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大企業はなぜ借金をするのか。無借金企業の落とし穴も

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借金の多い企業は悪いのか?実は資金を効率的に使っているケースも (2)

あの会社は借金が多いから危ない。

そう決めていませんか。

実は日本で一番借金が多いのはトヨタ自動車で、その額43兆円です。

この記事を読めば、借金の額ではなく中身で企業を見分けられるようになります。

カギは、借りたお金の稼ぎが金利を上回っているかどうか。政策金利が上がっている今こそ効く見方ですよ。

目次

大企業が借金をする理由は「金利より稼げるから」

結論から言うと、大企業が借金をするのは、借りたお金で金利以上に稼げるからです。

お金に困って借りているわけではありません。

手元にお金があっても、あえて借りている会社がたくさんあるんですよ。

先日、知り合いとある会社の株について話していました。

その方はこう言います。「あの会社は借金が多くて話にならない。無借金経営の会社に投資したい」。

気持ちはよくわかります。

個人の感覚なら、借金は少ないほうが安心ですよね。

ただ、会社の話になると事情が変わってきます。

借金の額だけで投資先を選ぶと、日本を代表する企業をごっそり候補から外すことになるからです。

有利子負債(利息を払う必要がある借入金や社債のこと)が日本一多い上場企業は、トヨタ自動車。その額は43兆2,054億円にのぼります。

トヨタを「借金まみれで危ない会社」と呼ぶ人はまずいないでしょう。

つまり、こういうことです。

借金の額は何も語らない。語るのは、借りたお金の稼ぎだ。

この記事でお伝えしたいのは、この一文に尽きます。

もうひとつ、2026年ならではの話があります。

日銀は2026年9月18日に政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げました。

1995年以来、約31年ぶりの高さです。

この記事の元になった旧版を書いた2021年は、マイナス金利のまっただ中でした。

当時は「タダ同然で借りられるから借りたほうが得」という説明で済んだんですよ。

今は違います。

金利が上がれば、借りたお金で稼がなければならない最低ラインも上がる。

同じ借金でも、合格だったものが不合格に変わる会社が出てくるわけです。

あなたが持っている株、あるいは買おうとしている株の会社は、どちら側でしょうか。

ここから先は、次の順番で見ていきます。

  • 2026年最新の借金企業ランキングと、その正しい読み方
  • ソフトバンクの借金から学ぶ、企業が借金するメリット
  • 無借金企業が抱える見えにくい弱点
  • 良い借金と悪い借金を見分ける独自の判定表
  • 決算書で今日から確認できる3つの数字

借金 企業 ランキング2026。1位はトヨタの43兆円

まずは事実から確認しましょう。

金融機関を除く上場企業3,056社の最新連結決算を集計しています。

順位企業名有利子負債
1位トヨタ自動車43兆2,054億円
2位ソフトバンクグループ24兆6,851億円
3位日本電信電話(NTT)15兆7,116億円
4位本田技研工業13兆4,798億円
5位三菱HCキャピタル9兆1,824億円
6位日産自動車8兆7,522億円
7位東京電力ホールディングス6兆6,120億円

並んでいるのは、誰もが知る日本を代表する会社ばかりですね。

借金は増えている。それでも危ない会社は少ない

この調査で注目したい数字が3つあります。

  • トップ20のうち18社で、有利子負債が前期より増えた
  • 増加額の1位はソフトバンクグループで6兆6,787億円、2位はNTTの5兆7,015億円
  • 一方で、安全性の指標が高リスク水準に当たったのは20社中6社だけ

借金は増えているのに、財務はおおむね健全。

これが2026年の大企業の姿です。

しかも、トップ20のうち13社は営業キャッシュフロー(本業で実際に入ってきた現金)の上位企業でもありました。

EBITDA(営業利益に減価償却費を足した、稼ぐ力の目安)でも11社が上位に入っています。

たくさん借りている会社ほど、たくさん稼いでいる。

ランキングが示しているのはこの関係なんですよ。

ランキングを読むときの3つの注意点

とはいえ、順位だけ見て判断するのは早計でしょう。

業種

1つ目は業種です。

トップ20には通信業が4社、自動車と総合リースが各3社、電気・鉄道・総合商社が各2社入りました。

基地局、発電所、線路。巨額の設備を先に作らないと商売が始まらない業種ばかりですね。

金融事業の存在

2つ目は金融事業の存在です。トヨタの負債増加の要因として、設備増強に加えて金融事業での借入増が挙げられています。

自動車ローンやリースは、お金を借りてきて貸す商売。

この借入は、小売店でいう仕入れに近い性格のものです。

高リスク水準?

3つ目は、高リスク水準に当たった企業の中身です。

三菱HCキャピタルと東京センチュリーはどちらも総合リース業で、借入でリース資産を買う事業の性質上、数字が高く出ます。

あなたが「借金が多い」と感じた会社は、設備で稼ぐ業種だったり、金融事業を抱えていたりしませんか。

そこを確かめるだけで、見え方はかなり変わります。

ソフトバンクの借金24兆円に学ぶ、借金する企業のメリット

借金の多い会社と聞いて、真っ先にソフトバンクグループを思い浮かべる方は多いでしょう。

有利子負債は24兆6,851億円。

前期からの増加額6兆6,787億円はトップ20で最大でした。

OpenAIへの投資などAI事業やデータセンターの拡充が要因と思われます。

「ソフトバンク 借金」で検索すると、不安をあおる見出しがずらりと並びますね。

ソフトバンクグループ自身が見ている数字はLTV

ところが、同社が財務の物差しにしているのは借金の総額ではありません。

LTV(純負債÷保有株式の価値)という指標です。

2026年6月末時点のLTVは13.0%、分母に対応する純負債は10.81兆円でした。

住宅ローンにたとえるとわかりやすいですよ。

時価5,000万円の家に対して、ローン残高が650万円。

これがLTV13%の状態です。

同社は「LTV25%未満」「2年分の社債償還資金の確保」という基準を掲げています。

借金の額ではなく、資産に対する割合で管理しているわけです。

ただし、この見方には弱点もあります。

分母は保有株式の時価ですから、株価が大きく下がればLTVは一気に悪化します。

2026年4〜6月期の純利益は前年同期比18%減の3,473億円でした。

安泰と言い切れる会社ではありません。

借金 企業 メリットは3つある

では、なぜそこまでして借りるのか。

企業が借金をするメリットを整理します。

時間を買える(レバレッジ)

新しい設備や買収に資金が必要なとき、現金が貯まるまで待っていては機会を逃すかもしれません。

借入は、将来の収入を見込んで、今の投資を可能にする手段です。

数字で見てみましょう。自己資本1億円の会社が、さらに1億円を金利2%で借りた場合です。

事業の利回り無借金の利益1億円借りたときの利益
8%のとき800万円(自己資本に対して8%)1,400万円(同14%)
1%のとき100万円(同1%)0円(同0%)

(税引前の単純計算。借りたときの利益は、総資産2億円の稼ぎから利息200万円を引いたもの)

稼げる事業なら、借金は株主の取り分を大きく押し上げます。

ただ、投資額が増えれば利益も同じ割合で増えるとは限りません。需要不足や人手不足があれば、設備だけ増やしても動かせないためです。

追加投資でも、費用とリスクに見合う収益を得られるか。

ここが「事業拡大のため」という説明を読む際の確認点になります。

株主から集めるより安くつく

支払利息は税務上の損金になり、法人税を減らす効果があります。

配当は損金になりません。加えて、株主が期待するリターンは、銀行が求める金利より高いのが一般的です。

資金の調達コストとしては、借入のほうが安くなりやすいわけですね。

また、利息には税務上の違いもあります。

通常の事業借入の利息は原則として損金、つまり税務上の費用になります。

一方、配当は利益の分配であり、損金にはなりません。

この差は結構大きいのです。

手元資金を厚く保てる

手元資金を投資に使い切ると、急な修繕や入金の遅れに対応しにくくなります。

あえて一部を借り、現金を残す判断にも合理性があるわけです。

もちろん、その備えには利息という費用がかかります。

必要な現金を確保する効果と、保有し続ける費用の釣り合いを見ることになりますね。

これは投資家側にも通じる話。

証券口座に入れられるお金があっても、生活費まで全部投資するとは限らないでしょう。

会社にも、事業を止めないための余裕が必要なのです。

3つのメリットに共通する条件がひとつあります。

借りたお金が金利以上に稼ぐこと。

ここが崩れた瞬間、メリットはそのままデメリットに裏返ります。

無借金企業は安全か。任天堂・キーエンス型の強みと落とし穴

ここまで読むと、逆の疑問が湧いてきませんか。

借金が悪くないなら、無借金企業はどう評価すればいいのか、と。

無借金企業は珍しくない

有利子負債がゼロの大企業は実在します。

任天堂、ファナック、東京エレクトロン、キーエンス、ネクソン、塩野義製薬などが有名な無借金企業です。

借金はあるけれど手元資金のほうが多い「実質無借金企業」まで広げると、さらに増えます。

日本経済新聞が2018年に集計した結果では、2017年度末で2,071社、上場企業の59%でした。

少し古い数字ですが、上場企業の過半が実質無借金という構図は押さえておきたいところです。

無借金でいられるのは、事業が強いから

無借金企業に共通するのは、巨額の設備を先に抱えなくても稼げる事業構造です。

利益率が高く、稼いだ現金だけで次の投資をまかなえる。

だから借りる必要がありません。

順番を間違えないでください。

無借金だから優良なのではなく、事業が強いから無借金でいられるんですよ。

金利が上がる局面では、この型の強みが増します。

利払いの負担は増えませんし、持っている現金に利息がつくようになるからです。

無借金企業の落とし穴は「お金を寝かせること」

では無借金企業を選んでおけば安心かというと、そうとも限りません。

株主から預かったお金を、利回りの低い預金のまま積み上げている会社もあります。

株主から見れば、自分のお金が眠っている状態ですね。

東京証券取引所は2023年3月、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請しました。

資本コストとは、株主や銀行が会社に期待するリターンのこと。

お金を貯め込むだけで使い道を示さない会社は、市場から厳しい目を向けられるようになっています。

一般的にROA(総資産利益率。会社の全財産でどれだけ利益を出したかを示す数字)が高いのに借金をしない会社は、もったいなく見えます。

借りて事業を広げれば、もっと成長できるはずだからです。

もちろん、これは考え方しだいでしょう。

急成長に人や組織が追いつかず、かえって崩れることもあります。

あえてゆっくり育てる経営にも理があります。

無借金企業を見るときは、問いを変えてみてください。

「借金がないか」ではなく「貯めた現金を何に使うつもりか」。

成長投資か、株主還元か、それとも説明がないままか。決算説明資料の資本政策のページに答えが書いてあります。

良い借金と悪い借金。分かれ目は「稼ぐ力」と「返す力」

ここがこの記事の山場です。

借金の良し悪しは、どこで決まるのでしょうか。

良い借金は、利息より大きな価値を生む

良い借金とは、払う利息より大きな価値を将来生み出す借金です。

1,000万円を金利3%で借りて、1年後に1,100万円になる事業に投じたとします。

利益は100万円、利息は30万円。差し引き70万円が手元に残りますね。

借りなければ、この70万円は生まれませんでした。

理屈のうえでは、ROAが借入金利より高い会社は、借りて事業を広げるほど利益が増えます。

逆にROAが金利を下回る会社は、借りれば借りるほど利益が削られていく計算です。

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悪い借金には3つの型がある

悪い借金には共通の型があるんですよ。

  • 稼がないものに使う借金。規模は小さいのに借金が膨らんでいる会社で、社長や親族が高級車やブランド品を買っているケースです。牽制が働きにくい同族企業やワンマン企業で起きがちですね
  • 赤字の穴埋めに使う借金。借りたお金が次の売上を生まず、返済のためにまた借りる循環に入ります
  • 見込み違いで返せなくなった借金。価値を生むはずの投資が外れると、良い借金のつもりが結果として悪い借金に変わります

中小・零細企業では借入が成長や収益につながらず、財務の悪化を招く悪循環に陥る例が少なくないのです。

大企業の借金と、行き詰まる会社の借金。違いは金額ではありません。

借金の額は何も語らない。語るのは、借りたお金の稼ぎだ。

これは金持ち父さん貧乏父さんでも語られてた話です。

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借金が多い企業の決算書は、利益から現金、返済予定へ進む

決算書でまず確認したいのが営業キャッシュフロー。

事業活動で現金がどれだけ増減したかを示す数字です。

単年だけでなく、複数年の推移と増減理由を見てください。

次に設備投資などの支出を見ます。

営業活動と投資活動の現金収支を合計したフリーキャッシュフローがマイナスでも、それだけでは悪い借金とは判断できません。

投資が先行している可能性があるためです。

逆に、資産売却で一時的に現金が増えている場合もあります。

増減の理由を、決算説明資料や注記で確認してください。

現金が増えたという結果だけで、本業が好調だと判断しないことです。

続いて、現預金と借入金・社債の返済予定、配当支出を確認します。

営業キャッシュフローが黒字でも、直近の返済を賄えるとは限りません。

この読み方は一般の事業会社を想定し、銀行や投資持株会社では事業に合う指標を併用します。

借入構造が複雑で、返済の道筋を自分で説明できない銘柄は、分析に時間をかけにくい人には向きません。

理解できるまで購入を見送る判断もできます。

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まとめ

借金と聞くと身構えてしまうのは、私たちが家計の感覚で会社を見ているからだと思います。

会社にとっての借金は、道具です。使い方しだいで成長を早めもすれば、会社を傾けもします。

だからこそ、額ではなく使い道と稼ぎを見てほしいんですよ。

お金の知識は、怖がる対象を減らしてくれます。

この記事が、あなたの投資先選びの物差しをひとつ増やせたならうれしいです。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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