先日、スタバで隣に座っていたカップルが、まさにこの話題で盛り上がっていました。
と。微笑ましい会話ではあります。
この話を聞いてあなたはどう感じましたか?
「A型の自分にもチャンスがあるかも」
あるいは
「B型だから残念」
などと感じた方。
あなたは詐欺師が最も狙いたい"カモ"になっていいるかもしれません。
本記事では、宝くじの当選確率の真実と、数字のトリックに騙されない「5つの視点」をお伝えします。
宝くじ高額当選者「A型4割」の真実―数字は嘘をつかない
まず、事実を確認しましょう。
宝くじの公式サイトが公表している「宝くじ長者白書」(令和6年度)によると、1,000万円以上の高額当選者540人への調査結果は以下のとおりです(出典:宝くじ公式サイト「宝くじ当せん者レポート」令和6年度)。
| 血液型 | 当選者の割合 |
|---|---|
| A型 | 38.9% |
| O型 | 29.3% |
| B型 | 20.2% |
| AB型 | 9.1% |
| 無回答 | 2.6% |
確かに、A型が約4割で最多です。
これは紛れもない事実。
宝くじの公式サイトが発表している正式なデータですから、「嘘だ」とは言えません。
では、何が問題なのでしょうか。
答えは、「比較対象が欠けている」ことです。
日本人の血液型分布を知っていますか?
日本赤十字社のデータによると、日本人の血液型の割合は概ね以下のとおりです(出典:日本赤十字社 兵庫県赤十字血液センター「血液型について」)。
| 血液型 | 日本人全体の割合 |
|---|---|
| A型 | 約40% |
| O型 | 約30% |
| B型 | 約20% |
| AB型 | 約10% |
お気づきでしょうか。
宝くじ高額当選者の血液型分布と、日本人全体の血液型分布が、ほぼ一致しているのです。
つまり、「宝くじ当選者の4割がA型」なのは、単に「日本人の4割がA型だから」に過ぎません。
A型だから当たりやすいのではなく、A型の人が多いから当選者にもA型が多いだけ。
これは、「交通事故に遭った人の約4割がA型」と言っているのとまったく同じ構造です。
「なんだ、当たり前じゃないか」と思った方は、統計リテラシーが高い方です。
しかし、驚くことに多くの人がこの単純なトリックに気づきません。
誕生日や星座のデータも同じ構造
宝くじの公式サイトには、血液型のほかにも性別、年代、職業、星座、イニシャルなど、さまざまな統計データが掲載されています。
たとえば、高額当選者の年代で最も多いのは「60歳以上」で52%。
これも一見すると「60歳以上が当たりやすいのか」と思いたくなります。
しかし、宝くじを定期的に購入している層の年齢分布を考えれば、高齢者の比率が高いのは当然です。
若い世代はそもそも宝くじをあまり買いません。
購入者の母集団における年齢分布を反映しているだけです。
星座や誕生日についても同様です。
「〇〇座が当たりやすい」という情報を見かけたとしても、各星座や誕生日の人口の違いなどを考慮しなければ意味がありません。
つまり、これらの統計データのほとんどは、人口比率や購入者の属性分布をそのまま反映しているに過ぎないのです。
売り場の迷信
「◯◯チャンスセンターの1番窓口」など過去に当たりが多く出た売り場に行列ができるのも同じ理屈です。
単純に過去に当選が出たことでその売場で買う人が多く、販売枚数が桁違いに多いから、さらにそこから当たりが出ているだけです。
確率(分母に対する分子の割合)で見れば、近所の寂れたタバコ屋で買っても、◯◯で買っても、1枚あたりの当選確率は変わらないケースがほとんどでしょう。
さらに警戒すべきは、こうした「当たりやすい」という心理につけ込む「投資詐欺」の存在です。
「ロト6の当選番号をAIで予測する」「宝くじの攻略法を教える」
これらは100%詐欺です。宝くじの抽選は厳正な物理抽選であり、過去のデータから未来を予測することは不可能です。
「自分だけは特別な情報を知っている」「裏ワザがあるはずだ」という思考は、宝くじ売り場に並ぶ心理と地続きであり、詐欺師にとって格好のカモになってしまいます。
嘘つきが数字を嘘に使う
統計の世界に有名な格言?があります。
数字は嘘をつかない。
嘘つきが数字を嘘に使うのだ
というものです。
今回の話は「宝くじ当選者の約4割はA型なんだって」となにも嘘をついていません。
しかし、これを使って上手く悪い話に誘導することも可能なんですよ。
これを信用する人は他の数字のトリックにも嵌めれそうですしね。
ちなみにこういう話はゴロゴロしています。
このサイトでも過去に2つばかり取り上げていました。


なぜ人は「自分だけは特別」と思ってしまうのか
ここで重要な問いがあります。こんなに単純なトリックなのに、なぜ多くの人が引っかかるのでしょうか。
答えは、人間の脳に組み込まれた「認知バイアス」にあります。
バーナム効果――「自分のことだ」と思い込む心理
心理学に「バーナム効果」(フォアラー効果)と呼ばれる現象があります。
これは、誰にでも当てはまるような一般的な内容を、「自分だけに当てはまる」と感じてしまう心理的な傾向です。
1948年、心理学者バートラム・フォアが行った実験では、学生たちに同じ文章(実は占いの文面を切り貼りしたもの)を「あなた個人の性格分析結果です」と渡したところ、的中度の自己評価は5段階中の平均4.26という高い数値を示しました。
血液型占いが日本でこれほど根強い人気を持つのも、このバーナム効果の影響です。
「A型は几帳面」と言われると、几帳面な面だけを思い出し、「当たっている」と感じてしまう。
これが次に紹介する確証バイアスと連動して、信念を強化します。
確証バイアス――都合の良い情報だけ集めてしまう
確証バイアスとは、自分が信じたい情報ばかりを集め、反する情報を無視してしまう認知の偏りです。
「A型は宝くじに当たりやすい」と一度思い込むと、A型の当選者のニュースばかりが目に入り、B型やO型の当選者の存在は「例外」として処理されます。
この2つの認知バイアスが組み合わさると、以下のような連鎖が起きます。
まず、バーナム効果で「これは自分に当てはまる」と感じます。
次に、確証バイアスが働いて都合の良い情報ばかりを集めます。
その結果、「自分は特別だ」「自分なら当たる」という根拠のない確信が生まれるのです。
そして、この思考パターンこそが、詐欺師たちが最も利用したがる「心の隙」なのです。
宝くじの当選確率の現実――2,000万分の1とは何か
ここで、宝くじの「当たる確率」そのものを冷静に見てみましょう。
主な宝くじの1等当選確率
| 宝くじの種類 | 1等当選確率 | 1等賞金 |
|---|---|---|
| 年末ジャンボ | 2,000万分の1 | 7億円 |
| サマージャンボ | 1,000万分の1 | 5億円 |
| ドリームジャンボ | 1,000万分の1 | 3億円 |
| ロト7 | 約1,030万分の1 | 6億円 |
| ロト6 | 約610万分の1 | 2億円 |
(出典:宝くじ公式サイト各種くじの当選条件より)
2,000万分の1。この数字がどれほどのものか、いくつかの例えで考えてみましょう。
この数字を日常的な事象に置き換えてみましょう。
- 雷に打たれて死ぬ確率:約1,000万分の1(宝くじの方が当たりにくい)
- 北海道に落としたコンタクトレンズを、偶然見つける確率(例え話としてよく用いられます)
- 東京ドーム約450個分の広さに敷き詰められた宝くじの中から、たった1枚の正解を引き当てる
あなたは、台風の日に「雷に打たれるかもしれないから外出を控えよう」と本気で心配しますか?
おそらくしないでしょう。
しかし、それよりも低い確率の宝くじには「当たるかもしれない」と期待してしまう。
これは、行動経済学でいう「確率の過大評価(Probability Weighting)」という認知バイアスです。
極端に低い確率は、実際よりも高く見積もってしまう脳のバグなのです。
還元率50%未満の意味
宝くじの期待値についても押さえておきましょう。
宝くじ1枚300円の期待値(平均的なリターン)は約150円です。
還元率にして約50%。
これは「当せん金付証票法」という法律で、還元率が50%を超えてはならないと定められているためです(出典:当せん金付証票法 第5条)。
総務省の発表では、宝くじの実効還元率は45.7%とされています(出典:総務省「宝くじ・公営競技・サッカーくじの実効還元率」)。
つまり、1万円分の宝くじを買うと、平均で4,570円しか戻ってきません。
これを他のギャンブルと比較してみましょう。
| 対象 | 還元率(目安) | 備考 |
| 宝くじ | 約46% | 総務省管轄 |
| 競馬・競艇 | 約75% | 公営競技 |
| パチンコ | 約80〜90% | 遊技 |
| カジノ(海外) | 約95%〜 | ブラックジャック等 |
パチンコの還元率は約80~90%、競馬などの公営競技は約75%、カジノのバカラは約95%です。
宝くじの還元率は、あらゆるギャンブルの中で最低レベルに位置します。
この事実から、行動経済学の世界では宝くじのことを「愚か者に課された税金(fool's tax)」と呼ぶことがあります
実際、宝くじの売上の半分以上は地方自治体の財源に充てられており、構造的には「税金」と同じ機能を果たしているからです。
もちろん、300円で「夢を買う」という楽しみ方を否定するつもりはありません。
重要なのは、宝くじが「お金を増やす手段」ではないという事実を正しく理解したうえで、楽しみの範囲にとどめることです。
数字のトリックから投資詐欺へ――被害額1,271億円の現実
ここからが本記事の核心です。
「A型だから当たりやすい」という思考回路は、宝くじに限った話ではありません。
まったく同じ認知のメカニズムが、投資詐欺の被害に直結しているのです。
SNS型投資詐欺の爆発的増加
警察庁の発表によると、令和6年(2024年)のSNS型投資・ロマンス詐欺の被害は、認知件数10,237件、被害額は1,271.9億円に達しました。
前年と比較して、認知件数は166.2%増、被害額は179.4%増という異常な伸び率です(出典:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」)。
1日あたりの被害額は3億4,752万円。既遂1件あたりの平均被害額は1,242.7万円です。
さらに、令和7年(2025年)10月末時点では、特殊詐欺とSNS型詐欺を合わせた被害総額は約1,096.7億円に上り、前年同期を大幅に上回るペースで推移しています(出典:警察庁 令和7年10月末暫定値)。
詐欺師が使う「数字のトリック」は宝くじと同じ構造
投資詐欺の手口を分析すると、宝くじの「A型4割」と同じ構造のトリックが至るところに使われています。
たとえば、「この投資商品の利用者の87%が利益を出しています」というデータ。
一見すると信頼できそうですが、「利益を出した」の定義が1円でもプラスなら含まれるかもしれません。
期間はどれくらいか。母集団は何人か。途中で辞めた人(=損失を出した人)は含まれているのか。
「著名投資家の〇〇氏も推薦」という権威付け。
バーナム効果と権威への服従原理が複合的に働き、冷静な判断力を奪います。
「あなたのような知識のある方にだけお伝えしています」という特別感の演出。
これもバーナム効果の典型的な応用です。
詐欺のシナリオは、すべてこの流れに沿っています。
まず、バーナム効果で「自分に関係がある」と思わせます。
次に、確証バイアスを利用して、都合の良い情報(利益が出たという体験談など)ばかりを見せます。
そして、少額の「利益」を体験させて信頼を構築し、最終的に大きな金額を引き出すのです。
宝くじの統計トリックとの恐ろしい共通点
整理すると、構造は以下のようにまったく同じなのです。
宝くじの場合は、「A型の当選者が4割(事実)」という情報に対して、母集団の比率を確認しない(思考の欠落)まま、「A型は当たりやすい(誤った結論)」に至ります。
投資詐欺の場合は、「利用者の87%が利益を出した(かもしれない事実)」という情報に対して、定義や条件を確認しない(思考の欠落)まま、「自分も儲かる(誤った結論)」に至ります。
どちらも「正しそうに見える数字」を提示し、検証に必要な情報を意図的に隠すことで、誤った結論に誘導しているのです。
騙されないための5つの思考チェックリスト
では、この手のトリックに騙されないためにはどうすればよいのでしょうか。
統計データやお金に関する情報に接したとき、以下の5つの「問い」を習慣にしてください。
出所は信頼できるか?
その情報を発信しているのは誰か、どのような立場の人・組織かを確認します。
宝くじの統計データの場合、出所は宝くじ公式サイトですから信頼性は高い。
しかし、投資の「実績」を謳うSNSアカウントやLINEグループの情報は、出所の信頼性を疑う必要があります。
公的機関の統計(総務省、金融庁、警察庁など)、学術論文、大手メディアの一次報道は比較的信頼できます。
一方、個人ブログ、SNS投稿、「関係者の話」は鵜呑みにしてはいけません。
母集団(比較対象)は何か?
これが今回の最重要ポイントです。
「A型が4割」と言われたとき、「そもそも日本人全体でA型は何割か」を確認する。
「60歳以上が52%」と言われたとき、「購入者全体で60歳以上は何割か」を確認する。
「投資利用者の87%が利益を出した」と言われたら、「利益の定義は何か」「対象期間は」「母集団から脱落した人はいないか」を確認する。
比較対象なしの数字は、どんなに正確であっても判断材料になりません。
いつのデータか?
データの鮮度は非常に重要です。
経済環境は日々変化しています。
5年前のパフォーマンスデータで今の投資判断をするのは、5年前の天気予報で明日の傘を判断するようなものです。
特に統計データは、前後に大きなイベント(リーマンショック、コロナショック、急激な円安など)があると前提が崩れます。必ず調査時期を確認しましょう。
見せ方のトリックはないか?
同じデータでも、見せ方次第で印象はまったく変わります。
たとえば、ある投資信託の運用成績をTOPIXと比較すれば好成績に見えるかもしれませんが、本来比較すべきベンチマーク(たとえばNASDAQ)と比較すると平凡な成績かもしれません。
グラフの縦軸のスケールを操作したり、都合の良い期間だけを切り取って表示したりするのも、よくある手法です。
足りないデータはないか?
提示されているデータだけでなく、「提示されていないデータ」にも注意を払いましょう。
宝くじのケースでは、「当選者の血液型分布」は提示されていましたが、「日本人全体の血液型分布」は提示されていませんでした。
この「欠けているデータ」こそが、正しい判断に不可欠だったのです。
投資詐欺でも同様です。「成功事例」は大量に見せてくれますが、「失敗事例」や「途中で連絡が取れなくなった事例」は絶対に教えてくれません。
宝くじを買うなら知っておくべきこと
ここまで読んで「じゃあ宝くじは絶対に買うべきではないのか」と思った方もいるかもしれません。
私の見解を正直に申し上げます。
宝くじを「投資」や「お金を増やす手段」として捉えるなら、合理的な選択とは言えません。
還元率50%未満という事実は変わりませんし、1等の当選確率は天文学的に低い。
生涯を通じて宝くじを買い続けても、99.99%の人は1等には当選しないのが現実です。
しかし、「300円で数週間ワクワクできる娯楽」として捉えるなら、それはその人の価値観次第です。
映画を1,800円で観るのと、宝くじを300円で買って夢を見るのは、楽しみ方として同列に語ることもできるでしょう。
ただし、その場合でも以下の点は押さえておきたいところです。
まず、予算を決めて、それ以上は絶対に買わないこと。
「今回こそ当たる気がする」という感覚は、まさに認知バイアスです。
次に、「当たりやすい血液型」「当たりやすい誕生日」「当たりやすい売り場」といった情報に惑わされないこと。
当選は完全に確率の問題です。
そして、もし本気でお金を増やしたいなら、宝くじではなく、NISAやiDeCoなどの制度を活用した長期・分散投資を検討してください。
参考までに、宝くじに年間3万円(月2,500円程度)使っている方が、同じ金額をNISAでインデックスファンドに積み立てた場合、年利5%で運用できれば20年後には約123万円になります。
元本60万円に対して約63万円のプラスです。確率ゼロではない「確実な資産形成」の道がそこにあります。
まとめ――数字を「読む力」があなたの資産を守る
「宝くじ高額当選者の約4割はA型」。
この一文は、まぎれもない事実です。
しかし、この事実から「A型は当たりやすい」と結論づけた瞬間、あなたの判断は事実から離れます。
数字は嘘をつきません。しかし、嘘つきが数字を嘘に使うのです。
今回ご紹介した5つの視点、すなわち「出所の確認」「母集団の確認」「データの鮮度」「見せ方のトリック」「欠けているデータ」を意識するだけで、詐欺やインチキ商法に騙されるリスクは大幅に下がります。
特に、SNS型投資詐欺の被害額が年間1,000億円を超える時代にあって、「数字を正しく読む力」は最強の防御策です。
「なんとなく良さそう」で大切なお金を動かさないでください。
必ず、「この数字の裏側にある前提は何か?」と自分に問いかける習慣を身につけてください。
それだけで、あなたの資産を守る力は劇的に向上します。

