「国民年金を支払うより将来生活保護を受けた方が得なのでは?」といった意見が度々聞かれます。これは国民年金の支給額よりも生活保護の支給額が多いことによる議論です。
今回は実際に生活保護と国民年金、厚生年金を比較して国民年金を支払うより将来生活保護を受けた方が得なのでは?という疑問について検証してみましょう。
国民年金、厚生年金、生活保護の支給額
それではまずは今回の議論の中心となる国民年金、厚生年金、生活保護の支給額を比較検討してみましょう。
国民年金の支給額 満額64,941円、平均55,918円
まずは国民年金の支給額から見ていきましょう。国民年金の現状の満額は年間77万9,300円です。月に換算すれば64,941円です。これは20歳から60歳まで40年間満額納付した人の現状の年金額になります。
平均だと上記の通り、25年以上納付の方の平成29年度末のデータで月額55,918円となっています。ちなみに繰り下げすると76,255円。繰り上げすると43,268円です。
厚生年金の支給額 平均147,051円
次に厚生年金です。厚生年金は所得によって支払う年金も受け取る年金も異なる制度であるため満額という考え方は基本ありません。そのため、平均額でみていくと平成29年度末のデータで月額147,051円となっています。少しずつ下がって来ているのは気になりますが・・・
ちなみに厚生年金は男女差が大きくあります。。男性の平均は月額165,668円なのに対して女性は月額103,026円と62,639円もの差がありますね
年金受取りデータについて詳しくは下記の記事を御覧ください。
先日、厚生労働省年金局から平成30年12月現在(平成29年度)の厚生年金保険・国民年金事業の概況が発表されました。厚生労働省が発表する統計資料は今現在ちょっと悪い意味で話題になってしまっていますけどね(笑)厚生労働省の毎月勤労統計の[…]
生活保護の支給額 平均142,992円
生活保護の金額は住んでいる地域や世帯数、年齢などの条件によって支給額が変わってきます。
そこで国立社会保障・人口問題研究所のサイトの「扶助別保護費1人あたりの月額の年次推移」で統計データから確認すると生活保護の一人あたりのすべての扶助合計は月額142,992円(最新データの平成27年度)であることがわかります。
ちなみに内訳は生活扶助費51,902円、住宅扶助費27,290円、教育扶助11,117円となっています。
国民年金・厚生年金・生活保護金額の比較
すべて平均で比較してみましょう。
厚生年金:147,051円
生活保護:142,992円
こうやって改めて比較してみると会社員や公務員の方が受給できる厚生年金の金額が一番高くはなっているものの、生活保護とほぼ変わらず、自営業者などの国民年金の3倍近くとかなり多くなっているのがわかりますね。
生活保護の方が得なのか?
国民年金は10年以上掛けてようやくもらえる制度です。
満額受給しようとすれば40年間コツコツ払い続ける必要があります。対して生活保護は国民年金の納付などと基本的に関係なく支給されます。さらに生活保護は医療費が免除になったり、NHKの料金も免除になったりするのです。前述のもらえる金額も含めて「国民年金を支払うより将来生活保護を受けた方が得なのでは?」という意見があるのも頷ける結果となっています。
しかし、お得とは言えない部分もあるのです。
生活保護は自由が制限される
しかし、生活保護にはもちろんデメリットがあります。それは様々な制限が掛かることです。
まず基本的に自動車を所有することができません。(一部公共交通機関が整備されてない地域を除く)また、預貯金や不動産、家など所有することができませんし、生命保険も基本的に入ることができません。また、生活保護を受けている時点で仕事もあまりできない状態でしょうから自由に使えるお金も限られてしまいます。預貯金がなければ孫にお年玉をあげるとかプレゼントをあげるとかいった楽しみも享受するのは難しいでしょうしね。
つまり、様々な制限を加えられるのです。また、定期的にケースワーカーなど市役所職員などの訪問を受けたり、指導を受ける必要もでてきますので管理された生活となります。
生活保護費は削減が続いている
実は生活保護費は削減が続いています。前述の国立社会保障・人口問題研究所のサイトのデータによると平成12年のころは生活保護の一人あたりのすべての扶助合計は月額150,719円でした。現状は142,992円ですから8,000円近く少なくなっています。その間の物価はかなり上がっているでしょうから実質の生活水準としてはかなり落ちてしまうということが予想されます。
そもそも生活保護を受ける人の数が増えてしまっているのが主な原因でかなり財政的に厳しくなっているのが実情なのです。そのため国民年金より生活保護が恵まれているという現状がいつまで続くのかはわからないとも言えるでしょう。そうなってから国民年金を払おうとしてもかなり厳しいでしょうからね。
ちなみに国民年金が払い損では?という意見もよく聞きますが、これも考え方次第で実は今でも損な商品とはいえないんですよ。詳しくは下記記事をご覧ください。
ここ3回ほど国民年金・厚生年金の繰上げ・繰下げ・繰下げ期間の延長と年金に関する記事を書いてきました。3つの記事ともそれなりに大きなアクセスがあり、そのためなのか何度か同じと思われる方から同じような苦情メールが来たのです。長文メールでしたが要[…]
そもそも国民年金の納付は義務である
今の生活保護制度と国民年金の金額面やその他優遇を考えると「国民年金を支払うより将来生活保護を受けた方が得なのでは?」と考えてしまうのは当然でしょう。歪な仕組みとなってしまっているからです。
しかし、そもそも国民年金を支払うのは義務であることは押さえておきましょう。
払う払わないの選択をするものではありません。厚生年金の場合、給料から天引きですから未納はないでしょうが。
また、国民年金には連帯納付義務もあります。連帯納付義務とは世帯主や配偶者の片方は連帯して国民年金を納付しなければならないのです。最終的には強制執行されます。つまり、自分の預金や給料などの財産が差し押さえされちゃいますよってことですね。
前と違って今はかなり厳しく取り扱われているようですから、くれぐれも生活保護の方が得だから納めないなんてことは考えないほうがよいでしょう。
国民年金の督促について詳しくは下記記事を御覧ください。
先日、知り合いの方から国民年金の「年金特別催告状(ねんきんとくべつさいこくじょう)」が届いたと相談がありました。どうしてよいのかわからなかったようです。確かに名前からしてかなり怖い書類ですよね・・・「差し押さえ」の言葉も書い[…]
国民年金受給者でも生活保護を受けることができる場合も
どうしても生活保護の金額と比較すると国民年金は不公平に感じてしまう方が多いと思います。しかし、国民年金を受給していても生活がままならず老後破産なような状態であれば生活保護を受けることもできる場合があります。その場合、国民年金はそのまま受け取り生活保護費も受け取ることができます。(国民年金の受給額があれば生活保護の支給額は減ります)
そういう制度ですからもし、経済的な理由で国民年金を納付する余裕がない方も未納にするのではなく、年金事務所もしくは市役所の年金課に相談に行きましょう。また、学生も相談にいけば免除が可能です。
免除でも将来の年金に一部反映されたり、障害基礎年金や遺族基礎年金をもらえますが、未納の場合その権利も生じなくなります。特に障害年金のことを考えると免除でも適用しておいた方がよいでしょうね。
免除について詳しくは下記記事を御覧ください。
国民年金を払っても将来自分がもらえる頃には対してもらえないでしょ?と年金を払いたくないと考えている方が多くいます。また、国民年金が破綻すると思っているため払わないと言う方もいます。生活保護の方が多いから年金もらえなくても将来[…]
まとめ
今回は「国民年金、厚生年金と生活保護を比較。年金未納で生活保護を受けた方が本当に得なのか?」と題して国民年金、厚生年金、生活保護の比較をしてみました。
生活保護は国民年金と比較するとたしかに恵まれた制度ではあります。しかし、生活に様々な制限が掛かってしまい自由が少なくなってしまいます。そうならないように110万人が加入しているiDeCoなどで将来の老後資金を貯めるなど準備をしておきたいところですね。
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