法人税、所得税、消費税、住民税等の納税猶予の特例についてわかりやすく解説

新型コロナウィルスの感染が広がったことにより経済に大きなダメージを与えています。

それを少しでも緩和するために様々な制度が導入されはじめました。

その中でも特に即効性が高そうなのが今回ご紹介する国税、地方税、社会保険等の納税猶予制度です。

利用できる条件もあり少々ややこしいところもありますので今回は国税、地方税、社会保険等の納税猶予制度についてわかりやすく解説していきます。

なお、今回ご紹介する制度は閣議決定の段階です。

これから国会で承認されるまで多少内容が変わる可能性がありますのでご注意ください。

税金の猶予の特例

元々、税金には納税の猶予という制度はありましたが、今回の新型コロナウィルス感染症の影響が大きいため、特例措置が設けられることになりました。

※納税猶予制度の特例は申請期限である令和3年2月1日をもって終了いたしました。

利用状況等はこちらの記事を御覧ください。

納税の猶予が受けられると

通常、法人税、消費税なら事業年度終了から2ヶ月以内、所得税なら3月15日、固定資産税なら4~6月で自治体が定める日を納付期限とされています。

しかし、納税が厳しい方が手続きを踏むと1年間の納税猶予となります。

1年間納めるはずのお金が自由に使えますのでかなり資金繰りが楽になるはずです。

リスクなくお金を他に回せますし、すぐできますので新型コロナウィルスで大きく売上を落とした個人事業主に100万円、中小企業に200万円を現金支給する持続化給付金や実質無利息無担保で貸してくれる新型コロナウィルス感染症特別貸付よりも即効性がありますね。

対象の税金

対象となる税金は以下のとおりです。

法人税、消費税、所得税、個人住民税、地方法人税、固定資産税などほぼ全ての税金
ただし、印紙税は対象外のようです。

猶予の特例を受けるための条件

納税の猶予の特例を受けるためには以下の2つの条件をいずれも満たす必要があります。なお、個⼈法⼈の別、規模は問われません。

新型コロナウイルスの影響により、 令和2年 2 ⽉以降の任意の期間(1か⽉以上)において、事業等に係る収⼊が前年同期に⽐べて概ね20%以上減少していること。
⼀時に納税を⾏うことが困難であること。

一時的に納税を行うことが困難という判断は少なくとも向こう半年間の事業資⾦を考慮に⼊れるなど、申請される⽅の置かれた状況に配慮し適切に対応しますとのことです。

この制度は事業者向けのものとなっていますが、Q&Aによるとパートやアルバイトの方など給与所得者の方でも、確定申告により納税をされる⽅は、上記の要件を満たせば特例の対象になるとのことです。

延滞税の扱い

今までの納税の猶予制度は延滞税は軽減されるものの年1.6%が課せられていました。

しかし、今回の特例については延滞税は免除とされています。

これは嬉しいところですね。

担保の扱い

今までの納税の猶予制度は原則として担保の提供を要求されていました。

しかし、今回の特例については担保は不要とされています。

これもかなりありがたいところです。

納税猶予の特例を受けるための手続き

基本的に関係法令の施⾏から2か⽉後、⼜は、納期限(申告納付期限が延⻑された場合 は延⻑後の期限)のいずれか遅い⽇までに申請が必要です。

申請書は準備中とのことでまだ公開されていません。

収⼊や現預⾦の状況が分かる資料を提出していただきますが、提出が難しい場合は⼝頭により伺いますとのこと。

納付の猶予制度

収入が20%以上減少していないなど上記の特例の対象とならない場合でも以下の個別の事情となる場合は納税の猶予が認められることがあります。

①災害により財産に相当な損失が生じた場合
新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより 備品や棚卸資産を廃棄した場合
②ご本人又はご家族が病気にかかった場合
納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった場合、国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用
③事業を廃止し、又は休止した場合
納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
④事業に著しい損失を受けた場合
納税者が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、 国税を一時に納付できない額のうち、受けた損失額に相当する金額

詳しくは法人税、所得税、消費税などの国税は最寄りの税務署、住民税など地方税は都道府県や市の税務課等にご相談ください。


社会保険の猶予制度

次は社会保険の猶予制度について見ていきましょう。

まずは厚生年金保険料等です。

こちらは主に事業者向けのものですね。

納税の猶予等が受けられると

社会保険の場合には税金のように1年まるまると猶予となるわけではありません。

(そもそも従業員の給料からは半分徴収していますしね)

しかし、下記の優遇措置を受けることができます。

  • 猶予された金額を猶予期間中に各月に分割して納付することになります。(原則1年の範囲内で完納)
  • 財産の差押えや換価(売却等現金化)が猶予されます。
  • 猶予期間中の延滞金が一部免除されます。

逆に言えば手続き等をせず、納めないと財産の差し押さえなどをされてしまうってことですね。

対象

対象となるのは厚生年金等です。なお、健康保険にも管轄が違いますが同様の制度があります。

なお、問い合わせ先や相談先は厚生年金は年金事務所、健康保険は加入している協会や組合と異なっていますのでご注意ください。

健康保険の加入している団体の調べ方や違いはこちらの記事を御覧ください。

猶予等を受けるための条件

納付猶予を受けるためには管轄の年金事務所を経由して地方(支)局長へ申請することにより、納付の猶予が認められる必要があります。

条件は税金とほぼ同じです。

以下のいずれかに該当している必要があります。

①財産について災害を受け、または盗難にあったこと
②事業主またはその生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと
③事業を廃止し、または休止したこと
④事業について著しい損失を受けたこと

猶予を受けるための手続き

猶予を受けるためには管轄の年金事務所に「換価の猶予申請書」もしくは「納付の猶予申請書」の提出が必要です。

また、原則として担保の提供が必要となります。

詳細は最寄りの年金事務所、加入している健康保険組合、協会けんぽなどにお尋ねください。

国民健康保険等の取り扱い

また、国民健康保険、後期高齢者医療費制度、介護保険も特別な理由がある者については、条例等の定めるところにより、 保険者の判断で、保険料(税)の徴収猶予を行うことが可能とされています。

国民健康保険はお住まいの市区町村の国民健康保険担当課、後期高齢者医療費制度はお住まいの市区町村の後期高齢者医療担当課、介護保険はお住まいの市区町村の介護保険担当課にご相談ください。

なお、国民健康保険制度には減免制度がありますのでこちらも該当しないのか確認しておくとよいでしょう。



電気・ガス料金の支払い猶予

電気・ガス料金の支払い猶予もあります。

ただし、これは国が要請をしたレベルですので事業者次第のところはあります。

詳しくは利用している電気会社、ガス会社にお尋ねください。

条件

個人又は企業にかかわらず、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、電気・ガス料金の支払いに困難な事情がある方に対しては、 その置かれた状況に配慮し、料金の未払いによる供給停止の猶予など、電気・ガス料金の支払いの猶予について、柔軟な対応を行う

とされています。

また、下記の緊急小口資金又は総合支援資金の貸付を受けた方又は受けようとする方については、託送料金等の支払期日を1ヶ月繰り延べる等の措置を講じられています。

まとめ

今回は「国税、地方税、社会保険等の納税猶予の特例についてわかりやすく解説」と題して納税猶予制度についてみてきました。

新型コロナウィルス感染症対策でたくさんの経済対策がでていますが、これと欠損金の繰戻し還付制度が一番即効性がある気がしますね。

今回ご紹介した納税猶予以外にも新型コロナウィルス対策として様々な制度が始まっています。

これらをうまく使ってこの難局を乗り切りたいですね。

●国民一人当たり10万円を給付する「特別定額給付金
●売上が半減した中小企業等に最大200万、個人事業主に100万円を支給する「持続化給付金
●休業している方を失業とみなして失業保険を支払う「みなし失業
●家賃の3分の2を半年分補助「特別家賃支援給付金
●原則3ヶ月、最大9ヶ月、 家賃相当額を自治体から家主さんに支給する「住宅確保給付金
●住民税の全部または一部の納付を免除してくれる制度です。「住民税の減免制度
●国民健康保険を安くすることが出来る「国民健康保険の減免制度
●税金や社会保険の支払いを遅くすることが出来る「税金等の納税猶予制度
●国民年金保険料を減免できる「国民年金減免制度
●学生に最大20万円を給付する「学生支援緊急給付金

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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