年金返せ!と年金問題を騒ぐ前に年金の仕組みを知っておこう

最近、年金を巡って騒動になっています。

金融庁が作成した資料「高齢化社会における資産形成・管理報告書」老後に年金だけでは2000万円足りないぜって事が書いてあったためです。

金融庁が言っていることはごもっともな内容なんですけどね・・・

この件に関していろいろなテレビ番組、ブログ記事などを見聞きしましたが、あきらかに年金制度について間違えていたり勘違いしているものが多く見受けられました。

また、年金の収支の報道に関しても間違ったテレビ番組や新聞記事が多く見かけましたね。

ちゃんと勉強して報道しろよ・・・って思うところがありますが。。。

例えば安倍政権になって年金を株に回したことによって年金資金を溶かしたことが年金が足りない原因だ。。。というひどい間違いですね。本当に多かったです。なかでも経済評論家を名乗ってよくテレビに出ている方がこの発言をしていたのにはびっくりしましたね・・・

テレビ番組等報道などはあえてそういうミスリードを誘っているようにも見えますけどね。

そこで今回は今このタイミングだからこそぜひ知っておきたい自分たちが毎月給料から天引される厚生年金や納めている国民年金の扱いや流れについて見てみます。

そもそもの年金の仕組みを知ってないと間違った報道に踊らされてしまうことにも繋がりますよ。

年金の決算なんかでもミスリード的な報道がされていますしね。

実際に年金の仕組みを知らない方も統計によると多いようですね。

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年金への興味や知識が皆無

※加筆修正を加えました

日本の年金制度の仕組み

まずは大前提として押さえておかなければならないことがあります。

それは日本の公的年金の運営方式です。

年金の運営方式は主に2つのやり方があります。

「賦課方式」と「積立方式」です。

日本の公的年金はそのうち「賦課方式」で運用されています。

日本の複雑な年金制度を理解するにはまずは賦課方式を知っておく必要があります。

まずは賦課方式についてから見てみましょう。

賦課方式とは

賦課方式とは年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する方式です。

現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージです。

つまり、今の働いている世代が納めた保険料で老後生活をしている受給世代の年金を支えているのです。

賦課方式とは
賦課方式とは

出典:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」より

現役世代が高齢になって年金を受給する頃には、子どもなどその下の世代が納めた保険料から自分の年金を受け取ることになります。

ですから少子高齢化になることでもらう側の人間が増え、支える現役世代が少なくなることから年金不安が叫ばれているのです。

決して年金を株に回したことが原因ではないんですよね。

参考:積立方式とは

積立方式も一応見ておきましょう。

積立方式とは将来自分が年金を受給するときに必要となる財源を、現役時代の間に積み立てておく方式です。

ある意味、納得感は高いですが、大きな問題があります。

それはインフレに弱いことです。

例えば1965年のとき喫茶店のコーヒーは全国平均で71.5円でした。それが50年後の2015年には全国平均422円と5.9倍となっています。

50年前に10万円積立てても50年後にはその約17000円分くらいしか価値がないってことですね。

もし、積立方式の場合にはこの差を運用で埋めなくてはいけなくなります。

「賦課方式」と「積立方式」はどちらにもメリット・デメリットがあるんですね。

つまり、その時代によってどちらが最適なのかは変わってくるのです。

年金の運用はうまく行っている

報道のあり方に大きな問題があるため勘違いしている方が本当に多いのですが、実は公的年金の運用はそれなりにうまくいっているのです。

公的年金の運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は四半期ごとに運用状況を発表しています。それによると市場運用を開始した2001年度から最新で発表されている2018年度第3四半期までの収益は+56兆6,745億円となっています。

また、年率も+2.73%となっています。平均すれば年に2.73%も増やしてくれているんですよ。

この間にリーマン・ショックなど大きな株が暴落する時期がありましたがこれだけの収益が得られているんですよね。

報道ではマイナスとなった時期は大きく取り上げられます。しかし、儲かった時期はほとんど触れられません。

ですから年金で株を買うようになったから年金を溶かしたという勘違いが生まれてしまっているのです。

しかし、実は逆なんですね。株に回すことによって年金財源をだいぶ増やしてくれているんですよ。

株などはどうしても波がありますから落ちるときもあります。

しかし、長期的な目で分散投資をすれば理論上はプラスになる可能性が極めて高いのです。GPIFはある意味、理想的なインデックス投資を行っているんですよ。

破綻することはないのか?

マスコミ報道などでは今にも年金が破綻するのではという論調のときがあります。

しかし、そんなことは仕組み的には起こりにくいのです。

日本の公的年金にはマクロ経済スライドという仕組みが導入されています。

マクロ経済スライドとはそのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

簡単に言えば年金制度を無理なく継続するために年金の給付額を調整する仕組みってことです。この仕組みと賦課方式があるため基本的に年金制度が破綻することはないのです。破綻する可能性があるとすれば国がそもそも破綻するか年金の法律を大きく変えるときだけでしょう。100年安心というのはこの意味合いなんですよ。そもそも年金だけで暮らせる水準を維持するなんてだれもいっていないのです。

このような仕組みなのに年金が破綻すると言ってしまったり、年金を株に回したことによって溶かしたことが年金が足りない原因だという自称経済評論家を使うマスコミもどうかしていると思うのですけどね・・・

ただし、制度としては破綻しないけど実際にもらえる金額が納めた金額より少ないということが起こり得るのが現在の年金制度ではあります。

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公的年金には保険の意味合いもある

あまり知られていませんが、厚生年金や国民年金の公的年金制度には保険の意味合いもあります。

それが障害年金遺族年金の存在です。

障害年金は自分が障害になったとき、遺族年金は自分が亡くなったときにその遺族に支給されます。

これらの存在は一般の生命保険で同レベルの保険に加入しようとするとかなり高い金額になるレベルの補償となっていたりします。

もしものときの保険を兼ねているわけですから単純に保険料の損得だけで計れない制度なのも知っておきたいところです。

遺族年金、障害年金について詳しくはこちらの記事も御覧ください

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現在の年金の問題点

今まできたように日本の公的年金制度は破綻はしません。

また、運用もうまく行っています。

しかし、日本の年金制度には問題点があるのです。

現在の年金制度の最大の問題は世代間格差でしょう。

年金世代間格差
年金世代間格差

出典:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」より

前述のように現在の年金制度は賦課方式でマクロ経済スライドがありますから破綻はしません。

しかし、少子高齢化の現在の状況では世代間の格差がかなり大きくなることが予想されます。

そのため若者世代にはなかなか納得できにくい仕組みになってしまっていることは事実ですね。

現役世代はどうすればよいのか?

それでは現役世代や今後、現役世代となる若者はどうしていけばよいのでしょうか?

現在の年金制度は人口が増えていけば問題ない制度です。

しかし、今後も少子高齢化が進むことは確実でしょうから少しずつ条件が悪くなっていく可能性が高いでしょう。

前述の金融庁が作成した資料「高齢化社会における資産形成・管理報告書」で2000万円老後資金が足りないというデータも単純に現在の老後世帯が平均で生活費これだけ使っていて、年金等の収入の平均がこれだから月に5万円くらい足りないね。それが30年続くとすると2000万円くらいだね。と算出したに過ぎません。

この少子高齢化による年金が減る部分は勘案されていないのです。

ですから足りないと考えられる金額はもっと大きくなるでしょう。

最終報告書には掲載されていませんが、会議に提出された厚生労働省の資料だと以下の点を推奨しています。

年金を繰り下げして老後も働く
年金を繰り下げして老後も働く

出所:2019年4月 第21回金融審議会「市場ワーキング・グループ」厚生労働省提出資料

簡単に言えば足りない部分は定年後も就労することと私的年金(iDeCoつみたてNISA)でカバーして公的年金は繰り下げしてもらう金額を増やすという方法ですね。

定年後も就労して老後資金を稼ぐ

最近は65歳でも皆さん元気な方が多いです。

十分就労できる人はありな選択肢でしょう。

また、若い人にはない経験と知識をもっていますしね。

ただし、老後でも雇ってもらるだけのエンプロイアビリティ(雇用される能力)や自分でお金を稼げる能力を退職までに培っておくことは必要となるでしょう。

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私的年金でカバー(iDeCoとつみたてNISA)

iDeCoやつみたてNISAは老後資金を作るための定番です。

両方とも投資ですが、iDeCo(個人型確定拠出年金)は払ったときに所得控除の対象となります。またiDeCo、つみたてNISAとも運用に対しての利益は非課税となります。

つまり、老後資金を作るためにかなり優遇されている制度となります。

そうはいっても投資をしたことない方にとってはハードルが高いのも事実です。

しかし、長期・積立・分散投資をすると長期であればあるほど投資先を分散すればするほど収益のばらつきは少なくなりリターンが得やすいのです。

今回の「高齢化社会における資産形成・管理報告書」でも下記の通り20年のスパンで考えれ投資収益は2%〜8%に収斂するとしていますね。

つまり、長期・積立・分散投資をするとプラスになる可能性がかなり高いってことです。

長期・積立・分散投資の効果
長期・積立・分散投資の効果

出所:金融庁「高齢化社会における資産形成・管理報告書」より

個人型確定拠出年金(iDeCo)とつみたてNISAについて詳しくは下記の記事を御覧ください。

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繰り下げして公的年金を増やす

繰り下げとは簡単に言えば年金をもらうのを遅らせることで一回あたりの年金額を増やす制度です。

繰り下げをすると国民年金、厚生年金は1月遅らせるごとに0.7%ずつ増額されます。

現在の制度だと70歳まで繰り下げれば増額率は42%増となります。

なお、70歳まで繰下げの42%が今のところ満額となっていますが、これを75歳まで伸ばそうという話もありますね。

繰り下げについて詳しくは下記記事を御覧ください。

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年金の繰下げ



まとめ

今回は「老後資金2000万円足りないと年金問題を騒ぐ前に年金の仕組みを知っておこう」と題して年金の仕組みについてみてきました。

まずは年金の仕組みをしっかり理解しましょう。

そうしないと間違った報道に踊らされてしまうことにも繋がりますよ。

政府は今回の報告書をなかったことにしようとしていますが、まずは現状認識して足りないならばどうその分をカバーするのかを考えることが必要です。

年金問題が劇的に改善することは考えづらいですから自分で自分の老後を守りましょうね。

また、投資は危険だ。貯金しなさいという評論家も信じないほうがよいでしょう。

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また、老後を楽観視しすぎている方も多すぎですね。今回の報告書である程度危機感を持つ方が増えるのかもしれませんが・・・

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