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休眠預金は「没収」されない。本当に消えるお金はどこにあるのか

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休眠預金で損

長い間、一度も触っていない銀行口座はありませんか。

子どものころに親がつくってくれた口座。

学生時代のアルバイト用の口座。転勤先で開いて、そのままになっている口座。

心当たりがあるなら、この記事はあなたのためのものです。

「10年放置すると、休眠預金として没収されるらしい」。

そんな話を、どこかで耳にされたかもしれません。

残高がそれなりにあるなら、不安になるのは当然です。

結論を先にお伝えします。

銀行の休眠預金は、没収されません。

10年たっても、20年たっても、あなたが手続きをすれば全額戻ってきます。

ただし、この記事で本当にお伝えしたいのは、その先です。

「休眠預金は没収されない」という事実の裏で、ほとんど語られないまま、静かにあなたのお金を削っている仕組みが二つ存在します。

そして、世間が「没収」と呼んで恐れているものと、実際にお金が消える仕組みは、まったくの別物なのです。

この記事を読み終えるころには、あなたは「休眠預金とは何か」を正確に理解し、放置口座の本当のリスクと、今日やるべき3つの行動がはっきり見えているはずです。

目次

「没収」という言葉が、あなたの判断を狂わせている

検索窓に「休眠預金 没収」と打ち込んだ方は、おそらくこう感じています。

「自分のお金が、政府かどこかに取り上げられるのではないか」と。

この感覚は、行動経済学でいう損失回避の典型です。

人は、同じ金額でも「得すること」より「失うこと」を二倍以上強く感じる、とされています。

だからこそ「没収」という強い言葉は、私たちの注意を一点に釘づけにします。

しかし、その注意が一点に集中している間、視野の外で起きていることを見落としてしまう。

これが、休眠預金をめぐる最大の落とし穴です。

順を追って、誤解を一つずつほどいていきましょう。

そもそも「休眠預金とは」何か

「休眠預金とは」、シンプルに言えば、10年以上、入出金などの取引がない預金のことです。

2018年1月に「休眠預金等活用法」が全面施行されました。

正式名称は「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」といいます。

2009年1月以降にあった入出金等の取引から10年以上、その後の異動がない預金等が「休眠預金等」の対象になります。

ここでいう「取引」「異動」とは、入金や出金だけではありません。

多くの金融機関では、ATMでの残高照会や通帳記帳、各種変更手続きなども取引に含めています。

つまり、一度でも記帳していれば、そこから10年のカウントが始まる、ということです。

規模感もお伝えしておきます。

政府広報オンラインによると、10年間取引がない預金は毎年1,200億円程度発生し、そのうち500億円程度はその後払い戻されています。

差し引き700億円ほどが、毎年「眠ったまま」になっている計算です。

10年が経過すると、その預金は預金保険機構という組織に移されます。

そして、行政では対応が難しい社会課題の解決のためにNPOが活用しています。

これが制度のおおまかな流れです。

「睡眠預金」と「休眠預金」の違いは、あるのか

結論から言えば、両者に法律上の違いはありません。

同じものを指す二つの呼び名です。

かつて金融業界では「睡眠預金」「睡眠口座」という言い方が一般的でした。

実際、いまも一部の金融機関は「休眠預金(睡眠口座)」と併記しています。

一方、2018年に施行された法律が「休眠預金等活用法」という名称を採用したことで、現在は「休眠預金」が公的な呼称として定着しました。

ですから、「睡眠預金と休眠預金、どちらが正しいのか」と悩む必要はありません。

指しているお金は同じです。

違いがあるとすれば、後ほど触れる「旧郵便貯金」のような、まったく別ルールの預金との混同のほうが、はるかに深刻な誤解を生みます。

銀行の休眠預金は「没収」されない

ここが、この記事の前半でもっともお伝えしたい点です。

休眠預金になっても、あなたのお金は消えません。

預金保険機構に移管された後も、引き続き、取引のあった金融機関で引き出すことができます。

これは休眠預金等活用法の第7条という条文に、はっきり明記された権利です。

なぜ「没収されない」と言い切れるのか。

その根拠は、制度の設計そのものにあります。預金保険機構は、移管された休眠預金等のうち、当面の間は5割を、将来の引き出しに備えた準備金として積み立てることになっています。

先ほどの数字を思い出してください。毎年発生する1,200億円のうち、実際に払い戻されるのは500億円程度。

つまり払戻率は4割強です。

それに対して5割を準備金として確保しているのですから、引き出し請求に対する備えとしては十分な水準だといえます。

言い換えれば、休眠預金の活用とは「没収」ではなく、「持ち主が現れるまで、社会のために一時的に活用する」仕組みなのです。

家を長期で空けるとき、知人に貸して家賃を地域に役立ててもらう。

でも、あなたが帰ってくると言えば、いつでも明け渡してもらえる。

イメージとしては、それに近いものです。

休眠預金を「復活」させる手続き

では、休眠預金になった口座を「復活」させるには、どうすればよいのでしょうか。

手続き自体は、拍子抜けするほど単純です。

取引のあった金融機関の窓口へ行き、本人確認をする。それだけです。

持っていくものは、おおむね次の3点です。

  • 通帳またはキャッシュカード
  • 届出印(銀行印)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)

これらがそろっていれば、預金の引き出しはもちろん、口座そのものを再び使える状態に戻せる金融機関もあります。

もう使う予定がなければ、その場で解約することも可能です。

通帳や印鑑が見当たらない場合でも、あきらめる必要はありません。

多くの金融機関は、本人確認のうえで個別に対応してくれます。

亡くなったご家族の古い通帳が出てきた、というケースでも、相続の所定の手続きを踏めば、相続人が払い戻しを受けられます。

注意点を一つだけ。

合併などで、取引していた金融機関の名前が変わっていることがあります。

その場合は、現在その業務を引き継いでいる金融機関が窓口になります。

「もう銀行がない」と思っても、たいていは引継ぎ先が存在します。

ここまでが、世間で語られる「休眠預金」の話です。

ここから先が、本題です。

本当に「没収」されるお金は、別の場所にある

休眠預金は没収されない。

では、世の中で「没収された」「お金が返ってこない」と語られる事例は、何なのか。

その多くは、銀行預金ではなく、郵政民営化より前に預けられた「旧郵便貯金」の話です。

そして、これこそが文字どおりの「没収」なのです。

少し専門的になりますが、ここは重要なので丁寧に説明します。

2007年9月30日以前に郵便局へ預け入れた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金などは、郵政民営化のときにゆうちょ銀行へは引き継がれませんでした。

これらは「旧郵便貯金法」という古い法律が適用される、特別な扱いの貯金です。

そして旧郵便貯金法には、銀行預金には存在しない、決定的なルールがあります

満期日の翌日から20年間払戻しがなく、その後送られる「権利消滅のご案内(催告書)」の送付日からさらに2か月たっても払い戻されないとき、その貯金を払い戻す権利は消滅します。

権利の消滅。これは「一時的に預かる」のではありません。

お金を受け取る権利そのものが、法的に消えてなくなるのです。これが、本物の「没収」です。

しかも、深刻な問題があります。

2021年度に送られた催告書の約8割が、宛先不明などで届かなかったという報道があります。

20年も前の住所に通知を送れば、引っ越しや相続で届かないのは当然です。

つまり、「知らないうちに権利が消えた」人が、相当数いるとみられるのです。

ここで、冒頭の「損失回避」の話に戻ります。

私たちは「休眠預金 没収」という言葉に注意を奪われ、銀行口座の心配ばかりしてしまう。

その一方で、本当に没収が起きている旧郵便貯金には、ほとんど注意を向けていない。

注意の総量には限りがあります。間違った場所に不安を向けている間に、正しく不安を向けるべき場所が手薄になる。これが、最初にお伝えした「視野の外」の正体です。

実家の片づけで古い郵便貯金の通帳や証書が出てきたら、それは銀行の休眠預金とはまったく別物だと考えてください。

一刻も早く、郵便局の貯金窓口かゆうちょ銀行へ相談する。

これは「急いだほうがよい」ではなく、「急がないと権利が消える」案件です。

もう一つの静かな侵食、「未利用口座管理手数料」

本物の「没収」が旧郵便貯金だとすれば、もう一つ、銀行預金の側で静かに進行している侵食があります。

それが「未利用口座管理手数料」です。

これは、休眠預金とよく混同されますが、まったく別の仕組みです。

現実に小さな口座の残高を削っているのは、休眠預金制度ではなく、むしろこちらです。

未利用口座管理手数料とは、一定期間使われていない口座に対して、銀行が独自に課す手数料のことです。

たとえば三菱UFJ銀行は、2021年7月1日以降に開設され、2年以上未利用となった普通預金口座に、年間1,320円(税込)の未利用口座管理手数料を新設しました。

りそな銀行、三井住友銀行、地方銀行など、導入する金融機関は年々増えています。

ここで見逃せないのが、地方銀行の一部が採用している「自動解約」の運用です。

たとえば山口銀行では、基準日から2年以上利用がなく残高1万円未満の普通預金を「未利用口座」とし、毎年の引落日に管理手数料を徴収するとともに、残高1,320円未満になった口座は自動的に解約します。

この流れを、想像してみてください。

残高3,000円ほどの、忘れられた口座があったとします。

1年目に1,320円が引かれ、残高は約1,680円。2年目にもう1,320円が引かれ、残高は約360円。

手数料を引ききれなくなった時点で、口座は自動的に解約される。数年で、口座そのものが消えてしまうのです。

休眠預金とは性質がまったく違うことに、お気づきでしょうか。整理すると、次のようになります。

項目休眠預金未利用口座管理手数料
主体法律にもとづく国の制度各金融機関が独自に設定
発生まで取引がない状態が10年多くは2年以上未利用
お金は預金保険機構へ移管。社会活動に活用銀行の手数料収入になる
取り戻せるか手続きをすれば全額戻る手数料分は戻らない
最悪のケース復活手続きをすれば問題なし残高が尽きて口座が自動解約

つまり、こういうことです。

残高が大きい口座は、休眠預金になっても全額守られます。

ところが、残高の小さい口座は、休眠預金になる10年よりずっと早く、わずか2年の放置で、銀行自身の手数料によって静かに削られていく。

「没収を恐れて大きな口座を心配する」より、「忘れている小さな口座をいま閉じる」ほうが、よほど実利にかなっているのです。

なお、未利用口座管理手数料には、たいてい免除条件があります。

残高が一定額(多くは1万円)以上ある、同じ支店に定期預金がある、給与振込や口座振替で使っている、といった口座は対象外です。

日常的に使っている口座を心配する必要はありません。あくまで「忘れられた、残高の少ない口座」が標的になる、と理解してください。

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「問題NPO」の議論を、どう冷静に見るか

最後に、もう一つの不安に向き合います。

「休眠預金 問題NPO」というキーワードです。

休眠預金の活用が議論され始めたころ、一部のメディアは強い言葉で警鐘を鳴らしました。

ある経済誌は2015年に、休眠預金が「問題だらけのNPO業界の手に落ちようとしている」と報じています。

国民の眠ったお金が、ガバナンスの怪しい団体に流れるのではないか、という懸念です。

ここは冷静に分けて考える必要があります。

休眠預金をNPOなどの民間公益活動に使うこと自体が悪いわけではありません。

社会課題の現場に近い団体だからこそ、行政では届きにくい支援ができる場合があります。

一方で、民間団体にお金が流れる以上、選定の透明性、成果の検証、利益相反の防止、情報公開は欠かせません。

実際にほとんど実態がないようなNPOに多額のお金が集まっていた事例も問題になっています。

実際、休眠預金活用プラットフォームは、原資が国民の資産であることから、情報開示の徹底や制度全体の透明性確保が強く求められると説明しています。

また、助成の選定有無にかかわらず申請団体の情報を公開し、人件費水準やガバナンス・コンプライアンス体制に関する規程類などの公表も求めています。

内閣府も、休眠預金等に係る資金の活用では、成果を含めた情報を国民に分かりやすい形で公表し、説明責任を果たすこと、透明性を確保すること、利益相反の防止により公正性に疑念を持たれないようにすることを示しています。

つまり、制度側も「透明性が大事」と言っています。

しかし、それでも不信が残るのはなぜでしょうか。

理由は簡単です。

制度の説明はあっても、普通の預金者にとっては、自分の預金が社会にどう役立ったのかが見えにくいからです。

JANPIAが2026年3月に公表した認知度調査では、「休眠預金」の認知は約65%ある一方、「休眠預金等活用制度」の認知は約35%、内容まで理解している人は約19%にとどまっています。

また、制度を「信頼できる」「やや信頼できる」と答えた人は約37%で、信頼できない理由として「使い道が不透明」「支援先の選定基準が分かりにくい」などが挙げられています。

ここに、休眠預金制度の最大の課題があります。

制度は存在する。情報公開もされている。

しかし、生活者の実感としてはまだ届いていない。

だからこそ、休眠預金の記事で大切なのは、「NPOに使われるから危ない」と煽ることではありません。

「国民の資産を使う制度である以上、使途・成果・選定基準を見続ける必要がある」と伝えることです。

まとめ

休眠預金とは、10年以上取引のない預金です。

2009年1月以降に最後の異動があった預金等が原則として対象となり、普通預金や定期預金などが含まれます。

休眠預金は没収ではありません。

手続きすれば、取引のあった金融機関で引き出すことができます。

通帳やキャッシュカードをなくしていても、本人確認書類などで手続きできる可能性があります。相続人も所定の手続きを経て引き出せます。

ただし、休眠預金は「戻せるから安心」ではありません。

手続きには時間がかかることがあります。

ATMで完結しないこともあります。相続時には家族の負担になります。

そして、休眠預金とは別に、未利用口座管理手数料という現実的なコストも広がっています。

預金は、置いておけば安全。

かつてはそう言えたかもしれません。

しかし、今は違います。

銀行口座にも管理コストがあり、金融機関は使われていない口座を放置し続ける時代ではなくなっています。

これからの家計管理で必要なのは、「増やす力」だけではありません。

「眠らせない力」です。

使う口座は使う。

使わない口座は解約する。

不明な口座は調べる。

その小さな整理が、将来の手数料、相続の混乱、家計の見えにくさを防ぎます。

今日やることは、たった1つで十分です。

財布の中、引き出しの中、古い書類の中に、使っていない通帳やキャッシュカードがないか確認してみてください。

そこに眠っているのは、数百円の預金かもしれません。

しかし、本当に取り戻せるのは、お金そのものではなく、「自分の資産を自分で把握している」という安心感です。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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