年21.3%の定期預金というかなりインパクトのあるキャンペーンが始まります。
なぜSBI新生銀行はここまでの金利を出すのか。
その答えは、2027年に始まるこどもNISAにあります。
今回はSBI新生銀行の子ども向け定期預金とその狙い。
こどもNISAについて考えてみましょう。
こどもNISA向けの囲い込みが始まっている
夏の終わりに、証券会社からの案内が急に増えたと感じている方はいませんか。
マネックス証券は2026年8月17日、「こどもNISA決定記念!総額100万ptプレゼントキャンペーン」を開始しました。
クイズに正解した方から抽選で1,000名にdポイント1,000ポイント。
同社の口座を持っていない人でも応募できます。
同社は今秋から口座開設の先行受付を始めると告知しています。
その3日前の8月14日には、三菱UFJフィナンシャル・グループが、銀行・信託銀行・モルガン・スタンレー証券・eスマート証券の4社でこどもNISAを取り扱うと発表しました。
口座開設手続きの受付開始は2026年10月から。
親子で銀行口座やNISAを利用するとおトクになるキャンペーンも予定しているとしています。
そして冒頭で紹介したSBI証券+SBI新生銀行の子ども名義の定期預金に年21.3%分の金利を上乗せするキャンペーン。
報道されている内容は次のとおりです。
| 項目 | キャンペーン内容 |
|---|---|
| 対象 | 2027年1月1日時点で17歳以下 |
| 預金名義 | 子ども本人 |
| 預入期間 | 1カ月 |
| 預入上限 | 60万円 |
| 通常金利 | 年0.5% |
| 上乗せ | 年21.3%分 |
| 主な条件 | SBI証券口座を保有し、SBI新生銀行口座と連携 |
| 60万円預入時の上乗せ利息 | 税引後約8,370円 |
制度が始まるのは2027年1月1日。まだ4か月あまり先です。
それなのに、なぜ今なのか。
答えは単純で、NISA口座は1人につき1つの金融機関でしか開設できないからです。
先に押さえた金融機関が、その子どもの資産形成の入口を握る
しかも18歳で成年NISAへ自動移行するので、うまくいけば数十年単位の顧客になります。
だから制度開始前から獲りにいく。
金融機関の行動としては、きわめて合理的です。
問題は、こちら側がその合理性に巻き込まれる必要があるのか、という点です。
ここで先に結論を書きます。
こどもNISAは教育費としては使いにくい。子どもの「人生の初期資本」。
制度の中身を読み込むと、教育費を貯める器としては使いにくい設計になっているのがわかると思います。
そして多くの家庭にとって、教育費準備の最適解は、いまも親自身のNISAなんですよ。
その根拠を、制度の骨格から順に見ていきます。
こどもNISAとは何か
まずは基本的なこどもNISAの概要をみていきましょう。
いつから始まるのか
2027年1月1日開始です。2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」(財務省)に盛り込まれ、2026年度税制改正法の成立をもって確定しました。
「こどもNISA」は報道や金融機関が使う通称で、法律上の正式名称ではありません。
制度の実質は、NISA口座を開設できる年齢制限の撤廃です。
これまで18歳以上に限られていた入口が、0歳まで下りてくる。
そう捉えると理解が早くなります。
誰が、いくらまで使えるのか
対象は0〜17歳。親権者等が子ども名義で口座を開設します。
年間投資限度額は60万円
月額なら5万円です。
非課税保有限度額は600万円
現行の成年NISAが年360万円・生涯1,800万円ですから、
その3分の1の規模になります。
ここで見落とされがちな計算があります。
年60万円を使い切ると、600万円の枠はちょうど10年で埋まる。
0歳から始めれば9歳で満枠に達し、その後の9年間は新規買付ができません。
「18年かけてコツコツ積み立てる制度」というイメージで語られがちですが、フルに使うなら実質10年の制度なんです。
何が買えるのか
つみたて投資枠の対象商品のみ。
金融庁の基準を満たした投資信託・ETFに限られ、個別株は買えません。
投資手法も定時・定額の買付に限定されます。
祖父母から100万円もらったので今年まとめて投資する、という使い方は制度上できません。
引き出しはいつできるのか
制度の核心はここです。
- 中学校入学年より前:災害等で家屋に被害が出た場合など、限定的な事由のみ。所轄税務署長の確認を受けたうえで、金融機関へ書面を提出します。
- 中学校入学年以降:上記に加えて、口座名義人である子ども本人の教育費や生活費に使うための払出しが認められます。この場合も「特定累積投資上場株式等移管等依頼書」の提出が必要です。
案内の表現には各社で幅がありますので、申込時に確認してください。
実務で効いてくるのは、引き出しに「書類」と「時間」がかかる点です。
大学の入学金は、合格発表から振込期限まで2週間を切ることも珍しくありません。
その時に書類の郵送待ちでは間に合いません。
使うと決めているなら、必要になる数か月前から動く段取りが要ります。
18歳になったらどうなるのか
自動的に本人の成年NISAのつみたて投資枠へ移行します。
非課税保有期間は無期限なので、放置しても課税されません。
子どもは18歳で、自分名義の運用資産と、その後も使えるNISA口座を手にします。
親の口座に戻ってくるわけではない。
制度の出口は、子ども本人に向いているんです。
ジュニアNISAとこどもNISAの違い
2023年末で新規投資が終わったジュニアNISAを覚えている方も多いはずです。
あの制度が伸び悩んだ理由を振り返ると、こどもNISAの設計思想が見えてきます。
| 項目 | ジュニアNISA(〜2023年) | こどもNISA(2027年〜) |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 80万円 | 60万円 |
| 非課税保有限度額 | 実質400万円(80万円×5年) | 600万円 |
| 非課税保有期間 | 原則5年 | 無期限 |
| 投資対象 | 上場株式・投資信託等 | つみたて投資枠対象の投資信託等のみ |
| 投資方法 | 一括も可 | 定時・定額に限定 |
| 払出し | 18歳まで原則不可 | 中学校入学年以降は教育費等で可 |
ジュニアNISAの致命傷は、非課税期間5年と払出し制限18歳の組み合わせでした。
5年で非課税期間が切れるのに、18歳まで出せない。制度の時間軸が内部で矛盾していたわけです。
こどもNISAは非課税期間を無期限にし、払出し制限を中学校入学年以降で緩めました。
矛盾は解消されています。
ここは素直に評価していい点です。
ただし年間枠は80万円から60万円へ縮小し、投資対象も絞られ、一括投資もできなくなりました。
「使い勝手が良くなった」という説明は半分だけ正しくて、自由度という意味では狭まった面もあります。
こどもNISAのデメリット
検索結果を見ると、多くの記事が「元本保証がない」「引き出し制限がある」の2点でデメリットを締めています。
それは確かにデメリットと言えるでしょうが、実務で問題になるのは、その先です。
必要なときに元本割れする可能性
投資信託は値下がりします。
大学入学直前に相場が下落し、600万円の投資元本が480万円になっている可能性も否定できません。
教育費として使うなら、高校入学後など、使う3年から5年前から必要額を少しずつ預金へ移す方法があります。
一度に全部売却せず、毎年必要額の一部を現金化すれば、大学入学直前の暴落に巻き込まれる範囲を抑えられます。
世帯の非課税枠は増えるが、家計の余力は増えない
「子ども1人につき600万円、世帯の枠が広がる」という説明はその通りです。
夫婦2人+子ども2人なら世帯合計で最大4,800万円。
けれども枠が広がっても、投資に回せる現金が増えるわけではありません。
金融庁の調査では、2025年12月末時点のNISA口座数は2,825万5,664口座、累計買付額は約71.4兆円でした。
単純に割ると1口座あたり約253万円。
生涯投資枠1,800万円に対して、平均では1割台の使用にとどまります。
多くの家庭に足りないのは枠ではなく、資金なのです。
18歳以降は子どもが管理する
18歳以降、その資産は子ども本人のものです。
親が「これは学費のつもりだった」と思っていても、成人した本人が別の使い道を選ぶ可能性はあります。
遊びに使ってしまうかもしれません。
しかし、それを止める仕組みは制度側にありません。
教育費として確実に押さえたいなら、親名義で持つほうが確実です。
損失を他の利益と相殺できない
NISA口座で損失が出ても、親や子どもの特定口座で得た利益との損益通算はできません。
損失の繰越控除も対象外です。
国税庁も、NISA口座内の譲渡損失は税務上なかったものとみなすと説明しています。
利益が非課税になる代わりに、損失についても税務上の救済がありません。
12歳までは自由に引き出せない
12歳未満での払出しは、災害、扶養者の離職、一定額を超える医療費負担など、法律上の例外に限られます。
12歳以降も、教育費や生活費など子どものために使うことが条件です。
家計の緊急予備費をこどもNISAへ入れてはいけません。
こどもNISAと贈与税の注意点
次にこどもNISAと贈与税の関係をみていきましょう。
まず結論から
通常の使い方なら、贈与税はかからない
暦年課税の基礎控除は年110万円。
こどもNISAの年間投資限度額は60万円ですから、他に贈与がなければ基礎控除の範囲に収まります。
ただし注意点が3つあります。
注意点1:他の贈与と合算される
基礎控除110万円は、その年に受け取った贈与の合計にかかる枠です。
祖父母から現金80万円をもらい、さらに親が60万円をこどもNISAに入れれば合計140万円。
超過分に贈与税がかかり、翌年2月1日から3月15日までに申告が必要になります。
注意点2:相続時の持ち戻しは7年
2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算(相続財産への持ち戻し)の対象期間が3年から7年へ段階的に延長されました。
延長された4年分については、総額から100万円までを加算しない緩和措置があります。
祖父母世代から孫へ資金を移すなら、この7年ルールが効いてきます。早く始めるほど有利という構図は変わりません。
注意点3:名義預金と認定されるリスク
実務ではこちらのほうが厄介です。
名義は子ども。
でも通帳も印鑑も親が管理し、子どもは口座の存在すら知らない。
この状態だと、税務上「実質的に親の財産」と判断されることがあります。
相続が発生したとき、子ども名義の資産が親の相続財産に含まれてしまうケースです。
こどもNISAは、この論点にひとつの答えを用意しています。
中学校入学年以降の払出しには「子どもが引き出しに同意していること」が条件になる。
制度が、子ども本人の認知を前提に組まれているわけです。
裏を返せば、口座の存在を子どもに伝え、記録を残し、本人の意思を確認するプロセスを踏むこと自体が、名義預金リスクへの対処になります。
贈与契約書を作る、年に一度は残高を一緒に確認する。この手間を面倒がらないでください。
こどもNISAで教育費を備えるってあり?
ここからが実践編です。
こどもNISAで教育費を備えるってあり?かを判断する方法です。
| 財布の名前 | 中身 | 使う時期 | 置き場所 | |
|---|---|---|---|---|
| ① | 動かせない財布 | 中学・高校の学費、塾代、受験費用 | 0〜10年以内 | 預貯金、個人向け国債 |
| ② | 親が握る財布 | 大学の入学金、初年度納付金 | 10〜18年後 | 親のNISA(つみたて投資枠) |
| ③ | 子に渡す財布 | 子ども本人の将来資本 | 18年後以降 | こどもNISA |
ルールはひとつだけ。③に手をつけるのは、①と②が埋まってからです。
順番を逆にすると、いちばん動かせないお金が、いちばん動かしにくい制度に入ることになる。
これが教育費準備でいちばんよくある事故なんですよ。
②に親のNISAを充てる理由も明快です。
親名義なら、いつでも、どんな理由でも売却できます。書類も税務署の確認も要りません。
生涯投資枠1,800万円のうち平均で1割台しか使われていない現状を踏まえると、多くの家庭で②の器はまだ十分に空いています。
では③のこどもNISAが向くのは、どんな家庭か。次の3つがすべてYESなら、使う価値があります。
- 夫婦の成年NISA枠(合計3,600万円)を使い切る見込みがある
- 教育費とは別に、子ども本人に渡す資産をつくりたい
- 18歳まで引き出さなくても家計が回る
ひとつでもNOがあるなら、まず親のNISAを埋めるほうが合理的です。
「こどもNISAで教育費を備えるってあり?」への私の答え
ありかなしかでいえば、「ありだが、優先順位は3番目」というのが私の答えです。
制度としては良くできています。
非課税期間は無期限、払出し制限も現実的な水準まで緩みました。
ただ教育費という用途に限れば、親のNISAという上位互換がすでに手元にある家庭がほとんどです。
こどもNISAの真価は別のところにあります。
18歳になった子どもが、自分名義の運用資産と、そこに至る積立の記録を同時に受け取る。
値動きを見てきた経験と、複利が効いた実物を手にする。
金融教育の教材としては、どんな教科書よりも強いです。
キャンペーンとの正しい付き合い方
冒頭のニュースに戻ります。
ポイントがもらえるのは結構なことです。
問題は、キャンペーンが「金融機関を決める理由」になってしまう場合です。
NISA口座は1人につき1金融機関。
現行NISAでは年単位で金融機関を変更できますが、手続きには手間がかかりますし、変更前に買い付けた資産は元の金融機関に残ります。
数千円分のポイントのために、その後10年以上使う口座を決めるのは順序が逆でしょう。
金融機関を選ぶ基準は、この4つで十分です。
- 取扱商品:低コストのインデックスファンドが揃っているか
- 最低積立額:月100円から積み立てられるか(年60万円の枠を18年で均すなら月2万円台の設計になります)
- クレカ積立の可否と還元率:未成年口座で使えるかは各社で異なります
- 親の口座と同じ会社にするか:家族単位で管理する手間が減ります
制度開始は2027年1月。
先行受付が始まるのは10月以降です。
この4つを比べる時間は、まだ十分にあります。
その点を踏まえても冒頭のキャンペーンのSBI新生銀行とSBI証券はおすすめなんですけどね。
よくある質問
- こどもNISAの口座開設はいつから受け付けていますか?
-
制度開始は2027年1月1日ですが、金融機関の先行受付はすでに動き出しています。
三菱UFJフィナンシャル・グループは2026年10月から口座開設手続きの受付を開始すると発表し、マネックス証券も今秋からの先行受付を告知しています。
慌てる必要はありませんが、開始と同時に積立を始めたい方は秋以降に手続きしておくとスムーズです。
- こどもNISAに贈与税はかかりますか?
-
年間投資限度額60万円は暦年課税の基礎控除110万円の範囲内ですので、他に贈与がなければ贈与税はかかりません。
ただし祖父母からの現金贈与などと合算して110万円を超えると課税対象になります。
また、口座の存在を子どもに知らせず親が完全に管理していると、名義預金として親の財産と扱われる可能性があります。
- こどもNISAのデメリットは何ですか?
-
最大の難点は払出し制限です。
中学校入学年より前は災害等の限定的な事由でしか引き出せず、それ以降も教育費・生活費目的で書類提出が必要になります。
加えて非課税保有限度額は600万円で、高校入学から大学卒業までの教育費用約942.5万円を単独ではカバーできません。
18歳以降は資産が子ども本人のものになる点も、押さえておきたい特徴です。
- 年21.3%なら60万円が1年で12万円以上増えますか?
-
増えません。
対象は1カ月物の定期預金です。
60万円を預けた場合の上乗せ利息は、税引後約8,370円と報じられています。
年率だけでなく、適用期間と受取実額を確認してください。
- 定期預金の60万円をこどもNISAへ移すと再び贈与になりますか?
-
すでに子どもの資産として成立している60万円を、子ども名義の預金からNISAへ移すだけなら、通常は新たな贈与ではありません。
親が別資金を追加する場合は、年間の贈与合計額に注意が必要です。
まとめ
長く書きましたが、今日やっていただきたいのは1つだけです。
ご自身とパートナーのNISA口座の「現在の残高」と「使った枠の累計」を確認してください。
証券会社のマイページで、数分あれば見られます。
生涯投資枠1,800万円に対してどこまで使っているか。この数字が分かれば、こどもNISAを使うべきかどうかは自動的に決まります。
半分も埋まっていないなら、答えは「まず親のNISA」です。
制度は毎年変わります。
2024年に新NISAが始まり、同じ年に児童手当が拡充され、2026年には高校授業料の所得制限が撤廃され、2027年にはこどもNISAが加わる。
この速さに家計の側が完璧についていくのは無理です。
だから私は、制度を追いかけるのではなく、家計の側に「原則」を持つことをおすすめしています。
動かせないお金は動かさない。
子どもに渡すつもりのお金だけを、子ども名義に置く。
この2つを守れば、次にどんな制度やキャンペーンが来ても判断できます。
キャンペーンは、制度を知るきっかけとしては優秀です。
口座を決める理由としては、少し弱い。その線引きさえできていれば、この秋の情報量に振り回されることはありません。
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