先日、厚生年金の上限が9月から改定されるという記事を書いたところ、読者様から以下のようなご質問をいただきました。
9月前からなにかあったのでしょうか?
先に結論から言えば2つの要因が考えれるでしょう。
一つは今年になってから給与所得控除と基礎控除が変更されていること。
給料の金額によっては天引される源泉所得税が変わっている可能性があります。
また、もう一つは住民税が前年の所得を元に計算され6月から控除されますのでその影響の可能性。
今回はその質問について解説していきたいと思います。
給与所得控除と基礎控除が変更
まずは一番手取りが減った理由として怪しい給与所得控除と基礎控除が変更についてから見ていきましょう。
簡単に言えば2020年1月から給与所得控除を減らして、基礎控除を増やしているのです。
これによりある程度の給料のある方は増税となっているんですよ。
詳しくはこちらの記事で以前まとめています。
給与所得控除の変更
2019年までの給与所得控除は下記の計算となっています。
給料等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円超10,000,000円以下 | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円超 | 2,200,000円(上限) |
出所:国税庁 No1410 「給与所得控除」より
それが2020年からは以下のように変更になります。
給料等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,800,000円以下 | 収入金額×40%-100,000円 550,000円に満たない場合には550,000円 |
1,800,000円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,000円超8,500,000円以下 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超 | 1,950,000円(上限) |
出所:国税庁 No1410 「給与所得控除」より
2019年と比較すると結構変わっているのがわかると思います。
まず、給料等の収入金額の区分が6,600,000円超10,000,000円以下だったものが6,600,000円超8,500,000円以下と変わっています。
上限の対象が10,000,000円から8,500,000円に変わったってことですね。
また、上限以外の計算式に-100,000円が追加されています。
つまり、今までの給与所得控除から100,000円減った形となります。
まとめると以下の通りです。
- 8,500,000円以下の人は給与所得控除が100,000円減った。
- 上限が10,000,000円超だったのが8,500,000円超に下がった。
- 上限の方の給与所得控除は250,000円減った。
基礎控除の変更
2019年までの基礎控除額は全員一律でした。
個人の合計所得金額 | 基礎控除額 |
2,400万円以下 | 480,000円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 320,000円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 160,000円 |
2,500万円超 | 0円 |
出所:国税庁 No1199 「基礎控除」より
今まで全員一律だったのが大きく改定されました。
まず、合計所得金額が2,400万円以下の方の基礎控除は480,000円となります。
今まで380,000円だったものが480,000円ですから多くの方は100,000円分基礎控除が増えた計算となります。
ですから多くの方は前述の給与所得控除は10万円減っていますが、こちらの基礎控除は10万円増えていますのでプラス・マイナス0なのです。
財務省によると96%の方はこのカテゴリーに収まるそうです。
ただし、給料所得控除の上限となる850万円超の方は給与所得控除と基礎控除額の差が生じていますので控除が減り増税となります。
月々の天引きされる金額を決定する「源泉徴収税額表」もこの変更に合わせて社会保険料等控除後の給料の額が707,000円くらいの方から変わっていますからね。
今回ご質問いただいた読者様はこのカテゴリーに該当した可能性がありそうです。
所得金額調整控除
ただし、年収が850万円超で条件をみたした方には控除が増える所得金額調整控除なる制度も導入されています。
具体的には以下の条件を満たした方の控除が増えます。
ですからこの条件を満たす方は増税とはならないのです。
ただし、この調整控除は年末調整時に行われますので、月々の給料から天引される源泉徴収される金額は増えていますので手取りは減っています。
子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
その年の給与等の収入金額が 850 万円を超える居住者で、次に掲げる者の総所得金額 を計算する場合には、給与等の収入金額から 850 万円を控除した金額の 10%に相当する金額が、給与所得の金額から控除されることとなります。
イ 本人が特別障害者に該当する者
ロ 年齢 23 歳未満の扶養親族を有する者
ハ 特別障害者である同一生計配偶者を有する者
ニ 特別障害者である扶養親族を有する者
給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除
その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が 10 万円を超える者の総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額から 10 万円を控除した残額が、給与所得の金額から控除されることとなります。
住民税は6月から変わる
もう一つ多い考えられるのが住民税です。
住民税はちょっとややこしい仕組みになっているんですよ。
住民税の仕組み
住民税は前年の所得を元に計算します。
そしてそれを12等分したものを、6月から翌年5月まで給料天引きすることになります。(特別徴収の場合)
つまり、6月から給料から天引される住民税の金額が変わるってことなんですね。
住民税は給料以外の所得の影響も受けます。
そのため、給料があまり変わらなくても大きく変わるケースがあります。
例えば前年に副業で儲けたとか、仮想通貨で大きく儲けたなどの場合などがそうです。
これらの分も6月以降に引かれる住民税に関わってくるのです。
また、住宅ローン減税が終わったとか、子供が独立して扶養が減ったなんてケースも住民税があがっている可能性が高そうです。
ですから6月から手取りが減っていると言うなら住民税の影響の可能性もありそうです。
よくある住民税が増えてしまった原因はこちらの記事を御覧ください。
まとめ
今回は「あれ?今年に入ってから給料の手取り額が減っている・・・・原因はこれだ」と題して2020年の給料手取りが減っている場合の考えられる内容を見てきました。
給料明細を見たわけでもありませんので推測ですが、厚生年金の上限に該当するということですから給与所得控除と基礎控除が変更により控除が減ってしまって所得税が増えた可能性が高そうです。
6月からの手取りが減っているようならば住民税の部分でしょうね。
他にも給料計算のミスなどの可能性も考えられます。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
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