約束手形が廃止報道。いまさら聞けない手形とはなにかについて分かりやすく解説

約束手形を2026年までに廃止する方針を固めたとの報道がでて話題になっています。

企業が取引の決済に使う約束手形について、政府が2026年までの利用廃止を目指す方針を固めたことが17日、分かった。大企業にインターネットの活用を含めた振り込みなどへの移行を促し、下請け企業の資金繰り改善を狙う。利用する産業界や金融機関に対し、廃止に向けた計画を今夏をめどに策定するよう要請する。

出典:共同通信 2021年2月17日より

簿記の勉強をしたことがあったり、仕事で関わったことがない方は約束手形という言葉は聞いたことがあっても、どんなものかイマイチわかってないと思います。

昔の仕組みでしょ?って思う方も多いとは思いますが、古くから営業している多くの企業は手形は現役で利用されているんですよ。

決算書(貸借対照表)に受取手形や支払手形がある場合は手形を利用しているってことです。

私は手形とは結構関わりがあり、会社員時代(経理)には手形を何度も発行したことがありますし、数億円の手形を取引先から受け取って銀行にそのまま割引しにいったりしたこともあります。

また、大学で手形・小切手法というかなりニッチな科目の単位を取っていたりします(笑)

手形の判例はかなり面白いのがたくさんあって好きでしたね。

そこで今回はいまさらではありますが、手形の仕組みを分かりやすく解説していきます。

手形ってなに?

手形は簡単に言えば将来お金がもらえる(払う)約束をした信用証券のことです。

特に古くから営業している製造業などは多く利用しており、代金を払う際に現金や振り込みの代わりに手形を発行して支払います。

手形といっても2つの種類がありますし、用途に応じて名前が変わったりしますので少々ややこしいのです。

詳しく見てい見ましょう。

手形の種類

手形は大きくわけて2つ種類があります。

約束手形

一つは今回廃止の話が出ている「約束手形」です。

名前の通り、振出人(約束手形を作った人)が受取人(約束手形をもらった人)に◯◯日にお金を払いますということを約束する手形となります。

約束と言っても単なる約束というわけではありません。

基本的に約束手形を銀行にもっておけば自動で約束した日にお金が振出人の口座から落ちて受取人の口座振り込まれる仕組みとなっています。

  • 受け取った側は「受取手形」
  • 支払った側は「支払手形」

で会計処理(仕訳)をしますので、貸借対照表をみればどれだけの手形を発行したり、受け取っているのかがわかります。

為替手形

もう一つが「為替手形」です。

これはちょっとややこしくて第三者にお金を払うことを依頼する手形です。

三角関係みたいな仕組みですね。

簿記を教えていたことがありますが、簿記の勉強をしている方がはじめに挫折するポイントになるのが為替手形ですね。

かなりややこしいんですよ。

手形が廃止されると簿記検定の難易度が多少落ちますね(笑)

ちなみに為替手形は最近、実務で使われるケースは少なくなっているようです。

手形の用語

手形にはいろいろな使われ方があり、それによって言葉が変わったりしますのでそれらも紹介しておきましょう。

割引手形

まずは「割引手形」です。

前述したように約束手形を受け取ると指定した日にお金を受け取ることが出来ます。

しかし、手形によってはかなり先にしかお金を受け取れないという場合も。

そこで早くお金を得る為に利用されるのが割引手形という手法です。

簡単に言えば利息を払って早くお金にしてもらうってことです。

基本的には銀行などの金融機関が割引を行ってくれます。

ただし、手形によっては銀行から断られるので怪しい業者が割引をしているなんてケースも・・・

裏書手形

次は「裏書手形」です。

こちらも資金繰り対策でよく使われる方法ですね。

簡単に言えば受け取った手形を支払いに利用しちゃうってことです。

手形の裏には名前等を書く欄があり、そこに記載(裏書)しておけば支払いに使えるのです。

不渡手形

次は聞いたことある方も多いかもしれません。

不渡手形」です。

不渡手形を聞いたことがない人も「不渡り」は聞いたことがあるでしょう。

手形は前述のように期日になったら振出人の口座からお金が落ちて、受取人の口座に入ります。

しかし、振出人の口座に充分な資金が用意されていなければ落としようがありません。

その際に、手形が上手く機能しなかったとして不渡手形と呼ばれます。

ちなみに6ヶ月以内で2回不渡りを出してしまうと銀行取引停止となり、企業が事実上の倒産となる可能性が高いです。

実際は1度出しただけでも信用が大きく損なってしまい、倒産となるケースが多いですね。

融通手形

もう一つがかなり要注意の「融通手形」です。

手形は基本的に商取引で使われるものですが、お金の貸し借りをする際にも使われます。

金融機関からお金を借りる方法の一つである手形貸付なんてのもこの一種ですね。

問題となりやすいのが消費者金融的な貸し方で、かなり資金繰りに困った場合に利用されるケースです。

また、粉飾決算なんかにも使われるケースがあります。

約束手形をなぜ廃止しようとしているのか?

手形の文化は江戸時代くらいからあると言われています。

そんな文化的な仕組みを廃止しようとしているのはなぜなのでしょう?

資金繰りを圧迫する原因となっている

まず大きいのが中小企業などの下請け企業の資金繰り圧迫の原因となっていることが大きいでしょう。

元請けからの代金支払いを手形でと言われても拒否はしにくいでしょうし、実際にお金がもらえるのは期日ですからかなり先となってしまうのです。

割引するにしても利息が取られますしね。。。

手形は基本的に元請け有利な仕組みですから公平な取引を促すという意味では廃止をするというのはありな考え方でしょう。

海外の手形的な仕組みはまったく逆

ちなみに海外でも手形的な考え方はあります。

ただし、日本の手形と逆で支払い側が遅く支払うのだから手数料(利息)を払うような仕組みとなっていますね。

個人的にはこちらの方が理にかなっていると思います。

手間暇、コストが異様に掛かる

もう一つ大きな要素が手形は手間暇、コストが異様に掛かるってことでしょう。

手形を振り出すには専用の手形帳を用意して印字します。

手形の印刷は専用の機械でやりますが、基本的に手作業で面倒なんですよ。。。

また、それに応じた収入印紙が必要。

手形の発行は厳密に管理する必要がありますから手形台帳の作成が必要ですし、受け取る側にしても手形台帳は必要となりますし、保管するにしても盗まれたら大変ですから金庫保管。

換金するにも銀行に持っていく必要もあります。

早く換金しようとすれば割引料が必要ですしね。

つまり、手間暇、コストがかなり掛かるのが手形制度なのです。

銀行からみて手形はよい収入源となっているようですから、このあたりの手間暇、コストを削減した手形的な電子的な決済手段の利用を促すようです。

電子記録債権は盛り上がってない・・・

実はそんな手形の弱点を解決した「電子記録債権」という仕組みはすでに存在しています。

簡単に言えば手形を電子化したようなものです。

手形と違って印紙税が掛かりませんし、ペーパーレスですから紛失や盗難の心配がなく管理が簡単です。

しかし、いまいち普及が進んでいないようですね。

今回の約束手形廃止で注目を浴びるかもしれませんが。

まとめ

今回は「約束手形が廃止報道。いまさら聞けない手形とはなにかについて分かりやすく解説」と題して手形制度についてみてきました。

約束手形制度の廃止という判断は妥当だとは思います。

しかし、日本の文化がまた一つ消えると考えると少し寂しさもありますね。

ちなみに手形に絡んだいろいろな判例がありますので興味ある方は調べてみても面白いと思います。

かなり人間臭くて興味深い話が多いんですよ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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