新型コロナウィルスの影響による経済危機に対応するために導入されていた税金の支払いを猶予する「納税の猶予制度の特例」の適用状況が国税庁より発表されました。
この制度、想像以上に使われており、延長もなしとなっていますので今後この負担が大きくなってきそうな予感があります。
今回は納税猶予制度の特例の適用状況について見ていきましょう。
納税の猶予制度の特例とは
まずは今回の話の前提となる納税の猶予制度の特例について見ていきましょう。
各種税金には納税の猶予という制度はありましたが、新型コロナウィルス感染症の影響が大きいため、特例措置が設けられることになりました。それが「納税の猶予制度の特例」です。
具体的には以下の通りの制度となります。
1年間の納税が猶予される
通常、法人税、消費税なら事業年度終了から2ヶ月以内、所得税なら3月15日、固定資産税なら4~6月で自治体が定める日を納付期限とされています。
しかし、納税が厳しい方が一定の手続きを踏むと1年間の納税猶予となります。
つまり、1年間納めるのを後にしても良いよってことです。
1年間納めるはずのお金が自由に使えますのでかなり資金繰りが楽になるはず。
逆に言えば納税の猶予制度の特例を受けても1年後には納税しなくてはならないというわけです。
対象の税金
対象となる税金は以下のとおりです。
猶予の特例を受けるための条件
納税の猶予の特例を受けるためには以下の2つの条件をいずれも満たす必要があります。なお、個⼈法⼈の別、規模は問われません。
一時的に納税を行うことが困難という判断は少なくとも向こう半年間の事業資⾦を考慮に⼊れるなど、申請される⽅の置かれた状況に配慮し適切に対応しますとのことです。
この制度は事業者向けのものとなっていますが、Q&Aによるとパートやアルバイトの方など給与所得者の方でも、確定申告により納税をされる⽅は、上記の要件を満たせば特例の対象になるとのことです。
延滞税の扱い
今までの納税の猶予制度は延滞税は軽減されるものの年1.0%(令和3年)が課せられていました。
しかし、特例については延滞税は免除とされています。
担保の扱い
今までの納税の猶予制度は原則として担保の提供を要求されていました。
しかし、今回の特例については担保は不要とされています。
つまり、担保も延滞税もなく税金の支払いを1年間待ってくれていたということですね。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
納税の猶予制度の特例の適用状況
それではどれだけ納税の猶予制度の特例が使われていたのでしょう?
個人的には予想以上に多くてびっくりしましたね。
適用された件数・税額
適用された件数と税額は以下のとおりです。
出典:国税庁 納税の猶予制度の特例の適用状況より
特例の納税猶予が適用されたのは32万2,801件、税額が1兆5,176億円でした。
特例の納税猶予が始まる前は41,871件、税額が694億円でしたから、件数で8倍近く、税額で22倍近くとなっています。
それだけ新型コロナの影響が大きかったともいえます。
税目別の適用件数
税目別(税額)でみると以下のとおりです。
出典:国税庁 納税の猶予制度の特例の適用状況より
最も多かったのが消費税で9,059億円で全体の6割近くを占めます。
消費税は消費者からの預かり金という性質が大きいのですが、赤字でも納付が必要で金額も大きくなるため延滞でもいつもトップなんですよね。
次点が法人税で4,361億円で約3割です。
こちらは黒字の場合にかかってくる税金ですが、かなり多くの金額が納税猶予されているのがわかります。
納税猶予制度の特例は延長されない
現在の新型コロナウイルスは猛威を奮っていますし、3回目の緊急事態宣言がでて多くの企業が苦しんでいます。
しかし、今回ご紹介した納税猶予制度の特例は以下の通り延長されていません。
令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行により創設された「納税の猶予の特例(特例猶予)」は、申請期限である令和3年2月1日をもって終了いたしました。
出典:国税庁 新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へより
倒産が増えるかも・・・
昨年は新型コロナウィルスが蔓延して企業業績が悪かった企業は多かったのですが、この猶予制度の特例や雇用調整助成金や実質無利子、無担保の融資などの資金繰り支援など様々な支援が功を奏して倒産件数はそれほど多くありませんでした。
しかし、実質無利子、無担保の融資の返済が始まったり、猶予制度の特例がなくなることで一気に倒産が増えてしまう可能性も高そうです・・・
納税猶予制度の特例がなくなったことで、昨年猶予された1.5兆円の税金と次の年の税金が一気に払わないといけなくなる企業も多いんですよ。
通常の猶予制度は使える
なお、納税の猶予制度の特例は延長されませんでしたが、通常の納税猶予制度は利用が可能です。
対象となる方で資金繰りが厳しい方は最寄りの税務署にご相談してみてください。
納税猶予の適用が受けられる条件は以下の通り
- 国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難 にするおそれがあると認められること。
- 納税について誠実な意思を有すると認められること。
- 猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと。
- 納付すべき国税の納期限から6か月以内に申請書が提出されてい ること。
納税の猶予制度の特例と違って具体的な基準があるわけではありませんので、税務署判断ということになりますね。
こちらも1年間の納税猶予となります。
担保は不要です。
ただし、特例と違い延滞税は免除ではなく軽減です。
通常の延滞税は年8.8%ですが、猶予制度を使った場合の延滞税は年1%(令和3年)と軽減されます。
まとめ
今回は「納税猶予制度が1.5兆円利用されていた。延長なし決定で本当の経済危機はこれから訪れるのか?」と題して納税猶予制度の特例の利用状況を見てきました。
かなり多くの納税猶予の特例が使われていたんですね。
国からしてもそれだけ税金が入ってこなかったという・・・
ですから延長なしはやもえないのかなとも思いますが、今後の経済状況はちょっと心配です・・・
1兆円以上の予算がついて大きな話題となっている事業再構築補助金などの募集も始まっていますが、それよりも納税猶予を含めなんらからの支援策のほうが必要な気がしていますね・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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