裁判したから分かった敷金トラブルにならないために契約時、退去時にしておきたいチェックポイント

消費生活センターの相談のうち原状回復費などの敷金トラブルがその3~4割程度を占めているそうです。
また、少額訴訟の3分の1が退去時にかかる原状回復費などの敷金トラブルだそう。
多くの方が泣き寝入りしたり、そもそもボラれてることに気づいていないので、相談したり、訴訟までなっているのは氷山の一角なのにです。
それだけ昔からの慣習もあり、悪どい大家、不動産屋、管理会社が多いんですよ。
私も敷金トラブルに巻き込まれ、下記のように敷金返還訴訟をして和解となりました。
今回はその際の後悔も踏まえて敷金トラブルとならないために契約時、入居時、退去時などにしておきたいチェックポイントをまとめておきます。
事前準備しておければトラブルにならないでしょうし、トラブルになっても裁判で勝てる確率はかなり上がるはずですよ。

敷金の前提知識

まずは敷金の前提知識から見ていきましょう。

敷金とは保証金のようなもので、借り主が家賃等を支払えなくなったときのために大家が入居時に預かるお金のことです。

金額はアパートやマンションにより決められており、なし〜家賃の3ヶ月分くらいが相場ですね。

会社が借りる場合などだと半年〜1年分くらい取るケースもあります。

ただし、この敷金は不動産業界の慣習にすぎず、法律で定められているものではありませんでした。

それもあり、トラブルが非常に多いお金なんですよ。

2020年4月に民法が改正

そのため、2020年4月から民法が改正されています。

法律に敷金の定義等が定められたのです。

なお、改正前に契約をしたものは、改正後の法律の適用外です。

しかし、国土交通省が、民間賃貸住宅のトラブルを未然に防止する観点から、退去時の原状回復の考え方について一般的な基準をとりまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方に沿って改正されていますので、基本的な敷金の考え方はそれ以前契約の場合でも同じで構わないと思われます。

ですので今回は2020年4月からの民法が改正された内容に基づいて敷金のポイントについて見ておきましょう。

なお、法改正の詳細を知りたい方はこちらの記事で解説しております。

ちなみに2020年以降もトラブルが減っていませんので、消費者が知らないことをいいことにぼったくってる不動産や大家が未だに多いってことです。

正直不動産でもこのあたりの闇が書かれていましたね。

敷金の定義

まずは敷金の定義です。

敷金はいままで法律に明記されているものではなかったため、地域や不動産屋、大家によって名称が違うケースも多かったんですよ、「礼金」、「権利金」、「保証金」などですね。

2020年4月1日以降は名称は関係なく賃料の担保目的ならば敷金として定義されることになります。

借りるときにこのお金はなんの目的なのかを明確化しておくと後々のトラブル回避に繋がるかもしれませんね。

敷金の返還時期

また、敷金の返還時期についても明確化されています。

賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき



敷金の返還範囲

合わせて敷金の返還の範囲も明確化されました。

敷金の返還範囲
敷金の返還範囲

出所:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」より

払った敷金から未払い債務額を引いたものが返還されると明記されました。

未払い債務額とは損害賠償、未払いの賃料、原状回復費用などがそれにあたります。

ちゃんと賃料を払っていて原状回復負担分がないならば全額返ってくるってことですね。

原状回復の考え方

一番トラブルが多い原状回復についての考え方についても明確化されました。

賃借物に損傷が生じた場合には、原則として賃借人は原状回復の義務を負うが、通常損耗(賃借物 の通常の使用によって生じた損耗)や経年変化についてはその義務を負わない
つまり、普通に使っている分については借り主は原状回復分は負担しなくてよいぞってことですね。
原状回復というと入るときの状況に戻すというイメージを持たれている方も多いですが、そうではありません。
あくまで普通に使っていて生じた損耗(通常損耗)、年月の経過による損耗・毀損(経年変化)については、家賃に含まれていますので借り主側に原状回復義務はないのです。
例えばわかりやすい例で言えば壁のクロスなどは、6年が耐用年数なので6年経つと減価償却費(経年劣化分)を差し引くと1円の価値しかありません。
ですから6年以上住んでいて壁クロスの汚れなどを原状回復しろと言われても、借り主側は価値が1円のものの負担をすれば良いだけです。
原状回復の考え方
出典:国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料
私がした裁判でも裁判官が言っていましたが、敷金を返すのが原則です。
敷金を返還しないなら、通常損耗や経年変化を超えた故意・過失、善管注意義務違反等によるものであると
大家側に
客観的な証拠や根拠を示す
説明責任がある
との考え方になります。




敷金トラブルとならないための契約時のチェックポイント

次に契約時や入居時のポイントを見てみましょう。

このあたりは私も裁判を通じて後悔が多かったですね。

特に契約時の言った言わない・・・

言った言わないを防ぐ

まず、契約時の約束事はすべて証拠に残すことをおすすめします。

重要事項説明書賃貸借契約書に極力盛り込んでもらうのが確実です。

それが難しいような話も議事録等を作成して、サインしてもらうなどの文章化、録音、録画などをすると良いでしょう。

私の裁判のケースでも契約時には聞いていたのに契約書に盛り込まれていなかったため、そんなの知らないとシラを切られたことが複数ありました。

裁判になれば証拠があるかないかが全てです。

証拠がなければ口約束はなかったことにされてしまうんですよ。

なお、録音や録画をする場合には相手に宣言をした上で、その承諾シーンも残るようにするようにしましょう。

特約や特記条項に注意

また、賃貸借契約書に変な特約や特記条項が入っていないかもご注意ください。

うちも和解をしましたが、クリーニング費用については完全こちら持ちとなってしまいました。

それは契約書にクリーニング費用についての特約が含まれており、それは有効と裁判官が判断したことに起因します。

中にはかなり借主に不利な酷い特約が入っていることもありえますのでしっかり確認しましょう。

特約等が有効とされてしまうと、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の内容よりも優先されるんですよ。

ただし、「消費者契約法10条」で借主にとって著しく不利な特約の場合は無効になるなんて判例があります。

消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする

また、よくある通常損耗分も借り主負担にする特約については、最高裁の判決(最高裁平成17年12月16日判決)で下記のような判断となっていますから、特約や特記条項があってもその有効性を戦えないこともないですけどね。

賃借人が補修費用を負担すること、及びその対象となる通常損耗の範囲を明示すること、これに加えて具体的な金額についても認識できるものであることが必要
特記事項に範囲や金額が具体的に明記されてなければ、この判決と同じ判断がされる可能性は高くなるでしょう。

ペット可物件なら家賃上乗せがあるか

ペット可物件であるならペットを買う場合の家賃上乗せがあるのかを確認しておきましょう。

ペットを飼う場合の家賃の上乗せ(近隣の同レベルの物件と比較して高いなど)がある場合、ペットによる傷は家賃に含まれ通常損耗として扱われるという判例もあります。

その証拠を残しておくことも重要ですね。



敷金トラブルとならないための入居時、入居後のチェックポイント

次は入居時や入居後のポイントです。

写真を取りまくろう

次に入居時の写真を取りまくりましょう。(画質が良ければ動画でも可)

元からあった傷などがある場合は、この証拠を残しておかないとシラを切られます。

その写真を大家や管理会社に提出して元からあった傷と認識してもらっておくことも必要です。

ここの点はうちもやっていたので、はじめからあった傷についてはさすがに請求してきませんでしたね。

また、写真を取る場合は日付、場所がわかるように取るのもポイントです。

iPhoneなどで設定を変えてなければ自然と残ってきますけどね。

日付や場所は証拠とするなら必要な要素です。

傷がつきにくいようにしておく

入居後は傷等がつきにくいように生活することも大事です。

とくに動物を飼っている場合は対策しておくか、していないかで大きな差がでますね。

猫なら爪とぎは必須でしょう。

クレーム履歴も残しておこう

また、入居後のクレームや修理を入れた履歴も残しておくとよいでしょう。

こちらも証拠がないと知らないとシラを切られます・・・

私の裁判でも「そんな話はない」と嘘をつかれました笑

電話ではなくメール等の証拠が残る媒体を使うのがおすすめですね。

書類は残しておく

もう一つ大きなポイントはもらった書類は関係なさそうなものも含めて保存をしておくということです。

スキャナー等があれば電子データで保存しても良いでしょう。

うちが裁判したときもスキャナーは大活躍でしたね。

裁判となれば意外な書類で役に立つことがあるんですよ。

うちの裁判のケースでも被告の嘘をちょっとした書類で立証ができました。

相手もそんな書類を保存しているなんて思ってもいなかったんでしょうね。

その書類は一般的なことを書いてただけで・・・とか無理やりな言い訳をしていました笑

裁判は裁判官の心象がどうなのかで決まる部分もあります。

相手の嘘やデマカセを立証する証拠があるとかなり有利ですね。




敷金トラブルとならないための退去時のチェックポイント

最後は退去時のポイントです。

写真をとっておく

まず、退去立ち合いの前に写真を取りまくりましょう。(画質が良ければ動画でも可)

大家や管理会社に悪意があれば、故意に傷をつけたり、深くしたり、傷を強調した証拠を取られかねません。

また、他の物件の写真を証拠として使われる可能性すらあります。

それらを防ぐためにこちらも証拠をもっておくことも必要です。

うちはこれをやっていなかったのはかなり後悔しました。

こちらの認識のない傷の写真を出されても本当かどうかわからないんですよ。

また、かなり時間かけて掃除したのに

クリーナーを掛ける程度の掃除もしていない
なんて裁判提出の準備書面に書かれたんですよ。
また、
おびただしい傷があり
なんて誇張した主張もしてきました。
こちらが証拠出せないだろうと踏んでイメージ戦略で適当な嘘を書いたんでしょうね・・・
証拠を残しておくことで、裁判になっても相手の嘘に対抗することが可能となります。

退去立ち合い時

退去立ち合いも同様です。

できるだけ言った言わないとならないための証拠を残しておきましょう

録画、録音するのが一番良いでしょうね。

それが難しいようなら議事録等を作成して、サインしてもらうなどの文章化しておくのも有効です。

うちは録音はしていましたが、その承諾をしていなかったために証拠として使いにくくなってしまいました。

証拠として使うことを考えると録画や録音をすることを承諾するシーンも残しておくと良いでしょう。

さらに退去立会い時に指摘しないものは認めないと宣言して、お互いにしっかり確認するようにすると後で揉めにくくなると思います。

退去立会いの前に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を読み込んでおくとよいでしょう。

また、退去立会いのタイミングや傷の内容によっては火災保険の特約などで治せるものもあります。

そのあたりも退去立会い時に話し合っておくと良いでしょう。

原状回復の金額が妥当か

あとは提示された原状回復の箇所や金額が妥当かどうかの確認です。

まず、前述したように原状回復の借主側負担となるのは通常損耗や経年劣化を超えた故意・過失、善管注意義務違反等の部分です。

それ以外は負担義務はありませんのでそのチェックが必要です。

また、故意・過失、善管注意義務違反等がありこちらの負担がある場合でもその金額にご注意ください。

こちらが相場をわからないだろうと、ボッタクリ価格を提示してくることが多いんですよ。

一式表記でなく、具体的な作業内容や単価まで明記させるようにしましょう。

知り合いに建設業者などがいれば相見積もりをしてもらっても良いかもしれません。

うちの場合も裁判所が算定した価格に修正してもらったらかなり低くなりましたね。

それだけボッタクリ価格になっていたということです。

トラブルになったら

ここまでしてもトラブルになることもあるでしょう。

その場合、国民生活センターなどに相談してアドバイスをもらうのも良いでしょう。

おそらくそこでもアドバイスいただけると思いますが、私がしたように

異議を申し出

詳細な説明を求める

交渉

内容証明を送る

少額訴訟

って感じが一般的な交渉の流れですね。

うちの場合、直近の退去時は少額訴訟ではなく通常裁判まで行ってしまいましたが、その前は下記の記事に書いたように家賃3ヶ月分の敷金が返ってこないという提示を受けたものの、ちょっと交渉しただけで全額返ってきました。

多くの場合は大家側もぼったくりなら勝ち目は薄いですからどこかで妥協してくるんですよ。

たとえ少額訴訟まで行っても費用面は弁護士等を使わない場合、収入印紙代と切手代だけですから1万円前後です。




まとめ

今回は「裁判したから分かる敷金トラブルにならないために契約時、退去時にしておきたいチェックポイント」と題して敷金トラブルの未然防止についてみてきました。

今回、敷金裁判をしてわかったことを盛り込んでいますので、これらを参考に対策してもらえばトラブルの未然防止につながるはずです。

ぜひ実践してみてくださいね。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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