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【昇給で手取り減少?】賃上げで損した気がする理由と対策

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【昇給で手取り減少?】賃上げで損した気がする理由と対策

3月〜6月にかけての時期によくいただく質問があります。

それは昇給したはずなのに給料の手取り額が減ってるよ。なぜ??

というご質問です。

昇給したはずなのに、手取り額がほとんど変わらない。

それどころか、むしろ減っているように感じる。

これは錯覚ではありません。

社会保険料や税金の仕組みが複雑に絡み合った結果、「賃上げ=手取り増」とはならないケースが実際に存在するのです。

2025年の春闘では、連合の最終集計で賃上げ率が5.25%と2年連続で5%台を記録しました(出典:連合, 2025年)。

しかし、厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、実質賃金は4年連続でマイナスが続いています(出典:厚生労働省, 2025年)。

つまり、額面では確かに給料は上がっているのに、実際に使えるお金は増えていないどころか、減っている人が大半なのです。

この記事では、昇給しても手取りが増えない「5つの原因」を解き明かし、あなたの給料明細の「見えない天引き」を可視化します。

さらに、手取りを守るための具体的な対策まで徹底解説します。

目次

なぜ昇給しても手取りが増えないのか?その仕組みを理解する

給料の「額面」と「手取り」の間には、大きな溝があります。

毎月の給料から天引きされるのは、大きく分けて「社会保険料」「所得税」「住民税」の3つ。

そして、この3つの計算方法がそれぞれ異なるタイミング・異なるルールで動いているからこそ、「昇給したのに手取りが減る」という不思議な現象が起きるのです。

まずは、手取り額を決める基本的な計算式を押さえておきましょう。

手取り額=額面給与−(社会保険料+所得税+住民税)

この式を見ると単純に感じますが、右辺の3つの控除項目はそれぞれ「いつの所得を基準にするか」「いつから反映されるか」が異なります。

ここが最大のポイントです。

社会保険料の「標準報酬月額」マジック

昇給しても手取りが増えない最大の原因は、社会保険料(健康保険、厚生年金)の計算に使われる「標準報酬月額」の仕組みにあります。

標準報酬月額とは何か

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、あなたの月給に直接保険料率を掛けて計算しているわけではありません。

基本給、残業手当、通勤手当などを含む税引前の報酬を一定の幅で区切った「等級」に当てはめ、その等級に対応する金額(標準報酬月額)に保険料率を掛けて算出します。

健康保険は50等級、厚生年金は32等級に分かれています。

そして、この標準報酬月額は原則として毎年4月・5月・6月の3か月間の給与平均で決定され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

これを「定時決定(算定基礎届)」と呼びます。

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等級の「境界線」をまたぐと何が起きるのか

ここで重要なのが、等級と等級の「境界線」です。

たとえば、標準報酬月額の等級が「22万円」と「24万円」の境界が月額23万円だったとします。

月給が22万5千円だった人は「22万円」の等級が適用されています。

ここで昇給して月給が23万5千円になると、等級は一気に「24万円」へジャンプします。

たった1万円の昇給でも、保険料の計算基礎が2万円分も上がってしまうのです。

2025年度の協会けんぽ(東京都)の健康保険料率は9.91%、厚生年金保険料率は18.3%です(出典:全国健康保険協会・日本年金機構, 2025年)。

これらを合計すると約28.2%。労使折半なので本人負担は約14.1%。

標準報酬月額が2万円上がると、本人負担の社会保険料は月額約2,820円増える計算です。

昇給が1万円なのに、社会保険料が約2,820円も増える。

差し引くと手取りの増加は7,000円強。

しかし、ここにさらに所得税・住民税の増加が加わると、手取りの増加幅はさらに縮小します。

場合によっては、昇給前より手取りが減ることさえありえるのです。

4月〜6月の残業が1年間の保険料を決める

もう一つ見逃せないポイントがあります。

標準報酬月額は4〜6月の給与で決まるため、この期間にたまたま残業が多かった場合、その残業代も含めた高い金額が1年間の保険料に反映されてしまいます。

たとえば年収500万円の方で、通常月の給与が30万円のところ、4〜6月だけ繁忙期で月35万円になったとしましょう。

この場合、9月以降の社会保険料は月35万円をベースに算定されるため、毎月の手取りが約9,000円以上も減ることになります。

4〜6月だけ頑張った結果が、残りの8か月間の手取り減少につながる。

知らなければ理不尽に感じますが、これが現行制度のルールなのです。

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住民税のタイムラグ(1年遅れの恐怖)

次は住民税です。

住民税は、前年の所得に基づいて計算される「後追い」型の税金です。

税率は一律10%(道府県民税4%+市町村民税6%)で、毎年6月から新しい金額に切り替わります。

これが何を意味するかというと、昇給した年の翌年6月に、住民税がドンと上がるということです。

たとえば、2025年4月に昇給があった場合、その昇給分が住民税に反映されるのは2026年6月以降です。

2025年中は前年(2024年)の所得に基づいた住民税を払っていますから、昇給の恩恵を感じやすい。

しかし、翌年になって住民税が上がると「去年と同じ給料なのに手取りが減った」と感じることになります。

プロ野球選手などが引退後苦しむのがこの住民税なんですよ。

社会人2年目の「6月ショック」

住民税の後追い課税が最も衝撃的に表れるのが、社会人2年目の6月です。

新卒1年目は前年(学生時代)に大きな所得がないため、住民税はほぼゼロです。

ところが2年目の6月からは、1年目の給与所得に基づいた住民税が一気に課税されます。

年収300万円の場合、住民税は年間で約12万円。

月額にすると約1万円が新たに天引きされます。

1年目と同じ給料なのに、突然手取りが月1万円も減る。

これは精神的にもかなりのインパクトです。

さらに、2年目には昇給もあるケースが多い。「昇給したはずなのに、手取りがむしろ減った」という声が2年目の社員から頻繁に聞かれるのは、この住民税の後追い課税が原因なのです。

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所得税は「毎月の確定税額」ではなく「仮払い」

住民税と社会保険を理解すると、最後に残るのが所得税です。

毎月の給与から差し引かれる所得税は、源泉徴収税額表を使って計算されます。

しかも、税額表に当てはめる金額は、給与から厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの社会保険料等を控除した後の金額です。

さらに、扶養控除等申告書の提出の有無で、甲欄か乙欄かが変わります。

月々の源泉徴収はあくまで概算であり、年末調整で過不足を精算するのが原則です。

この仕組みを知らないと、「今月だけ所得税が急に増えた」「12月に急に戻ってきた」という動きが全部不可解に見えます。

でも実際には、月々は仮払い。

最後に年末調整で合わせる。

だから、毎月の所得税欄だけを見て一喜一憂しても、年間では印象が変わることがあります。

扶養控除等申告書

そして盲点になりやすいのが、扶養控除等申告書です。

国税庁は、この申告書を提出している人には甲欄、提出していない人には乙欄を使うと説明しています。

副業先や転職直後の勤務先でこの書類が未提出だと、源泉徴収が重く見えやすくなります。

額面が増えたのに手取りが急に減ったとき、実は昇給ではなく「税区分」が原因だった、ということも普通にあります。

また、扶養控除等申告書に記入した扶養の変動も月々の手取り額に大きく影響します。

たとえば、16歳以上の子どもを扶養している場合、一般の控除対象扶養親族として38万円の所得控除が受けられます。

19歳以上23歳未満の特定扶養親族であれば63万円の控除です(出典:国税庁「No.1180 扶養控除」)。

子どもがアルバイトを始めて年間103万円を超える収入を得ると、扶養から外れます。

あるいは、配偶者の年収が増えて配偶者控除の対象外になることもあるでしょう。

こうした家族の状況変化は、昇給と同じタイミングで起きることも少なくありません。

「昇給したのに手取りが減った」と感じる原因が、実は扶養控除の変動にあったというケースは想像以上に多いのです。

「見えない天引き」物価上昇という名の実質減給

ここまで見てきた4つは、いわば制度上の「見える天引き」です。

しかし、2022年以降の日本では、もう一つ巨大な「見えない天引き」が存在します。それが物価上昇です。

2021年から2024年にかけて、実質賃金は累積で約3.8%も低下しました(出典:野村総合研究所, 2025年)。

2025年の春闘で5%超の賃上げが実現しても、消費者物価の上昇率が3%前後で推移すれば、実質的な手取りの改善はわずかにとどまります。

つまり、額面が5%上がっても、社会保険料・税金で約1.5〜2%が吸収され、さらに物価上昇で3%が目減りする。

結果として、「賃上げ=手取り増」どころか、実質的には横ばいか微減になってしまう可能性が高いのです。

これが、多くの方が「昇給したのに生活が楽にならない」と感じる最大の理由です。

賃上げ時代に「手取り負け」している人は、決して少数派ではありません。

具体的シミュレーション。月給1万円の昇給で手取りはいくら増えるのか

ここで、月給1万円昇給した場合の手取り変動を、具体的な数字で確認してみましょう。

前提条件として、東京都在住、協会けんぽ加入、40歳未満の独身会社員で計算します。

項目増加額(月額)備考
昇給額(額面)+10,000円月給ベース
社会保険料(本人負担)−約1,500円約15%相当
所得税−約500〜1,000円税率による
住民税(翌年6月〜)−約1,000円一律10%
手取りの増加+約6,500〜7,500円等級変動なしの場合

※概算値。個人の状況や控除の有無により変動します。

月給1万円の昇給に対して、手取りの増加は約6,500〜7,500円というのが一般的な目安です。

約25〜35%は社会保険料と税金に持っていかれる計算です。

さらに、標準報酬月額の等級が境界線をまたいだ場合、社会保険料の増加がさらに大きくなり、手取りの増加が5,000円を下回ることもありえます。

手取りを守る。今日からできる5つの具体的対策

次に対策を考えてみましょう。

給料明細を毎月チェックする

最も基本的、かつ最も重要な対策です。

最初に見るのは「手取り」ではなく「支給総額」

手取りだけを見ると、制度の時間差に振り回されます。

まずは基本給、役職手当、資格手当、通勤手当、残業代など、支給側に何が起きたかを見てください。

昇給が本当に反映されているかは、ここでわかります。

6月に減ったなら、まず住民税欄を見る

住民税は前年所得に対して翌年度課税され、6月から翌年5月まで給与から差し引かれます。

6月の違和感は、まずここです。

新卒2年目や、前年に賞与や残業が増えた人ほど、変化が大きく出やすいです。

秋に減ったなら、健康保険と厚生年金を見る

社会保険は、4月から6月の報酬をもとに毎年9月に見直されます。

基本給だけでなく、残業手当や通勤手当も対象です。

秋口に急に重くなったと感じたら、この2項目を前年同月や前月と比べてみてください。

昇給月の3か月後も見る

固定給が上がった人は、随時改定がかかる可能性があります。

固定的賃金が変わった月の後、3か月平均で2等級以上の差が出れば、標準報酬月額が見直されます。

昇給直後だけでなく、3か月後、4か月後まで見て初めて全体像がつかめます

所得税欄を確認する

扶養控除等申告書の提出有無で、甲欄か乙欄かが変わります。

副業先や転職直後は特に要注意です。

年末に調整はされるとしても、月々の手取りにははっきり影響します

給料計算ミスもありえる

ここまで見ても説明がつかないなら、残業時間の集計ミス、固定手当のつけ忘れ、控除区分の誤りを疑ってください。

給料計算は人が行う以上、間違いがゼロとは限りません。

とくに人が変わったり、ちょっと変則的なことがあったりすると起こりやすいですね。

間違いの内容は様々です。

残業時間が違っている、手当をつけ忘れしているなどなど。。。

まずは給料明細をしっかり確認してみましょう。

4〜6月の残業をコントロールする

標準報酬月額は4〜6月の給与で決まります。

この期間の残業が多いと、1年間の社会保険料が高く設定されてしまいます。

もちろん、業務上やむを得ない残業もあります。

しかし、「少し頑張れば残業を翌月に回せる」「7月にまとめて対応できる」という余地がある場合は、4〜6月の残業を意識的に調整することで、手取りへの影響を最小限に抑えることができます。

なお、会社側の視点でいえば、社員の昇給を7月に行うという選択肢もあります。

4月に昇給すると、その金額がそのまま4〜6月の算定期間に反映されますが、7月以降であれば翌年の算定まで影響を持ち越せる可能性があります。

ただし、大幅な変動があった場合は「随時改定」の対象となる点には注意が必要です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象です。所得税と住民税の両方を軽減できるため、「手取りを増やす」という意味では最も効率の良い制度の一つです。

たとえば、会社員(企業年金なし)の上限額である月2.3万円(年27.6万円)を拠出した場合、課税所得が330万円〜695万円の人なら、所得税20%+住民税10%で年間約8.3万円の税金が軽減されます。

月額にすると約6,900円。昇給1万円分の手取り増とほぼ同等の効果を、節税だけで得られる計算です。

まだ加入していない方は、検討する価値が大いにあるでしょう。

ただし、iDeCoの効力が発揮されるのは年末調整もしくは確定申告ですから月々の手取りには影響しませんけどね。

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ふるさと納税で住民税を先取り活用する

ふるさと納税は、住民税の一部を「前払い」して返礼品を受け取れる制度です。

手取り自体を増やすわけではありませんが、実質2,000円の負担で各地の返礼品を受け取れるため、家計全体で見れば支出の削減効果があります。

とくに、昇給によって住民税が増えた翌年こそ、ふるさと納税の控除上限額も上がっているはずです。

上限額をきちんと計算し、最大限に活用しましょう。

NISAで「税引き後リターン」を最大化する

給与収入から天引きされる税金や社会保険料を直接減らすことには限界があります。

しかし、手元に残ったお金を「税金のかからない場所」で増やすことは可能です。

NISAは、運用益が非課税になる制度です。

通常、株式や投資信託の利益には約20%の税金がかかりますが、NISAの枠内であればこれがゼロになります。

昇給で少しでも手取りが増えた分を、そのままNISA口座での積立投資に回す。

この「昇給分を自動的に投資に回す」仕組みを作ることで、長期的に手取りの目減りをカバーする資産を築くことができます。

ただし、NISA貧乏にならないように無理に積立をするのはやめましょう。

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会社員が見落としがちな「手取り」の盲点

最後に盲点をお話しておきましょう。

社会保険料が増えることは「損」なのか

ここまで読むと「社会保険料は悪者だ」と感じるかもしれません。

しかし、冷静に考えると、社会保険料が増えることにはメリットもあります。

厚生年金は「払った分だけ将来の年金が増える」仕組みです。

標準報酬月額が上がれば、将来受け取る老齢厚生年金の額も増えます。

また、万が一の障害年金や遺族年金の給付額も、標準報酬月額に連動しています。

健康保険料も同様で、傷病手当金(病気やケガで働けなくなった際の給付)や出産手当金は、標準報酬月額をベースに計算されます。

つまり、社会保険料が増えること自体は「掛け捨て」ではなく、将来のリターンにつながっています。

「目の前の手取り」と「将来の保障」のバランスで考えることが、本当の意味でのマネーリテラシーといえるでしょう。

「手取り」だけで転職を判断しない

「手取りが増えないから転職しよう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、手取り額だけで判断するのは危険です。

企業によっては、厚生年金基金や確定給付年金(DB)など、給与明細には表れない「見えない報酬」を提供しているケースがあります。

また、会社負担分の社会保険料(本人負担と同額以上)も、言い換えれば「あなたのために会社が支払っている人件費」です。

手取り額だけでなく、福利厚生や退職金制度を含めた「総報酬」で比較することが、後悔しない判断につながります。

まとめ

昇給したのに手取りが増えない。

この問題の根本にあるのは、「社会保険料の等級ジャンプ」「住民税の後追い課税」「所得税の仮払い」「物価上昇」の4つの要因が複雑に絡み合っている構造です。

そして、最も重要なのは「仕組みを知ること」です。

仕組みを知れば、恐れる必要はありません。4〜6月の残業調整、iDeCoやNISAの活用、ふるさと納税の最大化。

打てる手はたくさんあります。

あなたの給料明細は、あなたのお金の現在地を映す鏡です。

毎月たった5分、明細を眺める習慣をつけるだけで、「なぜ手取りが減ったのか」がわかるようになります。

そして、わかれば対策できます。

賃上げのニュースに一喜一憂するのではなく、自分自身の手取りを守り、増やす。その第一歩を、今日の給料明細から始めてみてください。

【今日からできるアクション】
今月の給料明細を開いて、「健康保険料」「厚生年金保険料」「所得税」「住民税」の4つの金額を確認してみてください。先月と比べて変わっていませんか? もし変わっていたら、この記事で解説した5つの原因のどれに当てはまるか、照らし合わせてみてください。それだけで、あなたのマネーリテラシーは確実に一段上がります。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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