池上彰氏の番組で紹介された20代男性の4割が投資しているのは本当か?元統計資料をみてみた

先日、「池上彰のニュースそうだったのか」という番組で「若者に教えたい!投資のこと」という投資の特集がありました。

放送後はNISAがツイッターのトレンドに入るなど大きな反響となっています。(私は見ていません)

内容的に制度であるNISAと株式投資や投資信託、FXなどを並列で扱ったり、投資信託の信託報酬が高いほうが優秀な人が運用しているというトンデモ話がでたり、紹介されたNISAの誕生理由が実際と全然違ったり内容的にも問題があったのも大きいようですが・・・(実際は軽減税率が終わるから代替えとして)

ツイッターで流れていたスクショなどをみて個人的に気になったのが20代男性の4割、30代男性の5割が投資しているという話しでした。

この数字は私の感覚と大きく乖離していましたので実際に元の統計資料を確認してみました。

今回はそれに基づき池上彰氏の番組で紹介された20代の4割が投資しているという話のカラクリ?を解説したいと思います。

なお、投資信託の信託報酬が高いほうが優秀な人が運用しているという話については別記事で検証していますので合わせて御覧ください。

池上彰氏の番組で紹介された投資をしている若者の割合

まずは今回「池上彰のニュースそうだったのか」で出された「投資をしている若者」という数字から見ておきましょう。

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20代30代
性別男性女性男性女性
2015年30.6%12.3%35.3%19.7%
2020年42.9%23.7%51.4%32.6%

20代男性で42.9%、20代女性で23.7%、30代男性で51.4%、女性32.6%というかなり高い数字となっています。

5年前と比較してそれぞれ10%近く伸びていますね。

個人的な感覚としてはここまで投資している割合が多いのか???ってのがまず疑問

また、5年で10%ものびているのか?というのも疑問でした。

そこで出典で提示されているフィデリティ・インスティテュートの元資料を確認してみました。

なお、元資料はこちらでご覧いただけます。

>>フィデリティ・インスティテュート 新たな資産形成の流れ ~2000万円問題の功罪とコロナ禍の影響~

非正規対象外、インターネット調査の結果であった

フィデリティ・インスティテュートの元資料も当然「池上彰のニュースそうだったのか」で出された数字と確かに同じでした。

数字に間違いはないようです。

しかしちょっと気になる点が・・・

今回の数字は以下の条件の方が対象となっています。

会社員(役員含む)、公務員 12,001人
2014年調査までは非正規雇用者、自営業者を含むとありましたので、逆に言えばこちらの数字には非正規雇用者などは含まれていないのです。
ちなみに国民生活基礎調査(2018年調査)によると男性20〜24歳の非正規割合は33.9%、25〜29歳でも15.2%います。
女性は20〜24歳の非正規割合は34.8%、25〜29歳でも30.0%います。
この数字が入っていないのはかなり大きな差となるでしょう。(非正規の方の投資割合はかなり低いと予想されます)
また、調査方法はインターネット調査となっています。
一般論としてよく言われる話なんですが、インターネット調査のデータは公募型や登録型、先着型などの場合かなり偏った「やる気のある人」だけの回答がでてきます。
今回の調査がどういった媒体でインターネット調査をしたのか、どういった方法で参加者を集めたのかはわかりませんが、この手のアンケートは先着で◯◯ポイントアンケートみたいなのが多いですね。
その場合、参加するのはお金に対してのリテラシーが高めの方の参加が多くなります。
そのためさらに偏った数字となりがちなんですよ。
特に今回の「投資」という興味ある人とそうでない人が極端に分かれるものですから特にその傾向が強いかと。
つまり、このデータから言えるのはインターネット調査に参加するようなお金のリテラシーが高めの会社員(役員含む)、公務員の方で投資をしている方は20代男性で42.9%、20代女性で23.7%、30代男性で51.4%、女性32.6%いるってことです。

母集団の年収が大きく上がっている

また、気になったのは比較対象となっている2015年と2020年でアンケートに答えた人の年収が大幅に違うということです。

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年収2015年調査2020年調査
300万円未満24.4%10.3%
300万円〜500万円未満32.2%24.9%
500万円〜700万円未満17.8%19.6%
700万円〜1000万円未満11.8%20.6%
1000万円〜1500万円未満3.6%10.0%
1500万円〜2000万円未満0.7%1.8%
2000万円以上0.4%1.0%
不明・答えたくない9.1%11.8%

出典:フィデリティ・インスティテュート 新たな資産形成の流れ ~2000万円問題の功罪とコロナ禍の影響~より

2020年のほうが年収がかなり高くなっています。

5年で会社員年収がそれぼど大きく変わっているとは思えませんので、調査対象の層が少し変わってしまっている可能性が高そう。。。

つまり、5年前と比較してそれぞれ10%近く伸びているというのもアンケートとった層がちょっとずれているのでなんとも言えないという状況・・・

他の統計データだとどうなっているのか?

それでは他の統計データだとどのような結果となっているのでしょう?

内閣府の証券投資に関する世論調査

まずは内閣府が行った証券投資に関する世論調査です。

平成14年とかなり古い調査ですが以下の結果となっています。
証券投資に関する世論調査2

こちらの調査だと20〜29歳の投資をしている割合は5%、過去やっていた方も含めても5.5%とかなり違いが見られます。
30代でも投資をしている割合は7.6%、過去やっていた方も含めても13.4%ですね。
平成14年と今から20年近く前ですから内容は変わってきているとは思いますが・・・
ちなみにこちらは全国20歳以上の者を層化2段無作為抽出法、個別面接聴取で実施された調査となります。
無作為ですから非正規雇用者なども含まれているでしょう。

日本証券業協会の証券投資に関する全国調査

次は日本証券業協会が平成30年に行った調査結果です。

こちらは比較的最近のデータですね。

以下は保有している金融商品です。

まずは男性から見ていきましょう。

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男性株式投資信託公社債
20〜24歳3.1%1.3%1.3%
25〜29歳7.4%5.4%0.5%
30〜34歳11.7%7.0%1.4%
35〜39歳11.9%7.5%0.6%

出典:日本証券業協会 証券投資に関する全国調査より抜粋

20〜24歳の株式、投資信託、公社債合計した保有割合は5.7%

25〜29歳で13.3%、30〜34歳で20.1%、35〜39歳で20%となっています。

かなりフィデリティの調査などとは違った結果となっています。

次に女性です。

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女性株式投資信託公社債
20〜24歳0.6%00
25〜29歳1.7%2.5%0.8%
30〜34歳3.6%6.8%0.5%
35〜39歳5.3%2.7%2.3%

出典:日本証券業協会 証券投資に関する全国調査より抜粋

20〜24歳の株式、投資信託、公社債合計した保有割合は0.6%

25〜29歳で5.0%、30〜34歳で10.9%、35〜39歳で10.3%となっています。

こちらも他と比較してぜんぜん違う数字ですね。

なおこちらの調査方法は全国20歳以上の男女、エリアサンプリング+割当法、調査員による訪問留置法となっています。

まとめ

今回は「池上彰氏の番組で紹介された20代男性の4割が投資しているのは本当か?元統計資料をみてみた」と出しして池上彰氏の番組で紹介されたデータについてみてきました。

結論としては今回池上彰氏の番組で紹介されたのは、あくまでも非正規などを含まない会社員(役員含む)、公務員だけのデータ。

さらにインターネットでアンケート取った結果であるってことですね。

実際の数字は日本証券業協会などの調査の方が近いと思われます。

つまり、統計データは調査の前提を確認することが大事ですよってことですね。

数字は嘘をつかない。嘘つきが数字を嘘に使うのだ」という言葉があるように統計データをつかって、自分たちが勧めたい話にもっていくように誘導しようとするケースが多くあります。

今回の番組や元資料がそこまでの意図があったとは思いませんが、統計資料を見るときはお気をつけくださいね。

こちらの記事も合わせて御覧ください。

今回の出てきた数字はあれですが、投資の裾野が広がっているのは確かです。
まだ投資をやったことない方はぜひこの機会に検討してみるともよいでしょう。
はじめての方におすすめは以下の投資法ですよ。

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