かなり珍しいマニュアル制作の専業の会社で滝川クリステルさんのテレビCMで知名度もあった「グレイステクノロジー」が粉飾決算により上場廃止の危機となっています。
2021年3月期なんかは売上1,812,258千円のうち994,280千円が架空という半分近い粉飾で衝撃的な内容でした。
こんなのでも東証一部上場企業なんですよね・・・
今回は粉飾の手口が1月14日付けで公開されたのもあり、グレイステクノロジーの粉飾の予兆はあったのか?について考えてみたいと思います。
結論としては見抜けないことはなかったですね。
グレイステクノロジーの粉飾の手口
まずはグレイステクノロジーの粉飾の手口について確認していきましょう。
なお、ソースはグレイステクノロジーのが公開した以下の資料です。
>>特別調査委員会による調査の継続、2022年3月期第2四半期報告書の提出遅延及び 当社株式の監理銘柄(確認中)指定の見込みに関するお知らせ
通常の粉飾決算と異なりかなり巧妙なやり方をしています。
そのため、キャッシュフロー計算書等だけではなかなか判別できませんでしたね。
具体的な手法は以下のとおり。
①架空売上を計上し、その架空取引に係る売掛金を当社役職員の自己資金を用いて仮装入金等していたこと、
②売上の前倒計上をしていたこと、
③利益操作目的で架空外注費を計上していたこと、
④前記①ないし③を実現する手段として偽装工作している状況が多数発見されたとの報告を受けております。出典:グレイステクノロジー 特別調査委員会による調査の継続、2022年3月期第2四半期報告書の提出遅延及び 当社株式の監理銘柄(確認中)指定の見込みに関するお知らせ より
架空売上を計上し役職者が自己資金で仮想入金
まず、粉飾決算でよく使われる単なる循環取引等による売上水増しではなく、架空売上を計上した上で「役職員の自己資金を用いて仮装入金等」をしていたというのがポイントです。
おそらく知り合いの会社か、実態のない会社との取引を装って売上を計上。
その売上代金(売掛金)を粉飾決算の首謀者(役職員)が自分のお金で入金をしてわからないようにしていたのです。
単に架空売上計上するだけなら売掛金が滞留して監査法人にもバレてしまうのでそれをごまかすために自ら?のお金で入金をしていたのでしょう。
こうするとお金の動きは出てきますので分かりづらくなるのは確かですね。
しかし、自分でお金を入れてまで粉飾決算ってってなぜそこまでする必要があるのか意味がわからない方も多いかもしれません。
これは株価対策(大株主が役職員)や上場条件のクリア、対金融機関対策などいろいろ考えられます。
詳しくはこちらの記事でまとめております。
なお、本方法による売上の粉飾数字は以下の通りかなり大きいものとなっています。
だんだんエスカレートしてきたことが分かりますね。
出典:グレイステクノロジー 特別調査委員会による調査の継続、2022年3月期第2四半期報告書の提出遅延及び 当社株式の監理銘柄(確認中)指定の見込みに関するお知らせ より
特に2021年3月期は売上1,812,258千円のうち994,280千円が架空という売上の半分近くが架空という衝撃的なものとなっています。
売上の前倒計上
②の売上の前倒計上はよくある手法ですね。
まだ完成していない、納品していない分の売上を先に計上しちゃうってことです。
ただ、これは次期以降の売上を先に計上しているだけですからその期の売上を減らしてしまうことになるんですけどね。
こちらの金額は精査中とのこと。
架空外注費を計上
架空売上だけ計上してしまうと利益率が大きくなってしまいます。
その辻褄をあわせるためなのか架空外注費もあげていたとのこと。
もしかしたら、前述の役職員の入金の原資を作るためだったのかもしれません。
架空外注費の支払いが回り回って役職員に入ってそれを架空売上の売掛金の入金に使っていたってことですね。
こちらもまだ金額は精査中とのことですからそこまでは断定できませんが・・・
ただし、後述するように利益率などで傾向はでてしまっていますので架空外注費の計上はそれほど金額は大きくなかったと推測します。
グレイステクノロジーの粉飾決算の予兆は出ていた
それではこの粉飾決算を事前に見抜くことはできたのでしょうか?
前述のように2018年3月期から粉飾決算は本格化したようですのでその辺りの情報から確認していきましょう。
グレイステクノロジーの株価
まずはグレイステクノロジーの株価推移です。
出典:ヤフーファイナンス グレイステクノロジー
上記のように右肩上がりで株価は上がり、最高値では4,235円までいっています。
上場時からすれば20倍近くです。
その後、粉飾決算の疑いで四半期決算発表が延期され、下がり続け2022年1月19日には80円まで落ちています。
これからも更に落ちる可能性が高そう・・・
発表されていたグレイステクノロジーの経営成績は抜群だった
発表されていたグレイステクノロジーの経営成績は抜群でした。
売上も利益も右肩上がりだったんですよ。
数字だけを表面的にみれば投資したくなるのもわかる状況となっています。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください、
単位:百万円 | 18/3 | 19/3 | 20/3 | 21/3 |
売上高 | 1,314 | 1,524 | 1,903 | 2,691 |
営業利益 | 418 | 575 | 953 | 1,164 |
経常利益 | 413 | 573 | 947 | 1,177 |
当期純利益 | 278 | 375 | 659 | 1,076 |
財政状態もCFも問題なし
また、財政状態もCFも表面的に見るだけだと問題が見当たりません。
むしろ良好な会社に見えます。(あとでよく見るとちょっとおかしな点もありますが、その時点では気づきにくいです)
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください、
単位:百万円 | 18/3 | 19/3 | 20/3 | 21/3 |
総資産 | 1,586 | 1,842 | 2,762 | 6,366 |
純資産 | 1,124 | 1,454 | 2,237 | 2,922 |
営業CF | 180 | 283 | 361 | 1,290 |
投資CF | -30 | -8 | -111 | -372 |
財務CF | -63 | -91 | 76 | 1,100 |
CF期末残高 | 1,130 | 1,314 | 1,641 | 3,677 |
フリーキャッシュフローも常にプラスでこの数字を見るだけなら上手く行っている会社にみえてしまいます。
中国恒大集団などはフリーキャッシュフローでやばいと分かりましたが・・・
会長が株を売却
まず一つ目が会長が株を売っていることです。
市場外で962,100株(6.78%)もの株を令和2年8月18日に創業者で会長だった松村氏がゴールドサックス証券株式会社に売却しているのです。
もしかしたらこの売りぬいて得た金額を売掛金に入金をしていたのかもしれません。
1株4,369円とかなり高値で売り抜けています。(株式分割前の話)
ゴールドサックス証券株式会社は見事に騙されていたということになりますね・・・
この手の役職員の株売却や退職は危険信号の一つですね。
売上総利益率、営業利益率が異様に高くなっている
また、今回のケースはかなり巧妙に粉飾をしていますが、それでも数字に一部現れています。
まず、売上総利益率や営業利益率が異様に高くなっているのです。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください、
18/3 | 19/3 | 20/3 | 21/3 | |
売上総利益率 | 68.4% | 70.5% | 79.5% | 87.4% |
営業利益率 | 31.8% | 37.8% | 50.1% | 55.4% |
かなり右肩上がりで売上総利益率や営業利益率が増えています。
上場したばかりの15/3なんかを見ると売上総利益率65.3%、営業利益率16.8%です。
ちょっと異常な伸び方ですね。
商売を変えたならわからないでもないですが、ちょっと不自然です。
決算発表をみてもその理由や理屈はあまり説明されていませんでした。
20/3月以降は営業利益率50%超えです。
そんな企業は殆どありません。
オービックやキーエンスなど一部はありますがかなり目立つ存在です。
むしろグレイステクノロジーはテレビCM打ちまくっていた時期ですがから、営業利益率は落ちても不思議ではないはずなんですけどね・・・・(広告費の影響)
結局は架空売上分で利益率が上がってしまったということなのでしょう。
売掛債権回転期間が倍増
もう一つ数字に現れています。
「売掛債権回転期間」です。
売掛債権回転期間は粉飾決算を見破る際の定番なんですよ笑
売掛債権回転期間は売掛金がどれだけの期間で回収できていたのかを示す指標で、これを見れば売掛金の回収具合や滞留具合がわかってきます。
架空売上を計上する際には
粉飾決算でよくある循環取引でもここに兆候が現れやすい傾向にあります。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
グレイステクノロジーも「売掛債権回転期間」にちょっとおかしな予兆が見て取れました。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください、
18/3 | 19/3 | 20/3 | 21/3 | |
売掛債権回転期間 | 3.2月 | 3.4月 | 5.3月 | 1.2月 |
売掛債権回転期間は従来2月前後だったのが、粉飾を大掛かりにはじめた18/3から大きくなっています。
20/3では5.3月とかなり高い数字となってしまっています。
さらに21/3の第2四半期では8.6月まで上昇しています。
21/3では1.2月と最終的に小さくなったのは前述の「役職員の自己資金を用いて仮装入金等」を行ったのがこの時期なのでしょう。
ここからは勝手な想像ですが、監査法人からこの時期にこの売掛金はどうなっていると追求されていて、仮装入金を思いつきその原資として株を売却したのかもしれませんね。
まとめ
今回は「グレイステクノロジーの粉飾決算の予兆はあった。知っておきたい粉飾決算の見分け方」と題してグレイステクノロジーの粉飾決算についてみてきました。
グレイステクノロジーは表面上の数字だけを軽くみるだけだとかなり業績の良い会社に写ります。
しかし、このような大きな粉飾をしており、実態はぜんぜん違うという状況だったのです。
このあたりは個別株の大きなリスクですね。
個別の会社に投資をするなら最低限の粉飾決算の定点観測チェックはしておきたいですね。
詳しくはこちらを御覧ください。
また、グレイステクノロジーはおそらく上場廃止になる可能性が高いですが、そのまま持ち続けるとどうなるのでしょう?
上場廃止後の株の扱いについてはこちらの記事を御覧ください。
お知らせ:You Tubeはじめました。
You Tube「お金に生きるチャンネル」をはじめました。
You Tubeでも少しでも皆様のお役に立てる動画を定期的に発信していきますのでチャンネル登録をぜひよろしくお願いいたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「シェア」、「いいね」、「フォロー」してくれるとうれしいです