金融庁税制改正要望のNISA以外の論点について。暗号資産、金融所得課税一体化、特別法人税の撤廃など

金融庁が税制改正についての要望を出した中にNISAやつみたてNISAの大規模改革が含まれていたことで話題となっています。

制度の恒久化や非課税保有期間の無制限化など私も希望していた内容がかなり含まれています。

なお、勘違いしている方も多いようですが、あくまでも金融庁が要望を出しただけなので実現するのかは不透明です。

期待したいですけどね。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

今回は金融庁税制改正要望のNISAやつみたてNISA以外の点について見ていきましょう。
その他にも興味深い要望を出しているんですよ。

資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入

まずは資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入です。

簡単に言えば職場で資産形成の促進をした企業は優遇するっていう政策です。

金融庁の要望

○資産形成に関する企業の取組みを促す観点から、資産形成促進に関する費用(例えば、 企業が行う金融経済教育に関する費用)の一定割合について、法人税の税額控除を導入すること。
○ 職場つみたてNISA奨励金が「賃上げ促進税制」の対象となる旨を明確化すること。出典:金融庁 令和5(2023)年度 税制改正要望について

ちょっとわかりにくいですが、簡単に言えば会社が金融経済教育に関する費用等を負担したらその一定割合については法人税を税額控除しましょうっていう制度です。

パワハラ研修とかセクハラ研修など会社に直接影響のある研修は開かれやすいですが、従業員の懐具合に関係する資産形成の教育って今まであまり行われて来ませんでした。

それを優遇しようってことなのでしょう。

個人的な感想

個人的な感想としては大企業以外はあまり利用されないだろうからあまり意味ないかなってところ。

まず、金銭面のメリットが薄いということですね。

具体的なパーセンテージは挙げておらず、例として大企業は3%、 中小企業は5%としています。

仮に5%だとしても負担した費用の5%を法人税の税額控除されてもしれていますしね・・・

そもそも日本の企業の多くは赤字というデータもあります。

赤字だと法人税の税額控除の意味はありません。

企業として直接会社に関係ない従業員の資産運用に手を出すまでの魅力を感じる制度とはなっていないようです。

また、投資については受講者間でレベル差があるので企画する側も大変なんですよ。

私も企業型拠出年金の導入時の資産形成に関する研修講師を何度かしたことはありますが、まったく投資を知らない方から、バリバリ株をやっている方までみえましたので苦労しましたね。



金融所得課税の一本化

次は金融所得課税の一本化です。

金融庁の要望

証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所が2020年7月に実現したことを踏まえ、投資家が多様な金融 商品に投資しやすい環境の整備を図り、家計による成長資金の供給拡大等を促進する観点から、金融商品に 係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること。

出典:金融庁 令和5(2023)年度 税制改正要望について

簡単に言えば損益通算を認める範囲を広げてくださいってことです。

損益通算とは他の所得などと通算して計算する方法です。

例えば株で儲かってるけど投資信託で大損。

そんなときに合算して利益を計算できるのが損益通算です。

現在は上場株式や投資信託、公社債等が対象となっています。

その範囲を現在対象外のデリバティブ取引・預貯金にまで広げようって話です。

個人的な感想

個人的な感想としてはこれはやるべきでしょう。

わざわざ区分する意味がわかりませんしね。

預貯金は所得税等が引かれて入金される源泉分離となっているのでなかなか難しそうですが。。。

後述するように暗号資産も含めてほしかったのですが、金融庁の要望ではでていませんね。

特別法人税の撤廃(iDeCo等)

次は企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃又は課税停止措置の延長です。

これは金融庁が税制改正要望を毎回出していますが、認められていませんね。

金融庁の要望

特別法人税を撤廃又は課税停止措置を延長すること

出典:金融庁 令和5(2023)年度 税制改正要望について

特別法人税とは企業年金等の積立金等に課税される税金です。

企業年金となっていますが、iDeCo(個人型確定拠出年金)も対象となっているんですよ。

1999年度から凍結されているのでiDeCoで課税されたことは一度もありませんが、もし課税されたら即刻やめたいレベルに不利な金融商品となってしまいます。

その特別法人税は定期的に凍結を延長しているのです。

2023年3月末でその凍結措置が期限切れとなりますので、その時点で撤廃してほしいという提案ですね。

最悪凍結を延長してという要望です。

個人的な感想

個人的な感想としてはこれはやるべき事項です。

個人的には特別法人税の再開はないと考えますが、そのような爆弾を抱えている制度だとなかなか加入しにくいと考える方もみえるでしょう。

ですから普及させたいと本気で思っているなら凍結状態をやめて撤廃してほしいところ。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。




暗号資産の期末時価評価課税に係る見直し

次は暗号資産です。

以下のような要望を出しています。

金融庁の要望

ブロックチェーン技術を活用した起業等への阻害要因を除去し、Web3推進に向けた環境整備を図る観点から、法人が発行した暗号資産のうち、当該法人以外の者に割り当てられることなく、 当該法人が継続して保有しているものについては、期末時価評価課税の対象外とすること。

出典:金融庁 令和5(2023)年度 税制改正要望について

法人が暗号資産を保有していると期末に時価で評価されます。

それにより利益がでてれば課税されてしまうんですよ。

実際は未実現の利益なのにです。

それをやめてくれって言ってる話ですね。

どうやらスタートアップ企業が資金調達場面での暗号資産の発行することを想定していうる話のようです。

個人的な感想

個人的な感想としてはこれは不要かなと考えます。

暗号資産だけ時価評価を外すのは不公平な気がします。

それなら株も同じにスべきでしょう。

また、資金調達場面での暗号資産の発行が流行ることで詐欺まがいなスタートアップ企業が続出する予感しかしません。

金融庁も注意喚起を出しているのに・・・

暗号資産で要望を出すなら金融所得課税の一本化に加えることをしてほしかったですね。

教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し

次は教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直しです。

金融庁の要望

教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置において、①一定の投資商品(例えば、つみたてNISA対象商品等)に係 る運用損失及び②教育関連団体等への寄附金を、契約終了時の贈与税の課税対象から除外するなど、制度の拡充を措 置すること。

出典:金融庁 令和5(2023)年度 税制改正要望について

これはちょっとややこしいのです、

現在、教育資金管理契約に基づき贈与した場合に贈与時には1,500万円までは贈与税が非課税となります。

そして契約終了時に贈与税の精算が行われ、残高及び教育資金 以外の支払分は、贈与税が課税される仕組みとなっています。

しかし。運用で損失が出ていても相続税の対象となってしまうのでそれを相続税対象としないようにしてくれっていう話です。

個人的な感想

個人的な感想としてはこれも不要かなと考えます。

ジュニアNISAでもそうですが実際に教育に使われている実態がどれだけあるのかちょっと疑問だからです。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。




まとめ

今回は「金融庁税制改正要望のNISA以外の論点について。暗号資産、金融所得課税一体化等」と題して金融庁の税制改正要望についてみてきました。

個人的にはイデコ等の特別法人税の廃止。これをなんとか実現してほしいですね・・・

後は正直それほどじゃないかな・・・

NISA、つみたてNISAの改正は頑張って欲しいですけどね。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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