制度設計ミス?最大100万円「こどもエコすまい支援事業」が創設も「こどもみらい住宅支援」の予算終了で狭間世代(こどもみらい難民)大量発生。

新たに「こどもエコすまい支援事業」なる制度が創設されることが発表されました。

簡単に言えば子育て世帯・若者夫婦世帯による高い性能を有する新築住宅の取得や、 住宅の省エネ改修等に対して支援するという制度です。

最大補助額100万円ということでかなり大きい制度ですね。

しかし、この補助金には闇があります。

この補助金の実質的前身である「こどもみらい住宅支援」との間に狭間があり、その期間に家を買った人はもらえないという明らかな制度設計ミスがあるのです。

今回はこの制度設計の甘さについて問題提起したいと思います。

追記:こどもエコすまい事業の要件を見直すことになり多くのこどもみらい難民は救済されました。詳しくはこちらの記事を御覧ください。

こどもエコすまい支援事業とはなにか

まずは今回の前提となる「こどもエコすまい支援事業」の内容から解説しておきましょう。

こどもエコすまい支援事業の補助額

こどもエコすまい支援事業の補助額は以下の通り。

  • 住宅の新築:100万円/戸
  • 住宅のリフォーム:リフォーム工事内容に応じて定める額(上限30万円/戸)
    ※子育て世帯・若者夫婦世帯は、上限45万円/戸(既存住宅購入を伴う場合は60万円/戸)
    ※安心R住宅の購入を伴う場合は、上限45万円/戸
かなり大きい補助となります。
ただし、それぞれ適用される住宅などには条件があります。

住宅の新築の場合の補助対象

住宅の新築の補助対象の条件は2つあります。

世帯条件と住宅条件です。

両方満たす必要があります。

世帯条件

まず住宅の新築についての世帯条件は以下の通り。

  • 子育て世帯:18歳未満の子を有する世帯
  • 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが39歳以下の世帯

年齢はいずれも令和4年4月1日時点とのこと。

所得の制限はなく、年齢のみの線引ですね。

住宅条件

住宅条件は以下の通り

  • 住宅の新築:ZEH住宅(強化外皮基準かつ再エネを除く一次エネルギー消費量▲20%に適合するものが対象となります。)
    ※対象となる住宅の延べ面積は50㎡以上

ちょっとわかりにくいですが、ZEH(ゼッチ)とは以下のような住宅のことを指します。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略。年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅のこと。

つまり、太陽光発電などを利用してエネルギーを創って家庭で使用するエネルギーを賄うことができる住宅のことです。

2022年10月からフラット35でもZEH住宅は金利引下げになっているなど優遇されていますね。

なお、「こどもエコすまい支援事業」はリフォームなんかも対象となります。




こどもみらい住宅支援の予算が予定より早く終了

ここからが本題です。

まず、「こどもみらい支援事業」という今まで実施された補助金がありました。

こちらも多少条件は違いますが、最大100万円の補助となる補助金で実質的にこどもエコすまい支援事業の前身の補助金です。

しかし、先日予算が2022年11月28日17時53分20秒に提出された申請を最後に予算上限額に到達してしまったんですよ。

本来の締切は2023年3月31日でしたから、かなり早くに終了してしまったのがわかりますね。

これにより当初想定していなかっただろう狭間ができてしまったのです。

こどもみらい住宅支援事業の予算進捗推移

「こどもみらい住宅支援事業」の予算は1,142億円(追加分含む)でした。

以下のように進捗しています。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

当月消化予算累計消化予算予算残り消化率
6月30日96億円210億円932億円18%
7月31日111億円321億円821億円28%
8月31日110億円432億円710億円37%
9月30日129億円561億円581億円49%
10月31日158億円719億円423億円63%

9月末では49%しか消化されず、先日公開されたばかりの10月末でも63%でした。

すこしづつ消化のスピードは上がっては来ていましたが、こんな早く終わるなんて予想しずらい状況だったんですよ。

なぜ急に予算が消化してしまったか?

11月14日分から日次で予算消化を公表しだしたからです。

それ以降の進捗は以下です。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

累計消化予算(概算)予算残り(概算)消化率(概算)
11月15日0時845億円297億円74%
11月16日0時845億円297億円74%
11月17日0時856億円286億円75%
11月18日0時867億円275億円76%
11月21日0時902億円240億円79%
11月22日0時913億円223億円80%
11月24日0時947億円195億円83%
11月25日0時970億円170億円85%
11月28日0時1,062億円80億円93%
11月28日17時53分1,142億円0100%

なお、発表されているのは消化率はパーセント単位まで。(小数点以下は非公表)

上記は消化率から逆算して求めた数字で、億円単位(切り捨て)ですからそれなりにずれるとは思いますが進捗のイメージは分かるでしょう。

13日くらいで26%消化してしまったのです。

10月までの消化は累計で63%だったのに・・・

こんなに予算消化が増えてしまうとは予想していた方は少なかったでしょう。

おそらく日次が発表されたことで申請を後回しにしていた(忘れていた)事業者が慌てて申請したことなどが大きいでしょう。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。私は年内は持つと以前に予想していましたね。

月次を発表しなければ年内は持ったと思います笑

予約の不正も?

また、真実はわかりませんが、不正な予約もかなり多かったとも噂されています。
「こどもみらい住宅支援事業」には事前予約という制度があり、予算の枠を確保することができます。
その条件は着工(基礎等)と3ヶ月以内に基礎等の完了となっていますが、着工の条件を無視して必要書類が揃った時点で予約した建築業者が大量にあったことなどが予想されているのです。
実際に1級建築士で自慢気にツイッターで語っている人もいましたね。
予約の際の必要書類に着工を示す証拠書類等がなにもないというお粗末なものだったせいもあるでしょう。
不正の存在を考えないと説明がつかない部分もあります。
大手ハウスメーカーの月次を見ても家はあまり売れてないんですよ。
かなり豪華な住宅展示場の来場特典を出すレベルになっています。
月次売上を公表している大手ハウスメーカーの9月度前年比(住宅用戸建住宅のみ)は以下のとおり。
なお、表記は月次落ち込み順
  • 住友林業:-32%
  • Panasonicホームズ:-24%
  • 三井ホーム:-21%
  • ヘーベルハウス(旭化成ホームズ):-20%
  • 積水ハウス:-14%
  • タマホーム:-9%
  • ミサワホーム:-8%
  • セキスイハイム:-6%
  • ダイワハウス:-2%

なんとすべてマイナスとなっています。

予約は着工が条件ですし、着工にはある程度準備等の時間がかかるでしょうからこの状況でそこまで急激に増えるとは予想しづらい状況。

もし、本当に不正な予約があるならば、それは取り消して予算に戻すべきでしょう。

さらにそういった不正を働いた事業者は補助金制度から締め出すべきでしょう。

ハウスメーカーにも問題あり

また、ハウスメーカー側にも問題があります。

こどもみらい住宅支援事業は基本的に手続き等も入金もハウスメーカーになります。

その分を値引き的な扱いをしてくれるイメージですね。

私は9月ごろに家を探して何社も話を聞いていますが、どこも「こどもみらい住宅支援事業」で入る100万円は資金計画からマイナスされていました。

つまり、こどもみらい住宅支援事業がもらえる前提で資金計画を立てていたのです。

そうなれば当然もらえるものだと認識しちゃいますよね。

9月の時点で予算がなくなるなんて話一切なかったです。

ちなみに最終的に契約した某社からはまだこどもみらい住宅支援事業が受け取れない件については連絡すらありません笑

それどころか先週、営業に合ったときに「こどもみらい住宅支援事業」予算尽きそうですねという話をふったところ、うちは大丈夫ですよ。(12月末着工予定)

1月着工のもうひとりのお客様が心配だな・・・的な話をしていましたね。




こどもエコすまい支援事業の問題

「こどもみらい住宅支援事業」の予算がなくなってしまうまでは仕方無い部分もあります。

しかし、問題はここからです。

新しい後継補助金の「こどもエコすまい支援事業」にはいくつかの制限があるのです。

これにより大量の狭間世代が生まれてしまったのです。

制度設計の際に「こどもみらい支援事業」予算がこんなに早く終わってしまうというのがあまり認識がなかったのかもしれませんね・・・

契約日制限

まず一つ目が契約日の制限です。

令和4年11月8日以降に売買契約を締結

2022年11月8日以降に契約しかこちらの補助金の対象とならないのです。
「こどもみらい住宅支援」を狙っていて予算終了でもらえなかった人の多くが11月8日以前に契約をしています。
注文住宅の場合には契約してから実際に着工するまでに数ヶ月は掛かりますからね・・・
そのため、「こどもみらい住宅支援」は予算が終わってしまい対象とならず、「こどもエコすまい支援事業」は契約日の制限で対象とならないのです。
つまり、同じ条件のZEH住宅を買っても契約のタイミング等で100万円もらえるか、もらえないかが大きく分かれてしまったという・・・
例えるなら
行列に並んでいたらあと少しで売り切れ
しかし、隣に新たな列ができてほぼ同じ商品を売り出し。
元の行列に並んでいた人は対象外
と言われるみたいなものです。
さらに予約の不正があり、行列の横入りが横行しまくっていたという・・・・
不条理過ぎます。

着工日制限

もう一つが着工日の制限というものあります。

・施工業者から事務局に事業者登録(令和5 年1月中旬受付開始予定)を行った後に着工する住宅が補助対象

なお、「こどもみらい住宅支援事業」の登録事業者は本事業の事務局開設日(令和4年12月中旬予定)以降に着工する住宅が対象

こどもみらい住宅支援事業の登録をしていたハウスメーカー等で買う場合は事務局開設日(令和4年12月中旬予定)以降に着工が必要です。

その前に着工している家は対象外となります。

これは建売も同じで、今売っている多くの建売はこの制限に引っかかってしまいますので「こどもエコすまい支援事業」の対象外ですね。

このあたりはハウスメーカーからしても頭の痛いところでしょう。

うちの近所でも売れ残りの建売住宅がかなりありますが、それがさらに売れにくくなります。




まとめ

今回は「制度設計ミス?最大100万円「こどもエコすまい支援事業」が創設も「こどもみらい住宅支援」の予算終了で狭間世代大量発生。」と題してこどもみらい住宅支援とこどもエコすまい支援事業の狭間世代の話しについてみてきました。

かなり歪な制度設計が生んでしまった悲劇です。

こどもエコすまい支援事業の着工日や契約日のルールを緩和するだけで問題は解決すると思うのですが・・・

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
制度設計ミス?最大100万円「こどもエコすまい支援事業」が創設も「こどもみらい住宅支援」の予算終了で狭間世代大量発生。
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