公的年金の引き下げはおかしな話ではない。批判するなら仕組みを理解してからにしよう

4月から公的年金の支給額が0.4%引き下げられます。

昨今の物価高なのに年金は引き下げということにネット上などで批判が渦巻いていますね。

ひどいテレビの解説者や議員などは未だに株の運用で失敗したと勘違いした間違った発言をしていたケースも見受けられました。

むしろ年金の運用は大きくプラスなんですけどね・・・

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しかし、この引き下げは仕組み的に当たり前の話なんですよ。

むしろ引き下げが必要な時にやらないと後になって大変なことになります。(過去には実際にやってしまっています・・・)

今回は公的年金引き下げの理由や仕組みについて解説していきます。

日本の公的年金の仕組み

まずは大前提として押さえておかなければならないことがあります。

それは日本の公的年金の運営方式です。

年金の運営方式は主に2つのやり方があります。

「賦課方式」と「積立方式」です。

日本の公的年金はそのうち「賦課方式」で運用されています。

日本の複雑な年金制度を理解するにはまずは賦課方式を知っておく必要があります。

まずは賦課方式についてから見てみましょう。

賦課方式とは

賦課方式とは年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する方式です。

現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージです。

つまり、今の働いている世代が納めた保険料で老後生活をしている受給世代の年金を支えているのです。

賦課方式とは
賦課方式とは

出典:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」より

現役世代が高齢になって年金を受給する頃には、子どもなどその下の世代が納めた保険料から自分の年金を受け取ることになります。

ですから少子高齢化になることでもらう側の人間が増え、支える現役世代が少なくなることから年金不安が叫ばれているのです。

この仕組みは厚生年金も国民年金も基本的に同じです。

参考:積立方式とは

積立方式も一応見ておきましょう。

積立方式とは将来自分が年金を受給するときに必要となる財源を、現役時代の間に積み立てておく方式です。

ある意味、納得感は高いですが、大きな問題があります。

それはインフレに弱いことです。

例えば1965年のとき喫茶店のコーヒーは全国平均で71.5円でした。それが50年後の2015年には全国平均422円と5.9倍となっています。

コーヒーだけを基準に考えれば50年前に10万円積立てても50年後にはその約17000円分くらいしか価値がないってことですね。

もし、積立方式の場合にはこの差を運用で埋めなくてはいけなくなります。

「賦課方式」と「積立方式」はどちらにもメリット・デメリットがあるんですね。

つまり、その時代によってどちらが最適なのかは変わってくるのです。



公的年金はなぜ引き下げされるのか

それでは今回なぜ公的年金は引き下げられる事になったのでしょう。

マクロ経済スライドが採用

今後の日本は下記のように支える人と支えられる人が少子高齢化によってかなりアンバランスな状況となってしまいます。

年金世代間格差

出典:厚生労働省 いっしょに検証!公的年金 「世代間格差」より

そのため、日本の公的年金にはマクロ経済スライドという仕組みが導入されています。

マクロ経済スライドとはそのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

簡単に言えば年金制度を無理なく継続するために年金の給付額を調整する仕組みってことです。

この仕組みと賦課方式があるため基本的に年金制度が破綻することはないのです。

破綻する可能性があるとすれば国がそもそも破綻するか年金の法律を大きく変えるときだけでしょう。

100年安心というのはこの意味合いなんですよ。そもそも年金だけで暮らせる水準を維持するなんてだれもいっていないのです。

ただし、制度としては破綻しないけど実際にもらえる金額が納めた金額より少ないということが起こり得るのが現在の年金制度ではあります。

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2022年度の公的年金引き下げの理由

それでは2022年度の公的年金支給額が0.4%引き下げられる事になったのはなぜなのでしょう?

マクロ経済スライドでは現役世代の人口と余命を元にした「スライド調整」と「賃金と物価の変動」とで調整を計算します。

具体的には以下のように調整を行います。

マクロ経済スライド

出典:厚生労働省 いっしょに検証!公的年金 「マクロ経済スライドってなに?」より

今回は物価が-0.2%、名目賃金変動率が-0.4%でした。

計算期間では物価も、現役世代の給料も減っていたんですね。

つまり、上記の図の一番下の状況です。

この場合、両方マイナスですので大きい方の名目賃金変動率分の-0.4%の引き下げを行い、それ以上の「スライド調整」の引き下げは行わないというルールとなっています。

つまり、今回の引き下げは現役世代の給料が減った分に合わせて年金も減らしたというだけなんですよ。

ルールに乗っ取た機械的な引き下げなわけです。

賃金と物価はなんとも言えませんが、現役世代の人口は減り続けるでしょうし、余命は長くなるでしょう。

そうなれば年金財政はどうしても厳しくなりますのでマクロ経済スライドのような制度はどうしても必要となるのです。



年金だけで生活はだんだん厳しくなる

今後も今回のような引き下げが起こる可能性もありますし、物価高、現役世代の賃金高となってもマクロ経済スライドによって年金増加は抑えられます。

つまり、年金だけでの生活はだんだん厳しくなっていくのです。

少子高齢化はどんどん進展していますから若い方なら尚更その傾向が強くなるでしょう。

それでは現役世代や今後、現役世代となる若者はどうしていけばよいのでしょうか?

年金だけでは2,000万円老後資金が足りない問題で話題になった金融庁が作成した資料「高齢化社会における資産形成・管理報告書」の作成段階で会議に提出された厚生労働省の資料だと以下の点を推奨しています。

年金を繰り下げして老後も働く
年金を繰り下げして老後も働く

出所:2019年4月 第21回金融審議会「市場ワーキング・グループ」厚生労働省提出資料

簡単に言えば足りない部分は定年後も就労すること、私的年金(iDeCoつみたてNISA)でカバー、公的年金は繰り下げしてもらう金額を増やすという方法ですね。

大きな話題になってしまったことで「高齢化社会における資産形成・管理報告書」の資料自体が取り下げられてしまいましたが、今後の少子高齢化ではこういった考え方はどうしても必要となってくるんですよ。

定年後も就労して老後資金を稼ぐ

最近は65歳でも皆さん元気な方が多いです。

十分就労できる人はありな選択肢でしょう。

また、若い人にはない経験と知識をもっていますしね。

ただし、老後でも雇ってもらるだけのエンプロイアビリティ(雇用される能力)や自分でお金を稼げる能力を退職までに培っておくことは必要となるでしょう。

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私的年金でカバー(iDeCoとつみたてNISA)

iDeCoやつみたてNISAは老後資金を作るための定番です。

両方とも投資ですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)は払ったときに所得控除の対象となります。またiDeCo、つみたてNISAとも運用に対しての利益は非課税となります。

つまり、老後資金を作るためにかなり優遇されている制度となります。

そうはいっても投資をしたことない方にとってはハードルが高いのも事実です。

しかし、長期・積立・分散投資をすると長期であればあるほど投資先を分散すればするほど収益のばらつきは少なくなりリターンが得やすいのです。

今回の「高齢化社会における資産形成・管理報告書」でも下記の通り20年のスパンで考えれ投資収益は2%〜8%に収斂するとしていますね。

つまり、長期・積立・分散投資をするとプラスになる可能性がかなり高いってことです。

長期・積立・分散投資の効果
長期・積立・分散投資の効果

出所:金融庁「高齢化社会における資産形成・管理報告書」より

個人型確定拠出年金(iDeCo)とつみたてNISAについて詳しくは下記の記事を御覧ください。

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繰り下げして公的年金を増やす

繰り下げとは簡単に言えば年金をもらうのを遅らせることで一回あたりの年金額を増やす制度です。

繰り下げをすると国民年金、厚生年金は1月遅らせるごとに0.7%ずつ増額されます。

70歳まで繰り下げれば増額率は42%増となります。

長く行きられる方は繰り下げの方が得なんですよ。

繰り下げについて詳しくは下記記事を御覧ください。

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でも払い損ではないぞ

年金だけで生活できないなんて払い損じゃん!!払いたくないなんて考える方も見えます。

しかし、それは全然違います。

公的年金は一般の生命保険会社が提供している年金制度と比べてかなりお得なんですよ。

障害年金遺族年金というもしものときのための保険制度も兼ねています。

また、終身年金ですしね。

どうしても世代間格差問題は生じてしまっていますので惑わされてしまいますが長生きのための保険、障害や遺族の保険と考えれば損な制度ではないんですよ。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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年金制度について




まとめ

今回は「公的年金の引き下げはおかしな話ではない。批判するなら仕組みを理解してからにしよう」と題して公的年金引き下げの話をみてきました。

公的年金の仕組みや制度をしっかり理解して自分の生活は自分で守るって意識も今後は必要かもしれませんね。

対策を何も考えられていない方はまずは、iDeCoつみたてNISAから始めてはいかがでしょうか?

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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