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なぜ「危険」と言われるのか。ソフトバンクグループ第9回社債の正体

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なぜ「危険」と言われるのか。ソフトバンクグループ第9回社債の正体

日本企業で初めて純利益5兆円を突破した会社の社債が、どうして危険と言われるのでしょうか?

この一文に、もし少しでも引っかかりを覚えたなら、あなたの投資家としての感覚はとても健全です。

ソフトバンクグループ第9回ハイブリッド社債は、年4.80%から5.60%という、いまの日本では破格の利率を提示しています。

一方で、ネット上には「ソフトバンク社債 危険」という検索が絶えません。

好決算と危険視。

この矛盾こそが、この社債のすべてを物語っています。

今回はソフトバンクグループ第9回社債について考えてみましょう。

目次

第9回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の概要

まずは事実から確認しましょう。

ソフトバンクグループが2026年5月25日に公表した発行内容を整理すると、次のようになります。

項目内容
正式名称第9回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)
発行総額2,600億円
利率(仮条件)年4.80%〜5.60%(当初5年固定、以降変動)
年限35年(償還期限2061年6月19日)
期限前償還2031年6月19日以降、発行体の裁量で可能
申込単位100万円単位
申込期間2026年6月8日〜6月18日
払込期日2026年6月19日
予備格付BBB+(日本格付研究所/JCR)
資金使途米ドル建ハイブリッド社債の借換え資金の一部

(出典:ソフトバンクグループ プレスリリース, 2026年5月25日)

正式名称は「ソフトバンクグループ株式会社 第9回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債 劣後特約付」です。

長い名前ですね。

ただし、この長い名前こそが重要です。

この社債のリスクは、名前の中にほぼ書かれています。

「利払繰延」
「期限前償還」
「無担保」
「劣後特約」

つまり、普通の社債よりも条件が複雑です。

利率だけを見て「銀行預金よりかなり高いから良さそう」と判断すると、かなり危うい商品だと考えます。

利率の決定は2026年6月5日の予定です。

中央値である5.2%で100万円を5年間保有した場合、税引前で約26万円の利息という計算になります。

預金金利と比べれば、桁が違うと言ってよい水準です。

ソフトバンクグループ社債が危険と言われる理由

最初に結論です。

ソフトバンクグループ第9回ハイブリッド社債は、預金の代わりに買う商品ではありません。

なぜこれほど高い利率が付くのかを知っておく必要があります。

利率は「リスクの対価」です。

高い利率には、必ず高いリスクが隠れているのです。

順番に見ていきましょう。

これは「劣後債」である

第9回社債の名前に「劣後特約付」とあります。

ここが第一の急所です。

劣後とは、文字どおり「後回し」を意味します。

万が一ソフトバンクグループの経営が破綻した場合、お金が返される順番が、普通の社債を持つ人よりも後ろになるのです。

先に銀行や普通社債の投資家が弁済を受け、残った財産があれば、ようやく劣後債の投資家に回ってくる。

この順番の差が、利率の上乗せとして反映されています。

たとえるなら、行列のできるラーメン店です。

普通社債が開店前から並んでいる常連客なら、劣後債は「閉店間際に来た客」。

スープが残っていれば食べられますが、売り切れなら何も食べられない。

その代わり、来店の特典(利率)は手厚い、という構図です。

利息が「先送り」されることがある

名前にある「利払繰延条項」。

これが第二の論点であり、ハイブリッド社債の核心です。

普通の社債は、約束した利息を必ず支払います。

ところがこの社債は、発行体であるソフトバンクグループの判断で、利息の支払いを先送り(繰延)できる条項が付いています。

「払わない」のではなく「後で払う」のですが、投資家にとっては予定していた収入が入ってこない時期が生じうる、ということです。

利払繰延は、あくまで発行体が経営上必要と判断した場合の選択肢です。

健全に経営されている限り、通常は粛々と支払われます。

過去のソフトバンクグループのハイブリッド社債でも、繰延が問題になった事例は確認されていません。

ただし「制度として存在する」という事実は、価格決定の前提として必ず頭に入れておくべきです。

これは「5年債」ではなく「発行体に選択権がある35年債」である

最後は期間です。

償還期限は2061年、つまり35年後です。

「いや、5年で繰上償還されると聞いた」という方もいるでしょう。

たしかに2031年6月以降、発行体の裁量で期限前償還が可能です。

市場では多くの場合、この5年での償還が暗黙の前提とされています。

しかし重要なのは、それが「発行体の裁量」だという点です。

つまり、これは「発行体に5年後以降の選択権がある35年劣後債」なのです。

ソフトバンクグループにとって有利な状況(たとえば市場金利が大きく上がっていて、借り換えると高くつく)であれば、償還を見送る判断もあり得ます。

そのとき、あなたの最低100万円は当初想定より長く拘束され、しかも5年後以降は変動金利に切り替わります。

「5年で戻ってくるはず」という期待が、契約上の約束ではないこと。

この一点を、どうか軽視しないでください。

ハイブリッド社債の正体

劣後性、利払繰延、超長期。

この3つを束ねると、なぜこれが「ハイブリッド」と呼ばれるのかが見えてきます。

会計上は負債(社債)でありながら、性質は資本(株式)に近い。

だから格付機関は、この調達額の50%を「資本」とみなします。

発行体にとっては、株式を増やさずに自己資本を厚くできる、都合のよい資金調達手段です。

裏を返せば、投資家は「社債の顔をした、株式に近いリスク」を引き受けているということ。

これがハイブリッド社債のメリットとデメリットの本質です。

メリットは、普通社債を大きく上回る利率。

デメリットは、劣後・繰延・超長期という株式寄りのリスク

この交換条件を理解したうえで選ぶなら、それは立派な投資判断です。

理解せずに利率だけで飛びつくなら、それは投機に近づきます。

本当に注視すべき論点

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

「ソフトバンク社債 危険と言われる理由」を検索すると、多くの記事が前述した「劣後・繰延・35年」のリスク説明で終わっています。

それは正しいのですが、第9回特有の文脈を見落としています。

筆者が最も注目しているのは、次の3点です。

第8回からわずか2か月での連続発行

ソフトバンクグループは2026年4月22日に第8回ハイブリッド社債を発行したばかりです。

そして6月に第9回。約2か月での連続発行は、頻度として高い。

「資金繰りが厳しいのでは」という不安の声が出るのも自然です。

ただし、ここは冷静に。第9回の資金使途は、明確に「2027年7月に初回償還を迎える米ドル建ハイブリッド社債の借換え資金の一部」と公表されています(出典:ソフトバンクグループ プレスリリース, 2026年5月25日)。

つまり、新たな穴埋めではなく、既存の資本性負債を同じ資本性負債で置き換える「リファイナンス」です。

資本性を維持したまま借り換える、財務戦略上は理にかなった動きだと読めます。

不安の声と、公表された事実。

両方を並べたうえで、自分はどう解釈するか。それを考えることが投資です。

好決算の「中身」を疑う

ソフトバンクグループの2026年3月期の純利益は5兆220億円。

日本企業初の5兆円超えで、トヨタの過去最高益を上回りました。

一見すると、危険どころか盤石に見えます。

しかし、その利益の9割超は、米OpenAIへの投資に伴う評価益が占めています。

OpenAIは未上場企業です。

つまりこの利益の大半は、現金として入ってきた利益ではなく、「保有資産の評価額が上がった」という、いわば帳簿上の利益です。

評価額は上がることもあれば、下がることもあります。

詳しくはこちらの記事で解説しております。合わせてご覧ください。

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社債の利息と元本を支えるのは、評価益ではなく、実際のキャッシュです。

その意味で、通信子会社ソフトバンク株式会社が稼ぐ安定収益(2026年3月期は連結純利益5,508億円)こそが、社債投資家にとっての本当の安心材料だと筆者は考えます。

華やかな5兆円ではなく、地味な通信事業の足腰を見ることが重要です。

格付の「ねじれ」

JCRの予備格付はBBB+

投資適格の下限に近い水準です。

国内には A格以上の社債も多いことを思えば、決して高い評価ではありません。

ソフトバンクグループも少し前までAが当たり前だったんですよ。。。

さらに見過ごせないのが、海外格付との「ねじれ」です。

2026年3月、S&Pはソフトバンクグループの格付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。

OpenAIへの巨額出資が財務余力を圧迫しうる点を指摘したものです(出典:ロイター/各種報道, 2026年3月)。

S&P基準での発行体格付は、投機的水準とされるBB+です。

国内格付では投資適格、海外格付では投機的水準。

この「ねじれ」をどう読むか。

私は楽観も悲観もせず「強気の投資が財務リスクと表裏一体である会社」と捉えています。

AIに大きく賭けている会社の社債を買うとは、その賭けの行方に、間接的に乗ることでもあるのです。

ソフトバンクグループ社債はどんな人に向いているのか

ここまで読んでくださったあなたへ。

買うべきか否か、判断の補助線を引きます。

買っても良い人

向いている可能性が高いのは、次のような方です。

私は、次の条件に当てはまる人なら、少額での検討余地はあると考えます。

・すでに生活防衛資金を確保しての余裕資金
・劣後・繰延・超長期の3リスクを読んで「それでも利率に見合う」と納得できた方
・ソフトバンクグループの事業特性をある程度理解している
・中途売却で元本割れする可能性を受け入れられる

この条件を満たすなら、ポートフォリオの一部として検討する余地はあります。

利率は確かに高いですからね。

慎重になるべき人

逆に、慎重になるべきは次のような方です。

・「元本保証に近い安全資産」を探している方。
・近い将来に使う予定のあるお金を充てようとしている方。
・ソフトバンクグループとソフトバンク株式会社の違いが曖昧。
・目論見書を読む気がない。
・「純利益5兆円なら安心だろう」と、利率と知名度だけで判断しようとしている方

最後のケースが、いちばん危ういと筆者は感じています。

なお、これは特定の投資を勧める記事ではありません。

最終的な判断はご自身の資産状況とリスク許容度に基づいて行ってください。

行動する前に、もう一歩だけ

もし前向きに検討されるなら、申込期間は2026年6月8日から18日までです。

ソフトバンクグループの社債は利率が高いことから人気が高く、期間内でも完売することがあります。

第8回は完売しました。

検討するなら、引受証券会社(SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SBI証券、野村證券、みずほ証券ほか)の口座を早めに準備しておくと安心です。

ただ、急かしたいのではありません。

むしろ逆です。「売り切れる前に」という焦りこそ、冷静な判断を狂わせる最大の敵だからです。

締切に追われて100万円を投じる前に、この記事で挙げた3つのリスクと3つの論点を、もう一度だけ静かに読み返してみてください。

よくある質問

最後によくある質問をまとめて見ていきましょう。

ソフトバンクグループ社債は危険ですか?

危険か安全かの二択ではありません。

ただし、今回の第9回ハイブリッド社債は、国債や普通の社債よりリスクが高い商品です。

劣後特約、利払い繰延、35年満期、発行体裁量の期限前償還といった特徴があるためです。

預金や個人向け国債の代わりに買う商品ではありません。

ソフトバンクグループ社債 2026年の第9回は買うべきですか?

生活防衛資金や近い将来使うお金では買わない方がよいです。

一方で、資産全体の一部として、ソフトバンクグループの信用リスクとハイブリッド社債の仕組みを理解したうえで買うなら、検討余地はあります。

5年後に償還される可能性は高いですか?

過去の償還実績やステップアップ、資本性評価の低下を考えると、5年後償還の可能性はあります。

しかし、法的に約束されているわけではありません。

発行体の裁量です。

投資家は「5年で必ず返ってくる」と考えてはいけません。

100万円だけなら買ってもよいですか?

資産全体から見て100万円が小さいなら、検討余地はあります。

しかし、資産300万円の人にとって100万円は大きすぎます。

金額ではなく、資産全体に占める割合で判断すべきです。

まとめ

私が記事でいつも「危険」や「リスク」から書き始めるのは、読者を脅したいからではありません。

むしろ逆で、リスクを正しく理解した投資家は、不安に振り回されずに済むからです。

何が危険かを知っている人は、その危険を引き受けるかどうかを、自分で選べます。

知らない人は、ただ漠然と怖がるか、無防備に飛び込むかのどちらかになってしまう。

ソフトバンクグループ第9回ハイブリッド社債は、危険な社債ではありません。

「正しく理解されるべき社債」です。

利率5.6%という数字の向こう側にある仕組みまで見通せたとき、あなたの投資判断は、誰かの受け売りではない、あなた自身のものになります。

その一助になれたなら、これ以上うれしいことはありません。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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