厚生年金加入70歳以上も納付義務、確定拠出年金65歳まで加入可能。二つの報道が意味すること

今日は年金関連、社会保険関連でかなり大きな報道が二つありました。15日に年金関連の有識者会合が行われたためです。ちなみに以前も書きましたがこの手の会合は議事録をみるとびっくりするような内容だったりしますので定期的にチェックしてます。詳しくはこちらの記事をごらんください。

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今回の報道、一つは会社員などが加入している厚生年金について条件を満たした方は70歳以上も納付義務が発生するように改正する検討に入った話、もう一つが年金の上乗せ分にあたる確定拠出年金が65歳まで払えるように改正するのを目指すという話です。どちらも老後資金を考える上で非常に大きな意味を持つ改正となりそうです。

今回はこの二つの改正について見ていきましょう。

厚生年金加入70歳以上も納付義務

まずは1つ目の厚生年金加入70歳以上も納付義務が発生するように改正するよってお話です。まずは報道内容から見ておきましょう。

厚生労働省は会社員らが入る厚生年金について、一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける検討に入る。現在は70歳未満としている保険料の納付期間が長くなるため、受給できる年金額は増える。健康寿命は延び続けており、将来に備えて長い期間働く高齢者が増える可能性がある。
出典:日経新聞 2019年4月15日電子版より

現在のところ、厚生年金保険に加入する事業所に勤務する70歳未満の人は、原則として厚生年金保険の被保険者となります。逆に言えば70歳以上の方は厚生年金の対象とならなかったのです。ただし、高齢任意加入被保険者といって老齢の年金を受けられる加入期間がなく、70歳を過ぎても会社に勤める場合は、老齢の年金を受けられる加入期間を満たすまで任意に厚生年金保険に加入することはできました。

それを改正しようという話です。特に大きいのが任意加入ではなく義務付け(強制加入)ってところでしょうね。

まだ具体的な内容までは報道されていませんが、「一定額以上の収入などがある場合、70歳以上も加入して保険料の支払いを義務付ける」とされていますからある程度の報酬がある方限定とはなりそうですが・・・。

70歳以上も厚生年金に加入することのメリット・デメリット

今回の改正は会社員の方からするとメリットもデメリットもある話でしょう。会社側から見ると社会保険は半分会社負担のため費用が増える話となりますから、高齢者雇用の妨げにならないかな?とも危惧するところではあります。

70歳以上厚生年金に加入するメリット

まずはメリットです。メリットとしては当たり前ですが掛ける年金が増えますから、将来もらえる年金額も増える可能性が高いです。

もらえる厚生年金額は基本的に平均標準報酬額に被保険者期間の月数を掛けて決まります。そのため被保険者期間がながければそれだけもらえる報酬の増えることになるのです。

70歳以上厚生年金に加入するデメリット

デメリットはいくつか考えられます。まず1つ目は厚生年金の負担が発生することです。将来もらえる年金は増えることになりますが、現在使えるお金が少なくなるということになるのです。

このあたりは現在廃止も検討されている在職老齢年金についても合わせて考える必要があります。在職老齢年金とは簡単に言えば年金をもらっている人が働くと一部の年金が支給停止の仕組みのことです。つまり、給料から厚生年金が引かれた上でもらえる厚生年金の一部が支給停止なんてことにもなりかねないのです。このあたりは制度設計次第ですけどね。

在職老齢年金について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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また、一番考えなければいけない大きいデメリットが早死のリスクでしょう。長い期間働いてたくさん納付したとしても早死してしまったらもらいそこねてしまって結局損ということにもなりかねませんからね。

このあたりは人それぞれでなんとも言えないところがあります。何歳まで生きれば得なのかについては下記の繰り下げ記事に詳しく計算がのっていますので合わせて御覧ください。

何歳まで生きれば得なのか

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会社側のメリット

会社側からすると強いて挙げるならば、これから労働者人口がどんどん減っていく中で高齢者が安心して働ける環境をつくるという意味ではメリットかも知れません。

会社側のメリット

逆に会社側のデメリットとしてはやはり費用負担でしょう。会社が半分負担が必要ですから他に選択肢があるならばあえて高齢者を採用するということをしなくなる可能性もあります。そうなれば高齢者の働き場が少なくなってしまうというまた違ったデメリットも発生しかねません。もしかしたら政府は会社経営者などの役員報酬をターゲットにしているのかもしれませんが。

私見

医療の進歩により寿命も健康寿命もどんどん伸びています。実際に高齢者でも働ける方はたくさんいるんですよね。そのため政府が考えるように加入年齢を後ろにもっていくのは理解できます。

ただし、今回の制度だと強制加入であることがかなり引っかかります。そうすることで前述したように高齢者をあえて採用しなくなるのでは?という懸念も生まれてくるからです。

個人的な意見としては70歳以上でも任意加入できるようにする程度で抑えるべきかな・・・って思いますね。それだけ年金財政が厳しいところに来ているのは事実なのでしょう。

少子高齢化が来るのは確定している現在、年金財政についてこのような小手先の方法での改善はなかなか難しいでしょう。2025年問題とも言われますが、健康保険とも合わせて考える必要があるでしょう。ベーシックインカムとかも議論してほしいところですがぜんぜん議題にも上がりませんね。議論している側の仕事がなくなってしまうところが大きいのでしょうけどね・・・

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確定拠出年金65歳まで加入可能

次は確定拠出年金が65歳まで加入可能になるという話です。こちらもはじめに報道内容をみてみましょう。

厚生労働省は運用成果によって年金額が変わる確定拠出年金の制度を大幅に見直す。掛け金を65歳まで払えるようにし、加入手続きも簡素にする方向だ。払い込める期間が長くなれば、老後に受け取る年金が増える。
出典:日経新聞 2019年4月15日電子版より

今まで確定拠出年金は60歳までの加入しかできませんでした。それを個人型も企業型も65歳まで拡張しようってお話ですね。前述の厚生年金と大きく違うのが、確定拠出年金はそもそも加入が任意であるってことですね。(一部、企業型除く)また、報道によると強制で65歳までという訳でもなさそうですしね。

なお、この問題については下記記事でも書きましたが、各団体が要望を出しています。自由度をあげてくれということですね。

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イデコ会議

確定拠出年金が65歳まで加入できるメリット・デメリット

こちらもメリット・デメリット考えられます。

確定拠出年金に65歳まで加入できるメリット

メリットとしては当然掛け金を長いこと払い込めますからそれだけ老後に受け取る金額が増える可能性が高くなります。すでに年金自体の受け取りが繰り上げ繰り下げしなければ65歳ですからそれまで働く人も多いはずです。そう考えればメリットと考える人のほうが多いでしょう。確定拠出年金は払えば所得税・住民税の節税となりますしね。

確定拠出年金に65歳まで加入できるデメリット

基本的に任意の制度ならばデメリットはありません。ただし、これに合わせて引き出しが現在60歳から可能ですが65歳からしか駄目となればかなりのデメリットですが・・・まあ、おそらく現在の加入者にそのような変更は難しいと思われますので気にしなくてもよいでしょう。

ただし、1点しっかり注意しないと行けない点があります。それは確定拠出年金の制度的な理解がより必要なことです。確定拠出年金は基本的に掛ける時に所得控除となり、もらう時に課税対象となる制度です。課税対象とは言っても実際には退職金控除や公的年金控除があるので得です。しかし、65歳まで加入すればそれだけもらえる金額が増えます。つまり、退職金控除や公的年金控除内で収まるのか問題が発生してきてしまうんですね。(控除も増えますが)そのため、受け取りをちょっと工夫しないと多くの税金が取られてしまい逆に損をしたということになりかねないとう点は押さえておく必要があります。詳しくは下記記事を御覧ください。

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ideco(イデコ)に騙されるな

私見

個人的にはこちらの確定拠出年金が65歳まで加入可能なのは大賛成です。しかし、デメリットにも書いたようにしっかり制度を理解しておかないと逆に損をしてしまう方が多くなりそうな予感もありますね・・・

個人的には65歳まで掛けれるようにするのも重要ですが、この4つが確定拠出年金関連で改正をお願いしたいですね。

掛け金を増やすこと
事務の効率化(入金から反映、申込みから開設までなど遅すぎ)
国民年金基金の手数料改善
特別法人税の廃止

まとめ

今回は「厚生年金加入70歳以上も納付義務、確定拠出年金65歳まで加入可能。二つの報道が意味すること」と題して今後改正されるとの話がある二つの制度変更についてみてきました。

別々に見てきましたが実は両方の内容はある意味繋がっているとも考えられます。簡単に言えば今後、年金財政厳しい・・・なんとかしないとという改善が厚生年金70歳まで強制加入化、年金財政が厳しい・・・自分たちでなんとかしてな、ってのが確定拠出年金は60歳までの加入可能って感じでしょう。「私的年金を充実し、先細りする公的年金を補う。」と記事元の日経新聞にもずばり書いてありましたがこれが本音でしょうね。

なお、確定拠出年金ってなに?って方はこちらの記事から御覧ください。

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