自社株買いとはなにか?なぜ岸田政権は自社株買いを規制を考えているのかをわかりやすく解説

先日、岸田総理が自社株買いについて以下の発言をしたことから日経平均が大きく下がりました。

個々の企業の事情などにも配慮したある程度の対応、例えばガイドラインとか、そういったことは考えられないだろうかということは思います

出典:衆議院議員 予算委員会 岸田総理

つまり、自社株買いについて一定の制限を設けることを示唆しているのです。

今回は話題となっている自社株買いとはなにか、なぜ岸田政権は自社株買いを規制を考えているのかを解説していきます。

自社株買いの概要

それではまずは今回の話の前提となる自社株買いについて解説していきましょう。

自社株買いとは

自社株買いとは言葉の意味の通り。自社の株を買うことを指します。

難しい言葉いうとこんな感じですね。

自己株式取得の一つで、株式市場から過去に発行した株式を自らの資金を使って直接買い戻すことを指す。株式会社が、株主への利益還元やストックオプション(従業員持ち株制度)等に利用するために行う。

出典:野村證券 証券用語解説集より

自社株買いの目的

それでは自社株買いはどのような目的で行われるのでしょう?

以下の3つのケースが多いですね。

株主還元

まずよくあるのが株主還元目的の場合です。

自社の株を買い入れて消却すれば利益の絶対額が変わらなくても一株当たりの利益(EPS)が上がります

また、ROE(自己資本利益率)が上昇します。

自社株買いをすると財務レバレッジが高くなりROEが高くなるんですよ。詳しくはこちらの記事を御覧ください。

>>ROEとは
つまり、株が上がりやすくなり株主への還元に繋がるのです。

経営の安定

もう一つが前述の株主還元とも被ってくる部分がありますが、経営の安定の目的です。

業績悪化など株価が下がるような発表をした際に合わせて自社株買いを発表することで悪材料を相殺することができます。

また、自社株買いも多くは市場から買いますから株価の買い支えにも繋がります。

つまり、株価が下がりにくくなり経営の安定に繋がるというわけです。

この場合に集めた自社株は消却するのではなく、株式交換による買収などに利用するケースもあります。

従業員や役員への報酬

もう一つが自社株を集めて従業員や役員のストックオプション、従業員持ち株制度に利用することもあります。

単なるお金での賞与ではなく、自社の株を渡すことで働くモチベーションやモラール(士気)を上げることに繋がりますからね。

自社株買いのメリット

自社株買いのメリットとしては以下の点が考えられます。

株価対策

まずもっともわかりやすいのが株価対策でしょう。

自社株買いをすることで一株当たりの利益(EPS)やROE(自己資本利益率)が上昇しますので株価的にはプラス材料となります。

また、この企業は株主還元に積極的な企業という印象を投資家に与えることもできます。

つまり、投資や市場へのシグナリング効果も期待できるのです。

敵対的買収対策

もう一つが敵対的買収への予防効果も期待できます。

敵対的買収をするためには株を集める必要がありますが、自社株買いをすることで流通する株式の絶対数が減るため敵対的買収をしにくくするのです。

前述した株価対策で株もあがるでしょうから集めるためにお金も余分に必要となりますから二重で効果を発揮します。

自社株買いのデメリット

当然、自社株買いにはデメリットもあります。

財務面の悪化

まず時々露呈しているのが自社株買いによる財務面の問題です。

当然、自社株買いをするということはその資金が必要となります。

自社株買いをすると手元資金が減ったり、借金が増えたりで自己資本比率が悪化するんですよ。

自己資本比率は財務面の指標としては重要なものと見られていますから過度な自社株買いは株価対策としてもマイナスとなるケースもあるのです。

昨今の新型コロナウィルスの経済の危機で米国企業で問題が表面化したのはこの部分です。

アメリカでは前述したROEがとても重要な指標とされます。

そのため、ROEを意識するあまり、ROEをあげるため無理な自社株買いをして財務面がおざなりになってしまっていたのです。

もちろん経済危機が来ず、イケイケ状態ならばそれでも問題なかったでしょう。

しかし、急に売上が止まってしまう今回のような問題があると財務面がとても重要となってきたのです。

こういうこともありますのでこの部分について規制をするのは個人的にはありかと思います。

例えば自社株買いをしていい企業の条件を財務面で設けるなどですね。

成長が滞る

また、株価対策で自社株買いばかりやっている会社にありがちですが成長が滞ってしまうというケースもあります。

自社株買いはたしかに株価対策にはなりますが、直接お金を産むわけでも将来への投資でもありません。

自社株買いをするお金で設備投資や研究開発に使っていれば成長できた部分が失われてしまう可能性もあるのです。

ですから自社株買いばかりしている企業は株主に優しいようで、実は自分たち(大株主の役員)の目先の財布だけ見ている可能性もあるということなのです。



なぜ岸田政権は自社株買いを規制を考えているのか

それではなぜ今回岸田政権は自社株買いの規制を考えているのかを予想していきましょう。

自社株買い規制は岸田総理就任前から懸念されていた

まず知っておいてもらいたいのは岸田総理が就任する前から金融所得についての課税強化や自社株買い規制については懸念があったことです。

こちらの記事でも書いていました。

特に岸田総理が総理就任前に言っていた以下の言葉がわかりやすいですね。

 民間における分配を考えた場合、株式会社のありようも考えなければいけません。新自由主義・市場原理主義のもとで、成長の果実は株主、あるいは経営者が独占することが正義であるかのようになっています。そうではなくて、従業員や地域、取引先など様々なステークホルダーに果実が分配される株式会社、資本主義を考えていく必要があります。

出典:AERA.bot 自民・岸田文雄氏 コロナ禍の経済は“株主資本主義”を改め「より分配を意識」

つまり、金融税制や配当や株主優待、自社株買いなど株主優遇の政策についてメスを入れるべき的な発言を以前からしていたんですよ。

ですから金融所得の課税強化や今回でてきた自社株買いの話もやっぱりね・・・って感じでしかありません。

自社株買いを規制すれば賃金に回ると考えている?

それではなぜ自社株買いを規制しようと岸田総理は考えているのでしょう。

岸田総理は前述のように株主や経営者でだけでなく成長の果実を従業員などにも分配することを目指しています。

つまり、株主や経営者が得をする自社株買いをしてることで従業員の賃金に回っていないと考えているのではないでしょうか?

税制改正大綱でも目玉は賃上げ税制でしたしね。

ただし、個人的には自社株買いを規制したところで従業員の給料に回るとは限りませんし、むしろそうならない可能性のほうが高いと思います
賃上げ税制も現場を知らない人が考えたとしか思えない効果が見込めそうもないものでしたし、これだけ経済オンチな政策が続くとさらに内部留保課税とか言い出さないかとハラハラしてしまいます・・・




まとめ

今回は「自社株買いとはなにか?なぜ岸田政権は自社株買いを規制を考えているのかをわかりやすく解説」と題して自社株買いについてみてきました。

まだ自社株買いの規制が正式に決まったわけではありません。

無理な自社株買いは企業の財務を悪くするだけですからその部分に規制を設けるのは個人的にもありだと思います。

しかし、企業に賃上げさせるために規制を設けるのは反対です。

岸田政権になって根拠や効果が不明な18歳以下に10万円給付とか金融課税強化、そして今回の自社株買い規制と大丈夫か?と考えてしまう話ばかり出てきています。

日本株投資家がアメリカ株へ流れているという記事がでていましたが、こんな政策を繰り返せば当然さらにその流れは加速するでしょう。

私達にできることは選挙で民意を伝えることとや声を上げることくらいでしょうから、私も本ブログでおかしい政策についてはどんどん追求していきたいと思います。

なお、四半期決算廃止の話はこちらの記事でまとめております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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