住宅ローン控除の逆ザヤ狙いで住宅購入時「頭金なし」にするのはあり?なし?メリット・デメリットを解説

読者さまからご質問をいただきました。

auじぶん銀行など低金利の住宅ローンを使えば
住宅ローン控除の利率よりも金利が低いので
住宅ローン残高が高くなるように頭金はなしの方が良いのでしょうか?
いわゆる住宅ローン控除の逆ザヤの話ですね。
これはその部分だけを捉えれば正解ですね。
しかし、この件については他にもいろいろ考える必要があります。
今回は住宅購入時の頭金をなしにする場合について考えてみましょう。

住宅ローンの頭金の基礎知識

まずは今回の話の前提となる住宅ローンの頭金についてみてみましょう。

頭金とは

「頭金」とは住宅購入費用のうち、住宅ローンを使わず支払う自己資金部分を指します。

例えば5,000万円の住宅を買うのに1,000万円現金で支払って、残りの4,000万円を住宅ローンで支払った場合には1,000万円が頭金ですね。

このケースだと20%が自己資金となります。

昔は頭金がないと住宅ローンは組めなかったのですが、最近ではフルローンと言って全額住宅ローンを利用することが可能な商品も出てきました。

手付金とは別物

よく勘違いしているかたも見えますが、「手付金」と「頭金」は別物です。

手付金は契約時に支払う証拠金みたいなもので、最終的に売買代金に充当される性質のものです。

手付金がそのまま頭金になる方も見えますが、基本的には別物なんですよ。

頭金(自己資金)の平均額

それではみなさんどれくらいの頭金を使っているのでしょう?

下記は国土交通省の「住宅市場動向調査」の結果です。

頭金平均額

出典:国土交通省 住宅市場動向調査 2021年より

あくまでも平均ですが、土地も購入した注文住宅の場合には購入資金の平均は5,112万円。

自己資金の平均は1,203万円

自己資金の比率が23.5%となっていますね。

家のみの建て替えの場合(注文住宅2)は55.4%が自己資金。

分譲戸建住宅は20.9%、分譲マンションは39.1%。

中古戸建住宅と中古マンションの取得世帯でそれぞれ 44.0% 41.3%となっています。

まとめると自己資金(頭金)の割合はこんな感じです。

  • 注文住宅(土地込み):23.5%
  • 注文住宅(建て替え):55.4%
  • 分譲戸建住宅:20.9%
  • 分譲マンション:39.1%
  • 中古戸建住宅:44.0%
  • 中古マンション:41.3%
  • リフォーム:80.3%

意外とみなさん頭金(自己資金)を使っているんですよね。



頭金をゼロにするメリット

それでは頭金をゼロにするメリットを考えてみましょう。

住宅ローン控除をより活かせる

まずは今回の質問にもあった住宅ローン控除の話です。

住宅ローン控除は年末時点の借り入れ金残高を基準に計算されます。

ですから年末時点で残高がより多いほうが住宅ローン控除をより多く受けられるんですよ。

なお、対象となる借入金の限度額は住宅の種類によって異なります。

それ以上住宅ローンがある場合には活かせれない部分もでてきますので、素直に頭金を用意したほうが良いケースも出てきます。

ちなみに一番借入限度額が大きくなるのは長期優良住宅等の認定住宅で5,000万円です。その他は以下の通りとなっています。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円
上記以外令和4年・令和5年3,000万円
令和6年・令和7年2,000万円10年

住宅ローン控除の逆ザヤとは

今回の話にポイントは住宅ローンの逆ザヤの有無です。

住宅ローンの逆ザヤとは住宅ローン控除0.7%よりも借り入れ金利が安い人に起こる現象です。

住宅ローンで払う金利よりも住宅ローン減税の金額の方が多くなるので借り入れが多いほうが良いという話なんですよ。

固定金利は少しずつ上がり始めていますが、変動金利はまだ最安値を更新している状況ですからね。

ちなみに今回のご質問にでていたauじぶん銀行などの最低金利は0.3%を切っているんですよ(11月時点)

 かなりの逆ザヤが起こりますね。

モゲチェックのようなサービスを使ってよりよりお得な住宅ローンを探すことも重要ですね。
逆に住宅ローン控除0.7%よりも高い金利で住宅ローンを借りる場合には逆ザヤ現象はおこりません。
ですから頭金をより払ったほうが金銭面だけを考えればお得ですね。

手元資金を残せる、投資に回せる

もう一つのメリットは手元資金が残せたり、投資に回せるってことです。

手元資金を残しておけば急な出費などいざというときに使えます。

また、投資に回すなんてことも可能です。

頭金を支払う代わりに投資に回して、金利分以上稼げればプラスとなりますからね。

長期投資なら今ならアメリカの国債など外貨建債券もかなり高い金利となっていますので十分可能でしょう。

手元資金がなくても家が買える

最後は手元資金がなくても家が買えるってことですね。

住宅や土地は基本的に1点ものです。

ほしいのが見つかったときに手元資金がなくてもフルローンなら購入できる可能性があります。

そのあたりはメリットでしょう。

ただし、頭金をいれないフルローンだからといっても、まったくお金がいらないというわけでもないのでお気を付けください。

住宅購入価額以外にも事務手数料や登記費用、印紙代などが別途必要です。

また、引越し費用や固定資産税、火災保険などその他掛かるお金も当然ありますのである程度の資金がないと、家は買えないのでお気を付けください。(その部分も別でローンを組めるようなオーバーローンという商品もあったりしますが)



頭金をゼロにするデメリット

次に頭金をゼロにするデメリットを考えてみましょう。

こちらもいくつか考えられます。

審査が厳しくなるケース

まずひとつ目が住宅ローン審査です。

当然、頭金の有無は大きな影響を与えます、

頭金がないとすべて借り入れとなり、返済負担率(年収と年間返済額の割合)が上がってしまいます。

ですから住宅ローンの審査が厳しく見られ条件が厳しくなったり、そもそも通らないという可能性がでてきます。

フラット35を管轄する住宅金融機関支援機構ではこんな感じで案内も出していますね。

融資率が9割を超える場合は、融資率が9割以下の場合と比較して、ご返済の確実性などをより慎重に審査させていただくとともに、お借入額全体の金利を一定程度高く設定させていただきます。

出典:住宅金融機関支援機構

頭金の割合で金利が違うケース

また、金融機関や住宅ローンの商品によっては頭金の比率で金利が違うケースもあります。

例えばフラット35などの固定金利で利用者が多いアルヒは頭金の比率でかなり金利に差をつけています。

最も金利の安くなる住宅ローンの住宅購入価額5割合以下(5割以上の頭金)のARUHI スーパーフラット5の金利は当初10年間0.6%です。(2022年11月の実行金利、4ポイント以上、団信なし、35年固定)

逆に最も高くなる住宅ローンの住宅購入価額割合9割超(1割未満の頭金)のARUHIフラット35の金利は当初10年間1.1%となっています。(2022年11月の実行金利、4ポイント以上、団信なし、35年固定)

頭金の割合で0.5%も差が出ているんですよ。(前者と後者では保障型と買取型の違いもあります)

ちなみにアルヒではフルローンだけど融資比率9割以下にするための「ARUHI フラットα」という商品も提供していたりします。

アルヒフルローン

出典:アルヒ

払う利息も増える

当然、頭金をいれた場合と比較して払う利息も増えます

前述のように住宅ローン控除で逆ザヤになっている期間はプラスマイナスでプラスではありますが・・・

利息を圧縮するために住宅ローン控除が終わったら繰り上げ返済なんかも検討する必要があるかもしれません。



まとめ

今回は「住宅ローン控除の逆ザヤ狙いで住宅購入時「頭金なし」にするのはあり?なし?メリット・デメリットを解説」と題して住宅ローンの頭金をなしにする話について見てきました。

住宅ローン控除の逆ざやをより活かすという頭金なしにするメリットもありますが、金利が高くなったり審査が厳しくなるデメリットもあります。

そのあたりを総合的に勘案して検討してみてくださいね。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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