今後のiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めとした企業年金、個人年金について話し合う「社会保障審議会 企業年金・個人年金部会」の会合が定期的に行われています。
ここで話し合われた内容を元に様々なルールが変更に動いていく大変重要な会議です。
今年だけですでに第六回開催されています。
この会合の議事録や資料は公開されており、今後のiDeCo(個人型確定拠出年金)についての方向性を確認することができるのです。
私も定期的にチェックしているのですが、その中でかなり気になる点がありました。
それは最新の第6回の資料を見るとどうも参加者がiDeCo(個人型確定拠出年金)の受け取りは一時金ではなく、年金にすべきと考えているようなのです。
下記記事でイデコの改悪の可能性について言及しましたが、社会保障審議会 企業年金・個人年金部会の委員の反応を見る限り受け取り時の退職金控除の扱いが変わる可能性がありそうな予感しかしません・・・
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に加入できる人がかなり増えそうなニュースが流れて来ました。厚生労働省は全会社員を対象に、希望すれば個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)に入れるように基準を緩める検討に入った。勤め先で企業型の確[…]
今回はこの件およびこの会合で話し合われている注目すべきポイントを見ておきましょう。
一時金で受け取りをする人が多いのを委員が問題視
そもそもこの話は下記のように多くの方が一時金でもらっていることを問題視しているところから始まります。
DB、DCとも一時金での受給を選択している。この傾向は2013年度から継続しており、法が要請する「企業年金の年金性と高齢期の安定的な所得保障を確保する」観点からは課題が大きい。(連合)
年金制度といっているが一時金でもらっている。さらに、年金と言っているが、終身年金ではなくほとんどが有期年金となっている。老後のためであれば終身であるべきなのか、しかしながら終身年金を強制できるのか、もらい方の部分の議論もあわせてしていかなければならない。(部会委員)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
イデコ自体は会社員の方が加入できるようになったのは2017年からですし、それほど受け取り側に回っている方は多くないでしょうから確定給付年金や企業型確定拠出年金といった企業年金のデータだと思われますが、多くの方が一時金でもらっているようです。
ただし、これ年金で受け取るよりも一時金で受け取る方が得なケースが多いためそちらを選択している人が多いんですよね。
また、企業年金の場合には規約にもよりますが、勤務年数が短いと一時金でしか受け取れないんですよ。私も会社を辞める時、一時金でもらいましたが、10年未満勤務だと一時金しか選択肢はなかったですね。
一時金での受給を選択しているという元の根拠資料がありませんから正確なところはわかりませんが、この辺りの認識が委員の方にあるのかがちょっと怖いところです。
iDeCoは一時金受け取りがお得な理由
iDeCoの老齢給付金の受取り方は主に3パターンあります。
○老齢年金:5年以上20年以下の有期年金として分割で受け取る
○併用:老齢一時金と老齢年金を併用する
どの受け取り方が良いのかは人それぞれ異なりますが、基本的には一時金で受け取った方が有利な場合が多いです。
それは退職所得控除がかなり強いからです。
そのためiDeCoをある程度の期間掛けていた方の多くが一時金で受け取れば無税や少額の税金でいけるのです(会社からの退職金が多い場合を除く)
対して年金だと公的年金等控除は受けられますが、縮小傾向にあるため年金が多い方だと税金が発生してしまいます。
また、受け取る都度手数料が「400円+消費税」が掛かりますから損なんですよね。
ですから一時金で受け取る人が多いのは当然なんです。
イデコの受け取り方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
このサイトで何度もご紹介しています大変お得な制度である個人型確定拠出年金(iDeCo/ イデコ)。ただし、ちょっと注意しないといけないのが受け取るときです。基本的にiDeCoは払ったときに節税効果があり、受け取るときに税金が[…]
受け取り時に年金を選択してもらうために課税見直し?
年金を選択するため委員の方が考えていることは以下の通りです。
年金給付の選択を促進するような受給時の課税の見直しを検討すべき。(数理人会、企年協、金融団体)
退職所得税制の全般的な見直しが必要。(企年協)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
数理人会、企年協、金融団体の3つの団体が言っている話ですからかなり強力ですね・・・
年金給付の選択を促進するような受給時の課税見直しとはどんなことが考えられるでしょうか?
これは2つ想定されます。
退職所得控除関連
まず、一つは現在多くの人が一時金を選択している最大の理由である退職所得控除です。
こちらが有利だから一時金を選択しているんですね。
ですから年金給付の選択を促進するようにするには一番簡単な方法は退職所得控除を改悪することです。
退職所得控除が改悪され一時金の魅力が薄れれば年金受取りや併用での受け取りを選択する人が増えるでしょう。
ただし、退職所得控除は退職金の話も絡んできますので個人年金、企業年金だけの話ではありませんけどね。
あとはiDeCo(個人型確定拠出年金)を退職所得控除の対象から外すという方法も考えれなくはありません。
どちらにしてもこの方法を選択するようだとiDeCo(個人型確定拠出年金)の魅力は激減ですね・・・
年金給付時の優遇
また、もう一つ考えれるのが逆に年金給付を選択した場合の優遇を拡大することです。
ただし、これも大きな問題があります。
公的年金控除は個人年金、企業年金だけの話ではありませんから簡単ではないでしょう。
むしろ縮小する方向ですからね。
一時金でもいいじゃんって意見もあり
今まで見てきたように社会保障審議会 企業年金・個人年金部会の委員や関係団体は一時金じゃなくて年金で受け取ってほしいとかんがえているようです。
ただし、以下のように良識的な方の意見もありました。
高齢期において経済的な困窮に陥ることを少なくさせるための制度と少し拡大して解釈するのであれば、年金でもらおうが一 時金でもらおうが構わないのではないか。一時金でもらうとすぐに使ってしまい、より高齢期に困窮に陥る人が非常に多い事実があれば問題だが、日本の高齢期の特徴は、使ってしまうというより、取り崩し率が低いことにある。(部会委員)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
私もこの意見に賛成です。
たしかにすぐ使ってしまって生活保護に回るような人が増えてしまうと問題ですけどね・・・
そのほかの注目すべき意見
そのほかに出ている注目すべき意見についても見ておきましょう。
加入入可能年齢の変更
加入可能年齢についても様々な意見がありました。
企業型DC・iDeCoの双方において、加入可能年齢の拡大を検討すべき。(経団連、企年 連、企年協、国基連、金融団体)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
これはすでに報道がされていますが、伸長する方向なのは確実でしょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)には節税効果がありますから、働いている期間は掛けたい方も多いはずです。
拠出限度額の引上げ
掛け金の金額については以下のような意見がでています。
拠出限度額の引上げを検討すべき。(経団連、数理人会、企年連、国基連、金融団体、部会委員。金融団体の一部は撤廃
の意見)一方で、拠出できる人との格差という問題がある。(連合)
iDeCoの資格区分・限度額区分を簡素・合理化すべき。(経団連、企年連、企年協、国基連、金融団体)
現行、拠出限度額が、従業員の属性により異なるため、制度が複雑化し、企業・個人双方の事務手続きが煩雑化している。そ の結果、制度への理解が進まず、普及促進の妨げとなっていることが懸念される。制度の分かりやすさや、制度間の公平性を 確保する観点から、iDeCoの拠出限度額を企業型と合わせることを検討すべき。(経団連)
企業年金のない者の拠出限度額を2.3万円から5.5万円に引き上げるべき。そして、この5.5万円を自由に埋めることができるようにすべき。(部会委員)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
多くの団体が拠出限度額を上げろという意見となっています、
これは上げてほしいところですね。意見にあるように格差はでるでしょうがそれは仕方がないところですし、お金の使いみちは人それぞれですしね。
また、資格区分が複雑なのももっと整理したらよいと思います。厚生年金に加入している方と国民年金のみの方の差があるのは仕方ないと思いますが。
受給可能期間
受給可能期間についても以下のような意見がでていました。
受給開始可能年齢は、加入可能年齢を引き上げても現行通り60歳からとすべき。(経団連、金融団体)
裁定請求期限(70歳)を引上げ若しくは撤廃すべき。(金融団体)
通算加入期間(10年)に関わらず、60歳から老齢給付金を受給可能とすべき。(金融団体)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
これは死活問題となる方が出てくる話です。特に前述した加入可能期間とのからみがありますが自分でいつから受け取るのかを選択できるようにしてほしいところですね。
脱退要件
脱退要件についても様々な意見がでています。
中途脱退要件を緩和すべき。(経団連、企年協、金融団体)
外国籍人材の雇用が増加する中、退社、帰国時の中途引出しができないことで、支障が生じるケースが増えている。例えば、 引出し時の一定の課税(追徴課税)を条件に、中途引出しを可能とする選択肢を検討すべき。(経団連、金融団体)
高齢期の生活を支える所得の原資という観点から、中途脱退を安易に認めるべきではない。(部会委員)
年金資産を裏付けとした緊急時における融資制度も考えられるのではないか。(金融団体)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
たしかにiDeCo(個人型確定拠出年金)は60歳まで資金が拘束されるのが怖いからはじめないという方も多いです。
中途脱退が容易にできるようになるならば加入する方が増える可能性も高いです。
金融団体がおっしゃってる緊急時における融資制度は小規模企業共済にある制度ですね。掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れをすることができます。
たしかにこの制度があれば途中解約を認めなくてももっと入れる方が増えるかもしれません。いいアイデアです。
特別法人税
毎回出ている気がしますが特別法人税の廃止意見も当然にでています。
退職年金等の積立金に係る特別法人税については、2019年度末まで課税が凍結されているが、企業年金制度をより一層、 普及・拡充させる観点で、速やかに廃止すべき。(経団連、企年連、企年協、金融団体)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
特別法人税の課税凍結が終了したらiDeCo(個人型確定拠出年金)はまったく魅力的な制度でなくなってしまいます。
速やかに廃止してほしいところです。復活は現実的ではないと思いますが、制度として残っているのは気持ち悪いですよね。
特別法人税について詳しくはこちらの記事を御覧ください。
個人型確定拠出年金(iDeCo)はこのサイトでも何度もご紹介しているようにとてもオトクな制度です。テレビ、新聞、ネット上どこでも絶賛されています。書いているのは証券会社、ファイナンシャルプランナー、専門家、記者など様々な方た[…]
事務手続き
個人的に普及してもらうためにかなり重要なのはこれだと思います。
iDeCoの普及のためには、事務手続きのオンライン化、マイナンバーの活用、クレジットカード払いによる掛金払込などの検 討をすべき。(金融団体、部会委員)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
iDeCo(個人型確定拠出年金)は加入までがかなり時間が掛かりますし、わかりにくいです。この辺りをネット上でできるようにするだけでもかなり違いますね。
また、各種変更手続きもネットでできるようにしてほしいところです。
やってることは証券会社のそれと違わないわけですから不可能では全然ないはずなんですよね。
また、クレジットカードで支払えるようになれば魅力がさらに増すかもしれません。自社でクレジットカードを発行している楽天証券なんかは大きなアドバンテージになる方策を売ってきそうですね。
資産運用
資産運用についても様々な意見がでています。
先の法改正の商品除外や指定運用方法など、施行後の実態を把握しながら、議論すべき。(部会委員)
iDeCoについて、投資アドバイスや投資一任による資産運用支援を行うことを可能とすべき。(金融団体)
出典:社会保障審議会 企業年金・個人年金部会 第六回資料より
先の法改正の件とは35本制限のことを指しているのでしょう。扱える商品を35本以内にするというルールでSBI証券なんかは60あったのを35本まで大きく絞らされました。
これは今すぐにでも改善すべきでしょう。なんの意味があったんだ?と思います。
35本制限について詳しくはこちらの記事を御覧ください。
日経新聞に下記のような記事が出ておりました。確定拠出年金の運用商品数の上限を35本に決めるとのこと。今までは下限は決めてありましたが、まさか上限を指定してくるとは。今回はこの件について書いてみたいと思います。厚生労働省は確定拠出年金(D[…]
投資一任口座はやめてほしい
もう一つでている投資一任口座はファンドラップのことでしょう。
これは初心者にやさしいようですが手数料がかなり高い商品ばかりで正直、銀行や証券会社を儲けさせるためにあるような商品です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)には向かないと思うのですが・・・
ファンドラップについて詳しくはこちらの記事を御覧ください。
証券会社や銀行などが販売するファンドラップの人気が高まっています。しかし、結論から言えばファンドラップ買っては駄目な商品なのです。表面の説明を効くと良さげに見える方もいると思いますが・・・・今まではファンドラップの全貌は加入者にしか[…]
まとめ
今回は「改悪待った無し?iDeCoの受け取り方は一時金ではなく年金にすべきと話し合われている件。」と題して「社会保障審議会 企業年金・個人年金部会」の会合で出ている意見についてみてきました。
ここで話し合われた内容を元に様々なルールが変更に動いていく大変重要な会議です。
制度が決まってしまう前におかしな話は声を上げていきたいところですね。
今回主に取り上げた一時金じゃなくて年金でもらえよ。そっちに誘導しようぜってのは偏った意見な気がしますね。
過去にも35本制限という必要だとは思えないルールを作ってしまった人たちですから要注意なのです。
この流れだと退職所得控除の改悪が怖いところです・・・
なお、下記のサイトで会議の資料や議事録を見ることが可能となっています。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に加入するならこの5社から選ぼう
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)を始めるならまずは金融機関を決める必要があります。
しかし、たくさんあってどこにしたらよいのかわからない方も多いでしょう。
簡単に決めてしまう方もおおいかもしれませんが、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)の場合、金融機関ごとの違いがとても大きいですから慎重に選びたいところです。
私が今もし、新たに加入するならSBI証券、マネックス証券、松井証券、大和証券、楽天証券の5択の中から決めます。
(※私が加入しているのはSBI証券です)
この5つの金融機関は運営管理機関手数料が無料です。※国民年金基金連合会の手数料等は各社共通で掛かります。
また、運用商品もインデックスファンドを中心に信託報酬が低い投資信託が充実しているんですよ。
順番に見ていきましょう。
SBI証券
まずイチオシはSBI証券「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」です。
SBI証券は信託報酬も最安値水準のeMAXIS Slimシリーズを始めとしたインデックスファンドから雪だるま全世界株式、ひふみ年金、NYダウ、グローバル中小株、ジェイリバイブといった特徴ある投資信託をたくさん揃えているところが最大の魅力です。
選択の楽しさがありますよね。
また、確定拠出年金を会社員に解禁される前から長年手掛けている老舗である安心感も大きいですね。
SBI証券は運営管理手数料が無条件で0円ですし、なにより運用商品が豊富で選択の幅が広いです。現状最強のラインナップを誇ることになります。
また、他の証券会社に先んじて確定拠出年金の取扱をはじめてますから安心感が強いですね。
マネックス証券
次点はマネックス証券 iDeCoです。
こちらも後発ながらかなりiDeCoに力をいれていますね。
iDeCo初でiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスを取扱い開始したのに興味をひかれる人も多いでしょう。
マネックス証券はeMAXIS Slimを多く取り扱っており、信託報酬がほとんど最安値水準でスキがありません。また、iDeCoでいち早くiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスの取り扱いをはじめたところも大きなポイントになりますね。
松井証券
松井証券のiDeCoは35本制限まで余裕があるというのは後発の強みですね。
その35本制限までの余裕を生かして他社で人気となっている対象投資信託を一気に採用して話題になっていますね。
こちらも有力候補の一つですね。
2020年10月18日から取り扱い商品が大幅拡充されました。
人気となっているeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)や楽天・全世界株式インデックス・ファンドなども採用され最強ラインナップといっても過言ではない充実ぶりですね。
大和証券
大和証券 iDeCoは大手証券会社でありながら、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)にもかなり力を入れています。
他のネット証券と違い店舗が全国各地にたくさんあります。そこに魅力を感じる方にはおすすめできますね。
また、取扱商品もダイワつみたてインデックスシリーズなど信託報酬が安めの商品を取り揃えています。
運営管理機関手数料が無条件で無料ですし、商品も充実したことで選択肢となりえる金融機関になりましたね。中国株、ロシア株、ブラジル株のファンドへ投資できるなど特徴的な商品があるのが他との差別化要因かな。あとはiFreeシリーズ、とくに米国株さえ入れば十分に他と競争できると思いますので期待したいところです。
楽天証券
楽天証券は楽天・全世界株式インデックス・ファンドや楽天・全米株式インデックス・ファンドといった自社の人気商品の取扱が大きなポイントとなっています。
この2つのファンドは人気ですね。
楽天証券は楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド、楽天・S&P500インデックス・ファンド、楽天・全世界株式インデックス・ファンド、楽天・全米株式インデックス・ファンドといった楽天ブランドの人気商品の取扱が大きなポイントとなっています。今後は楽天SPUの対象になったりしたらかなり面白い存在ですね。
総合して考えるとこの5つの金融機関に加入すれば大きな後悔はないかなと思います。
他の運営管理機関もぜひがんばってほしいところですが・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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