株式投資をするなら知っておきたいインサイダー取引が蔓延っている件

先日、高額なトースターで人気の家電メーカー「バルミューダ」の社外取締役がインサイダー取引に該当する可能性がある株取引をしたことが発表されたことで話題になっています。

インサイダー取引が問題なのは知っている方が大半です。

しかし、なぜインサイダー取引が駄目なのか、どういうルールになっているのかをご存知のない方も多いようです。

そこで今回は元「ボロ株」の中の人でインサイダーの届け出も出していた私が解説します。

インサイダー取引はかなり蔓延っていますね・・・

バルミューダのインサイダー取引疑惑を解説

まずは今回話題となったバルミューダのインサイダー取引疑惑を見ていきましょう。

報道では以下のように出ていますね。

新興家電メーカーのバルミューダは、社外取締役を務めるメガネ大手「ジンズホールディングス」の田中仁社長がインサイダー取引に関する社内規定に違反したため処分したと発表した。田中氏は21年5~10月の報酬を全額返上し、21年11月~22年3月の月額基本報酬を100%減額される

出典:朝日新聞 バルミューダ社外取締役、インサイダー取引の恐れ スマホ参入発表前

インサイダー取引疑惑は半年前の話

このインサイダー取引疑惑の件が発表されたのが先日で、ちょうどバルミューダがスマートフォンの詳細が発表したばかりのときだったのでスマートフォン関連でバルミューダ株を買ったのだと勘違いしている方が多いようです。

その後、スマートフォンがイマイチ期待はずれだったこともありバルミューダ株は下げています。

そのため、「あのスマホ売れると思ったのか」とか「インサイダー取引して負けてるやん」みたいなTwitter投稿を何度も見てます笑

しかし、この疑惑半年前の話なんですよ。

 田中氏は、バルミューダが業績の上方修正やスマホ事業への参入を発表する直前の5月13日正午ごろに株式を買い付けした。バルミューダが売買を承認していたのは翌14日からだった。13日深夜に田中氏から誤って承認期間外に取引したと申し出があったという。

出典:朝日新聞 バルミューダ社外取締役、インサイダー取引の恐れ スマホ参入発表前

インサイダー取引疑惑の5月13日前後の株の動き

まず田中仁氏が株を買い付けた5月13日の株価は

初値5,570円 終値5,790円
でした。
購入したのは正午とのことですからこの間の金額で買っている形ですね。
その5月13日にバルミューダは第一四半期決算を発表しています。
発表した時間はわかりませんが、株式市場が閉まった15時以降でしょう。
そこで業績の上方修正スマホ事業への参入を発表しています。
当然株にはポジティブなニュースですね。
翌日5月14日に株は大きく反応します。
初値6,790円 終値6,790円

初値で6,790円とストップ高まで上がったのです。

さらに次の営業日である5月17日には7,200円まであがっていますね。

最高値で売れば5月13日の終値で買ったとしても1株あたり1,410円を4日でゲットと爆益です。

インサイダー取引云々を抜きにすればこの取引は大成功だったといえるでしょう。

バルミューダのトースターは何台買えるのかな・・・

ちなみに11月19日時点のバルミューダの株価は以下の通り

終値4,870円

田中仁氏がその後株を売ったのかどうかはわかりませんが、もし持ち付けていればマイナス水準まで落ちている格好ですね。



インサイダー取引とは

それではインサイダー取引の解説に移っていきましょう。

インサイダー取引とは以下のような取引を指します。

インサイダー(内部者)取引とは、上場会社の役職員等の会社関係者が、その特別な立場を利用して会社の重要な内部情報を知り、その情報が公表される前にこの会社の株式等の売買を行うことをいいます。

出典:SBI証券 インサイダー取引について

つまり、公開されてない重要な内部情報を持っている方がそれを利用して株の売買をすることを指します。

インサイダー取引はなぜ悪いのか

それではなぜインサイダー取引が悪いのでしょう。

よくテストで言う「カンニング」と例えられます。

ある意味感情的にはそうなのですが、一番大きいのが他の取引参加者への影響なんですよ。

インサイダーが犯罪となっていなければ当然、内部情報を持っている方は好き勝手します。

情報を持っているかの勝負になってしまうのです。

そうなれば一般の方は損をする可能性が高くなってしまうため、参加を控えるようになります。

つまり、インサイダーが横行すれば市場そのものが衰退してしまうので株式相場全体として影響を受けるために規制されているのです。

インサイダー取引の対象者は意外と幅広い

インサイダー取引の対象者は意外と幅広いですよ。

ちなみにSBI証券では以下の条件でインサイダー登録が必要としていますね。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

(1)役員
・ 上場会社等の取締役、会計参与、監査役又は執行役
・ 上場投資法人等の執行役員又は監督役員
・ 上場投資法人等の資産運用会社の取締役、会計参与、監査役又は執行役
(2)主要株主
・ 上場会社等の株式を10%以上保有する株主
(3)役員の配偶者及び同居者
・ 上記(1)の配偶者及び同居者
(4)大株主
・ 上場会社等の株式の保有割合が上位10位内の株主
(5)関係会社
・ 上場会社等の親会社若しくは主な子会社又は主な特定関係法人
※法人口座のみ
(6)執行役員・その他役員に準ずる役職
・ 上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の使用人その他の従業者のうち執行役員(上場投資法人等の執行役員を除く)その他役員に準ずる役職にある者
(例)執行役員、顧問、部長職等
(7)重要事実関係部署職員
・ 上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の使用人その他の従業者のうち重要事実を知り得る可能性の高い部署に所属する者(上記(6)を除く)
(例)経理部、財務部、人事部、総務部、経営企画部、研究員等
(8)退任役員
・ 上記(1)に掲げる者でなくなった後1年以内の者
(9)親会社の役員・退任役員・重要事実関係部署職員
・ 上場会社等の親会社又は主な特定関係法人の取締役、会計参与、監査役又は執行役
・ 上場会社等の親会社又は主な特定関係法人の使用人その他の従業者のうち執行役員その他役員に準ずる役職にあたる者
・ 上場会社等の親会社又は主な特定関係法人の使用人その他の従業者のうち重要事実を知り得る可能性の高い部署に所属する者
・ 上記に掲げる者でなくなった後1年以内の者
(10)子会社の役員・退任役員・重要事実関係部署職員
・ 上場会社等の子会社の取締役、会計参与、監査役又は執行役
・ 上場会社等の子会社の使用人その他の従業者のうち執行役員その他役員に準ずる役職にあたる者
・ 上場会社等の子会社の使用人その他の従業者のうち重要事実を知り得る可能性の高い部署に所属する者
・ 上記に掲げる者でなくなった後1年以内の者
(11)一般職員
・ 上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の使用人その他の従業者
(例)社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パートタイマー等
(12)上場会社の親・子会社の一般職員
・ 上場会社等の親会社若しくは主な子会社又は主な特定関係法人の使用人その他の従業者
(13)その他
・ 3%以上保有の株主で上位10位内に該当しない者
・ 役員以外の配偶者及び同居者
・ 担当公認会計士、顧問弁護士、許認可の権限等を有する公務員等

出典:SBI証券 インサイダー取引について

ほとんど会社の中の人です。

しかし、これら以外にもインサイダーの規制に入る方はいます。

会社関係者はもちろん、会社関係者から重要情報を聞いた人なども対象となるのです。

銀行の担当者とか公認会計士や弁護士などの取引先も含まれます。

また、よく役員の恋人、愛人、友人などもインサイダーで摘発されていますが、会社関係者から重要情報を聞いた人に入るためです。

恋人、愛人、友人などは上記のような届け出を出さないためバレないと思っているのでしょうが・・・

インサイダー取引の対象期間は?

今回のインサイダー取引疑惑のある田中仁氏は取引可能な対象期間を勘違いしていたと言い訳しています。

ちなみに対象期間は以下の通りです。

◯上場会社等の代表者又はその委任を受けた者が、重要事実等又は公開買付け等事実を次のうち2以上を含む報道機関に対して公開し、かつ、その公開後12時間が経過すること。

◯上場会社等が上場する金融商品取引所等に対して重要事実を通知し、金融商品取引所において内閣府令で定める電磁的方法により公衆の縦覧に供されること。

◯上場会社等が提出した金融商品取引法第25条第1項に規定する書類(有価証券届出書、これらの訂正届出書、有価証券報告書、これらの訂正報告書等)に重要事実に係る事項が記載され、公衆の縦覧に供されること。

出典:SBI証券 インサイダー取引について

つまり、ちゃんとEDINETで有価証券届出書などで発表したか、新聞等ででたらその後12時間ってことです。

こんな簡単な話を勘違いしますか?って感じもありますが。

そもそも株を購入したのが上方修正発表の当日ですから疑われても仕方ないでしょう。

インサイダー取引の罰則は重い

ちなみにインサイダー取引の罰則は意外と重いです。

5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(両罰もあり)(金融商品取引法第197条)
さらに以下のような話もあります。
インサイダー取引によって得た財産は没収(金融商品取引法第198条)
かなり重たいんですよ。

インサイダー取引はそれでも蔓延っている

今まで見てきたようにかなり重い罰則があり規制されていますが、インサイダー取引は蔓延っています

インサイダーなのにそれほど意識してない方が多い印象・・・

よく大きなニュースが発表される前に株が出来高が伴って動いているケースがよくありますが、その多くはインサイダー取引だと思われます。

どうしても大きな話になればなるほど関係者が多くなりますのでどこかしらから情報が漏れてしまうんですよ。

会社関係者はまだしも、会社関係者から重要情報を聞いた人のインサイダー取引なんて証拠を掴むのは難しいですからね。

私も「ボロ株」会社の中の人のときは自社はもちろん、上場している関係会社や取引先のいろいろなやばい情報が回ってきましたね。

私は小心者ですし、基本真面目なのでインサイダー取引は絶対しませんでしたが・・・やれば簡単に一財産築けたでしょう。

例えばある新興系のIT企業が◯◯(大手)と結託して循環取引して粉飾しているとか・・・・ですね。

これは自社の監査を担当してくれていた公認会計士の人から教えてもらったんですよ。

その方の担当先では無いようですが、監査法人が粉飾を黙認しているのでしょうし、そんな情報を漏らすとか守秘義務もあったもんじゃありませんよね笑

ちなみにその話が本当だったかはわかりませんが、粉飾は露呈しておらずまだ上場し続けています笑

たしかにその新興IT企業の決算書を見ると不自然なところがありますのでまだ続けているのでしょうかね・・・

また、ボロ株会社の社外取締役には東証一部上場会社の社長もいましたが、その人もやばい情報漏らしまくりでしたね。

未発表の合併の話とか普通に雑談で話しちゃうんですから・・・

本当に買ったのかは知りませんが、それを聞いた役員連中もじゃあ株買っとくわとか普通に話していました笑

つまり、インサイダーの中にはそれほど情報の重要性を意識してない方は多いってことなのでしょう。

モダリスショックでもそうですが、個人投資家が個別株をやるのはそういった有利な立場にいるインサイダーとの戦いになってしまうリスクがあることは知っておきたいところですね。




まとめ

今回は「株式投資をするなら知っておきたいインサイダー取引が蔓延っている件」と題してインサイダー取引についてみてきました。

個別株の投資をするならインサイダー取引がどうしてもあるということは認識しておきたいですね。

これは個人レベルではどうしようもありませんし、金融庁に頑張ってもらうしか無いでしょう。

個人でできる対策は分散投資しかないかと思われます。

あとはチャートには現れるのでそれを丹念にチェックするしか・・・

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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