2022年4月4日から東京証券取引所の市場区分が変わります。
それに伴い、7月9日各上場企業に移行基準日における数値と上場維持基準を比較した「判定結果」や「必要手続き」が通知がされました。
東証によると664社が最上位のプライム市場への移行基準を満たしていないとのこと。
東証1部上場の2191社の30.3%に当たる664社が最上位のプライム市場への移行基準を満たしていない
出典:東京証券取引所
特に注目は「ゆうちょ銀行」が市場最上位にあたる「東証プライム」の基準を満たしていないとの通知を受け取ったとのことでしょう。
日本郵政の増田寛也社長は29日の記者会見で、ゆうちょ銀行が東京証券取引所から新たな市場区分で最上位となる「プライム」の基準を満たしていないとの通知を受け取ったと明らかにした
出典:日本経済新聞 ゆうちょ銀行、東証プライム基準未達
東証プライムの上場基準を考えれば当然と言えなくもないですが・・・
今回はゆうちょ銀行が東証プライム基準満たさなかったことで今後どうなるのかを考えてみます。
東証証券取引所の再編の概要
まずは今回の話の前提となる東京証券取引所再編の概要を簡単に説明しておきましょう。
東京証券取引所は2022年4月4日から現在5つある市場を3つに再編します。
現在は以下の5つです。
- 東証一部
- 東証ニ部
- ジャスダック(スタンダード)
- ジャスダック(グロース)
- マザーズ
それが以下の3つに再編されます。
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
それぞれの具体的な内容は以下の画像を御覧ください。
現在の東証一部に当たる最上位は「プライム市場」となります。
多くの東証一部の企業はこちらに残りたいと考えているようですが、前述のように現時点では30%近くの企業がその基準を満たせていません。
ゆうちょ銀行まで満たせて無いんですね。
出典:日本取引所 グループ 市場構造の在り方等の検討より
市場再編のスケジュール
市場再編のスケジュールは以下の通り。
- 2021年6月30日 移行基準日 上場会社に対して、新市場区分の選択に際し必要な手続や提出書類等を7月9日に通知
- 2021年9月〜12月 上場会社による新市場区分の選択 申請手続
- 2022年1月11日 移行日に上場会社が所属する新市場区分の一覧の公表
- 2022年4月4日 一斉移行日
ポイントは2021年6月30日の移行基準日と2022年1月11日の発表日ですね。
すでに2021年6月30日の移行基準日の話については各企業7月9日に通知が行われています。
ここでは移行基準日における数値と上場維持基準を比較した「判定結果」や「必要手続き」が通知されています。
新市場の上場基準
新市場の上場基準は以下のとおりです。
今までの東証一部と比べるとプライムはかなり厳しくなっていますね。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
東証一部の要件 | プライム:新規上場基準 | プライム:上場維持基準 | スタンダード | グロース | |
株主数 | 2200人以上 | 800人以上 | 800人以上 | 400人以上 | 150人以上 |
流通株主数 | 2万単位以上 | 2万単位以上 | 2万単位以上 | 2千単位以上 | 千単位上 |
流通株式時価総額 | 20億以上 | 100億円以上 | 100億円以上 | 10億円以上 | 5億円以上 |
売買代金 | 申請付きの前月以前3ヶ月間その前の3ヶ月間の月平均売買高200単位以上 | 時価総額250億円以上 | 1日の平均売買代金0.2億円以上 | – | – |
流通株式比率 | 35%以上 | 35%以上 | 35%以上 | 25%以上 | 25%以上 |
収益基盤 | 最近2年間の利益総額が5億円以上or 時価総額500億円以上 | 最近2年間の利益総額が25億円以上 | 売上高100億円以上かつ、 時価総額1,000億円以上 | 最近1年間の利益1億円以上 | – |
財政状態 | – | 純資産50億円以上 | 純資産が正であること | – |
参考:日本取引所 グループ 市場構造の在り方等の検討より
変更になった項目で注目すべきは流通株式時価総額ですね。
20億円以上で良かったのがプライムでは100億円以上必要です。
これにより大株主が株を手放すなんて話もときどき出てきていますね。
また、利益の基準も2年で5億が2年で25億と一気に5倍となりました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ゆうちょ銀行が満たせないのは流通株式比率
なお、ゆうちょ銀行が満たせない基準は流通株式比率とのこと。
同行株の約9割は郵政が保有し、市場での流通株式の比率で35%以上を求める要件に抵触した。
ゆうちょ銀によると、東証の基準で計算した流通株の比率は約9%。出典:日本経済新聞 ゆうちょ銀行、東証プライム基準未達
流通株式の比率35%必要なのに9%では当然抵触してしまいますよね。
9割を郵政が持っていっていれば当然そうなります・・・
ちなみにこれプライム市場どころか、スタンダード市場やグロース市場の基準も満たせないという状況になっています。
スタンダードやグロースでも流通株式の比率25%必要なんですよ。
つまり、この基準を厳密に取れば3市場どこにも上場できないという状況となっています。
東証一部でも上場時は同じ条件だが・・・
なお、流通株式の比率の上場時の条件は東証一部でも同じだったんですよ。
ただし、上場廃止の条件は5%未満(所定の書面を提出する場合を除く)(猶予期間なし)とされています。
ゆうちょ銀行は9%ですから上場廃止基準は免れていたということになりますね。
しかし、プライム市場では上場維持の条件でも35%が課せられますので改善しないとどうしようもないということになります。
ゆうちょ銀行は上場時はこの条件クリアしていたのでしょうか??
ゆうちょ銀行はどうなる?
ゆうちょ銀行が東証プライム基準満たせてないことで今後どういう影響がでてくるのでしょう?
経過措置でプライムに残れるかもしれないが・・・
これでプライム市場に絶対に移行できないかというとそうではありません。
改善計画を東証に提出すれば、当面の間、上場できる経過措置を設ける。
出典:東京証券取引所
とのことです。
「上場維持基準の適合に向けた計画書」の提出を行い、移行後には計画書に基づく進捗状況を開示することで当面の間はプライムに上場を維持できる可能性もあるとのこと。
ゆうちょ銀行もこの経過措置を使ってプライム市場の上場を維持する方針のようです。
増田氏は「グループ全体としてプライム市場を選択する方針なので、経過措置での移行へ作業を進める」と述べた
出典:日本経済新聞 ゆうちょ銀行、東証プライム基準未達
福島克哉執行役(IR部長)は「規模からするとプライム。スタンダードにも上場できないようでは株主に説明できない」
出典:朝日新聞デジタル 「株主に説明できない」 東証の市場再編で進む企業選別
ちなみに経過措置で上場を維持できる「当面の間」というのがどれだけの期間なのかは具体的に示されていません。
市場の混乱状況などで判断されるでしょうかね?
ズルズルと経過措置を続けるのだけは止めてもらいたいのですが・・・
正式にプライムに残れるのかがわかるのは2022年1月11日ですね。
ゆうちょ銀行が上場基準を満たすためには
ゆうちょ銀行が上場基準を満たすためには日本郵政株式会社が持つ3,337,032千株(2021年3月31日時点)の株の一部を流通に回すしかありません。
規模とすればかなり大きい話ですから株への影響は避けられないでしょう。
株への影響がでないような方法を模索してくるとは思いますが・・・
もし、ゆうちょ銀行が個人株主を増やしたいと考えるなら配当の増配や株主優待の実施なんかも考えられるでしょうね。
そのあたりはゆうちょ銀行の考え方しだいですね。
プライムに残れない場合
もし、ゆうちょ銀行がプライムに残れなかったらどうなるのでしょう?
プライムに残れないだけで企業の本質的価値が変わるわけではありませんが、TOPIXなど指標の対象銘柄でなくなりますので機関投資家の投資が減ってしまったり、イメージ悪化などの影響もあり株価は下がる可能性が高いでしょうね。
ただし、TOPXIもいきなり移行すると大きな影響がありますので2022年10月末から2025年1月末まで、四半期ごと10段階で構成比率を低減するという移行期間を設けるとのことです。
出典:日本取引所 グループ 市場構造の在り方等の検討より
いきなりではなく徐々に影響がでてくるといったかんじですね。
上場廃止だと・・・
上場廃止ということも考えられます。
親会社の株の持ち分を維持しようとすれば上場廃止も当然ながら視野に入ってくるでしょうからね。
上場廃止となった場合、投資家としてはかなり厳しい選択を迫られます。
上場廃止されると配当や議決権など株主としての権利はそのままですが、株の売買が当然ながら難しくなりますからね。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回は「ゆうちょ銀行が東証プライム基準満たさず。今後どうなる?」と題してゆうちょ銀行の東証プライム基準を満たしていないという話をみてきました。
ゆうちょ銀行の株主の方にはかなり大きなことになるでしょうから注視が必要ですね。
ゆうちょ銀行に限らず同じような話が今後出てくるでしょう。
とくに大株主がいる企業などは大株主が株を手放すなんて話も今後多くなるかもしれません。
注目です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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