日銀のETF購入方針の変更で株価にどのような影響があるのか?

日本株にとって大きな発表がありました。

日銀が金融政策決定会合で金融緩和の長期化を見据えた政策修正を決めたのです。

今回は日銀のETF購入方針の変更でどのような影響があるのか?について考えて行きます。

日本銀行のETF買いとはなにか?

まずは今回の話の大前提となる日本銀行のETF買いとはなにかという点について簡単に解説しておきます。

ETFとは上場している投資信託のことで、それを日本銀行が買っているということです。

投資信託とは投資家から集めたお金を投資のプロ(ファンドマネージャー)が運用してくれる金融商品のことをいいます。

投資信託一つを買えば複数の銘柄を購入することができますので初心者にも人気がありますし、日銀のようなプロも購入するのです。

なぜ日本銀行はETFを買っているのか?

それではなぜ日本銀行はETFを買っているのでしょう?

簡単に言えば株価を日本銀行が下支えしているのです。

日本銀行は株価が下落しているときに多くETFを購入しています。

だいたい、前場に大きく株価が下落したときの後場に買付されているようですね。

それにより暴落を防いでいるんです。

日本銀行は株価が下落しているタイミングで買いますし、買う金額も大きいことから下支えがあることで、日経平均が3万円を超える大きな要因になったとも言えるでしょう。

ただし、ファーストリテイリングやソフトバンクなど日経平均株価への影響が大きい一部銘柄では日本銀行が間接的な大株主になってしまっていたりとちょっと歪な状況になっていて問題視する専門家も多いです。

ちなみにこの日銀によるETF買いは2010年からはじまっており、もう10年以上続いているんですよ。

当初は残高上限4,500億円でTOPIXと日経225ETFだけが対象でしたが、それが今では原則年6兆円とどんどん膨れ上がってしまっています。

日銀が銘柄の買うのはどんなETF?

後述するように今回方針が少し変わりますが、今まで日本銀行が買っていたのは以下の銘柄です。

  • TOPIX
  • 日経平均
  • JPX日経400

それぞの株価指数に連動するETFをメインで購入しています。

また、「設備投資及び人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF」を年間3,000億円購入しています。

具体的には以下の銘柄等です。

  • MSCI日本株人材設備投資指数
  • 野村企業価値分配指数
  • JPX/S&P設備・人材投資指数
  • ダイワ上場投信-MSCI日本株人材設備投資指数
  • NEXTFUNDS野村企業価値分配指数連動型上場投信
  • 上場インデックスファンド日本経済貢献株
  • 野村日本株女性活躍


日本銀行のETF購入方針の発表内容

それでは今回の日銀発表の内容からみていきましょう。

いろいろ発表していますが、今回はETF購入についてのみピックアップしてみていきます。

ETF買いは継続するも原則金額が削除

ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約 1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを 行う。

出典:日本銀行 2021年3月19日 「より効果的で持続的な金融緩和について」 より

まずは日銀のETF買いは継続することが決まりました。

  • ETF(上場投資信託)は年間の上限を12兆円
  • J-REIT(国内不動産投資信託)は年間の上限を1,800億円

に据え置かれました。

これは新型コロナウィルス感染症の影響への対応のための臨時措置として決定したものですが、感染症収束後も継続することとしています。

ただし、今までと大きな違いがあります。

今まではETF等の買い入れは

  • ETF(上場投資信託)は原則年6兆円
  • J-REIT(国内不動産投資信託)は原則年900億円

を目安としていましたが、それが削除されたのです。

つまり、今までは少なくとも年6兆円や年900億円のETF買いが入っていましたが、今後は入るとは限らないという状況になったのです。

原則ETF年6兆円。J-REIT年900億円買うよ」という状況が「必要に応じて買うよ。」に変わるわけですからかなり大きな違いとも言えます。

ETF買いは危機時の対策という位置づけになったってことですね。

日銀のETF買い入れ対象はTOPIX連動型のみに

もう一つ大きな変更があります。

それはETF買いのETFに制限を入れたことです。

ETF買入れについては、今後、指数の構成銘柄が最も多いTOPIX に連動するもののみを買入れることとする。

※設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業の株式を対象とするETFについては、「日本銀行が定める基準に基づき適格とする指数に連動するよう運用される銘柄」についてのみ、買入れを継続する。

出典:日本銀行 2021年3月19日 「より効果的で持続的な金融緩和について」 より

これはかなり大きな変更です。

今まで日経平均型のETFもかなり買われていました。

それが日経平均を押し上げる大きな要因の一つとなっていたのです。

それにより日経平均は上がっているけど全体をみるとぜんぜん株価強くないな・・・

ってちょっと歪な状況を産んでいたのは確かです。

それが指数の構成銘柄が多いTOPIXになることで日経平均への影響は薄まってくると思われます。
ちなみに9日時点の試算だと15.3%が日経平均、JPX日経400型が0.7%買われていたようです。
野村証券の9日時点の試算によると日銀ETF買いの指数別買い入れ比率はTOPIX型が84%、日経平均型が15.3%、JPX日経400型が0.7%となっている。
出典:Bloomberg TOPIX上昇転換、日銀ETF購入方針変更で-日経平均は下げ拡大より
ちなみに日本銀行のETF買いについては下記サイトで適時公開されているんですよ。
※ファイルはエクセルなのでお気をつけください。


日銀ETF購入の方針変更でどうなる?

それでは今回の方針変更でどのような影響があるのでしょう?

TOPIX上げ、日経平均下げ

すでに19日の株価市場ではその傾向がでましたが、日銀が買付するTOPIXが上昇基調となっています。

逆に今まで買っていたのに買い入れなくなる日経平均は下がっています。

前述したように日経平均は歪な形の指標ですからそれが是正されるかもしれません。

逆にいえば歪な形で上昇を続けてきたファーストリテイリングやソフトバンクなどの値がさ株(日経平均の影響が大きい株)の株価にとってはマイナスとなる可能性があります。

日経平均の数字だけをみれば日銀のETF買いの方針変更はあまりよい影響を与えないでしょう。

ただし、大事なことは日経平均の数字ではありません。

前述したように日経平均はかなり歪な指数ですからそれを無理やりあげているよりも本質的な部分で株価を下支えしたほうが効果があると踏んだのでしょう。

TOPIX買いの方が市場全体からみれば自然なあり方ですしね。

参考:日経平均とTOPIXの違い

ちなみにTOPIXと日経平均はかなり違う指数なんですよ。

東証一部に上場している全銘柄時価総額加重平均をとした株価指数
東京証券取引所第一部上場する銘柄のうち255社を日本経済新聞社が独自の基準でピックアップしてそれを元に15秒ごとに平均を出した株式指標

日経平均株価の計算方法は簡単に言えば単純平均です。

255社の株価を全部足して255で割って平均を出しているイメージです。

そのため、ファーストリテイリング(ユニクロ)など株価の高い値がさ株の影響を大きく受けます。

一方、TOPIXは時価総額を加重平均していますからそのような問題はないのです。

ニュースなどでは日経平均の話ばかりでますが投資家では日経平均よりTOPIXを重視している人が多いですね。

逆に言えば効率的に少ない資金で株価を上げるならTOPIXよりも日経平均のほうが簡単というのもあります。

それも日経平均ETFを買っていた理由にある気がします・・・

引き締めになる?

今回の方針変更で心配されているのが引き締めです。

これについてはなんとも言えません。

購入金額の原則を削除はしましたが、上限は維持されていますし、それほど大きな引き締めとはならないと思われますが・・・

実際に今後どのように日銀が動くのかはわかりませんね。

今までのように下落時に購入するのか、それとも静観するのかは見ものです。

まとめ

今回は「日銀のETF購入方針の変更でどのような影響があるのか?」と題して日銀のETF購入方針変更についてみてきました。

個人的には日経平均の歪さはなんとかしてほしいと思っていたところですから、ETF買いをTOPIXのみにするのは歓迎でうす。

原則6兆円というルールが消えたのがどう影響するのかは今後注目しなければならない点でしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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