人口2.9億人、平均年齢30歳前後、4年連続GDP成長率5%超。
そんな声が、ここ数年で一気に強くなりました。
しかし、過去10年のインドネシア株式市場のリターンを冷静に見ると、ある"不都合な事実"が浮かび上がります。
本記事では、日本からインドネシア株を買う具体的な方法と、人口ボーナス神話の死角を、最新データとともに整理していきます。
なぜ今、インドネシアが注目されるのか
まずは事実から押さえましょう。
ここで紹介する数字は、すべて公的機関の最新発表に基づくものです。
インドネシア中央統計庁(BPS)は2026年2月、2025年の年間実質GDP成長率を前年比5.11%と発表しました。
4年連続で5%を超え、2020年以降では、2022年の5.31%に次ぐ成長率です。
さらに先を見ると、2026年のGDP成長率については、政府が5.4%の目標を設定している中、インドネシア中央銀行(BI)は中央値5.3%と予測し、2027年には中央値5.5%の範囲で推移すると見込んでいると発表されています。
日本のGDP成長率がコンマ数%台で推移していることを考えると、5%超の経済成長というのは、まさに"別次元"の数字に映ります。
なぜこれだけ強い成長が続くのか。
理由はシンプルです。「人」がいる。そして「若い」。
国際連合のデータをもとにした分析によれば、2024年現在、人口ボーナス期にある国は、中国、インド、インドネシア、ベトナムとされています。
そして、インドネシアの「人口ボーナス期」は2030年代~2040年代まで続くとされています。
人口ボーナスとは、生産年齢人口(15~64歳)が、子どもや高齢者を大きく上回っている状態を指します。
働き手が多く、社会保障負担が軽い。だからこそ、内需が拡大し、投資が呼び込まれる。
これが「インドネシアは買い」と言われる最大の根拠です。
ここまでは、多くの記事が語っているストーリーです。
問題はここから先です。
参考:JETRO 2025年のGDP成長率は5.11%、4年連続で5%超に
インドネシア株を10年前に買っていたらどれだけ儲かった?
では問います。「過去10年、インドネシア株を持っていた日本人投資家は、どれだけ儲かったか?」
意外なことに、答えは「米国株や日本株にはるかに及ばない」です。
ジャカルタ総合指数(IHSG)は、2015年あたりから2025年までの10年間、現地通貨建てでも年率数%台の伸びにとどまっています。
円換算すると、ルピア安が利益を削り、トータルリターンはさらに小さくなる年もありました。
経済成長率が5%超なのに、なぜ株価はそこまで伸びないのか?
ここに、人口ボーナス神話の最大の死角があります。
経済成長=株価上昇ではない、という当たり前の事実です。
新興国は、たしかにGDPは伸びます。
しかし、上場企業の利益成長率と、国全体のGDP成長率は別物です。
GDPには、上場していない地場の中小企業、屋台、インフォーマル経済(非公式な経済活動)も含まれます。
インドネシアには、インフォーマル(零細・非公式)経済の比重が大きいという事情があり、そのため統計上の経済成長が、必ずしも上場企業の利益や株価に直結しないと指摘されています。
加えて、ルピア(インドネシア通貨)の為替変動も大きな要因です。
新興国通貨は、米国の金融政策や原油価格の動向で、数年単位で大きく揺れます。
GDPがドルベースで増えても、ルピア安が進めば、日本円で見たリターンは目減りします。
つまり、「人口ボーナス=株式市場の連勝確定」ではないのです。
ここを理解した上で、それでもなお投資する価値があるのか。
そこを冷静に判断するのが、この記事のゴールです。
インドネシア 経済成長の中身を分解する
ここから少し踏み込んで、インドネシアの成長エンジンを分解してみます。
投資判断に直結する論点なので、丁寧に追っていきます。
ジェトロのレポートによれば、2025年の支出項目別では、GDPの5割超を占める家計最終消費支出が4.98%増、政府支出が2.50%増、投資などを示す総固定資本形成は5.09%増でした。
注目すべきは、家計消費がGDPの5割超を占めているという点です。
これは中国(4割前後)よりも高く、内需依存型の経済構造であることを示しています。
産業別では、主要17業種のうち、16業種がプラス成長となった。
最も高い伸びを示したのは、その他サービスの9.93%増で、企業サービス(9.10%増)、運輸・倉庫(8.78%増)、情報・通信(8.35%増)が続いたとされています。
つまり、伸びているのはサービス業、情報通信、運輸といった"都市型・中間層型"の産業です。
この事実から、一つの仮説が立てられます。
インドネシアで儲かるのは、若年中間層の財布をつかんでいる企業である
具体的にどんな企業か。後段でお話しします。
1990年代の日本に投資する感覚
ここで一つ、アナロジーで考えてみましょう。
仮にあなたが、タイムマシンで1965年の日本に戻ったとします。
所得倍増計画、東京五輪、新幹線開業
日本は世界が注目する高成長国でした。
当時の名目GDP成長率は10%を超える年もあった。
今のうちに、日本の◯◯の株を買っておけば、20年後には大富豪だと、あなたは考えるでしょうか。
実は、その通りだったのです。
1965年から1989年までの東証株価指数(TOPIX)は、約30倍に上昇しました。
では今、現在のインドネシアは、当時の日本と"似ている"のか。
似ている点はあります。
- 若い人口構成
- 内需主導の成長
- 都市化の進展
- 金融サービスの普及拡大期
しかし、決定的に違う点もあります。
- 中国の存在感(資源輸出先・競合関係)
- グローバルな為替変動の影響
- インフォーマル経済の比重
- "中所得国の罠"のリスク
「中所得国の罠」とは、一定の所得水準に達した新興国が、その後の成長を維持できず、先進国入りできないまま停滞する現象を指します。
マレーシア、タイ、ブラジルなどがこの罠に直面してきました。
インドネシアもまた、この罠を抜けられるかどうかが、今後10年の最大のテーマです。
つまり、「インドネシアに賭ける」ということは、「インドネシアが中所得国の罠を突破する」というシナリオに賭けるということでもあるのです。
これを意識せず、ただ「成長してるらしいから」という理由で買うのは、いささか乱暴です。
インドネシア株をどうやって買うのか?
ここからは、実務的な話に移ります。
具体的に日本からインドネシア株を買う方法は、大きく分けて3つあります。
方法1:インドネシアの個別株を直接買う
国内でインドネシアの個別株を直接取り扱っているのは、SBI証券と楽天証券が代表的です。
SBI証券の場合
SBI証券について見てみると、インドネシアルピアでの決済や残高保有ができ、取引の都度、為替スプレッドがかからないため、実質手数料を抑えることができます。
インドネシア株は、100株以上から100株単位で売買が可能です。
手数料は、SBI証券の場合、インドネシア株の手数料は約定代金の1%(税込1.1%)となっており、最低手数料は238,000インドネシアルピア(税込261,800インドネシアルピア)と設定されています。
インドネシアルピアは1ルピア=約0.009円なので、最低手数料は日本円換算で約2,300円程度となります(為替により変動)。
楽天証券の場合
楽天証券はアセアン主要4市場(シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア)に上場している数多くの銘柄を取扱っています。
楽天証券のアセアン株式取引は、日本円で注文いただけます。
現地通貨(シンガポールドル、タイバーツ、マレーシアリンギット、インドネシアルピア)をご自身でご準備する必要はありません。
また、売却代金や配当金も日本円での受け取りとなります。
手数料は楽天証券も約定代金の1.1%(税込)となっております。
つまり、SBI証券は現地通貨で運用したい中上級者向け、楽天証券は日本円で完結させたい初中級者向け、という整理ができます。
注意点として、インドネシア株式の株価は、現地取引所のルールによって、最低株価が50ルピアと定められています。指値注文が中心となるため、約定価格に注意が必要です。
方法2:海外ETF経由で買う
「個別銘柄は怖い」「分散したい」という方には、ETF(上場投資信託)が有力な選択肢です。
代表的なのは、ニューヨーク証券取引所に上場している「iShares MSCI Indonesia ETF(ティッカー:EIDO)」や「VanEck Indonesia Index ETF(ティッカー:IDX)」です。
これはインドネシア株式市場全体に連動する代表的なETFで、SBI証券・楽天証券で取扱いがあります。
メリットは3つあります。
- 米ドル建てで取引できる(流動性が高い)
- 信託報酬が比較的低い
- 数十銘柄に自動分散される
デメリットは、ETF自体に信託報酬がかかること、為替リスクが二重(円⇔ドル、ドル⇔ルピア)になることです。
方法3:投資信託経由で買う
次は投資信託で買う方法です。
例えば「イーストスプリング・インドネシア株式ファンド」という投資信託がSBI証券や楽天証券で取り扱いがあります。
これならそれほど高くない敷居でインドネシアに投資できますね。
また、インドネシアだけでなくアセアン株式投信や新興国株式投信を活用する方法はさらにハードルが低いですし、選択肢も豊富です。
ただしこの場合、インドネシア単独ではなく、複数国に投資する形となります。
NISAの取り扱い
新NISAの取り扱いについては、SBI証券における取扱商品は、成長投資枠・つみたて投資枠で異なります。
成長投資枠の取扱商品は国内上場株式等、公募株式投資信託、外国上場株式等(米国、香港、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、海外ETF、REITを含む)と明記されています。
つまり、インドネシア個別株もNISA成長投資枠で買うことができます。
インドネシア株のおすすめ銘柄を考える
「ではどの銘柄か」という、最も気になる話に入ります。
最初にお伝えしたいのは、「絶対のおすすめ銘柄」というものは存在しないということです。
あくまで、インドネシア経済の構造から見て、注目に値する代表的な銘柄を、特徴ごとに整理してご紹介します。
銀行セクター:内需拡大の最大の受益者
中間層の拡大と金融サービスの普及は、銀行セクターを潤します。
インドネシアでは、いわゆる「四大銀行」と呼ばれる銀行が、安定して市場をリードしてきました。
- バンク・セントラル・アジア(BBCA):民間最大手。リテール(個人向け)金融の代名詞。
- バンク・マンディリ(BMRI):国有最大手。法人取引に強い。
- バンク・ラヤット・インドネシア(BBRI):マイクロファイナンス(少額融資)の世界的リーダー。
- バンク・ネガラ・インドネシア(BBNI):政府系で、インフラ・公共事業に強い。
特にBBCAは、長年にわたって高い自己資本比率と安定収益を維持してきた、インドネシアを代表する優良株として知られています。
通信・テクノロジー:デジタル化の中核
- テルコム・インドネシア(TLKM):国内最大の通信会社。インドネシアのインターネット普及の中心的存在。
- GoTo(GOTO):配車・決済・EC(ネット通販)を統合した東南アジア版スーパーアプリ。グラブやシーと比較されることも多い。
コングロマリット・消費財
- アストラ・インターナショナル(ASII):自動車(トヨタ・ダイハツ・ホンダの現地パートナー)、金融、農業を抱える複合企業。
- ユニリーバ・インドネシア(UNVR):日用品大手。中間層拡大の恩恵を直接受けるセクター。
資源・素材
- アネカ・タンバン(ANTM):ニッケル・金などを扱う国営鉱業会社。EV(電気自動車)バッテリー需要との関連で注目される。
これらは、Googleファイナンスの取引データ等でも、インドネシア市場の主要銘柄として常に上位に位置している企業です。
ただし、注意があります。
これらは「過去に注目されてきた銘柄」であり、「これから上がる銘柄」と断定できるものではありません。
投資はあくまで自己責任で、ご自身でご判断ください。
インドネシア 株 ETFという賢い妥協点
「個別銘柄は情報が限られており選ぶのは難しい。でも、インドネシアの成長は取りに行きたい」
そんな方に最も現実的な選択肢が、ETFです。
先ほどご紹介した「iShares MSCI Indonesia ETF(EIDO)」は、インドネシア市場の主要銘柄をまとめて保有できる便利な商品です。
組み入れ銘柄の上位には、ここまで紹介してきた銀行株、通信株、コングロマリット株が並びます。
ETFを選ぶメリットは、以下の通りです。
- 個別銘柄リスクを分散できる
- 米ドル建てで取引でき、米国市場で売買できる
- 比較的低コスト(信託報酬は0.5%程度)
一方、デメリットも忘れてはいけません。
- 円→ドル→ルピアの二重為替リスク
- インドネシア市場が全体として下落すれば、ETFも下落する
- 単一国ETFはセクター分散が限定的
インドネシア株に投資をするなら「最初の一歩」としてはETFから始めて、リサーチを重ねながら個別銘柄に挑戦していく、という段階的アプローチが、私は最も合理的だと考えています。
見落とされがちな"5つの注意点"
ここまで前向きな話と冷静な話を交えてきましたが、最後に他があまり触れていない実務上の注意点を5つ、整理しておきます。
為替リスク
インドネシアルピアは新興国通貨であり、米国の金利政策や資源価格次第で大きく変動します。
株価が上がっても、ルピア安で円換算リターンが目減りすることは珍しくありません。
インドネシア株の現地株価が10%上がっても、ルピアが円に対して10%下がれば、円ベースのリターンはほぼ消えます。
ETFや投資信託で買っていても、最終的にはインドネシア企業の利益や資産価値、ルピア建て市場の影響を受けます。
配当課税
インドネシア株の配当には、現地で20%程度の源泉徴収がかかり、さらに日本での課税が加わります。
日尼租税条約により外国税額控除は使えますが、税制は複雑ですし、米国株と違って情報も少ないです。
詳しくは、税務署又は税理士等の専門家にご確認くださいと各証券会社も注記しています。
流動性
インドネシア株は東京市場と比べると、出来高が小さい銘柄も多く、売りたい時に売れないリスクがあります。
指値注文を基本とし、慌てて投げ売りしないことが鉄則です。
政治リスク(カントリーリスク)
プラボウォ政権の経済政策、首都ヌサンタラ移転計画、ニッケル輸出政策など、政策一つで業種・銘柄の評価が大きく変わります。
日本にいながら情報を追うのは、英語・現地語ベースのニュースを常時チェックする覚悟が要ります。
ロイターによると、MSCIはインドネシア市場の透明性や所有集中を問題視し、2026年5月末に一部企業をインドネシア指数から除外すると発表したなんて話もあります。
ポートフォリオに占める比率
新興国株式は、あくまで全体の資産配分の中で5~10%程度に抑えるのが一般的なセオリーです。
インドネシアにピンポイント投資するなら、さらにその一部、つまり数%にとどめておくのが現実的です。
まとめ
最後に、本記事の核心をお伝えします。
インドネシアは、たしかに次の主役候補です。
人口、若さ、内需、地政学的位置
どれを取っても魅力的な国です。
しかし、「成長率が高い=株価が上がる」と単純には言えないこともまた、過去10年のデータが示す厳然たる事実です。
だからこそ、私からの提案は一つ。
「インドネシアに賭ける」のではなく、「ポートフォリオに少しだけ組み込む」。
これが、合理的で、後悔の少ない選択肢ではないかと思います。
具体的には、まずはETF(EIDOなど)で数万円から始めて、興味と知識が深まれば、SBI証券や楽天証券で個別銘柄に少額挑戦してみる。
NISA成長投資枠を活用すれば、税制面でも有利です。
何より大切なのは、「自分はなぜインドネシアに投資するのか」という問いに、自分の言葉で答えられることです。
「人口ボーナス」というワードだけで動くのではなく、その実態と限界を理解した上で、自分の資産戦略に組み込んでいく。
これが、長期投資家として生き残る道だと信じています。
中国株の思い出
最後に、私自身の想いを少しだけ。
私は人生で一番はじめに買った株は日本株ではなく中国株でした。
当時の日本やアメリカは成長が鈍化して微妙な感じ。
対して中国は現在のインドネシアのように新興国として注目されていた時期だったんですよ。
経済は本当に成長しました。
予想は当たったのです。
しかし、たいして儲からなかったですね。
株価は別の論理で動いていたのです。それを身をもって学びました。
ワーサンガスという銘柄に引っかかって5年間売買停止されてしまった苦い経験もあります。
私が中国株から撤退した理由です。

だから、皆さんには同じ失敗をしてほしくない。
データで見て、構造で考えて、限界を知った上で、それでも"打席に立つ価値がある"と判断したときに、初めてお金を投じる。
その判断の材料を、本記事が少しでも提供できていれば、これ以上の喜びはありません。
お金は、淡々と。賢く。長く。 今日も「お金に生きる」を、読んでいただきありがとうございました。
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