今回は読者様よりリクエストをいただきましたので大きな話題となっている中国恒大集団の問題を解説してみます。
中国発のリーマン・ショックパート2になるのでは?なんて懸念も聞かれますね・・・
今回は中国恒大集団による経済危機等の可能性などについても触れていきます。
中国恒大集団とは
まずは大前提となる中国恒大集団とはどんな会社なのかをみていきましょう。
ウィキペディアによると以下のような会社となっています。
恒大集団(こうだいしゅうだん、英語: Evergrande Group)は、中華人民共和国広東省深圳市に本拠を置く(登記上の本籍地はケイマン諸島)不動産開発会社。 創業者の許家印はフォーブスによれば2019年3月時点で362億ドルの資産を有し、世界22位、中国3位の富豪とされている。
出典:Wikipedia 恒大集団より
簡単に言えば中国の不動産開発の会社ということです。
創業者が中国3位の富豪となっている会社だけあってかなりイケイケどんどんで成長してきました。
これだけ大きな問題になっているのは負債規模がかなり大きいから。
日本円にして33兆円超と中国恒大集団の負債だけでGDP総額の2%に達するという規模・・・
騒がれて当然なんですよ。
この問題を考える上で重要なポイントは33兆円超の負債を抱えられた理由かもしれません。
普通はそこまで借りられませんからね笑
中国恒大集団ってそんなに業績悪いの?
次に中国恒大集団がそれだけの負債を抱えられることになった理由とも言える業績についても見てみましょう。
かなり歪な状況なんですよ。
中国恒大集団の業績は悪くない(損益計算書から)
まずは中国恒大集団の損益計算書を確認してみましょう。
2020年12月期は以下のとおりでした。(ポイントのみ抜粋)
- 売上:8.6兆円
- 営業利益:1.1兆円
- 当期純利益:0.5兆円
経営危機と騒がれていますので業績が悪いと思っている方が多いと思います。
しかし、売上は8.6兆円もあります。
これは日本で言うと日立製作所(8.7兆円)やイオン(8.6兆円)と同レベルです。
かなり大きい企業であることがわかります。
いくら売上が上がっても赤字では・・・って思うでしょう。
しかし、こちらもプラスなのです。
本業の儲けを示す営業利益1.1兆円
かなり大きいものとなっています。
営業利益1兆円超えというと日本ではトヨタ、NTT、KDDIだけという・・・
さらに肝心な当期純利益も0.5兆円と黒字企業。
これを日本企業で超えているのはソフトバンク、トヨタ、ソニー、NTT、三菱UFJ、ホンダ、KDDIだけなんですよ。
損益計算書だけみれば日本企業と比較してもかなり優良な状況であることがわかります。
この状況であるために多くの借り入れを出来たということなのでしょうね・・・・
後述する貸借対照表やキャッシュフロー計算書を見ればやばいことはわかるはずなんですが。
損益計算書の用語等がわからない方はこちらの記事も御覧ください。
中国恒大集団の貸借対照表から資金繰りのヤバさがわかる。
次は中国恒大集団の貸借対照表を確認してみましょう。
2020年12月期は以下のとおりでした。(ポイントのみ抜粋)
- 現預金:2.7兆円
- 売上債権(売掛金等):2.4兆円
- 棚卸資産:23.9兆円
- 仕入債務(買掛金等):14.1兆円
- 未払法人税等:2.7兆円
- 有利子負債:12.2兆円
問題はここです。
現預金は2.7兆円持っていますが、仕入債務(買掛金等)や未払法人税等といった短期的に支払う必要があるお金が16.8兆円もあるのです。
短期的に入金が期待できる売上債権(売掛金等)等を勘案しても全然足りないんですよ。
つまり、仕入債務(買掛金等)や未払法人税等等を支払うためには新たな借入をするか棚卸資産等を早期売却して現金化する必要な状況ということです。
新たな借り入れはすでに有利子負債が12.2兆円もある上、後述する「3条紅線」という新たなルールができたことで難しい状況・・・
さらに同社の棚卸資産は簡単な売却が難しい不動産が大半。
つまり、この時点でかなり資金繰りがやばい状況なのが貸借対照表を見ただけでわかります。
中国恒大集団のキャッシュフロー軽視のイケイケ企業だった・・・
中国恒大集団がなぜこんな状況になったかと言えばキャッシュフロー軽視であったことが大きな要因でしょう。
出典:中国株二季報WEB 中国恒大集団 より
それにより売上や利益はでていますが、財務状況がかなり傷んでいるという・・・
つまり、身の丈にあっていないイケイケドンドンの投資を続けてしまったということです。
キャッシュフローを見る上でもっと最も簡単な方法は営業CF+投資CFがプラスか否かを見ることです。(フリーキャッシュフローといいます)
そのフリーキャッシュフローをみると直近の2020年12月期こそプラスとなっていますが、それまで過去すべて大きなマイナスとなっています。
そのマイナス分は財務キャッシュフロー(借り入れ等の資金調達)で埋めています。
つまり、身の丈に合っていない投資を借り入れ等で続けてきていたということです。
黒字倒産によくあるパターンですね・・・
ソフトバンクグループについてもよく同様の話を懸念する人がいますが、ソフトバンクの場合はROAはかなり高くなっていますし、ちゃんと考えて経営されていたのでぜんぜん違うんですよ。
キャッシュフローの見方はこちらの記事を御覧ください。
中国恒大集団の株価
出典:内藤証券 中国恒大集団 月次チャート
中国恒大集団は2017年位までイケイケどんどん。
株価はどんどん上がっていきます。
そこが天井でずっと右肩下がり。
特に2021年にはいってから急激に下がっているのがわかっていただけるでしょう。
前述のように決算書が読める方なら一発でやばい状況とわかりますから当然の結果かもしれません。
中国恒大集団の問題とは
それでは最近なぜ中国恒大集団の話題がこんなに出てきているのでしょう?
それは中国が昨年末より不動産市場に対する融資を引き締めをおこなったことに起因します。
具体的には「3条紅線」というものを設けてそれをクリアできない企業は新たな資金調達を禁じるようになったのです。
- 総資産負債比率が70%を上回らないこと
- 自己資本負債比率が100%を上回らないこと
- 現金に対する短期負債の比率が100%を上回らないこと
の3つです。
中国恒大集団は上記の3つの条件すべて満たせませんので新たな借入ができなくなったのです。
前述のように中国恒大集団はかなり厳しい資金繰り状況だったため新たな借入ができなければ資金繰りが詰まってしまうんですよ。
それが今の中国恒大集団の問題です。
不動産等を早期売却して現金化するしかありませんが、不動産って簡単に売れるものではありませんしね・・・
中国恒大集団問題はリーマン・ショック級の状況となるのか?
それでは中国恒大集団の問題はリーマン・ショック級の状況となってしまうのでしょうか?
前述のように中国恒大集団はかなり大きな規模の企業です。
そのため、中国経済はもちろん。
世界経済にもそれなりに影響はあるでしょう。
しかし、リーマン・ショック級となるかというと話は別です。
それは今回の問題とリーマン・ショックでは大きな違いがあるからです。
リーマン・ショックとの違い
リーマンショックは「サブプライムローン」という信用力の低い低所得者向けの高金利住宅ローンが発端として起こった問題です。
サブプライムローンが債券化されいろいろな金融商品に組み込まれていたのです。
サブプライムローンの多くは信用格付もAAAだったこともあり、かなり多くの金融機関が手を出しました。
そこであそこまで大きな問題となってしまったのです。
一方、中国恒大集団の場合は、中国の主要銀行が債権者の部分も大きいんですよ。
そのため、中国当局の動向次第ではありますが、世界的なショックということにまでは発展しにくいと考えられています。
ドル建て債については海外投資家も保有していますが、比率にしてはサブプライムローンと比較して少ないです。
もともと信用格付も低かったですからね・・・
例えば日本の年金を運用するGPIFも一部中国恒大集団の株や債券を保有しています。
しかし、割合にしたら全体の0.005%くらいしかないんですよ。
他へ波及すると大きな問題となる可能性も
中国恒大集団の問題だけで終われば今回の件はリーマンショックのような大きな問題となることは考えにくいです。
しかし、中国恒大集団のような経営をやっている企業が他にも中国国内にたくさんあれば話は別です。
そういうことがあれば中国発のリーマンショック的な事が起こっても不思議ではありません。
私も中国株を買っていた事がありましたが、決算書がいまいち信じられない部分もありましたのでちょっと心配な部分なんですよね・・・
また、中国恒大集団の問題で中国の不動産価格に大きな影響があるのも怖いですね。
まとめ
今回は「中国恒大集団の問題をわかりやすく解説。なぜ33兆円もの負債を抱えられたのか」と題して中国恒大集団の問題をみてきました。
まとめると以下の通り
- 中国恒大集団は業績は悪くない
- 中国恒大集団の資金繰りはかなり厳しい
- 身の丈にあってない投資を続けていたのが原因
- 新たなルール3条紅線で資金繰りが詰んだ
- リーマンショック級となる可能性は高くはないが影響はあり
しばらく注視する必要のある問題ですね。。。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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