寝る前に入れた指値が、朝起きたら約定していない。
米国株投資家なら、この悔しさに覚えがあるはずです。
2026年12月7日、米国株は日本の昼でも売買できる「23時間取引」に入ります。
ただ、恩恵を受けるのは画面に張り付く人ではありません。
指値を置いて離れられる人です。
その理由と時間の使い分けを解説します。
結論:23時間取引で得をするのは「指値を置いて離れる人」
結論から言うと、米国株の23時間取引で得をするのは、昼休みにチャートへ張り付く人ではありません。
あらかじめ決めた価格で指値を置き、スマホを閉じられる人です。
日本時間2026年12月7日(月)午前11時、米国株は日本の昼でも売買できる時代に入ります。
ニュースには「便利になる」「日中も取引可能」という見出しが並んでいますね。
ところが、日本の昼はニューヨークの真夜中なんです。冬時間なら、日本の昼休みの12時は現地の夜10時。
東証が大引けを迎える15時30分は、現地の深夜1時30分にあたります。
真夜中の市場は参加者が少なく、板(売買注文の並び)が薄くなりがち。
買値と売値の差であるスプレッドも広がりやすくなります。
米証券取引委員会(SEC)のデータでも、夜間時間帯の取引高はまだ全体の約1%にとどまっています。
タクシーに深夜割増があるように、夜の米国株には目に見えない「深夜料金」が上乗せされやすい。
私はこの構造を、そう捉えています。
だからこそ、昼に値動きを見て「今だ」と飛びつく人ほど、深夜料金を払うことになります。
一方で、冷静に決めた価格で指値を置いて待つ人には、薄い板ゆえの一瞬の値下がりで約定するチャンスが広がるかもしれません。
あなたは、昼休みに米国株のチャートを開いて、それでも我慢できる自信がありますか?
米国株23時間取引はいつから?仕組みと日本時間の早見表
まずは概要から見ていきましょう。
開始は日本時間12月7日(月)午前11時
米国株の23時間取引は、米国現地2026年12月6日(日)の夜9時に始まります。
日本時間に直すと、12月7日(月)の午前11時スタートです(出典:マネックス証券プレスリリース、2026年8月7日)。
新しく加わるのは、ニューヨーク時間の午後9時から翌午前4時までの「オーバーナイトセッション」。ナスダック、NYSEアーカ、24Xナショナル・エクスチェンジ、Cboe EDGXの各取引所が、この夜間取引を新設します。
ただし、NYSE本体の取引時間は変わらない点に注意してください。
これで既存のプレマーケット、立会時間、アフターマーケットとあわせて、1日23時間の取引ができるようになるわけです。
なぜ24時間ではなく23時間なのか
答えは「毎晩1時間の休憩」にあります。ナスダックの計画では、ニューヨーク時間の午後8時〜9時をシステム保守や清算処理のための休止時間にあてています。
日本時間(冬)なら、午前10時〜11時がこの1時間です。
意外と知られていないのが、この休憩明けから「次の取引日」が始まるという点。
夜間セッションの開始とともに、新しい営業日に切り替わる仕組みなんですよ。
日本の感覚で「今日の注文」と考えていると、注文の有効期限を読み違えるおそれがあります。
日本時間で見る23時間の早見表
| セッション | 冬時間(2026年12月7日〜) | 夏時間(2027年3月〜) | 板の厚さ(目安) |
|---|---|---|---|
| オーバーナイト(新設) | 11:00〜18:00 | 10:00〜17:00 | 薄い |
| プレマーケット | 18:00〜23:30 | 17:00〜22:30 | やや薄い |
| 立会時間(レギュラー) | 23:30〜翌6:00 | 22:30〜翌5:00 | 厚い |
| アフターマーケット | 6:00〜10:00 | 5:00〜9:00 | やや薄い |
| 休止 | 10:00〜11:00 | 9:00〜10:00 | 取引なし |
証券会社によっては、時間外取引の開始時刻を独自に設定している場合もあります。
「板の厚さ」は筆者による目安です。
背景にあるのは「アジアの投資家」
なぜ今、取引時間を延ばすのか。
SECのデータによると、夜間時間帯の取引高は2026年8月までの12カ月で3倍超に増えました。
しかも夜間の取引の約37%は米国外の投資家によるもので、通常の取引時間帯の約10%を大きく上回ります。
制度面の準備も整いつつあります。SECは2026年4月にナスダックの延長案を承認。
清算を担う米証券保管振替機関(DTCC)も、同年6月に平日24時間体制へ移行しました(出典:同)。
つまりこの改革は、日本を含むアジアの投資家を呼び込むための仕組みでもあるんです。
では、日本の証券会社はどう対応するのでしょうか。
SBI証券・楽天証券など主要ネット証券の対応状況
主要ネット証券のうち、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券の4社は制度開始の初日から23時間取引に対応する予定です。
三菱UFJ eスマート証券は段階的に対応する方針と報じられています。
| 証券会社 | 23時間取引の開始 | 現在の米国株の取引時間 | 押さえたいポイント |
|---|---|---|---|
| SBI証券 | 日本時間12月7日11時〜(現物・信用) | 時間外取引は「2026年に対応予定」と公表(7月時点)【要確認】 | 11月2日約定分から米国株の信用取引手数料を無料化 |
| 楽天証券 | 日本時間12月7日11時〜 | プレ・アフター対応で計16時間 | 時間外は指値・本日中のみ |
| マネックス証券 | 日本時間12月7日11時〜 | プレマーケットを独自に早めて設定 | 制度初日から対応 |
| 松井証券 | 日本時間12月7日11時〜 | 12時間(夏時間で日本時間17時〜翌5時) | 12時間から23時間へ拡大 |
米国株 23時間 SBI証券:現物も信用も午前11時から
SBI証券は2026年10月16日、米国現地での開始と同時にオーバーナイトセッションへ対応すると発表しました。
現物取引・信用取引ともに、日本時間の午前11時から翌午前10時まで売買できるようになります(出典:SBI証券プレスリリース)。
同じ発表で、インターネットコースの米国株信用取引手数料と、デイトレード時の買方金利・貸株料の無料化も打ち出しています。
適用は2026年11月2日(月)の現地約定分からです。
取扱銘柄は米国株式・ETFあわせて5,000銘柄を超えます。
取引時間の拡大と信用取引の無料化を同時に出してきた点に、昼間の短期売買を呼び込みたい狙いが透けて見えますね。
ただ、信用取引は保証金の最大2倍まで取引できる反面、損失が保証金を上回るおそれもあります。
初心者がいきなり手を出す道具ではありません。
米国株 23時間 楽天証券:16時間から23時間へ
楽天証券は2026年1月にプレマーケット取引を始め、その後アフターマーケットにも対応しました。
現在は計16時間の取引環境を提供しています。
12月7日(月)11時からはオーバーナイトセッションが加わり、23時間へ広がる予定です。
楽天証券で時間外取引をするには、注文画面で次の3つを指定します。
- 価格は「指値」
- 執行条件は「本日中」
- 「時間外取引」の「有効にする」にチェック
成行と逆指値は、時間外取引では使えません。
さらに見落としやすいのが、時間外取引を有効にした注文はレギュラーマーケットの寄付きと引けのオークションに参加しない、という点です。
始値や終値で約定させたい人は、あえて時間外を有効にしない選択もあり得ます。
マネックス証券・松井証券も初日から
マネックス証券は、証券情報処理システム(SIP)の23時間対応がSECに承認されたことを受け、制度の初日から対応すると発表しています。
松井証券も、現行の12時間から23時間へ拡大する予定です。
なお、オーバーナイトセッションで取引できる銘柄の範囲や、NISA口座での扱いは各社の続報を確認する必要があります。
指値が何度も空振りした私が、23時間化に感じる「期待」と「怖さ」
少し、私の失敗談をさせてください。
米国株を始めてから、私は何度も同じ悔しさを味わってきました。
欲しい銘柄があっても、米国市場が開くのは日本の深夜。
リアルタイムで値動きを見られないので、寝る前に指値注文を入れておくしかなかったんです。
朝起きてアプリを開くと、注文は約定しないまま期限切れ。
株価は私の指値より上で動いていて、そのまま手の届かない値段へ。
「あと少し高く指しておけば」とため息をついたのは、一度や二度ではありません。
ですから、23時間取引のニュースを見たときは正直ほっとしました。
昼に値動きを見ながら、指値を調整できる。
夜を待たずに、決算への反応も確かめられる。
私のような「見られない投資家」にとっては、待ちに待った変化です。
でも、昼の自分を信用できるか
一方で、怖さも感じています。昼に株価が上がっていくのを見たら、私はきっと指値を引き上げて追いかけたくなるでしょう。
問題は、その時間帯の市場の中身です。
電子取引ネットワーク、リキッドネットで米州の市場構造責任者を務めるジェフ・オコナー氏は、夜間の市場は厚みが乏しくスプレッドが非常に広いため、売買のコストが大きくなると指摘しています。
機関投資家が参入を急いでいないのも、そのためだといいます(出典:Bloomberg、2026年9月30日)。
ナスダック自身も、夜間セッションは通常の取引時間より注文の種類が少なく、規制上の保護も限られると説明しています。
夜間の急な値動きを抑えるため、値幅を制限する仕組みの導入も提案されている段階です。
空振りの悔しさは心の痛み、深夜料金は財布の痛み
ここで、私の空振りを冷静に振り返ってみました。約定しなかった指値は、私のお金を1円も減らしていません。
減ったのは「買えたはずの利益」という、想像上のお金だけです。
人は同じ金額なら、得をする喜びより損をする痛みを大きく感じるとされています。
行動経済学でいう損失回避ですね。
買い逃しを「損」と感じてしまうのも、この心理の延長線上にあります。
ところが昼の薄い板で指値を引き上げて飛びつけば、スプレッドという現実のコストを払うことになる。
悔しさを消すために、本物のお金を差し出すわけです。
ここで気づいたことがあります。
23時間取引で有利になるのは、24時間見張れる人ではない。
決めた価格で指値を置き、あとは市場に任せられる人なんです。
時間外取引が原則として指値しか受け付けないことも、この市場が「待てる人」向けにできていることを物語っています。
23時間取引の勝者は「見続ける人」ではなく「指値を置いて離れる人」だ。
指値を置いておく時間が長くなれば、薄い板で一瞬だけ値が下がった場面で約定する可能性も出てきます。
ただし、価格を雑に決めていると、一瞬付いた値段に注文が拾われ、その後さらに値下がりすることも起こり得ます。価格は慎重に決めてください。
あなたの「買えなかった悔しさ」は、本当にお金の損失だったでしょうか?
損しないための「米国株・信号機タイムマップ」
23時間を1色で見るのは、もうやめましょう。
板の厚さで「赤・黄・青」の3色に塗り分けると、いつ何をすべきかが一目でわかります。
米国株・信号機タイムマップ(日本時間・冬時間)
| 信号 | 時間帯 | 市場の状態 | やること | やらないこと |
|---|---|---|---|---|
| 赤 | 11:00〜18:00(オーバーナイト) | 参加者が少なく板が薄い | 情報を集め、買う価格を決める。決めた価格で指値を置く | 値動きを見て価格を引き上げ、飛びつく |
| 黄 | 18:00〜23:30(プレ)、6:00〜10:00(アフター) | 決算や経済指標で急に動く | 保有株を守るための売り判断 | 決算直後の高値を追いかける |
| 青 | 23:30〜翌6:00(立会時間) | 最も板が厚い | 本命の注文が約定するのを待つ | 夜更かしして画面に張り付く |
夏時間は各時間帯が1時間早まります。
日本時間10:00〜11:00(夏時間は9:00〜10:00)は休止時間です。
合言葉は「赤で決めて、青で買う」。
ルール1:赤の時間は「決める時間」
日本の昼は頭がさえていて、ニュースもそろう時間帯です。
この時間を「売買する時間」ではなく、「価格を決める時間」として使います。
決める価格は、いま画面に見えている値段ではありません。
「この会社になら、この値段まで払える」という自分の物差しです。
PER(株価収益率)や配当利回り、過去の株価の水準など、根拠を一つ添えておくと迷いが減ります。
あなたの指値は、何を根拠に決めていますか?
ルール2:黄の時間は「守る時間」
米国企業の決算は、立会時間の終了後に発表されるケースも少なくありません。
日本時間の早朝、つまりアフターマーケットで株価が大きく動く場面が出てきます。
黄の時間は、保有株に悪材料が出たときの出口を確保するために使うのが基本。
楽天証券も、23時間体制によって資産を守るための出口戦略を細かく実行できるようになると説明しています。
攻めではなく、守りの時間と考えてください。
ルール3:青の時間は「待つ時間」
本命の注文は、最も板が厚い立会時間に約定させるのが基本です。
赤の時間に決めた指値を置いたら、あとは寝てしまってかまいません。
空振りした朝にため息が出るのは、価格を自分の物差しで決めていないからかもしれません。
物差しがあれば、約定しなかった朝も「今日は縁がなかった」と受け流せるものです。
信号機にも例外はある
もちろん例外もあります。保有株に重大なニュースが出て、すぐに手を打たないと損失が膨らむ場面です。
このときは赤の時間でも、許容できる価格を決めたうえで指値で売る判断をためらう必要はありません。
信号機は、あくまで平時のルール。緊急時まで縛るものではないんです。
23時間取引が向く人・向かない人と、日本株への影響
それではどんな人に向いていて、向いていないのでしょう?
向いている人
- 夜は睡眠や家族の時間を優先したい会社員、子育て世代の人
- 保有株の決算や急変時に、朝を待たずに出口を確保したい人
- 日本株と米国株を、同じ昼の時間帯にまとめて管理したい人
向かない人
正直に言うと、23時間取引を使わないほうがいい人もいます。
- 新NISAのつみたて投資枠で、投資信託をコツコツ積み立てている人
- 仕事中にスマホを見ると、つい売買したくなる人
- 一度に大きな金額を動かしたい人
- 信用取引で、昼の短期売買を始めようとしている初心者
特に一つ目の人は、何も変える必要がありません。
投資信託は1日1回算出される基準価額で売買するので、米国株の取引時間が延びても積立のやり方は同じ。
これまでどおり淡々と続けてください。
「見る回数」が増えるほど、成績は下がりやすい
なぜ向かない人がいるのか。行動経済学に「近視眼的損失回避」という考え方があります。
成績を確認する頻度が高い投資家ほど、損失を目にする回数が増え、株式などのリスク資産を減らしてしまう傾向のことです。
売買の回数についても、有名な研究があります。
米国の大手ディスカウント証券に口座を持つ66,465世帯を1991〜1996年について分析したところ、最も頻繁に売買した層の年率リターンは11.4%でした。
同じ期間の市場全体は17.9%です。
23時間取引は、「見る回数」と「売買の回数」を同時に増やしやすい仕組みでもあります。
米ウェルズ・ファーゴのアナリストは、ナスダックの申請直後に、この動きが株式市場の「ゲーム化」を招くと批判しました。
便利さの裏側にあるこの性質を、知ったうえで使いたいところです。
あなたは、自分がどちらのタイプか即答できますか?
日本株への影響:東証の時間に米国株が動き出す
影響は米国株の投資家だけにとどまりません。マネックス証券は、23時間取引によって日本株と米国株の連動性が強まりやすくなると指摘しています。
東証の取引時間は9時〜15時30分で、11時30分〜12時30分が昼休みです。
冬時間なら、このうち11時以降がオーバーナイトセッションと重なります。
たとえば東証の取引中に米国の半導体株が大きく動けば、日本の関連銘柄もそれを横目に売買される場面が増えるかもしれません。
日本経済新聞も、個人マネーが日本株と米国株をまたいで銘柄を選別する動きが強まると報じています。
日本株だけを持っている人にとっても、無関係ではいられない変化なんです。
まとめ
制度が始まるまで、残りはおよそ7週間。
- 使っている証券会社の23時間取引の開始日と、オーバーナイトセッションで使える注文の種類・有効期限
- アプリの株価表示を「時間外取引を含む」に切り替えられるか(楽天証券なら、iSPEEDの「アプリ設定」などで設定できます)
- いま出している米国株の注文が、時間外取引を「有効」にしているかどうか
3つ目は、意外と盲点です。
先ほど触れたとおり、時間外を有効にした注文は寄付きや引けのオークションに参加しない場合があるからです。
私は、投資のために生活を削る必要はないと考えています。
米国株のために夜更かしをして、翌日の仕事や家族との時間がおろそかになる。それでは本末転倒です。
23時間取引は、睡眠を削らずに済む道具にもなれば、昼休みを奪う道具にもなります。
どちらにするかを決めるのは、取引所でも証券会社でもありません。あなた自身です。
赤で決めて、青で買う。この小さなルールが、あなたの時間とお金の両方を守る助けになればうれしいです。
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