「11月から電気代がまた上がる」と聞いて、節電を考えた方は少し待ってください。
今回の値上げは、補助金の終了と送配電網の利用料(託送料金)の引き上げが重なったもの。
中部電力エリアでは値上げ分の96%が基本料金です。
節電より効く「契約の見直し」を、具体的な数字で示します。
結論:11月からの電気代値上げは「節電では防げない値上げ」
結論から言うと、2026年11月からの電気代値上げは、がんばって節電しても、太陽光で自家消費を増やしても、ほとんど防げません。
値上げ分の大半が「基本料金」に乗っているからです。
中部電力ミライズの従量電灯Bで見てみましょう。
11月1日から、基本料金は10Aあたり321.14円から447.92円に上がります。
一方、使った量に応じてかかる電力量料金の上げ幅は、1kWhあたりわずか0.05〜0.06円。
標準的な家庭(30A・月260kWh)の値上げ額は月395円。
このうち基本料金の上昇分が約380円で、全体の96%を占めます(筆者試算)。
電気をまったく使わなくても、30A契約なら毎月約380円高くなる計算なんです。
例えるなら、今回は「蛇口」ではなく「水道管」の値上げ。
蛇口をこまめに閉めても、水道管の使用料は1円も下がりませんよね。
では、何をすれば防げるのか。答えは「使い方」ではなく「契約」の見直しにあります。
この記事では、次の順で解説していきます。
- 電気代の値上げはいつから、どのくらいなのか
- 「電気代がおかしい」と感じる3つの正体
- 節約上手ほど値上げ率が高くなるカラクリ
- 地域ごとに効く対策がひと目でわかる「固定費率マップ」
- 補助金の見通しと、今日やるべきこと
なお、今回の値上げは北陸電力を除く大手電力9社が一斉に実施するもの。
ソフトバンクでんきやLooopでんきなど新電力も、相次いで11月1日からの値上げを発表しました。
大手か新電力かを問わず、ほぼ全国の家庭が対象と考えてよさそうです。
ただし、値上げの「中身」は地域でかなり違います。
東北や沖縄は電力量料金の上げ幅が大きく、節電もそれなりに効くタイプ。
あなたのエリアがどちらのタイプなのかは、後半の表でぜひ確認してみてください。
電気代の値上げはいつから?どのくらい?3つの波で整理
「11月から値上げ」と一口に言っても、実は性格の違う3つの値上げが、時期をずらして押し寄せています。
ここを混ぜて考えると、請求書を見てもモヤモヤが晴れません。
| 時期 | 何が起きるか | 月260kWhの家庭への影響(目安) |
|---|---|---|
| 10月使用分(11月の請求)から | 国の「電気・ガス料金支援」が終了 | 約910円の値引きがなくなる |
| 10月使用分〜 | 燃料費調整額の上昇(中東情勢・為替) | 毎月変動 |
| 11月1日使用分から | 託送料金の改定を反映した料金改定 | 月254〜590円(大手9社のモデル家庭) |
補助金の終了
第1波は補助金の終了です。
2026年7〜9月使用分には、1kWhあたり3.5円(8月使用分は4.5円)の値引きがありました。
9月使用分が最後なので、11月に届く請求(10月使用分)から値引きが消えています。
260kWh使う家庭なら約910円分です。
燃料費調整額
第2波は燃料費調整額。
2026年2月末からの中東情勢の緊迫を受け、多くの電力会社で燃料費調整単価は7月ごろから上昇傾向にあります。
燃料価格は数か月遅れで電気代に反映されるため、冬に向けて油断はできません。
託送料金の改定
第3波が今回の主役、託送料金の改定です。
託送料金とは、送電線や電柱など送配電網の利用料のこと。電気料金の3〜4割を占めています。
経済産業省は2026年9月4日、送配電事業者8社の収入見通しの変更を承認しました。
背景は原材料費・労務費・金利の上昇です。
では、各社の値上げ額を見てみましょう。
| 電力会社 | モデル家庭の条件 | 月の値上げ額 |
|---|---|---|
| 沖縄電力 | 従量電灯・260kWh | 590円 |
| 東北電力 | 30A・260kWh | 485円 |
| 北海道電力 | 30A・230kWh | 481円 |
| 四国電力 | 従量電灯A・260kWh | 478円 |
| 関西電力 | 従量電灯A・260kWh | 407円 |
| 中部電力ミライズ | 30A・260kWh | 395円 |
| 九州電力 | 30A・250kWh | 367円 |
| 中国電力 | 従量電灯A・260kWh | 363円 |
| 東京電力EP | 30A・260kWh | 254円 |
(出典:各社公表のモデル家庭をもとに作成。条件が各社で異なるため単純比較はできません)
北陸電力エリアは今回の託送料金見直しの対象外で、東京電力EPも北陸エリアでは料金を見直さないと案内しています。
適用のタイミングにも注意が必要です。
新料金は11月1日以降に使った電気が対象。検針日によっては11月の請求に日割りで一部が混ざり、全面的に反映されるのは12月に届く請求から、という家庭が多くなります。
北海道電力は、11月分を10月31日までと11月1日以降に分けて日割り計算すると説明しています。
中部電力ミライズの標準家庭なら、年間で約4,740円の負担増。
の家の請求書は、3つの波のどれに一番揺さぶられているでしょうか。
「電気代 値上げ おかしい」と感じる3つの正体
「先月より使っていないのに高い」「単価は変わっていないはずなのに…」。11月から12月にかけて、こんな違和感を持つ方が増えるはずです。
先にお伝えすると、あなたの感覚はおかしくありません。
ややこしいのは、3つの波が同時に請求書に乗ってくる仕組みのほうなんです。
中部電力ミライズの標準家庭(30A・260kWh)で、請求額の流れを追ってみましょう。
| 請求(検針)月 | 月額 | 前の請求との差 |
|---|---|---|
| 10月請求(9月使用分) | 8,211円 | 補助3.5円/kWhあり |
| 11月請求(10月使用分) | 9,308円 | +1,097円(補助終了など) |
| 12月請求(11月使用分)の目安 | 9,703円 | +395円(託送料金改定) |
10月の請求と比べると、2か月で約1,500円、率にして約18%の上昇。
使用量はまったく同じなのに、です。
違和感の正体を分解すると、次の3つになります。
1つ目は「値上げと呼ばれない値上げ」。
補助金の終了は、単価が上がったのではなく値引きが消えただけ。
だから電力会社の料金改定のお知らせには載りません。知らないうちに高くなった、と感じる最大の原因はここにあります。
2つ目は「数か月遅れの燃料費」。
燃料費調整額は、3か月間の平均燃料価格を2か月後の料金に反映する仕組みです。
今月の請求は、いわば夏の燃料価格の通信簿。
ニュースで原油が下がったと聞いても、請求書はすぐには下がりません。
3つ目が「使わなくても増える基本料金」。
今回の託送料金改定の分です。
冷暖房をあまり使わない季節の変わり目でも、基本料金の上昇分は毎月きっちり乗ってきます。
さらに冬は暖房で使用量が増えます。
値引きが消え、基本料金が上がり、使用量まで増える。
12月から1月の請求書は、3つの悪条件が重なるタイミングだと覚えておいてください。
請求額に納得できないときは、検針票か会員サイト(中部電力ミライズならカテエネ)で「使用量」「燃料費調整額」「基本料金」の3行を前月と見比べてみましょう。
どの行が増えたかで、原因はほぼ特定できますよ。
対策にはアンペア変更が有効?
ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。
今回の発表を最初に見たとき、私が真っ先に思ったのは「これは節電しても、太陽光を活用しても、しれているな」ということでした。
家計の固定費を見直すとき、電気代はまず「使用量を減らす」発想から入りがちです。
ところが今回の値上げは、その発想がほとんど通用しない設計になっています。
基本料の値上げがほとんどだからです。
我が家は年間1万5千円以上アップ?
ちなみにわが家の契約は従量電灯Bではなく太陽光やエコキュートを使っている人向けの夜間重点型のプランです。
今回の見直しで、基本料の値上げ額は月1,250円超になりました。
標準家庭の395円と比べて約3.2倍、年間にすると約1万5,000円超の負担増。
使う量を少し減らしたくらいでは、とても埋まらない金額です。
プラン変更を含めて考えたい方向けに今回一番値上げが大きい中部電力の家庭のタイプ別基本料を比較してみました。
| 契約アンペア | 2026年11月以降の基本料金 |
|---|---|
| 20A | 895.84円 |
| 30A | 1,343.76円 |
| 40A | 1,791.68円 |
| 50A | 2,239.60円 |
| 60A | 2,687.52円 |
| スマートライフプラン(10kVA) | 3,106.24円 |
40Aから30Aへ変更できれば、月447.92円の節約です。
年間では約5,375円の削減につながります。
ただし、アンペアを下げると、同時に使える電気機器の容量も制限されます。
エアコン、電子レンジ、ドライヤーなどを同時に使う家庭では、不便になることもあるでしょう。
生活に必要な契約容量を確保したうえで、無理のない範囲で見直す必要があります。
スマートライフプランは乗り換えるべき?
今回、一番値上げ幅が大きいのがスマートライフプランです。
スマートライフプランの基本料金は、10kVA以下の契約について一律に設定されています。
例えば、10kVAから8kVAへ契約容量を下げられたとしても、基本料金は同じ3,106.24円です。
従量電灯Bのように、40Aから30Aへ変更すれば基本料金が下がるという仕組みとは違います。
つまり、スマートライフプランでは10kVA以下の範囲で契約容量を減らしても、基本料金の節約にはつながらないのです。
これは見落としやすいポイントですね。
安易に契約容量を下げても、基本料金が変わらず、同時に使える電気の容量だけが小さくなってしまう可能性があります。
また、スマートライフプランは、夜間の電力量料金が比較的安く設定されているのが特徴です。
2026年11月以降の単価を見ると、デイタイムは38.86円/kWhですが、ナイトタイムは16.58円/kWhです。
その差は22.28円もあります。
例えば、夜間に月300kWh使用する家庭の場合、同じプラン内でデイタイムの単価と比較すると、その300kWh分には6,684円の差があります。
もちろん、これは夜間料金の特徴を示す単純計算であり、他の料金プランと比較した節約額ではありません。
実際の料金プラン比較では、それぞれの基本料金や電力量料金、燃料費調整額などを含めて計算する必要があります。
特にエコキュートを利用している家庭では、夜間にまとまった電力を使うため、時間帯別料金のメリットが大きくなる可能性があります。
基本料金の値上げを嫌って別のプランへ変更した結果、電力量料金の増加によって年間の電気代が高くなることも考えられるのです。
地域で効く対策が違う「固定費率マップ」
ここで、ひとつ便利な物差しを紹介します。
今回の値上げ額のうち、基本料金(最低料金)が占める割合を電力会社ごとに計算し、効く対策を3タイプに分けたものです。
| タイプ | エリアと固定費率 | 効く対策 |
|---|---|---|
| 基本料金型 | 九州100%超・北海道96%・中部96%・東京95% | 契約アンペアの見直し、プラン変更 |
| 混合型 | 中国62%・四国60%・関西59% | プラン・電力会社の見直し+節電 |
| 従量型 | 東北25%・沖縄21% | 節電・太陽光がそのまま効く |
(筆者試算。各社の規制料金(従量電灯)の改定前後の単価と、各社モデル家庭の使用量・契約をもとに計算。九州電力は電力量料金が0.04円/kWh下がるため100%を超えます)
使い方はかんたん。
自分のエリアがどのタイプかを確認して、右端の対策から手をつけるだけです。
基本料金型(北海道・東京・中部・九州)の家庭は、節電より先に「契約アンペア」を見直してください。
中部電力ミライズなら、10A下げると月447.92円、年間で約5,375円の節約になります。
改定前は年約3,854円だったので、アンペアを1段階下げる価値は今回39%も上がりました(筆者試算)。
混合型(関西・中国・四国)は、基本料金ではなく「最低料金」が上がる仕組みです。
関西電力の最低料金は522.58円から763.81円へ上がります。
最低料金はアンペアでは変わらないので、プランや電力会社の見直しと節電の合わせ技が効いてきます。
従量型(東北・沖縄)は電力量料金がしっかり上がるタイプ。
東北電力は電力量料金が全段階で1.39円/kWh上昇します(出典:同上)。
こちらは節電や太陽光の効果が、そのまま値上げ対策になります。
このマップから見えてくるのは、「節電こそ最強の節約術」という常識が、住んでいる地域によっては通用しないという事実です。
同じニュースを見て同じ対策をしても、効果には何倍もの差が出ます。
SNSで見かけた節約術をそのまま真似する前に、自分の地域のタイプを確かめてみてください。
注意点も挙げておきます。
この表は大手電力の規制料金(従量電灯)での計算です。自由料金プランや新電力では、値上げの乗せ方が異なります。
わが家のプランが月1,267円も上がったように、同じエリアでもプランによって値上げ額は大きく変わります。
東邦ガスの電気も、40A・月320kWhのモデルで月525円の値上げです。
ご自身の契約先から届いた案内は、必ず目を通しておきましょう。
まとめ
最後に、具体的な対策と補助金の見通しをまとめます。
対策1:契約アンペアを確認する(今日やること)
まずは検針票か会員サイトで、いまの契約アンペアを確認しましょう。
かかる時間は3分ほど。基本料金型のエリアなら、これが最も費用対効果の高い対策です。
ブレーカーが落ちた記憶がほとんどない家庭は、1段階下げても困らない可能性があります。
スマートメーターが付いていれば、多くの場合は工事不要で、変更手数料も原則かかりません。
ただし、次のような家庭には向きません。
- 電子レンジ・ドライヤー・エアコンを同時に使うことが多い
- 在宅勤務で、日中もエアコンとパソコンを使い続ける
- 冬に電気ストーブや電気カーペットをフル稼働させる
ブレーカーが頻繁に落ちれば、生活の質は確実に下がります。
冬本番の前に、無理のない範囲で判断してください。
対策2:料金プラン・電力会社を見直す
基本料金の安いプランや、基本料金のないプランへの切り替えも選択肢です。
ただし託送料金は、送配電網を使うすべての電力会社が支払う費用。
新電力に乗り換えても、値上げそのものからは逃げられません。
実際、ソフトバンクでんきやLooopでんきも11月1日からの値上げを発表しています。
比較するときは、必ず改定後の単価で比べること。
あわせて、燃料費調整額の上限の有無と解約金も確認しておきましょう。
大手電力の規制料金(従量電灯)には燃料費調整額の上限がありますが、自由料金プランにはありません。
燃料価格が高騰したとき、この差が効いてきます。
「電気代 値上げ 補助金」はどうなる?冬の再開は未定
2026年10月7日時点で、10月使用分以降の電気・ガス料金支援について、政府の正式発表はありません。
過去を振り返ると、2026年1〜3月使用分には1kWhあたり4.5円(3月は1.5円)の補助がありました。
冬の補助が再開される可能性はありますが、決まっていない補助金を当てにした家計管理はおすすめできません。
補助金は期間限定、基本料金の値上げは恒久的。この違いは押さえておきたいところです。
管理会計の基本は、コストを固定費と変動費に分けて考えることです。
今回の電気代値上げは、まさに固定費側の値上げ。だから変動費を削る節電では、なかなか取り返せません。
「こんなに節電しているのに、なぜ下がらないの」と自分を責めてしまう方がいたら、それはあなたの努力不足ではありません。
値上げの仕組みがそうなっているだけです。打つべき手を打つ場所さえ間違えなければ、家計はちゃんと守れます。
この記事が、その場所を見つける地図になればうれしいです。

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