先日、都市銀行から1通の通知が届きました。
学生時代のアルバイトで作らされた、もう何年も触っていない口座でした。
残高は数十万円。
この口座の存在をすっかり忘れていたので、ある意味ラッキーな出来事でした。。。
今回は未利用口座管理手数料についてみていきます。
なぜ今、銀行はあなたの「眠った口座」に手数料を課すのか
未利用口座管理手数料とは、一定期間取引のない普通預金口座に対して、銀行が年1,000円〜1,320円程度を徴収する仕組みです。
「使ってないだけで金を取るのか」と憤る方もいるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。銀行側の事情を知ると、見え方が変わります。
銀行が抱える「ゴースト口座」問題
日本には膨大な数の「使われていない普通預金口座」が存在します。
三菱UFJ銀行が公式に説明している通り、未利用口座管理手数料は「不正口座の作成・利用の防止や口座の維持・管理に係る費用の一部に充当するため」のものです。
つまり、銀行にとって眠った口座は「コストを生むだけの存在」になってしまったのです。
ここで注目すべきは、
この手数料が登場した背景です。
マイナス金利政策で銀行収益が悪化したという経済的事情だけではありません。
むしろ重要なのは、後述する「口座の不正利用」が社会問題化したことなのです。
未利用口座管理手数料の通知が来たらどうするか
未利用口座管理手数料の通知が来た場合、慌てる必要はありません。
多くの銀行では、通知後すぐに手数料が引き落とされるわけではありません。
三菱UFJ銀行は、事前案内後、一定期間3ヶ月経過後も利用または解約の手続きがない場合に年間1,320円の手数料を引き落とすとしています。
三井住友銀行も、案内から約3ヶ月以内に新たに入金、振込、払戻し等の取引をするか、解約すれば、未利用口座管理手数料はかからないと説明しています。
PayPay銀行は、未利用口座管理手数料の対象口座に対し、手数料引き落としの3ヶ月前にメールで知らせ、ログインや入出金をすることで対象外となると説明しています。
通知が来たら、やることは3つです。
1つ目は、本物の通知か確認することです。
メールに記載されたリンクを安易にクリックせず、公式アプリや公式サイトからログインして確認しましょう。
未利用口座管理手数料というテーマは、フィッシング詐欺にも悪用されやすいです。
2つ目は、残高を確認することです。
数千円残っているなら、手数料で消える前に出金または送金した方がよいです。
3つ目は、使うか解約するかを決めることです。
この時点で「また使うかも」と思うだけなら、おそらく使いません。
明確な用途がなければ解約候補です。
主要銀行の未利用口座管理手数料 一覧(2026年5月時点)
公表されている主な銀行の未利用口座管理手数料を見ておきましょう。
| 銀行名 | 手数料(税込) | 対象期間 | 主な免除条件 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 年1,320円 | 2021年7月1日以降に開設、2年以上未利用 | 預かり金融資産1円以上、借入あり |
| 三井住友銀行 | 年1,100円 | 2年以上未利用 | 同一支店内に定期・外貨・投信等あり、借入あり |
| りそな銀行 | 年1,320円 | 2004年4月1日以降の新規開設口座で2年以上未利用 | 残高1万円以上、預かり金融資産1円以上、借入あり、りそなクラブ「パール」以上 |
| PayPay銀行 | 年1,320円 | 2年以上未利用 | ログインのみで対象外、定期・外貨・投信等あり、口座保有者18歳未満 |
| セブン銀行 | 年1,320円 | 最後の利用から2年以上経過した口座 | ログインや入出金で対象外にできる案内あり |
対象となるのはほとんどの銀行が2年以上未利用の場合。
ただし、預かり残高などで免除条件があり、クリアしていれば請求されません。
三菱UFJ銀行は、2021年7月以降開設で2年以上未利用の普通預金口座が対象で、事前案内後も利用または解約がない場合に年間1,320円が引き落とされます。
残高が手数料未満の場合は、残高を手数料の一部として引き落としたうえで同口座を解約し、口座残高を超えた負担はないと説明されています。
三井住友銀行は、対象口座について事前案内から約3ヶ月経過後も取引がない場合に、年間1,100円の未利用口座管理手数料を引き落とします。
残高が手数料額未満の場合は、口座残高を手数料の一部として扱い、原則として同口座を解約します。
りそな銀行は、残高が1万円以上の場合、同一支店に預かり金融資産が1円以上ある場合、借入がある場合などを対象外条件としています。
口座残高が1,320円に満たない場合は、残高を手数料の一部として引き落とし、口座を自動解約するとFAQで説明しています。
PayPay銀行は、2025年12月1日から2年以上利用のない個人・個人事業主口座に年1,320円の未利用口座管理手数料を新設しています。
特徴的なのは、ログインするだけで対象外となり、引き続き無料で利用できると案内されている点です。
セブン銀行は、最後の預入れや引出しから2年以上経過した口座を対象とし、残高1万円以上、ローンサービス契約、デビットサービス契約がある場合などは除外されます。
残高が未利用口座管理手数料額に満たない場合は残高全額を手数料に充当し、残高ゼロ円の未利用口座は解約すると説明しています
なお、この手数料はすでにJAバンク、信用金庫など全国の金融機関に広がっており、その導入金融機関のリストは年々増える一方です。
「残高なし」「残高不足」だとどうなる?
ここからが本題です。多くの方が誤解しているポイントを整理します。
残高ゼロでも"借金"にはならない
残高がないのに手数料を取られたら、マイナスになって借金扱いになるのでは?
そう不安に思う方も多いのですが、答えは「ノー」です。
りそな銀行の説明では、残高が手数料額(1,320円)に満たない場合、未利用口座確定日の翌月第5営業日に残高を手数料の一部として徴収し、口座は自動的に解約されます。
残高800円なら800円だけ取られて、口座は閉じられる。それ以上の請求は来ません。
三菱UFJ銀行も同様で、口座残高を超えた負担はないと明記しています。
つまり、最悪のケースでも「残高没収+強制解約」で終わるのです。借金になることはありません。
なお、10年放置すると休眠口座という扱いになりNPOなどで利用される形になります。

しかし、それで本当に終わりなのでしょうか?
ここで、多くの方が見落としている重要な論点があります。
「強制解約」とは、銀行から見れば「あなたとの関係を勝手に終わらせること」です。
これは一見、利用者にとって楽な処理に見えますが、実はそうではないのです。
なぜなら、解約された口座は再利用できないため、もしあとから「あの口座にお金が振り込まれていた」「公的給付の振込先として登録していた」ことに気づいても、もう手遅れだからです。
例えば、過去に登録した自動引き落とし、副業の振込先、忘れていたお祝い金や還付金。
これらが「強制解約された口座」を経由していた場合、あなたの知らないところで返金処理や宙ぶらりんの取引が発生している可能性があります。
衝撃の事実:未利用口座管理手数料は"序章"にすぎない
ここからが、この記事で最もお伝えしたい部分です。
未利用口座管理手数料の本当の意味は、節約の問題ではありません。
それは、銀行があなたに送る「最後の警告サイン」なのです。
あなたの眠った口座が、犯罪の道具になる現実
大阪府警察のサイトには、こう明記されています。
使わなくなった口座は銀行等へ返納しましょう
なぜ警察がこんなことを呼びかけているのでしょうか?
理由は、銀行口座の売買・譲渡が、振り込め詐欺や闇バイト、マネーロンダリングといった犯罪の温床になっているからです。
三菱UFJ銀行のセキュリティ解説によると、売買された口座は「振り込め詐欺」「SNS型投資詐欺などの特殊詐欺」「資金洗浄」「海外オンラインカジノの資金収納代行」といった犯罪に悪用されます。
そして恐ろしいのは、自分が売ったわけでなくても、被害に巻き込まれるケースが増えていることです。
犯罪に使われた事例
こんな話もあります。
使っていない銀行口座情報を知り合いに渡したところ、その口座が投資詐欺の被害金の振込先として利用され、詐欺罪の従犯として警察に逮捕されたという報道があります。
「単に情報を教えただけ」でも、結果として詐欺の片棒を担いだことになり、逮捕されてしまったのです。
これは口座が悪用された事例ですが、放置口座のリスクも本質的に同じ構造です。
あなたが管理していない口座は、いつフィッシング、不正アクセス、本人なりすましの標的にされるか分かりません。
「銀行の警告」を見逃すと何が起きるか
ここで思考実験をしてみましょう。
あなたの眠った口座を、悪意ある第三者が何らかの方法で手に入れたとします(カードの紛失、住所変更を装った再発行依頼、など)。
その口座が振り込め詐欺の振込先として使われた場合、警察はまずあなたを呼びます。
「あなたの口座にお金が入りましたね?」と。
無実を証明するのは可能でしょう。
しかし、その間あなたは何をするのか。
仕事を休み、警察署に通い、弁護士に相談し、家族に説明する。失われる時間と精神的な負担は、年1,320円どころの話ではありません。
つまり、未利用口座管理手数料の通知は、銀行が「この口座、危ないから動いてください」とあなたに送る、最後のチャンスかもしれないのです。
「未利用口座管理手数料 回避」の4つの王道
それでは具体的な対策を整理します。
解約する(最強かつ最善)
最もリスクが少なく、最も確実な対策は「解約」です。
手数料も取られず、犯罪リスクもゼロになります。
「でも、手続きが面倒…」と思いがちですが、最近は本人確認書類があれば印鑑なしで解約できる銀行も増えています。
例えばもみじ銀行は、残高1万円未満の普通預金口座について、顔写真付きの本人確認資料の提示で印鑑不要としています。
平日の昼休みに、最寄りの支店へ足を運ぶ。
それだけで「年1,320円の節約」と「将来の犯罪リスク回避」が同時に手に入ります。
少額の金融資産を残して免除条件をクリア
「思い出があって解約したくない」「将来使うかもしれない」という口座については、免除条件をクリアする方法があります。
ほとんどの銀行で、定期預金、外貨預金、投資信託、保険、国債のいずれかが1円以上あれば対象外になります。
私自身、一行だけ「数十円分の外貨預金が残っている口座」があり、未利用口座管理手数料の請求は来ていません。
この方法は使えます。
ただし、注意点もあります。
外貨預金には為替手数料がかかりますし、定期預金も解約時に手間がかかります。
「免除のためだけに金融商品を持つ」のは本末転倒なので、すでに持っているものを活かす形が現実的でしょう。
入金または出金する
多くの銀行では、未利用の判定において、利息の入金や手数料の引落しは利用に含まれません。
一方で、通常の預入れや払戻しは利用として扱われることが多いです。
たとえば三菱UFJ銀行は、再度預入れまたは引出しをするか、解約すると未利用口座管理手数料はかからないと説明しています。
つまり、入金または出金をすれば手数料は免除されるのです。
残高1万円以上をキープする
最もシンプルなのは、残高を1万円以上に保つことです。
多くの地銀・メガバンクで採用されている免除条件です。
ただし、これも罠があります。
使わない口座に1万円を置いておくこと自体が、資金効率を下げるからです。
1万円という現金が「使えない状態でロックされる」のと同じってことですね。
投資家であれば、1万円も立派な運用原資です。
新NISAで投資信託を買ってもよいですし、高金利の普通預金に移してもよいでしょう。
10口座あれば10万円が滞留することになります。
機会費用を考えると、必ずしも合理的とは言えません。
私が一番おすすめするのは…
率直に申し上げて、解約一択です。
なぜか。
3つの理由があります。
第一に、犯罪リスクを根本から断てるからです。
存在しない口座は、悪用されません。
第二に、口座管理の認知負荷から解放されるからです。
「どこに何の口座があるか分からない」状態は、相続時に家族を苦しめる最大の原因の一つです。
第三に、10年以上取引のない口座は「休眠預金」として、預金保険機構に移管され、最終的にNPO法人の活動などに充てられるという制度があります。
預金保険機構の制度では引き出し可能ですが、手続きは煩雑です。

銀行口座解約時の3つの注意点
ここまで「解約推奨」と書いてきましたが、解約にも注意しなければならない点があります。
信用情報には影響しない、しかし…
口座の解約自体は信用情報に何ら傷をつけません。
安心してください。
ただし、ローンやクレジットカードの引き落とし口座になっている場合は要注意です。
解約前に必ず引き落とし設定を確認し、別口座に切り替えてから解約する手順を守ってください。
これを怠ると、料金未納→信用情報に傷、というルートで被害が出ます。
給与振込指定口座は会社に確認を
未利用になっているのでよほど大丈夫だと思いますが、給与振込指定口座について確認しておきましょう。
変更するにしてもネット銀行は給与振込の対象外となっている会社もあります。
解約・変更前に、必ず勤務先の経理担当に確認しましょう。
マイナンバー連携口座は要確認
公金受取口座としてマイナンバーに登録した口座を解約すると、登録情報の更新が必要になります。
これを忘れると、給付金や還付金が宙に浮きます。
投資家、節約家ほど未利用口座に注意すべき理由
投資家や節約家の方は、一般の人より銀行口座が増えやすいです。
証券会社ごとに入金しやすい銀行が違う。
IPOの抽選資金用に複数口座を使う。
キャンペーン目的でネット銀行を作る。住宅ローンや外貨、クレジットカード、ポイント経済圏に合わせて口座を増やす。
これは合理的な行動です。
しかし、合理的だった口座も、時間が経つと役割を失います。
昔はIPO資金用だったけれど、今は使っていない。
昔はポイント還元が強かったけれど、今は改悪された。
昔は給与口座だったけれど、転職後は使っていない。
こうなると、口座は資産ではなく、棚卸しされていない在庫になります。
投資の世界では、不要なポジションを持ち続けることはリスクです。
銀行口座も同じです。
「いつか使うかも」と思って放置している口座は、実際には使わないことが多いです。
これは行動経済学でいう保有効果に近いものです。
人は、一度持ったものを手放すことに抵抗を感じます。
でも、使わない口座を持ち続けることで得られる利益は何でしょうか。
ほとんどありません。
一方で、手数料、管理負担、通知見落とし、不正利用、相続時の手続き増加というデメリットはあります。
ならば、口座にも「損切り」が必要です。
まとめ
未利用口座管理手数料は、単なる年1,320円の話ではありません。
それは、あなたのお金の管理が少しずつ複雑になっているサインです。
未利用口座に手数料を設ける銀行は珍しくなくなってきました。
条件は銀行ごとに違いますが、2年以上使っていない口座、残高が少ない口座、通知先が古い口座は注意が必要です。
残高なしなら、多くの銀行では口座が自動解約される方向の扱いが見られます。
ただし、中途半端な残高があると、そのお金が手数料として消える可能性があります。
だからこそ、今やるべきことは明確です。
使っている口座を残す。
使っていない口座を確認する。
残高を回収する。
不要なら解約する。
銀行口座は、たくさん持っているほど安心なのではありません。
自分で把握できている口座だけが、本当に使える口座です。
お金を増やすには、投資商品を選ぶ前に、お金の通り道を整えることも大切です。
未利用口座の整理は、地味です。
でも、こういう地味な整理こそ、長くお金を守るための第一歩なのです。

