「100億円投資家」として知られる井村俊哉氏が、ついに公募投資信託の世界に足を踏み入れました。
2025年1月に運用を開始した「fundnote日本株Kaihouファンド」は、当初募集で約100億円を集め、直販ファンドとしては過去最大規模のスタートを切りました。
しかし、多くの投資家が見落としている重要な事実があります。
それは、井村氏が「ファンドマネージャー」ではなく「投資助言者」という立場を選んだことです。
この選択には、どのような意味が込められているのでしょうか。
そして、私たち個人投資家にとって、このファンドはどのような選択肢となりうるのでしょうか。
本記事では、Kaihouファンドの仕組みから運用成績、そしてSNSで話題となった「喧嘩」の真相まで、徹底的に解説していきます。
fundnote日本株Kaihouファンドの基本情報
まず、Kaihouファンドの基本的な仕組みを押さえておきましょう。
正式名称は「fundnote日本株Kaihouファンド」で、愛称は「匠のファンド かいほう」です。
2025年1月27日に運用を開始し、償還日は2035年9月25日と設定されています。
申込単位は100万円以上1円単位と、一般的なインデックスファンドと比べるとハードルが高めです。
これは、長期的な視点で投資にコミットできる投資家を対象としていることの表れといえるでしょう。
信託報酬は年率1.87%(税込)で、アクティブファンドとしては標準的な水準です。
ただし、ここに特徴的な「実績報酬」が加わります。年率6%を超える収益部分に対して22%(税抜20%)が徴収される仕組みで、いわゆる「ハイ・ウォーター・マーク方式」を採用しています。
この実績報酬の仕組みは、運用者と投資家の利害を一致させるものです。
成果が出なければ基本報酬のみ、成果が出れば追加報酬という構造は、運用者に「勝ち」へのインセンティブを与えます。
なお、本ファンドはNISAの対象外となっています。
また、SBI証券や楽天証券など証券会社での取り扱いはなく、直接購入する形をとっています。
井村俊哉氏とは何者か|元お笑い芸人から100億円投資家へ
Kaihouファンドを語る上で、井村俊哉氏の存在は避けて通れません。
1984年生まれの井村氏は、群馬大学工学部を卒業後、お笑いタレントの道に進みました。
人力舎に所属し、キングオブコント2011では準決勝に進出するなど、決して芸人としての才能がなかったわけではありません。
しかし、彼のもう一つの顔は「株式投資家」でした。
大学在学中に株式投資を始め、芸人活動と並行して運用を続けていました。
2017年に芸人を引退した時点で、通算運用益は1億円に到達していたといいます。
その後の成長は驚異的です。
2023年には累計80億円、2024年7月には一時100億円の運用益を達成しました。
もっとも、その後の急落で80億円程度まで減少したとされていますが、それでも個人投資家としては破格の実績です。
特筆すべきは、井村氏が「中小企業診断士」の資格を保有していることです。
財務分析や経営戦略の専門知識を持ち、企業の本質的価値を見極める眼力は、この資格取得を通じて磨かれた側面もあるでしょう。
私も中小企業診断士ですが、中小企業診断士の知識を最大限まで活かしているケースと言えるかもしれません。
井村俊哉氏はファンド運用者ではなく、助言者
ここで、多くの投資家が見過ごしている重要なポイントを指摘しておきます。
多くの投資家が誤解していますが、「Kaihou(井村氏)」はファンドの運用者ではありません。
井村俊哉氏と竹入敬蔵氏が設立した「株式会社Kaihou」は、投資運用会社ではなく「投資助言会社」です。
| 役割 | 会社名 | 代表者 | 責任範囲 |
| 運用会社 | fundnote株式会社 | 渡辺克真 氏 | 運用の執行、販売、顧客管理、法的責任 |
| 助言会社 | 株式会社Kaihou | 井村俊哉 氏 竹入敬蔵 氏 | 投資助言(銘柄推奨)、調査分析 |
つまり、実際にファンドを運用するのはfundnote株式会社であり、Kaihouは「助言」という形で投資判断に関与しています。
ファンドマネージャーはfundnote株式会社のCIO「川合直也」氏として記載されていますね。
投資助言業のライセンスは投資運用業より取得のハードルが低く、新規参入者にとっては現実的な選択肢といえます。
しかし、この構造には深い意味があります。
投資助言者は「助言」を行いますが、最終的な売買判断は運用会社が行います。
つまり、法的な責任の所在が明確に分かれているのです。
これは投資家保護の観点からは重要な仕組みですが、同時に「井村氏が直接ボタンを押すわけではない」という事実も意味します。
井村氏自身は、fundnoteを選んだ理由として「フルスイングさせてくれる会社」を挙げています。
大手運用会社では、極端な集中投資やアクティビストのような積極的なエンゲージメントは許容されにくい傾向があります。
新興のfundnoteだからこそ、井村氏の投資哲学を忠実に反映した運用が可能になったといえるでしょう。
Kaihouファンドの運用成績|設定来のパフォーマンスを検証
では、肝心の運用成績はどうなっているのでしょうか。
2025年1月27日の設定時、基準価額は10,000円でスタートしました。
2026年1月時点では16,500円前後で推移しており、設定来リターンは約65%に達しています。
この数字は、同期間のTOPIX(配当込み)を大きく上回るものです。
特に注目すべきは、2025年4月のトランプ関税ショック時の対応です。
当時、日経平均株価は急落し、Kaihouファンドの基準価額も一時10,000円を割り込みました。
しかし、井村氏らは事前に相互関税の発表を「リスクイベント」として織り込み、発表直後には「深く下げた銘柄を買い、切り返しを狙う」という投資助言を行いました。
結果として、4月25日時点で純資産総額は約268億円に成長し、設定来リターンは5%とプラス圏を維持。
同期間の日経平均が10%下落したことを考えると、下落相場での耐性を見せた形です。
2025年末時点では純資産総額は約400億円を超え、年間パフォーマンスは40%以上という好成績を残しています。
ただし、過去の成績が将来を保証するものではありません。
集中投資というスタイルは、上振れも下振れも大きくなりやすい特徴があることは認識しておく必要があります。
Kaihouファンドの投資哲学|「アルファ」と「エンゲージメント」
Kaihouファンドの投資哲学は、二つのキーワードに集約されます。
「アルファの追求」と「大義あるエンゲージメント」です。
「アルファ」とは、Kaihouが独自に定義する「企業の本源的価値と市場価格との乖離幅」を意味します。
市場が見落としている、あるいは過小評価している企業価値を発見し、その「歪み」から収益を得るという考え方です。
井村氏は、日本の全上場企業(約3,900社)の決算短信や適時開示にすべて目を通し、1日15時間以上を投資に捧げるという「超人的な労働倫理」で知られています。
この徹底したリサーチが、アルファ発見の源泉となっています。
もう一つの「エンゲージメント」は、投資先企業との対話活動を指します。
Kaihouは、単に株式を保有するだけでなく、IR改善や資本効率の向上など、企業価値を高めるための提案を積極的に行います。
実際、井村氏は個人投資家時代から「保有株ウォッシュ」(政策保有株を純投資目的に変更して開示義務から逃れる行為)について一橋大学の野間教授と共同研究を行い、金融庁への問題提起を行った実績があります。
これは2025年からの制度改正につながりました。
「アクティビスト並みに積極的」と評されるこのエンゲージメント活動は、従来の日本のアクティブファンドとは一線を画すアプローチといえるでしょう。
Kaihouファンドの組入銘柄
多くの投資家が気になるのは、Kaihouファンドがどのような銘柄に投資しているかでしょう。
目論見書(運用実績作成基準日:2025年9月30日現在)には、銘柄別組入比率(上位10銘柄)と、組入銘柄数12銘柄が明記されています。
たとえば大垣共立銀行、川田テクノロジーズ、大末建設、石油資源開発、ベルーナ、テレビ朝日ホールディングス等が掲載されています
月次レポートでも、組入上位10銘柄の概要は開示されていますが、具体的な銘柄名は一部を除き非公開となっています。
これは、集中投資というスタイルゆえの判断です。
なぜ非公開なのでしょうか。
井村氏の過去の行動を振り返ると、その理由が見えてきます。
個人投資家時代、井村氏が大量保有報告書を提出すると、多くの投資家が「イナゴ」のように追随買いを行い、株価が急騰する現象が頻繁に起こりました。
これは井村氏にとっては「追い風」になる一方、追随投資家にとってはリスクでもあります。
高値で買い、その後の調整で損失を被るケースも少なくありませんでした。
ファンドマネージャー(正確には助言者)となった今、この「影響力」はさらに増しています。
組入銘柄を即座に公開すれば、株価に不自然な歪みが生じ、ファンドの受益者だけでなく市場全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
ポートフォリオの傾向としては、時価総額別では小型株から中型株以上まで幅広く投資し、配当利回り3.5%以上の銘柄が約半数を占めるとされています。
PBR(株価純資産倍率)が加重平均で0.6倍程度と、バリュー株投資の色彩が強いことがうかがえます。
kaihou 喧嘩|井村氏と竹入氏の12時間に及ぶ議論、そして腹割会での衝突
検索キーワードで「kaihou 喧嘩」と入力される方も多いようです。
この背景には、大きく分けて二つの出来事があります。
Kaihou設立時の井村氏と竹入氏の議論
一つ目は、Kaihou設立の過程で井村氏と竹入氏の間で起きた「議論」です。
日経ビジネスのインタビューで、井村氏自身が明かしたエピソードです。
井村氏によると、ある出来事をきっかけに竹入氏と議論がかみ合わなくなり、12時間座りっぱなしで、画面越しに言い争ったことがあったといいます。
「人間って、何も飲まないで、一度もトイレにも行かないで12時間座っていられるのだなと思った」と、井村氏は振り返っています。
この対立の結果、当時の会社は一度畳むことになりました。
しかし、この経験が逆に両者の絆を深め、現在のKaihouの強固なチーム体制につながったとされています。
2026年1月「腹割会」でのfundnoteとの対立
二つ目は、より直近の出来事です。
2026年1月に開催された受益者限定イベント「腹割会」において、Kaihou社とfundnote社の間で深刻な対立が表面化しました。
報道や掲示板、SNSの情報によると、井村氏は「もうfundnoteとは仕事できない」と公言したとされています。
当日はfundnote社の渡辺社長が参加をドタキャンし、イベントは「修羅場」と化したという証言もあります。
対立の背景には、投資助言会社(Kaihou)と投資信託業者(fundnote)という立場の違いから生じる意見の相違があると見られています。
投資信託業者は金融庁の監督下にあり、より厳格な規制を受けます。
井村氏が求める「フルスイング」の運用と、規制遵守を優先するfundnoteの立場との間で、折り合いがつかなくなった可能性が指摘されています。
一部の受益者からは「受益者を崖から突き落とす行為」という懸念の声も上がりました。
一方で、「井村さんを信じて売却せずに見守る」という受益者も多く、事態の推移が注目されています。
この対立は、「ファンドと助言者の立場の違い」という本記事のテーマとも深く関わります。
投資助言者は「助言」を行いますが、最終的な運用責任は投資信託業者にあります。
この構造的な緊張関係が、今回の対立の根底にあると考えられます。
今後、両社の関係がどのように展開するのか、そしてKaihouファンドの受益者にどのような影響があるのかは、まだ流動的な状況です。
投資を検討している方は、この動向を注視する必要があるでしょう。
異なる視点がもたらす価値
投資の世界では、共同経営者間やパートナー間の意見の相違は珍しくありません。
むしろ、異なる視点を持つメンバーが徹底的に議論を戦わせることで、より良い投資判断が生まれることもあります。
竹入敬蔵氏は東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券でアナリストとして活躍し、その後国内独立系運用会社やヘッジファンドでポートフォリオマネージャーを務めた経歴を持ちます。
個人投資家出身の井村氏と、機関投資家の世界で経験を積んだ竹入氏という異なるバックグラウンドが、Kaihouの運用に多様な視点をもたらしています。
ただし、今回のfundnoteとの対立が、ファンドの運用や受益者の利益にどのような影響を与えるかは、今後の展開を見守る必要があります。
Kaihouファンドのリスク|投資前に知っておくべきこと
どのような投資商品にもリスクは存在します。
Kaihouファンドを検討する際に、認識しておくべきリスクを整理しておきましょう。
集中投資リスク
Kaihouファンドは、十数銘柄に厳選した集中投資を行います。
これは、当たれば大きなリターンが期待できる一方、外れた場合のダメージも大きくなります。
分散投資を行う一般的な投資信託とは、リスク・リターン特性が大きく異なることを理解しておく必要があります。
キーマンリスク
このファンドの価値は、井村氏と竹入氏の投資判断能力に大きく依存しています。
両氏の健康上の問題や、万が一の離脱があった場合、ファンドの運用に重大な影響が生じる可能性があります。
今回の揉め事がどの程度になるのかは注視すべきですね。
カリスマ依存のリスク
私たちはつい、「井村さんがやっているから勝てる」と思い込みがちです。
しかし、どれほど優秀な選手(井村氏)がいても、監督、コーチ(fundnote)と仲違いしていれば、試合(市場)で勝ち続けることはできません。
今回の騒動は、「運用助言」というスキームが持つ、責任の所在の曖昧さと脆弱性を浮き彫りにしました。
規模のリスク
純資産総額が400億円を超え、今後も成長が見込まれるKaihouファンドですが、運用資産の拡大は必ずしもプラスではありません。
特に中小型株への集中投資を行うスタイルでは、資金規模が大きくなるほど機動的な売買が難しくなる可能性があります。
一時期大人気で成績も伴っていた「ひふみ投信」が昨今苦労しているのはこの点が大きいと言われています。

流動性リスク
最低投資額が100万円と高めに設定されていることに加え、換金時には基準価額の0.3%の信託財産留保額がかかります。
短期的な資金ニーズがある方には不向きな商品です。
ボラリティリスク
設定来のパフォーマンスは良好ですが、その過程で基準価額が15%以上下落した局面もありました。
このような価格変動に耐えられない方には、精神的なストレスが大きい投資となる可能性があります。
中小企業診断士として井村俊哉氏を見る|資格保有者としての視点
ここで、私自身が中小企業診断士として感じることを述べさせてください。
井村俊哉氏も中小企業診断士の資格を保有しています。
この資格は、経営戦略、財務・会計、マーケティング、生産管理、法務など、企業経営に関する幅広い知識が求められます。
株式投資においても、この知識は極めて有用です。
例えば、財務諸表を読み解く力。
貸借対照表から企業の財務健全性を、損益計算書から収益構造を、キャッシュフロー計算書から資金繰りの実態を把握できなければ、企業の「本源的価値」を見極めることは困難です。
また、経営戦略の知識があれば、企業の競争優位性や成長可能性をより深く分析できます。
市場の構造、競合との関係、参入障壁の有無など、いわゆる「ファイブフォース分析」的な視点は、投資判断において重要な要素です。
井村氏が「全上場企業の決算短信に目を通す」という姿勢は、まさに中小企業診断士的なアプローチといえます。
数字の羅列から企業の実態を読み取り、経営者の意図や戦略を推察する。
これは中小企業診断士ならではですね。
個人的には「全上場企業の決算短信に目を通す」なんてことは到底できないですね。。。

Kaihouファンドに投資すべきか|判断のポイント
では、結局のところ、Kaihouファンドに投資すべきなのでしょうか。
この問いに対する答えは、投資家一人ひとりの状況によって異なります。以下のポイントを参考に、ご自身で判断されることをお勧めします。
向いている方
- 長期的な視点で投資できる方(5年以上)
- 価格変動(ボラティリティ)に耐えられる方
- 100万円以上の余裕資金がある方
- インデックス投資以外の選択肢を模索している方
- 井村氏の投資哲学に共感できる方
向いていない方
- 短期的な利益を求める方
- 元本割れのリスクを許容できない方
- 分散投資を重視する方
- 投資資金に余裕がない方
- 他人の投資判断に依存することに不安を感じる方
重要なのは、「井村氏を信じるかどうか」という単純な二元論に陥らないことです。
どれほど優れた投資家であっても、すべての相場環境で勝ち続けることは不可能です。
むしろ、Kaihouファンドをポートフォリオの一部として位置づけ、他の資産クラスやインデックスファンドと組み合わせることで、リスク分散を図ることが賢明でしょう。
今後の展望|Kaihouが目指す「ニッポンの解放」とは
最後に、Kaihouファンドの今後の展望について触れておきます。
井村氏は「Kaihouの究極の目的は、ニッポンの解放」と語っています。
公募投信にこだわらず、バークシャー・ハサウェイや光通信のような純投資会社の形態も視野に入れているとのことです。
竹入氏は「基準価額10万円をできるだけ早く実現したい」という目標を掲げています。
現在の基準価額が約16,500円ですから、約6倍の成長を目指すということです。
この野心的な目標が達成されるかどうかは、今後の市場環境と、Kaihouチームの投資判断次第です。
しかし、確かなことが一つあります。
それは、井村氏らが「ニッポンの家計に貢献する」というミッションを本気で追求しているということです。
日本の家計金融資産の多くは預貯金に滞留し、投資への資金シフトは遅々として進んでいません。
この状況を変えるには、「投資は報われる」という成功体験を多くの人に提供する必要があります。
Kaihouファンドが継続的に良好なパフォーマンスを上げ続けることができれば、それは日本の資産形成文化を変える一助となるかもしれません。
まとめ|Kaihouファンドが問いかけるもの
Kaihouファンドは、単なる投資商品ではありません。
それは、「投資とは何か」「ファンドマネージャーと投資家の関係はどうあるべきか」という問いを私たちに投げかけています。
井村氏が「助言者」という立場を選んだことには、深い意味があります。
自らは直接運用の責任を負わず、しかし投資判断の核心には関与する。
この微妙なバランスは、日本の投資信託業界に新しいモデルを提示しています。
投資に「絶対」はありません。
しかし、徹底したリサーチと、企業との建設的な対話を通じて企業価値の向上を目指すというKaihouのアプローチは、日本株投資の一つの理想形といえるでしょう。
最終的な投資判断は、あなた自身が行うものです。本記事が、その判断の一助となれば幸いです。
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