行きつけの美容室から突然「今後はLINEで予約をお願いします」と連絡が届いたら、あなたはどう感じるでしょうか。
実はいま、ホットペッパービューティーの大型キャンペーン「ビビビ祭」をきっかけに、掲載をやめる美容室が増えています。
その理由を知れば、あなたの「予約の仕方」が変わるかもしれません。
行きつけの美容室がホットペッパービューティーを辞めた
先日、私が長年通っている行きつけの美容室から一通の連絡がありました。
「いつもご利用ありがとうございます。誠に勝手ながら、来月よりホットペッパービューティーでの予約受付を終了し、当店の公式LINEからのご予約に一本化させていただきます」
あなたのスマートフォンには、行きつけの美容室からこんなメッセージが届きませんでしたか?
あるいは予約サイトを開いてみたら、お気に入りのスタイリストの枠がすべて「×」になっていて、慌ててお店のホームページやInstagramを確認したという方もいらっしゃるでしょう。
この現象は、決してあなたが行きつけの美容室にだけ起きている局地的なものではありません。
いま、全国各地の優良な美容室で、静かに、しかし確実に「ホットペッパービューティー離れ」が進行しています。
特に最近では、大々的なポイント還元キャンペーンである「ビビビ祭り」が終了した直後に、掲載を停止したり、プランを大幅にダウングレードしたりする店舗が相次ぎました。
SNSや検索エンジンでも「ホットペッパービューティー やめた」「ホットペッパー 掲載停止理由」といった言葉が頻繁に検索されるようになっています。
利用者である私たちからすれば、アプリひとつで24時間いつでも予約ができ、さらにポイントまで貯まる便利なプラットフォームです。
それなのになぜ、美容室側は自らその便利なツールを手放し、顧客に「LINE予約」という少しアナログな手段をお願いするようになったのでしょうか。
実はこの背景には、現代のプラットフォーム経済が抱える構造的な歪みと、美容室経営を圧迫する「見えない税金」の存在があります。
お金の流れに敏感な読者の皆様であれば、これが単なる「予約システムの変更」ではなく、ビジネスの生存を賭けた重大な決断であることがお分かりいただけるはずです。
ビビビ祭とは何だったのか
まず、今回のきっかけとなった「ビビビ祭」について振り返ります。
ビビビ祭は、ホットペッパービューティーが2026年2月に実施した大型ポイント還元キャンペーンです。
正式名称は「ビビッとときめく還元キャンペーン」で、エントリーのうえ予約・来店すると、施術代金の最大50%がホットペッパービューティー限定ポイントとして還元されるという内容でした。
具体的な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エントリー期間 | 2026年1月5日~2月4日 |
| 予約受付期間 | 2026年2月2日(月)0:00~2月4日(水)23:59 |
| 来店対象期間 | 2026年2月9日(月)~2月15日(日) |
| 還元率 | 対象金額の最大50% |
| 還元上限 | ヘアサロン1万ポイント+それ以外1万ポイント=最大2万ポイント |
| 対象人数 | 先着100万予約限定 |
| ポイント付与日 | 2026年3月16日頃(有効期限:4月30日) |
利用者にとっては破格のキャンペーンです。
2万円の施術を受ければ1万ポイントが還元される計算ですから、実質半額で美容室に行けるわけです。
ところが、予約開始は日曜深夜0時。
先着100万予約ということもあり、深夜にもかかわらず大量のアクセスが集中しました。
ホットペッパービューティーは仮想待合室を導入して対応しましたが、開始直後の推定待ち時間は1時間以上。
SNSでは「諦めて寝る」という声も相次ぎました。
このキャンペーンで実際に1万ポイント以上を獲得したユーザーもいる一方、ある問題が浮き彫りになったのです。
利用者は得をした。では美容室は?
ビビビ祭で利用者が得をしたのは間違いありません。
では、美容室側はどうだったのでしょうか。
ここで一つ、多くの利用者が知らない重要な事実をお伝えします。
ホットペッパービューティーのポイント還元の仕組みにおいて、通常の2%ポイント還元(リクルートポイント)の原資は美容室側の手数料から充当されています。
つまり、利用者がポイントを使って支払った分は後から美容室に返金される仕組みではあるものの、そもそもネット予約1件ごとに施術売上の2%を手数料として支払う構造になっているのです。
なお、ビビビ祭のような大型キャンペーンのポイント還元原資はリクルート側の負担と考えられますが、そもそもこのキャンペーンは「ホットペッパービューティー限定ポイント」での還元です。
そのポイントの使い道は、次回もホットペッパービューティー経由での予約のみ。
つまり、利用者はポイントを消化するために再びホットペッパー経由で予約することになり、美容室には再び2%の手数料が発生します。
これは、プラットフォーム側の巧みなエコシステム設計と言えるでしょう。
利用者にとっては「お得なポイントがもらえた」という体験ですが、美容室から見れば「ポイントで囲い込まれた顧客が、ずっとホットペッパー経由で予約し続ける構造」でもあるのです。
ホットペッパービューティーの掲載停止理由を紐解く
私の行きつけの美容室に限らず、いま「脱ホットペッパー」を選択する美容室が増えています。
その理由は、大きく3つに整理できます。
理由1:掲載料と手数料の二重負担
ホットペッパービューティーの料金体系は、毎月の掲載料(固定費)に加え、ネット予約経由の施術売上に対する2%の手数料(変動費)という二重構造になっています。
掲載料は公式には非公開ですが、エリアやプランによって月額2.5万円~50万円以上と大きな幅があるとされています。
都心のコアエリアでは月額40万円を超えるケースもあるとの指摘もあります。
仮に月の売上が200万円のサロンが、月額10万円の掲載料を支払い、さらにネット予約経由の売上150万円に対して2%(3万円)の手数料を払うとすると、ホットペッパービューティーへの支出は月13万円です。
年間にすれば156万円。決して小さくない金額です。
さらに重要なのは、売上が伸びれば伸びるほど手数料も増えるという構造です。
「頑張って売上を伸ばしたのに、利益がなかなか手元に残らない」という声は、美容室経営者の間で広く聞かれます。
理由2:クーポン目当ての新規客とリピート率の低さ
ホットペッパービューティーの集客力の源泉は、初回限定の割引クーポンにあります。
しかし、これが皮肉にも美容室にとっての課題を生んでいます。
クーポンを目当てに来店した新規客は、「この美容室の技術が気に入ったから」ではなく「このクーポンが安かったから」という動機で来店しています。
結果として、次回はまた別の美容室の新規クーポンを使うという「クーポンホッパー」が一定数存在します。
美容室のジャンルにおける新規顧客の3ヶ月以内リピート率は約30%前後というデータもあり、7割近くのお客様が再来店していない計算になります。
つまり、高い掲載料を払って集客しても、その大半は一度きりの来店で終わってしまうリスクがあるのです。
業界用語で「クーポンハンター」や「クーポン荒らし」と呼ぶことがあります。
彼らは、常に最もお得なクーポンを求めてお店を転々と渡り歩きます。
そのため、どれだけ美容師が心を込めて接客し、最高のヘアスタイルを提供しても、次回の予約には繋がりません。
つまり、LTV(顧客生涯価値)が極めて低いのです。
私も人のことは言えません笑
ギフト券を何度かもらっていますが、もらったときに行った店はその時しか使ってませんしね。。。

理由3:プラットフォーム依存からの脱却
もう一つ、見過ごされがちな本質的な問題があります。
それは「顧客との関係性がプラットフォームに握られている」という点です。
ホットペッパービューティー経由で予約した顧客の情報は、基本的にホットペッパーのシステム(サロンボード)で管理されます。
もし掲載をやめれば、サロンボードも使えなくなり、過去の顧客データや予約履歴にアクセスしづらくなる可能性があります。
飲食業界では、食べログやホットペッパーグルメへの依存から脱却して自社予約に切り替える店舗が増えてきました。
旅行業界でも、OTA(オンライン旅行代理店)への依存を減らす動きが加速しています。
しかし美容業界では、この「脱プラットフォーム」がなかなか進んでいませんでした。
その理由について、美容業界の構造的な問題を指摘する声もあります。美容師は国家資格を持つ技術者であり、独立後も技術志向のまま経営を行うケースが多く、マーケティングや集客のノウハウが不足しがちです。
その結果、集客をプラットフォームに依存せざるを得ない状況が続いてきたのです。
ビビビ祭が「脱ホットペッパー」の引き金になった理由
では、なぜビビビ祭がこのタイミングで「脱ホットペッパー」の引き金になったのでしょうか。
私が美容室の経営の方に直接聞いた話をまとめるとビビビ祭は美容室経営者にとって「このままでいいのか」と立ち止まって考える象徴的な出来事だったということです。
ポイント目当ての新規客殺到
ビビビ祭の期間中、美容室には「ポイント目当て」の予約が殺到しました。
しかも普段その美容室を利用していない新規客が、キャンペーン期間だけ予約を入れるケースが多かったようです。
初回クーポンなどを利用した金額からさらにポイント50%還元ですからね。
新規客からすればかなりオトクな状況ですから当然の結果かもしれません。
しかし、50%還元で獲得したポイントの有効期限は4月30日まで。
ポイントを使い切るために新規客が再来店しても、その後リピートするかはかなり怪しいです。
常連客が予約が取れない
さらに、深刻なのはこのキャンペーン期間中、本来大切にすべき「長年の常連客」が予約を取れなくなってしまうという弊害です。
ポイント目当ての新規客で枠が埋まり、毎月通ってくれる常連客が「予約がいっぱいで行けない」と他のお店へ流出してしまう。
これは、ビジネスにおいて最も避けるべき最悪のシナリオです。
さらに常連ならかからない初回クーポンや手数料などの販促コストも発生してしまうのです。
つまり、美容室から見たビビビ祭とは「自分たちの顧客が、プラットフォームのキャンペーンに巻き込まれ、離れてしまうリスクや、本来不要なコストを負担させられる構造」の象徴だったのです。
しかも、ホットペッパービューティーの来店者のポイントは1月29日から2%から1%に下がっているのに、店舗側の手数料はあがったとのこと。
これは、かつて飲食業界で起きた「食べログ問題」と構造が似ています。
プラットフォームの評価やキャンペーンに経営が左右される状態から、自力で顧客との関係を構築する方向に舵を切る。
美容業界でも同じ転換点が訪れているのかもしれません。
美容院にホットペッパーを通さないで予約すべき?
ここからは、利用者側の視点で考えてみましょう。
「ホットペッパービューティーから予約すると美容室に嫌がられるのか?」という疑問を持つ方は少なくありません。
結論から言えば、嫌がられるかどうかは美容室によるとしか言えません。
しかし、いくつか知っておくべき事実があります。
まず、ホットペッパービューティーの通常のポイント利用について。
利用者がポイントで支払った分は、後日リクルートから美容室に返金される仕組みになっています。
つまり、ポイントを使うこと自体が美容室の売上を減らすわけではありません。
この点は安心していただいて大丈夫です。
しかし、ネット予約ごとに2%の手数料が発生するのは事実です。
1万円のカットを予約すれば200円、5万円のカラー+トリートメントなら1,000円が美容室からリクルートに支払われます。
つまり、行きつけの美容室がすでにLINEや電話での直接予約を受け付けている場合、そちらを使ったほうが美容室の経営を助けることにはなります。
ただし、これは利用者に罪悪感を持たせたいわけではありません。
ホットペッパービューティーは利用者にとって本当に便利なサービスです。
24時間予約できる手軽さ、口コミでの比較、ポイント還元。これらのメリットは確かに存在します。
大切なのは、予約方法にはそれぞれの「意味」があることを知っておくことです。
予約方法別のメリット・デメリットを整理する
ここで、主な予約方法のメリット・デメリットを利用者目線で整理してみましょう。
| 予約方法 | 利用者のメリット | 利用者のデメリット | 美容室への影響 |
|---|---|---|---|
| ホットペッパービューティー | 24時間予約可能、ポイント還元、口コミ比較ができる | ポイントの有効期限管理が必要 | 掲載料+手数料2%が発生 |
| LINE公式アカウント | 普段使いのアプリで完結、個別相談しやすい | 空き状況がリアルタイムで見えないことも | 手数料なし、顧客との直接的な関係構築が可能 |
| 電話予約 | 細かい要望を直接伝えられる | 営業時間内のみ、通話の手間 | 手数料なし、即時対応が必要 |
| 店頭での次回予約 | 確実に希望の日時を確保できる | 予定が変わった場合のキャンセル連絡が必要 | 手数料なし、リピート率が高い |
| 自社予約システム | 24時間予約可能、ポイントカード連携も | 美容室ごとにアプリやシステムが異なる | 手数料なし~低額、自社で顧客管理可能 |
この表を見ると、利用者にとって最も便利なのはやはりホットペッパービューティーやLINEなどの24時間対応の方法です。
一方で、美容室にとってコスト面で最も負担が少ないのは、直接予約(LINE、電話、店頭)です。
個人の意見としては、初めての美容室を探すときはホットペッパービューティーの口コミや写真を参考にし、気に入った美容室が見つかったら2回目以降はLINEや次回予約をその場でする。
この使い分けがバランスの良い方法ではないかと考えています。
「脱ホットペッパー」は美容室にとってリスクもある
ここまで「脱ホットペッパー」の動きを紹介してきましたが、公平を期すために、そのリスクや注意点にも触れておきます。
まず、ホットペッパービューティーの集客力は圧倒的です。
登録ヘアサロンは6万5千店以上、年間予約数はヘアサロンだけで約1億2千万件に達するとされています。
この規模のプラットフォームを手放すことは、特に新規顧客の流入に大きな影響を与えます。
また、ホットペッパービューティーを解約すると、サロンボードという予約・顧客管理システムも使えなくなります。
代替の予約管理システムを導入しなければ、予約のダブルブッキングや顧客情報の管理が煩雑になるリスクがあります。
さらに、契約期間中の途中解約は原則としてできず、残りの契約期間分の料金を支払う必要がある場合もあります。
「やめたくてもやめられない」という声が出るのは、こうした契約面の問題もあるのです。
したがって、美容室がホットペッパービューティーの掲載をやめる場合は、いきなり全面停止するのではなく、LINE予約やInstagram集客、Googleビジネスプロフィールの活用といった自社集客の基盤を先に構築し、段階的に依存度を下げていくことが現実的な方法とされています。
利用者として、あなたにできること
最後に、利用者としてできることを整理します。
大前提として、ホットペッパービューティーを使うこと自体が「悪い」わけではありません。
便利なサービスを利用するのは当然の権利ですし、ポイントをお得に使うのも賢い消費行動です。
ただ、もしあなたが「この美容室にずっと通い続けたい」と思える行きつけのお店があるなら、次のことを意識してみてはいかがでしょうか。
直接予約する
一つ目は、美容室がLINEやSNSでの直接予約を案内している場合は、そちらを利用してみることです。
あなたの1回の直接予約が、美容室の利益を数百円ですが確実に守ります。
積み重なれば大きな差になります。
ちなみに美容室側からすると一番うれしいのは来店時に次回予約をしてくれることだそうです。
早期に予約が埋まっていると経営の安定にもつながりますしね。
キャンペーンは事前に確認
二つ目は、ビビビ祭のような大型キャンペーンの際にも、行きつけの美容室がキャンペーンに参加しているかどうかを事前に確認することです。
キャンペーンに参加していない(あるいはホットペッパー経由の予約自体を停止している)美容室に対して、わざわざホットペッパーで予約しようとしても予約できないケースがあります。
ホットペッパーは初回のみ利用と割り切る
三つ目は、初回訪問にはホットペッパービューティーを活用し、2回目以降は直接予約に切り替えるという「使い分け」を意識することです。
美容室の探し方としてホットペッパービューティーの口コミや写真は非常に優秀ですが、関係が築けた後は直接つながるほうが、双方にとってメリットがあります。
これは、美容室に限った話ではありません。
飲食店でも、宿泊施設でも、プラットフォームを「出会いの場」として活用し、その後は直接の関係を築いていくという消費行動は、結果的に良いお店を長く支えることにつながります。
まとめ:予約方法の選択が、行きつけの美容室を守る
私の行きつけの美容室がホットペッパービューティーの予約受付をやめてLINEに切り替えた背景には、掲載料と手数料の二重負担、クーポン依存による価格競争、そしてプラットフォーム依存からの脱却という、美容業界全体が直面している構造的な課題がありました。
ビビビ祭は、こうした課題を浮き彫りにした象徴的な出来事でした。
利用者にとっては最大50%還元のお得なキャンペーンでしたが、美容室から見れば、自分たちの顧客がプラットフォームのエコシステムにさらに深く取り込まれる構造でもあったのです。
予約の仕方一つで、あなたが大切にしている美容室の経営を少しだけ助けることができます。
ホットペッパービューティーの便利さを享受しつつも、行きつけの美容室とは直接つながる。
その小さな行動が、あなたの「行きつけ」を守ることにつながるかもしれません。
もし今度、通っている美容室から「LINEで予約してください」と案内があったら、それは美容室があなたとの関係を大切にしているサインだと受け取っていただければ嬉しいです。
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