても、内部留保はほぼ役に立ちません。
株価が短期的に動くのはニュースと需給であって、B/Sの厚みではないからです。
よくある質問
- 内部留保と利益剰余金は同じ意味ですか?
-
一般的な内部留保の議論では、利益剰余金の残高を指します。
ただし、内部留保には当期に社内へ残した利益を指す使い方もあります。
「今年の増加額」なのか「過去からの累積残高」なのか、資料の定義を確かめてください。
- 内部留保が多い会社は倒産しませんか?
-
倒産しないとは限りません。
利益剰余金が多くても、資産が設備や回収できない売掛金に偏ると、支払いに必要な現金が不足する場合があります。
現預金だけでなく、借入金の返済期限や営業キャッシュフローも併せて確認してください。
- 内部留保を取り崩して賃上げすることは可能ですか?
-
通常は給与を費用に計上し、当期利益を通じて利益剰余金に影響します。
ですから賃上げ余力の話と内部留保の話は全く別物と考えるべきでしょう。
- 内部留保と現金・預金はどう違うのですか?
-
利益剰余金(内部留保)は貸借対照表の右側にあり、過去の利益の蓄積を示します。
現金及び預金は左側にあり、今どんな形で資産を持っているかを示します。
利益を全額設備投資に回せば、内部留保は残ったまま現預金はゼロになります。両者は別物です。
- 内部留保が多い企業の株は買いですか?
-
一概には言えません。
内部留保が厚くても、それが稼ぎを生んでいなければROEは低くなり、株価は評価されにくくなります。
利益剰余金の額そのものではなく、ROEやROAとセットで見てください。
同業他社と比較することも欠かせません。
まとめ
内部留保について押さえるべきポイントを整理します。
- 決算書に「内部留保」という科目はなく、実務上は利益剰余金を指す
- 内部留保はB/Sの右側。今それが何の形になっているかは左側を見ないと分からない
- 設備投資をしても給料を上げても、内部留保はほぼ減らない。減らす主な手段は配当と自社株買い
- 内部留保課税は、投資済みで現金のない企業を最も強く罰する
- 資本金1億円超の特定同族会社には、すでに留保金課税が存在する
一度この見方を身につけると、ニュースで「内部留保」という言葉が出てきた瞬間、その発言が何を指しているのか分かるようになります。
私がこの記事を書き直したのは、内部留保課税に賛成か反対かを主張したかったからではありません。
議論の前提となる言葉の定義がずれたまま何年も同じ論争がくり返されている状況が、もったいないと感じているからです。
言葉の意味が共有されていれば、賛成でも反対でも、もっと実りのある議論ができます。
お金の知識は、そういう場面でこそ効いてきます。
内部留保をよくわかっていない政治家の方は簿記の勉強から始めることをおすすめします。


