ここ数カ月、「メモリが急騰している」「コンピューターはもう買えない値段になる」といった話題が、SNSやニュースで一気に広がりました。
実際、PC向けDDR5メモリは2025年11月時点で、容量やモデルによっては数カ月で2〜3倍以上に値上がりしたというデータも出ています。
株式市場でもメモリ大手のキオクシアの高騰が大きな話題になりましたね。
スマホやゲーム機の内部にも、当然メモリやストレージ(NAND)が使われています。
現在はまだ大幅な店頭価格の値上げは限定的ですが、部品価格の上昇は着実に進んでおり、スマホ全体の原価が8〜10%押し上げられたという試算もあります。
では、スマホやゲーム機の購入を検討している私たちは「今のうちに慌てて買うべき」なのでしょうか。
それとも、「高騰はいずれ落ち着く」と考えて待つほうが合理的なのでしょうか。
今回はメモリ高騰の原因(メモリ 高騰 原因)、いつまで続きそうなのか(メモリ 高騰 いつまで)、そして「メモリ 値上げ」時代のスマホ・ゲーム機の賢い買い方を整理していきます。
メモリ価格高騰は本当に起きているのか?
まずはメモリの高騰状況をみていきましょう。
PC向けメモリは数カ月で2〜3倍も値上げ
PCパーツの価格推移を追っているメディアや調査サイトによると、2025年秋以降、DDR5メモリの店頭価格は急角度で上昇しています。
2025年10月までは大きな値動きがなかったのに、11月に入ると48GB×2枚セットなど大容量モデルを中心に、一気に1万7,000円以上値上がりしたというデータがあります。
海外の調査でも、DRAMやNANDの契約価格が2025年第4四半期だけで前年同時期比75%以上、製品によっては100%超の上昇と報告されています。
自作PCユーザーからは「メモリがゲーム機本体より高い」という嘆きが出るほどで、ギガジンなども「数カ月で3倍以上に値上げ」とグラフ付きで紹介しています。
スマホやゲーム機向けメモリもじわじわ上昇中
スマホやゲーム機向けのLPDDRやNANDも例外ではありません。
半導体業界のレポートによると、スマートフォン向けDRAMの契約価格は2025年第4四半期に前期比30〜40%上昇し、スマホ1台あたりのメモリ原価が大きく跳ね上がっているとされています。
別の調査では、メモリがスマートフォンの原価(BOM)の10〜15%を占めており、メモリ価格の上昇によって最終製品の原価が8〜10%ほど押し上げられた、という試算も出ています。
今のところ、メーカー各社が利益を削ったり、他の部品コストを削ったりして「最終価格はなるべく据え置き」にしているケースもあります。しかし、長くは続けにくい構造になりつつあります。
メモリ高騰のなぜ?原因はAIブームとHBMシフトという二重苦
それではメモリが高騰している原因はどこにあるのでしょう?
生成AIサーバーがメモリを“食べ尽くす”構図
メモリの高騰する原因として、まず外せないのが生成AIブームです。
ChatGPTのような大規模言語モデルや、画像生成AIを動かすデータセンターでは、GPUだけでなく莫大な量のDRAMが必要になります。
1台のAIサーバーに1TB級のメモリを積むケースもあり、こうしたサーバーが世界中で増えています。
2025年10月、OpenAIが発表したStargateプロジェクトは、月間90万枚のDRAMウェハを契約する内容でした。
この数字は世界のDRAM生産量の約40%に相当し、サムスン電子とSKハイニックスとの4年間で5000億ドル規模という前例のない巨大契約となりました。
契約発表後、DRAM価格は171%急騰しました。
具体的な事例を見ると、Team Delta RGB 64GBのDDR5-6400キットは2025年8月に190ドルだったものが、12月には700ドルに跳ね上がっています。
DDR5 SO-DIMM 48GB×2も10月から11月にかけて14,000円以上値上がりし、一部の卸売価格はほぼ2倍になったと報告されています。
AIサーバー向けの巨大な需要が、これまでPC・スマホ・ゲーム機向けに回っていたメモリを吸い取ってしまった──というのが大きな流れです。
HBM(高帯域メモリ)への生産シフト
もう一つのメモリが高騰している原因が、HBMへの生産シフトです。
HBMはGPUの頭に積む「超高性能なメモリ」で、通常のDRAMと比較して収益性が5倍から10倍高いといわれています。
そのため、サムスンやSK hynixなどの大手メモリメーカーは、限られた工場能力の中で、どうしてもHBMやサーバー向け高付加価値製品を優先しがちです。
製造キャパシティが限られる中で、企業が高付加価値製品に生産を集中させるのは、経営判断として合理的ですから責められないでしょうね・・・
結果として、PC・スマホ・ゲーム機向けの一般的なDRAMやNANDへの供給が細り、価格が一気に跳ねやすい構造になっています。
メーカー側の「引き締め」姿勢も追い打ち
2025年10月には、サムスンが一部大口顧客に対してDDR5の契約価格提示を一時停止し、価格交渉を先送りしたという報道もありました。
これに他社も追随し、メモリ大手3社が足並みをそろえて供給戦略を引き締めたと分析されています。
価格提示自体を遅らせることで、「とりあえず安い時に大量仕入れ」という動きが取りにくくなり、市場全体が「高値が当たり前」というムードになりやすくなります。
メモリ高騰はいつまで続くのか
現在のメモリ価格高騰がいつまで続くかについて、業界関係者の見解は悲観的です。
Phison Electronics CEOは、NANDフラッシュメモリについて2026年に深刻な供給不足に直面し、今後10年間にわたって供給が逼迫すると警告しています。
短期的には2026年まで価格上昇が継続する可能性が高く、中長期的には新たな均衡点を見つけるまで構造的な高止まりが予想されます。
DRAMサプライヤーの平均在庫はわずか3週間分で、現在は2週間分まで減少しているとの報告もあり、需給バランスの改善には相当な時間を要すると見られています。
新規生産能力の増強は光明となるか
希望的な要素として、世界の300mmウェハによるDRAM生産能力が2025年に月間225万枚へと増加する予測があります。
中国メーカーの参入も進んでいますが、米国による対中制裁の影響で供給増加の効果は限定的です。
技術革新による効率化も期待されていますが、現在のAI需要の伸びを考慮すると、供給増が価格を押し下げる効果は限定的だと考えられます。
むしろクラウドコンピューティングへの移行加速や、ローカル処理からクラウド処理への移行といった利用形態の変化が、消費者向けデバイスへの需要圧力を緩和する可能性があります
その先は「いつもの半導体サイクル」だが…
長い目で見れば、メモリ価格はこれまでも上がりすぎたあとに大きく下がる「サイクル相場」を何度も繰り返してきました。
ただ今回の特徴は、AIという新しい巨大需要があることと、各国の安全保障や補助金政策が絡んでおり、単純に「作り過ぎて暴落」というパターンに戻るかどうかが読みづらい点です。
メモリ値上げがスマホ・ゲーム機、PCに与えるインパクト
それではメモリを使う、スマホやゲーム機、PCに与える影響はどうなのでしょう?
スマホは8〜10%の値上げ圧力がかかる構造
先ほど触れたように、メモリはスマホの原価の10〜15%を占めると言われています。
そこが一気に高騰すると、スマホ全体の原価が8〜10%程度押し上げられる計算になります。
実際、中国メーカーXiaomiの関係者やリーカー筋からは、「メモリ価格の高騰は想像以上に深刻で、今後はスペックダウンや値上げという形で消費者に転嫁される」という声も出ています。
iPhoneについても、台湾メディアの報道をもとに「2026年登場のiPhone 18 Proシリーズは、メモリ不足とコスト上昇から50〜100ドル程度の値上げの可能性がある」との観測記事が出ています。
もちろん、実際の価格は為替や他の部品コスト、メーカーの戦略次第で変わりますが、「これまで以上に高くなるバイアスがかかっている」のは間違いありません。
ゲーム機は「価格据え置き+中身を削る」リスクも
ゲーム機も、メモリやストレージの塊です。PS5や次世代Switch(仮にSwitch2とします)などは、元々ハード単体では利益が薄く、「ソフトやサブスクで回収する」モデルが基本です。
メモリ高騰の中で価格を上げにくい場合、メーカーが取りうる選択肢は、例えば次のようなものです。
・メモリ搭載量を抑える
・ストレージ容量を減らす
・グラフィック性能など他の部分でコストを削る
その結果として、表面上の価格は据え置きでも、「同じ価格なら以前のモデルの方が“お得感があった”」という状況になりかねません。
一方で、ソニーは価格が上がる前にメモリを大量確保したという情報があり、任天堂も同様の対策を講じていると考えられています。
結果として、PlayStation 5やNintendo Switch 2といった大手メーカーのゲーム機は、価格上昇が比較的抑えられる可能性もあります。
PCも値上げか?
PCについては、前期に買いだめしたメモリ在庫が尽きつつあるため、2026年には最低20%の値上げがほぼ確実視されています。
周辺機器であるルーター、NAS、プリンター、SDカード、USBメモリなども値上げの対象となる見通しです。
今、スマホ・ゲーム機、PCは早めに買うべきか?
ここからが、いち消費者として、そして投資家として一番悩ましいところです。
私は「すべて前倒しで買え」とも、「絶対に様子見が正解」とも言うつもりはありません。
メモリの高騰がいつまで続くのかという不確実性がある以上、必要性とタイミングで分けて考えるのが現実的です。
1年以内に買い替え予定なら、「納得できる価格」で前倒しも選択肢
まず、すでにスマホやゲーム機の買い替えを近い将来に考えていたケースです。
例えば、今使っているスマホのバッテリーがヘタってきている、OSアップデートのサポート終了が近い、カメラ性能に不満が強い。
あるいは、子どもと一緒に遊ぶために、年末〜来年の春休みにゲーム機を買う予定だった。
こういった「1年以内にはどうせ買う」パターンなら、今のタイミングでセールやポイント還元を活用しながら、納得できる価格で手に入るなら前倒し購入は十分合理的です。
メモリ値上げが完全に価格へ転嫁される前の、いわば「安全ライン」にいる可能性が高く、プロスペクト理論的に言えば「将来の値上げで損したと感じるリスク」をある程度抑えられます。
まだ2〜3年は十分使えるなら、慌てて買う必要は薄い
一方で、今使っているスマホやゲーム機、PCに大きな不満がなく、あと2〜3年は普通に使えそうな場合まで、無理に前倒しする必要はあまりありません。
メモリ高騰はたしかに続きそうですが、だからといって「今が絶対最安」という保証もありません。
為替が円高に振れたり、競争環境の変化で各社が値下げキャンペーンを打つ可能性もあります。
また、2〜3年後には今より高性能なモデルが同じ価格帯に降りてくることも考えられます。
多少高いメモリを使っていても、トータルで見ると性能と価格のバランスはむしろ改善している、というのがこれまでのテクノロジーの歴史でもあります。
AIバブル崩壊の可能性は楽観視できない
一部では、AIバブル崩壊による需要減退を期待する声もありますが、現時点では楽観視できません。
物理的制約によるAI性能の頭打ちや投資過熱の冷え込みといった可能性は指摘されていますが、生成AIサービスの社会実装は始まったばかりであり、需要が急減するシナリオは考えにくい状況です。
ビッグテック企業の資本支出は2025年に前年比55%増加すると予測されており、この投資トレンドが反転するには相当な時間を要すると見られています。

まとめ
メモリ価格の高騰は、PC向けだけでなく、スマホやゲーム機にもこれから本格的に影響してくる可能性が高いです。
少なくとも2026年までは、「すぐには下がらない」という答えがベースシナリオになっています。
だからといって、「今すぐすべてのデバイスを買い替えないと大損する」というわけではありません。
大切なのは、
「本当にそのスマホやゲーム機が今必要か」
「買い替えを1年以内に予定していたか」
「セールやポイント還元を含めて納得できる価格か」
この三つを落ち着いて確認することです。
必要性が高く、もともと近い将来に買うつもりだったなら、メモリ値上げが本格的に価格へ乗る前に、前倒しで購入してしまうのは合理的な選択です。
逆に、まだ十分使えるなら、慌てずに情報を追いながら、セールやモデルチェンジのタイミングを狙う余地もあります。
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