SBIオールカントリーが信託報酬0.055%で登場します。
オルカンから乗り換えるべきか、迷っていませんか。
この記事を読めば、動く前に確認すべき数字が分かります。
根拠はシンプルです。
信託報酬の差は100万円で年27.5円。
一方、信託報酬に載らない費用はその約13倍ありました。
結論:差は100万円で年27.5円、乗り換えは急がなくていい
結論から言うと、いまオルカンを持っている人が慌てて乗り換える理由は見当たりません。
新しく積み立てる先として検討するのは「あり」です。
ただ、それも初回の運用報告書を見てからで十分間に合います。
理由は3つあります。
- 信託報酬の差は0.00275ポイント。100万円あたり年27.5円にすぎない
- 信託報酬に含まれない費用が、オルカンの実績で年0.036%ある。差の約13倍
- 課税口座で乗り換えると、利益に20.315%の税金がかかる
数字を並べると拍子抜けしませんか。
10月1日の発表直後、SNSには「最安更新」という言葉が飛び交いました。
けれど財布から出ていく金額で見ると、缶コーヒー1本にも届かない差なんですよ。
もちろん、SBIオールカントリーが悪い商品だと言いたいわけではありません。
信託報酬0.055%は、同じ指数に連動する公募投資信託のなかで業界最低水準です。
低コスト競争が進むこと自体は、私たち投資家にとって歓迎すべき話ですね。
ただ、最安という言葉と、あなたの資産が増えるかどうかは別の問題。
この記事では発表資料と運用報告書という一次資料を使い、その中身を一緒に確かめていきます。
SBI・オールカントリー・インデックス・ファンドとは?
SBIオールカントリーとは、SBIアセットマネジメントが2026年11月17日に設定する全世界株式のインデックスファンドです。
正式名称は「SBI・オールカントリー・インデックス・ファンド」。
信託報酬は0.055%
オルカンの0.05775%以内よりも安いんですよ。
ベンチマークはオルカンと同じMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとなっています。
設定日は2026年11月17日予定です。
雪だるま(全世界株式)と混同しない
SBI証券には「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」、愛称「雪だるま(全世界株式)」という名前もコンセプトも似た商品があるため、混同しないようにお気をつけください。
雪だるま(全世界株式)はFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスがベンチマーク。
今回のSBIオールカントリーはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスなので指数から異なるんですよ。
また、「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」という商品もあります。
こちらもFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスがベンチマークとなっています。
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスとMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの違いや雪だるまとSBI・V・全世界株式インデックス・ファンドの違いはこちらのページで解説しております。
合わせてご覧ください。

ゼロカンとの比較
こどもNISA専用の「ゼロカン」も同じ2026年10月1日に発表されました。
そちらとも整理しておきましょう。
| 項目 | SBIオールカントリー | ゼロカン |
|---|---|---|
| 正式名称 | SBI・オールカントリー・インデックス・ファンド | SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド |
| 信託報酬(年率・税込) | 0.055% | 0.00% |
| 連動をめざす指数 | MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース) | 同じ |
| 買える口座 | NISA(成長投資枠・つみたて投資枠)、課税口座など | こどもNISA専用 |
| 申込みの開始 | 当初申込期間は2026年10月19日〜11月16日 | こどもNISAの取扱開始日に準ずる |
| 設定日 | 2026年11月17日 | 2026年11月17日 |
押さえておきたい点は3つです。
1つ目は、2本が同じマザーファンドに投資すること。
マザーファンドとは、複数のファンドの資金をまとめて運用する「親」の器を指します。
つまりSBIオールカントリーとゼロカンは、中身が同じで手数料だけが違う兄弟なんですね。
2つ目は、運用の一部をステート・ストリートに委託すること。
同社の運用資産残高は6.28兆米ドル(2026年6月30日時点)で、1993年に米国初のETFを組成した会社でもあります(出典:SBIアセットマネジメント、2026年10月1日)。
SBIグループは2026年5月、同社と合弁会社設立に向けた基本合意を結びました。
3つ目は、こどもNISAとの関係です。
こどもNISAは2027年1月に開始予定の制度。0歳から17歳が対象で、年間60万円、非課税保有限度額600万円まで投資できます(出典:同上)。
ゼロカンは18歳以降も信託報酬0.00%のまま保有できますが、積立購入はこどもNISAに限られます。
そこで「18歳以降の積立先」として用意されたのがSBIオールカントリー、という設計でした。
なお、SBI証券の公式Xは「買えるのはSBI証券だけ」と案内しています。
ここで1つ疑問が湧きませんか。大人の私たちにとって、0.055%という数字はどれほどの意味を持つのか。

SBIオールカントリーとオルカンを比較、差は0.00275%
SBIオールカントリーとオルカンの比較で、いま確定している違いは信託報酬の0.00275ポイントだけです。
それ以外の実質コストや運用成績は、SBIオールカントリー側にまだデータがありません。
ここでいうオルカンは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」のこと。2本を並べます。
| 項目 | SBIオールカントリー | オルカン |
|---|---|---|
| 運用会社 | SBIアセットマネジメント | 三菱UFJアセットマネジメント |
| 信託報酬(年率・税込) | 0.055% | 0.05775%以内 |
| 設定日 | 2026年11月17日 | 2018年10月31日 |
| 純資産総額 | 設定前 | 約13.4兆円(2026年9月9日) |
| 総経費率 | 未公表 | 0.08%(第7期) |
| 指数との差 | 実績なし | プラス0.2%(第7期) |
0.00275ポイントと言われても、ピンと来ないですよね。金額に直してみましょう。
| 保有額 | SBIオールカントリー | オルカン | 差額(年) |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 550円 | 577.5円 | 27.5円 |
| 500万円 | 2,750円 | 2,887.5円 | 137.5円 |
| 1,800万円 | 9,900円 | 10,395円 | 495円 |
(保有額が1年間変わらないと仮定した信託報酬だけの単純計算です)
NISAの非課税保有限度額1,800万円を使い切っても、差は年495円。30年続けても単純計算で約1.5万円でした。
運用益が積み上がればもう少し広がりますが、桁が変わるほどではありません。
しかも、この差がずっと続く保証もないんです。
eMAXIS Slimは「業界最低水準の運用コストを目指し続ける」と掲げ、オルカンの信託報酬を過去4回引き下げてきました。
直近では2023年9月8日、年0.1133%以内から0.05775%以内へ下げています
2026年10月3日時点で、三菱UFJアセットマネジメントから追随の発表は確認できていません。
ただ、過去の経緯を見るかぎり「差がゼロになる日」が来ても不思議ではないでしょう。
目指すと言っているだけで、達成の約束ではない点には注意してください。
あなたが乗り換えで得たいのは、年27.5円でしょうか。おそらく違いますよね。
本当に知りたいのは「長く持って損をしないのはどちらか」のはず。
そこで信託報酬の外側に目を向けます。
二つ買えば、分散が二倍になるわけではない
「どちらもよさそうなので、半分ずつ持とう」と考える人もいるはずです。
運用会社を分ける意味はあります。
ただ、同じ指数への連動を目指す以上、投資対象は大きく重なります。
商品を二つに増やすことと、値動きの異なる資産へ分散することは、分けて考えたいですね。
また、「全世界」は各国へ均等に投資する意味ではありません。
参考に、オルカンの2026年8月末の月次レポートでは、米国の構成比は62.8%でした。国の名前がたくさん並んでいても、投資額まで均等ではないんですよ。
これはSBIだけの欠点ではなく、同じ指数を選ぶ際の共通の確認事項です。
費用の差を比べる前に、そもそもこの投資対象を長く持ちたいのか。
そこが決まっている人にこそ、細かな商品比較が役立ちます。
信託報酬だけでは分からないコストは3階建て
投資信託のコストは、信託報酬・それ以外の費用・最終的な手取りの3階建てで見ないと判断を誤ります。
SBIオールカントリーで確定しているのは、まだ1階だけなんです。
信託報酬は、運用を始める前に決めた「予算」にあたるもの。
実際にいくらかかったかは、決算後に出る運用報告書を開くまで分からないんですよ。
20年以上投資を続けるなかで、このズレは何度も目にしてきました。
分かりやすい前例があります。
2023年10月、信託報酬最安で登場した「楽天・オールカントリー」。
翌2024年に出た初回の運用報告書で示された総経費率は0.10%で、信託報酬は最安なのに総経費率では2番目でした
LCCの航空券を思い浮かべてください。運賃は安くても、手荷物料金や座席指定料を足すと総額が変わりますよね。
信託報酬は値札。あなたが払うのはレシートの金額です。
そこで私が使っているのが「コスト3階建てチェック」です。
| 階 | たとえ | 中身 | 確認する場所 | オルカン(第7期) | SBIオールカントリー |
|---|---|---|---|---|---|
| 1階 | 値札 | 信託報酬 | 目論見書 | 0.058% | 0.055% |
| 2階 | レシート | 売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用など | 交付運用報告書の「1万口当たりの費用明細」 | 0.036% | 未確定 |
| 3階 | 手取り | 指数との差、ポイント還元、乗り換え時の税金 | 運用報告書、販売会社のサイト | 指数をプラス0.2%上回る | 実績なし |
2階から見ていきます。オルカンの第7期は、費用の合計が0.094%でした。
うち信託報酬が0.058%なので、信託報酬以外に0.036%かかっています。
これは1階の差0.00275%の約13倍にあたる大きさです。
とくに効くのが新興国株の保管費用。
オルカンが投資する新興国株式マザーファンドでは、「その他費用」が0.124%ありました。
全世界株式ファンドは、新興国を含むぶん2階が膨らみやすいわけです。
SBIオールカントリーは、新しいマザーファンドをゼロから立ち上げます。
初年度の2階がいくらになるかは、現時点では誰にも分かりません。
SBIアセットマネジメント自身も、監査報酬や売買委託手数料、保管費用などは別途かかり、事前に料率や上限を示せないと明記しています。
続いて3階です。
オルカンの第7期は、基準価額の騰落率が1.1%、ベンチマークが0.9%。指数を0.2%上回りました。
配当にかかる税率の違いなどが要因です。
たった1期の話ですが、この0.2%は信託報酬の差の70倍以上。指
数との差のブレのほうが、値札の差よりずっと大きいんですね。
ポイント還元も3階に入ります。
今の時点では分かりませんが、そちらも確認する必要があるでしょう。
SBIオールカントリーのデメリット3つと向かない人
SBIオールカントリーのデメリットは、実質コストが未確定、運用実績がゼロ、買える場所がSBI証券だけ、の3つです。
どれも「商品が悪い」という話ではなく、「まだ分からない」ことから来ています。
実質コストが決算まで分からない
前の章で見たとおり、確定しているのは1階の信託報酬だけ。
2階の費用は、初回の決算を迎えて運用報告書が出るまで空欄のままです。
決算日と報告書の時期は、交付目論見書で確認してください
設定直後のファンドは、資金が入るたびに世界中の株を買い付けます。
そのぶん売買にかかる費用がかさむ可能性があるんですね。純資産が13兆円を超えるオルカンとは、スタート地点が違います。
運用実績がゼロ
インデックスファンドの実力は、指数にどれだけ正確に付いていけるかで決まります。
SBIオールカントリーには、それを測る材料がまだ1日分もありません。
SBIアセットマネジメントの資料にも、留意点が書かれています。
同じマザーファンドに投資する別のファンドで資金の出入りがあると、基準価額が影響を受けることがある、という内容です。
ゼロカンと器を共有する以上、頭に入れておきたい点でしょう。
公平のために付け加えます。
同じステート・ストリートに運用を委託する「SBI NASDAQ100インデックス・ファンド」は、2026年5月21日の設定から63営業日で純資産1,000億円を超えました。
資金が集まらずに早期償還、という心配は小さそうです。
とはいえ、お金が集まることと、指数に正確に連動することは別の話ですよね。
買えるのはSBI証券だけ
NISA口座は1人につき1つの金融機関でしか開けません。
楽天証券やマネックス証券でNISAを使っている人は、そのままではNISAで買えないわけです。
金融機関の変更は年単位の手続きになり、思い立った日に切り替えられるものでもありません。
年27.5円のために、使い慣れた証券会社とクレカ積立の設定を全部やり直す。
その手間に見合うかどうかを考える必要があります。
向かない人、検討していい人
向かない人はこちらです。
- オルカンを課税口座で持ち、含み益が出ている人
- SBI証券以外でNISA口座を開いている人
- 実績を確認してから買いたい人
- そもそも株式100%の値動きに耐えられない人
最後の1つは見落とされがちですね。SBIオールカントリーもオルカンも、株価と為替の変動で元本を割り込むことがあります。ど
ちらを選ぶかより、株式にどれだけ資金を置くかのほうが、資産への影響はずっと大きいんですよ。
一方、検討していい人もいます。
- SBI証券でこれから全世界株式の積立を始める人
- こどもNISAでゼロカンを使い、親も同じ中身でそろえたい人
オルカンから乗り換えると損をしやすい理由
オルカンからSBIオールカントリーへ乗り換えると、多くの場合、節約できる信託報酬より失うもののほうが大きくなります。
口座の種類ごとに見ていきましょう。
課税口座:税金を取り戻すのに約1,480年
評価額500万円、うち含み益100万円のオルカンを売って買い直すケースで計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却時に払う税金(100万円×20.315%) | 203,150円 |
| 乗り換えで減る信託報酬(年) | 137.5円 |
| 税額を取り戻すまでの年数 | 約1,480年 |
税金はいずれ売るときに払うものなので、丸ごと損になるわけではありません。
ただ、いま払えば約20万円が手元から消えます。
そのお金が将来生むはずだった運用益まで手放すことになるんです。
NISA口座:非課税でも枠がすぐには戻らない
NISAなら売却益に税金はかかりません。
それでも落とし穴があります。売った分の非課税枠が復活するのは翌年で、年間に買える上限は360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)です。
たとえば1,000万円分を売っても、その年に買い直せるのは年間投資枠の残りだけ。あふれた資金は現金で待つか、課税口座に置くしかありません。
待っているあいだに相場が上がれば、年27.5円どころではない差がつきます。
なお、売却枠を同じ年のうちに復活させる案が、金融庁の2027年度税制改正要望に入ったと報じられています。
実現するかどうかは、まだ決まっていません。
現実的な選択肢は3つ
- 何もしない。オルカンをそのまま続ける
- 持っている分は動かさず、新しい積立分だけSBIオールカントリーにする
- 初回の運用報告書が出てから決める
2を選んだ場合の効果も計算しておきます。月5万円の積立なら、1年目に浮く信託報酬は最大でも約16円。
管理するファンドが1本増える手間と比べて、どう感じますか。
人は「何かしないと損をする」と感じやすい生き物です。
行動経済学ではアクション・バイアスと呼ばれる心のクセ。新商品のニュースを見て落ち着かなくなったら、このクセを思い出してください。待つことのコストは、今回ほぼゼロです。
まとめ
今日やることは1つ。あなたが持っているファンドの交付運用報告書を開き、「1万口当たりの費用明細」を見てください。
手順はこれだけです。
- 運用会社のサイトでファンド名を検索する
- 交付運用報告書のPDFを開く。オルカンなら3ページ目
- 費用の合計と信託報酬の差を引き算する。これが2階の数字
- すぐ下にある「総経費率」もメモする
スマホで5分あれば終わります。
自分のファンドの「レシート」を一度見ておくと、次に新商品が出ても慌てなくなりますよ。
SBIオールカントリーの初回運用報告書が出たら、同じ欄を見比べるだけで済みます。
信託報酬以外のコストの見方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
最後に、私がこの記事を書いた理由を。最安という言葉に振り回されて、積立そのものをやめてしまう人を1人でも減らしたいからです。
0.00275%の差より、20年続けることのほうが資産を育てます。値札ではなくレシートを見る習慣を、今日から一緒に始めましょう。
(この記事は特定の商品の購入や売却を勧めるものではありません。投資の判断は、最新の交付目論見書を確認のうえご自身でお願いします)
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