株式投資をする際に参考にする情報として様々な「経営指標」や「投資指標」があります。
その中でも特に人気の指標に「ROE(自己資本利益率)」があります。
多くの投資家に意識されている指標です。
特に日本株と米国株で大きな差が出ている指標となっていますね。(米国の会社の方がかなりROEが高い傾向)
私も好きでかなり意識して見ていましたが、昨今の新型コロナウィルスの経済の危機で米国企業の多くがROEを意識しすぎていた問題が露出してきたのです。
今回はこのROEの大きなデメリットについて考えて見ましょう。
ROEとは
それではまず、今回の話の大前提となりますROEについて詳しく見ていきましょう。
ROEの概要
ROEとはRetum on Equityの略で日本語に訳すと自己資本利益率です。
ROEは自己資本(純資産)でどれだけ効率的に利益を生み出したのかを示します。
つまり、これが高い企業は自己資本を「効率的な運用」をしているということになります。
ROEの計算式
ROEは一般的に以下の計算で算出されます。
上場している企業の場合は証券会社の財務情報などでROEは表記されていますし、簡単な計算式に当てはめるだけですから決算書があれば上場していない企業でも簡単に算出ができます。
または以下の計算でも出すことができます。(逆算に近いですが・・・)
財務レバレッジや総資本回転率はあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが以下のような計算で算出できます。
- 売上高純利益率=当期純利益÷売上高
- 総資産回転率=売上高÷総資産
- 財務レバレッジ=総資産÷自己資本
実はこれらの計算式も知っておくとよりROEを理解できます。
中小企業診断士などのファイナンス系の資格試験に出題されるのはこっちの方の計算式ですね(笑)
ROEが投資家に好まれる理由
ROEは多くの投資家に好まれる経営指標です。
それではなぜROEが投資家に好まれるのでしょう?
これは簡単な理屈です。
自己資本は投資家から集めたお金が中心です。
投資家からすれば自分たちが投資したお金をどう活かしてくれるのかが分かるのでROEが重宝されているのです。
ROEの高い会社に投資をすれば、ROEが低い会社に投資をするのと比べて自分たちへ株価なのか配当なのかで見返りが来ることが期待できるのです。
たとえばROEが20%の会社とROEが5%の会社があったとしましょう。
その企業に100円投資をしたとします。
理論上はROE20%の会社はその投資から生じる利益が20円です。
ROE5%の会社はその投資から生じる利益が5円となります。
どちらに投資をしたほうが良いのかは一目瞭然ですね。
ROE20%の会社の方が株価も上がりやすいでしょうし、配当も期待できるはずです。
ただし、ROEはあくまでも過去の数字を元にした指標ですから理論上の数字に過ぎませんが。
ROEの大きな弱点とは・・・
今まで見てきたように投資家に非常に好まれてきたROEです。
ですからROEが高い企業の方が株が上がりやすかったのです。
しかし、昨今の新型コロナウィルスの経済の危機で米国企業の多くがROEを意識しすぎていた問題が露出しています。
ここからはその点を考えてみましょう。
ROEを上げる方法
米国企業の多くは株主ファーストであると言われています。
そのため、少しでも株価を上げるためにROEをあげようとしてきました。
ROEを向上させるための方法は前述の計算式を意識すればわかります。
売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3つの要素のどれかを上げればよいのです。
ただし、これら指標を上げるのって結構難しいんですよ。
売上高純利益率を上げる
例えば売上高純利益率です。
当期純利益÷売上高の計算式で算出されます。
最終部分の利益の売上に対する比率ですから様々な要素に影響を受けます。
売上が増えても当期純利益が売上増加比率以上増えないと売上高純利益率は向上しないのです。
ですからなかなかコントロールは難しいところになります。
総資本回転率を上げる
次は総資本回転率です。
総資産回転率=売上高÷総資産の計算式で算出されます。
こちらも売上が増えたとしてもそれ以上に総資産が増えてしまうと向上しません。
総資産も様々な要素に影響を受ける数字ですからなかなかコントロールは難しいですよ。
財務レバレッジを上げる
最後は財務レバレッジです。
総資産÷自己資本の計算式で算出されます。
この財務レバレッジは自社でコントロールしやすいところになります。
簡単に言えば借金をすればするほど財務レバレッジは高くなるのです。
借金をすると総資産は増えますが、自己資本はそのままです。
ですから財務レバレッジが大きくなり、結果としてROEも上がるのです。
借金をして積極的に打って出る企業の方が指標がよくなるんですよ。
もちろん借金をしてもそれをうまく活かせないなら結局駄目ですけどね・・・
また、「自社株買い」もROEを上げるために利用されます。
自社株買いとは自社の株を市場から買い戻すことです。
自社株買いをすると財務レバレッジが高くなるのです。
自社株買いは株主からすれば1株あたりの利益が大きくなり、株価も上がりやすくなりますのでプラスの話となります。
しかし、会社のことを考えると自社の株を買うという後ろ向きの話にお金を使ってしまうことになりますので本当にぷらすなのかわからない話です。
ROEを上げるために安全性を無視する企業が多かった
前述のようにROEを簡単に上げる方法としては「借金をして業務拡大」と「自社株買い」があります。
この2つともROEを上げる効果はありますが、財務面(安全性)から見るとマイナス部分が大きくなる行為です。
借金が増えたり、自己資本が減るわけですからね。
つまり、ROEはある程度操作できてしまう指標なのです。
昨今の新型コロナウィルスの経済の危機で米国企業で問題が表面化したのはこの部分です。
ROEを意識するあまり、財務面がおざなりになってしまっていたのです。
もちろん今回のような経済危機が来ず、イケイケ状態ならばそれでも問題なかったでしょう。
しかし、急に売上が止まってしまう今回のような問題があると財務面がとても重要となってきたのです。
逆に日本の企業はあまり、このあたりに注力していなかったので健全な財務を保っている企業も多かったりします(大企業は限定ですが)
まとめ
今回は「知ってますか?ROEの大きな弱点について・・・」と題してROEの弱点についてみてきました。
これって実は何度も繰り返されている話なんですよ。
過去にもITのバブルのころにROEを重視する傾向がかなり強まったことがあります。
しかし、エンロンの事件などでROE重視がかなり弱まりました。
最近はまた、自社株買いが多くなったりしてROE重視がかなり強まってきました。
個人的にもROEは着目している経営指標です。
しかし、以下の点を押さえておきましょう。
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