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ガソリンより深刻なナフサ不足。投資家が見落とす「4つの波」と勝ち残る業界

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ガソリンより深刻なナフサ不足。投資家が見落とす「4つの波」と勝ち残る業界

ガソリン価格の高騰はニュースで目にしていても、「ナフサ」という言葉にピンとくる方はまだ少ないかもしれません。

しかし、2026年春のいま、このナフサの不足こそが、ガソリン以上にあなたの暮らしと投資判断を大きく揺さぶり始めています。

この記事では、ナフサ不足がどの業界を直撃し、どの業界は比較的影響が少ないのか。

そして投資家としてどう動くべきかを、ファクトに基づいて整理します。

目次

そもそも「ナフサ」とは何か?

ナフサとは、原油を蒸留・精製する過程で得られる、沸点35〜180℃の透明な液体です(出典:石油連盟 Q&A「ナフサとは」)。

ガソリンや灯油と同じ石油製品の一種ですが、ナフサの役割はまったく異なります。

ガソリンは「燃やして動力にする」もの。

一方、ナフサは「化学反応させて別の製品に変える」ものです。

この違いが、今回の危機の本質を理解するうえで極めて重要です。

ナフサをナフサクラッカーと呼ばれる装置で熱分解すると、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった石油化学基礎製品が生まれます。

これらの基礎製品から、さらにプラスチック、合成繊維、合成ゴム、塗料、合成洗剤などの中間製品が製造され、最終的に私たちの身の回りのあらゆる製品へと姿を変えていきます。

ナフサからできるもの

「プラスチック製品の原料」と聞くと、ペットボトルやビニール袋を思い浮かべるかもしれません。

しかし、ナフサからできるものの範囲はそれをはるかに超えます。

具体的には、パソコンや携帯電話の筐体、自動車のバンパーやシート・内装、ワイシャツなどの衣料品、住宅の断熱材や配管、食品包装フィルム、医療用手袋や注射器、さらには建物の屋根材に使われるアスファルトまで。

石油連盟の説明によれば、橋脚の補強材にまでナフサ由来の素材が使われています。

日本国内で消費される石油製品のうち、ナフサはガソリン(約31%)に次ぐ約25%を占めています。

つまりナフサは、エネルギーとしてではなく「素材」として、現代文明を根底から支えている存在なのです。

なぜいまナフサが不足しているのか?

2026年2月28日、米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃をきっかけに、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥りました。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界最重要のエネルギー輸送路です。

平時には1日約140隻のタンカーが通過しますが、停戦後もわずか6隻程度にとどまる日があるなど、物流は正常化には程遠い状況が続いています。

ここで多くの方が疑問に思うでしょう。

「原油は約250日分の国家備蓄があるのでは?」と。

その通りです。しかし、ナフサには国家備蓄制度がありません

民間在庫はわずか約20日分しかなく、ここに今回の危機の核心があります。

経済産業省の資料(2026年3月26日公表)によれば、日本のナフサ調達先は、中東が約44.6%、国産が約39.4%、その他地域が約16.0%という構成です。

中東ルートが途絶すれば、調達の約半分に支障が出る計算になります。

政府は中東以外からの代替輸入や国家備蓄原油の放出で対応していますが、代替調達にはコスト増と時間がかかり、世界各国との「ナフサ争奪戦」も激化しています。

ナフサ不足が直撃する業界「4つの波」で読み解く影響のタイムライン

ナフサ不足の影響は一気に押し寄せるのではなく、「時間差の波」として段階的に広がります。

投資家として、この波の順番を知っているかどうかが、ポートフォリオの明暗を分けます。

第1波(即時〜1か月):石油化学・エネルギー

最初に影響を受けるのは、川上の石油化学メーカーです。

三菱ケミカルグループは茨城事業所で3月6日からエチレンの稼働率を落とし、出光興産は千葉・山口の2拠点で減産を開始、三井化学は千葉・大阪の2基で減産に入りました。

韓国のLG Chemも麗水のナフサクラッカーを停止するなど、東アジア全体で減産の連鎖が広がっています。

建材・樹脂メーカーのフクビ化学工業は3月26日、全製品の供給制限を発表。

これは売り惜しみではなく、物理的な原料欠乏が限界に達した結果です。

ナフサ価格は1キロリットルあたり11万円超の水準が想定されており、三井化学とプライムポリマーはポリエチレン・ポリプロピレンを4月1日納入分から1kgあたり90円以上値上げしています。

第2波(1〜2か月後):建設・住宅・自動車

ナフサ不足の影響が最も深刻に表れるのが、建設・住宅業界です。

断熱材、塗料、接着剤、合成樹脂、配管用の塩ビ管

住宅の「見えない部分」のほとんどがナフサ由来の素材でできています。

カネカは断熱材「カネライトフォーム」を4月1日出荷分から40%値上げ、信越化学工業は塩ビ管の原料を1kgあたり30円以上値上げと発表しています。

ヘーベルハウスの旭化成も断熱材ネオマフォームの出荷制限を発表しました。

特筆すべきは、TOTOがユニットバスの新規受注を停止したことです。

LIXILも供給条件の調整を表明しました。

住宅設備大手が受注そのものを止めるのは、異例中の異例です。

ホームセンターでは、シンナーの入荷未定・購入制限が続き、養生用のマスカーテープは「1人5巻まで」の個数制限が敷かれています。

屋根材として使われるカラールーフィング(アスファルト製)も在庫がほぼ払底する事態となっています。

自動車業界もバンパー、内装材、タイヤの合成ゴムなど、ナフサ由来の部品が多岐にわたるため、生産への影響が懸念されています。

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第3波(2〜3か月後):日用品・食品包装・医療

食品容器、ラップ、洗剤のボトル、紙おむつ、ゴム袋、コンタクトレンズ

日常的に手に取る製品の多くがナフサの「末裔」です。

三菱ケミカルグループは、紙おむつの吸水部分の原料であるアクリル酸製品を4月1日出荷分から1kgあたり40円以上値上げすると発表しています。

育児中の家庭にとって、じわじわと家計を圧迫する値上げです。

旭化成のサランラップも値上げも値上げを避けられないと公表されています。

さらに深刻なのが医療現場です。

使い捨て手袋、注射器、チューブ、透析用の滅菌資材

これらは使い捨てが基本であり、在庫の薄さが直接「命のリスク」に直結します。

歯科医院では医療物資の確保に苦慮する状況が報じられており、経済産業省のタスクフォースでも小児用カテーテルの滅菌用重油や酸化エチレンガスの確保が最優先で確認されています。

第4波(3か月〜):物流・農業・エネルギー料金

軽油の高騰は物流コストに跳ね返り、農業用の肥料・農薬(石油由来の原料を含む)にも影響が及びます。

火力発電の燃料費上昇は電気料金の引き上げにつながり、2026年4月以降、政府の電気・ガス補助金の段階的縮小・終了も相まって、家計への負担は複合的に増していきます。

産業分類でいえば、中分類99のうち少なくとも21分類に影響が及んでいるとの調査結果もあり、製造業だけで11中分類、運輸業は5中分類すべてに波及しているとされています。

ナフサ不足の影響が「比較的少ない」業界とは

ここまで読むと、「すべてが壊滅的なのか」と感じるかもしれません。

しかし、冷静に見ると影響の濃淡はあります。投資家にとって、この「濃淡」こそが判断材料になります。

IT・ソフトウェア業界

クラウドサービス、SaaS、ゲーム配信など、デジタルで完結するビジネスモデルはナフサ不足の直接的な影響をほとんど受けません。

データセンターの電力コスト増は間接的なリスクですが、製品そのものがナフサに依存していないため、相対的に優位性があります。

米国のエタン系化学メーカー

今回のナフサ不足の本質を理解するうえで、ここが最も重要なポイントかもしれません。

米国のシェールガス由来の「エタン」を原料とする化学メーカーは、ナフサ価格高騰の影響をほぼ受けません。

なぜなら、エタンクラッカーという別の装置でエチレンを生産しており、中東のナフサに依存しない生産構造を持っているからです。

信越化学工業(4063)の米国子会社シンテックは、この典型例です。

世界最大の塩ビ生産能力を持ちながら、原料は米国のエタン。

世界中の競合がナフサ高で苦しむなか、逆に利益率を拡大させるポジションにあります。

米国のダウ・インク(DOW)やライオンデルバセル(LYB)も、エタン原料の強みからアジア市場への供給力が注目されている銘柄です。

コールケミカル(石炭化学)関連

ナフサの代替として、石炭からベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)を生産するコールケミカルへの引き合いも強まっています。

化学工業日報(2026年3月27日付)でも、ナフサ代替原料としてコールタール由来の製品への実需が報じられています。

サービス業(一部)

飲食、教育、コンサルティングなど、原材料にプラスチックを大量使用しない業種は直接的な影響が限定的です。

ただし、包装資材や物流コストの上昇による間接的な影響は避けられません。

「ナフサ不足は高市総理による人災」論の検証

SNS上では「ナフサ不足は高市総理による人災」という言葉が広がっています。

では、この危機は本当に政策で防げたものなのでしょうか。

ファクトを整理します。

一部テレビ報道番組でナフサ不足が深刻で6月には厳しくなると報じられるとそれに反論する形で、高市早苗首相は2026年4月5日、自身のXで

中東以外からのナフサ輸入量も倍増する

6月に供給が確保できなくなるということはない

と発信しました。

一方、防衛大学校共同研究員の伊藤隆太氏はPRESIDENT Onlineで、高市総理の「ナフサは足りる」という主張の問題点を指摘しています。

在庫量の議論だけでは不十分であり、入手経路の安定性と用途の優先順位こそが本質的な課題だという主張です。

確かに、構造的な問題は高市政権以前から存在しています。

原油の中東依存度の高さ、ナフサが国家備蓄の対象外であること、JIT(ジャスト・イン・タイム)生産方式による在庫の薄さ

これらは何十年もかけて形成された産業構造の問題です。

しかし、危機が顕在化してからの初動対応、情報発信の仕方、医療用品など生命に関わる物資への優先配分の判断については、引き続き厳しい検証が求められます。

政府の説明は「代替輸入や中間製品在庫を含めた総量」で安心感を示そうとしていますが、現場レベルでは塗料用シンナーの欠品、医療物資の入荷未定、住宅設備の受注停止と逼迫した状況が進行中です。

マクロだけを見て、一番大事な現場の目線が足りていない。

問題点を把握できなければ適切な対応は当然できません。

駄目会社の社長の典型的な動きをしちゃっているんですよ。

無理やり良く取ればかつてのオイルショック時のトイレットペーパーの買いだめみたいなことを起こさないためのあえての発言かもしれませんが・・・

今までの発言を見る限りそんな感じでもないでしょうね。

また、石油の価格が上がっているのに補助金を出すことでガソリン代を無理やり引き下げているのにも疑問が大きいです。

価格は需要の調整効果もありますが、それを無視しているということ。

さらにトランプの顔色を伺い、親日だったイランを非難して交渉もしようとしない・・・

それらが「ナフサ不足は高市総理による人災」と言われる原因であるでしょう。

ナフサ不足が物価に与える影響

ナフサ不足が物価に与える影響は、直接的な値上げだけではありません。

「シュリンクフレーション」

値段は据え置きで内容量が減るという形で家計に忍び寄るケースも増えるでしょう。

詰め替えパックのサイズ縮小、送料無料ラインの引き上げ、セール頻度の低下なども、実質的な値上げのサインです。

CPIの数字だけを見ていると、こうした「見えない値上げ」を見落としてしまいます。

投資家の視点で見ると、このインフレ環境下で価格転嫁力を持つ企業と持たない企業の差が、今後ますます鮮明になります。

原材料高を製品価格に転嫁できるブランド力や競争優位性を持つ企業は、利益率を維持できます。

一方、価格競争に巻き込まれやすい企業は、利益を圧縮されることになります。

「ナフサ・リスクマップ」で銘柄を仕分ける

ここまでの分析を踏まえ、投資家として今すべきことを具体的に整理します。

保有銘柄のナフサ依存度をチェックする

自分のポートフォリオの中で、ナフサ依存度が高い業界(化学、建設、住宅設備、自動車部品、包装容器など)の銘柄はどれか。

これを可視化するだけで、リスクの全体像が見えてきます。

「追い風」を受ける銘柄に注目する

ナフサ不足を逆にビジネスチャンスに変えうるのは、次のような企業です。

ナフサに依存しないエタン系原料で生産する化学メーカー(信越化学工業、ダウ・インク、ライオンデルバセルなど)、石炭化学(コールケミカル)の川上に位置する企業、リサイクル素材や代替素材の技術を持つ企業、そしてエネルギー安全保障関連の国策銘柄です。

中長期の構造変化を見据える

今回のナフサショックは一時的な供給ショックで終わる可能性もありますが、もっと重要なのは構造変化です。

Wood Mackenzieの分析では、ナフサ価格高騰に耐えられない古い石油化学設備の恒久的閉鎖が進み、高機能材料(スペシャリティケミカル)への強制的なシフトが起きているとされています。

石油化学業界の「大掃除」が進行中なのです。

これは、生き残った企業にとっては寡占化による価格決定力の強化を意味します。

短期的な株価下落の局面が、中長期での投資チャンスになりうるということです。

1973年との違い。今回のほうが深刻なのか

1973年の第一次オイルショック時、日本は省エネ技術の開発と産業構造の転換で危機を乗り越えました。

では今回も同じように乗り越えられるのか。

答えは「簡単ではない」です。

1973年当時、プラスチック製品はまだ生活の一部でしかありませんでした。

しかし2026年の現在、ナフサ由来の素材は医療の生命維持装置から住宅の構造材に至るまで、社会インフラそのものに組み込まれています。

代替が効く範囲が、当時とは比較にならないほど狭い。

また、当時は「在庫を多めに持つ」ことが普通でしたが、現在のJIT生産方式は在庫を極限まで圧縮する思想です。

効率化を極めた結果、ショック耐性は大きく下がりました。

これは投資家にとって、サプライチェーンの回復力(レジリエンス)を持つ企業とそうでない企業を見分ける力が、かつてないほど重要になっていることを意味します。

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まとめ

ナフサ不足という危機は、私たちに一つの本質的な問いを突きつけています。

「私たちは、透明な液体一つに、どれほどの暮らしと経済を委ねてきたのか」

投資家として、この問いに向き合うことは、単にポートフォリオを守ることを超えて、これからの日本経済の構造変化を見通す力を養うことにつながります。

ナフサ不足の影響は「4つの波」で段階的にやってきます。

第1波はすでに到来し、化学メーカーの減産と値上げが始まっています。第2波の建設・住宅業界への影響はいま進行中。第3波の日用品・医療への波及はこれからが本番です。

いま大切なのは、パニックになることではなく、どの業界がどのタイミングで影響を受けるかを冷静に見極めること

そして、危機のなかで逆に強くなる企業を見つけ出すことです。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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