先日、菅総理が国民皆保険の「見直し」的な談話を出してネットで大きな騒ぎとなっていました。
次の日には加藤勝信官房長官が明確に否定をしており、どうやらいい間違えたのかなにかでそう捉えられてしまっただけのようですが、国民皆保険の見直しが実施されても不思議ではない現状となっているのをご存知でしょうか?
もともと厳しい健康保険ですが、新型コロナウィルスの蔓延でかなり危機的な状況となってしまっているのです。
今回は健康保険の現状を考えてみましょう。
そもそも国民皆保険とは
それではまず、今回の話の前提となる国民皆保険とはなにかについて見ておきましょう。
「国民皆保険」とは、病気のときや事故にあったときの高額な医療費の負担を軽減するため、原則的にすべての国民が公的医療保険に加入しなければならない、という制度です。
国民全員がなにかしらの健康保険に加入しており、助け合いの元国民全員が公的な医療保険で安価に高度な医療が受けられるようになっているのです。
理念としては素晴らしく日本が発展した大きな要因になっているとも言われていました。
しかし、少子高齢化が急激に進展していく影響でその維持を疑問視する声も出てきています。
医療費の負担はどうなっているのか?
出典:厚生労働省 「日本の医療保険制度について」より
上記は平成27年度の日本の医療費負担構造です。
患者負担は11.6%であとは被保険者、事業者、公費(税金)で賄われているのです。
ちなみに最新で公開されている平成30年度の国民医療費総額は43兆3,949億円。一人あたり342,000円となっています。
うち、65歳以上の高齢者が60.6%を使っています。
健康保険には種類がある
ちなみに健康保険は大きく分けて3種類。
さらに運営母体などにより細かく分かれています。
下記は平成24年時点と少し古いデータですが結構バラけているんですよ。
出典:厚生労働省「わが国の医療制度の概要」より
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もともと言われていた健康保険の2025年問題
実は今回の新型コロナウィルスで危機的な状況になる前から2025年問題が騒がれていました。
2025年問題とは
2025年問題とは簡単に言えば2025年に戦後のいわゆるベビーブームで生まれた世代(約800万人)が75歳の後期高齢者に達する年で年金や健康保険の制度に無理が生じるよって話です。
2025年には国民の20%近くが後期高齢者というとんでもない超高齢化社会を迎えてしまうんですよ。
さらに厚生省の試算によると20205年には65歳以上の高齢者(前期高齢者)も3,657万人(日本国民の30.3%)と予想されています。
つまり、国民の3割が高齢者、さらに2割が後期高齢者という異様な状況となってしまうのです。
この人たちの健康保険を少子高齢化で数少ない現役世代で負担をしないという状況になってしまうのですよ。
2025年問題の健康保険への影響
それでは2025年になると健康保険はどのような状況となるのでしょう。
健康保険の団体であるけんぽれん(健康保険組合連合会)では「あしたの健保プロジェクト」で専用ページまで用意して2025年問題を問題視しています。
国民医療費の大幅増加
まず超高齢化により国民医療費は大幅に増加する予定となっています。
2015年では42.3兆円(うち後期高齢者15.2兆円)が2025年には57.8兆円まで膨れ上がります。
またそのうち後期高齢者分は25.4兆円と67.7%も増加するのです。
前述したように現在の医療費の60%を高齢者が使っている状況がさらに割合が増えるってことですね。
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より
支えてが大幅に減る・・・
高齢者は増えますが、支えては減る予定となっており、2000年には3.9人で1人を支えていたのが1.9人で1人を支える様になる状態となってしまいます。
新型コロナの影響なのか2020年はさらに少子だったという話もあります・・・
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より
高齢者の医療負担が半分を超える・・・
また、健康保険料のうち高齢者への負担分が半分を超えるという異常事態自体となります。
現在でも46.4%もあるんですけどね・・・
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より
健康保険も大幅増加
上記のような状況ですから健康保険も大幅増加が予想されます。
2020年には17%増、2025年には38%増となります。
ただでさえ健康保険の負担は大きいのにさらに増えるとは・・・
特に加入者の層を考えると国民健康保険はさらに厳しくなりそうです。
出所:けんぽれん「あしたの健保プロジェクト」健康保険の2025年問題より
2025年問題の健康保険以外への影響はこちらの記事を御覧ください。
75歳以上の医療費負担2割とするが骨抜きに・・・
そんな状況ですから75歳以上の医療費窓口負担を現在の1割から2割へ引き上げる制度改革が行われるのですが、所得基準を年間200万円以上とするとのことで正直骨抜き状況なんですよ。
働いていない方が多い後期高齢者の所得を基準にしてどうするんだ・・・っていう。。。
コロナ渦でさらに健康保険組合が厳しくなった
新型コロナの影響は健康保険にも及んでいます。
企業業績が悪化したことで、標準報酬総額も落ちることが予想され健康保険組合の財政が圧迫されるというのです。
簡単に言えば各個人が負担する健康保険の金額は給料金額で決まります。その金額と同じ金額だけ会社も負担をする形です。
詳しくはこちらをご覧ください。
給料が下がれば個人の負担も減るのは当然ですが、会社の負担も同じだけ減ります。
つまり、健康保険組合の実入りも減るのです。
ですが健康保険で利用される医療費は変わらない(増えている)ため、健康保険組合の財源を圧迫して保険料を上げざる得なくなるんですね。
具体的に以下のようなシナリオが公開されています。
健康保険組合の財政へ大きな影響
出典:健康保険組合連合会 「新型コロナウイルス感染拡大による 健保組合の財政影響に関する調査報告」より
リスクシナリオのワーストだと赤字が1,359億円増となる予想となっています。
さらに2021年度(令和3年度)以降も厳しい予想となっています。
出典:健康保険組合連合会 「新型コロナウイルス感染拡大による 健保組合の財政影響に関する調査報告」より
当然そうなれば保険料を上げざる得ないでしょうし、中には負担増に耐えかねて解散する健康保険組合が出てくる可能性もあるでしょう。
ただでさえ人材派遣健保組合(人材派遣の健康保険組合)や日生協健保組合(生協の健康保険組合)が解散するなど厳しいと言われていた健康保険組合ですが今回の新型コロナの蔓延による影響でさらに厳しくなったところが多いのです。
まとめ
今回は「国民皆保険は本当に維持できるのか?新型コロナでやばい健康保険組合が続出?」と題して国民皆保険についてみてきました。
国民皆保険をやめるなんてことになれば、高齢者からの反発がすごすぎて政権の維持が難しいとは思いますので実行はされないでしょう。
しかし、今のままの健康保険の仕組みではどんどん現役世代の負担が大きくなり、厳しくなっていくのも火を見るより明らかです。
健康保険は消費税などと違って給料天引きでサイレント値上げされていますのであまり意識がない人が多いですが、結構な上がり方してるんですよ。
年金制度も同じですが、ベーシックインカムなどを含めて根本的に見直す時期にきているのかもしれませんね。
今回の菅総理大臣の失言?は国民皆保険を議論するいいきっかけになってくれればよいのですが・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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