国民年金や厚生年金が破綻するという話や払い損という話は本当なのか?

ここ3回ほど国民年金・厚生年金の繰上げ繰下げ繰下げ期間の延長と年金に関する記事を書いてきました。3つの記事ともそれなりに大きなアクセスがあり、そのためなのか何度か同じと思われる方から同じような苦情メールが来たのです。長文メールでしたが要約すると以下の内容でした。

「国民年金なんて払い損なだけ。国の回し者が!!」

上記の3つの記事は国民年金や厚生年金のもらい方の検証なだけで年金を払えって記事でもなんでもないのですがなにか気に障られたようです・・・。

この方に直接返事をするのは遠慮しますが、こちらの記事でご指摘に反論させていただきたいと思います。

なお、今後の年金がいくらもらえるのかの参考になる財政検証の結果についてはこちらの記事をご覧ください。

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国民年金や厚生年金は本当に払い損なのか?

今回指摘された「国民年金なんて払い損なだけ」について考えてみましょう。こういう意見はよくいただきますが、だいたい2つの理由があると考えられます。

一つは国民年金などの公的年金は破綻すると思っている。

もう一つが国民年金は払った分だけ戻ってこないと思っている

だいたいこの2つのパターンです。それぞれ考えてみましょう。

国民年金や厚生年金などの公的年金は破綻するのか?

まず1つ目の「国民年金が破綻すると思っている。」について考えてみましょう。こう考える方はかなり多いと聞きます。多い大きな理由はマスコミにあると思われます。そのため、先日も紹介しましたが制度として基本的に損な繰上げを選択される方が多いのも年金がいつ破綻するかわからないから早めに受け取ろうという方が多いと言われますね。

国民年金等の繰下げを75歳までできる件が検討されているニュースがでたときにも自称評論家の方が年金は少子高齢化で破綻するとワイドショーで解説されていましたね。(素人に解説させるなって思いますが。。。)このようなマスコミ報道がこのような年金未納問題を招いているとも言えるでしょう。

ちなみに結論から書いておくと国民年金などの公的年金制度はそもそも破綻しないような仕組みとなっています。その自称評論家の方はそれも知らずに話しているぽかったです・・・。

年金は積立方式ではなく賦課方式

破綻しない理由の1つ目は賦課方式を基本としているからです。賦課方式とは今、現役世代の年金保険料として払った金額がそのまま年金として現在、高齢者の方に支給される仕組みです。

つまり、自分が将来もらう年金も、自分が納めたお金ではなく、自分たちの子どもや孫世代が納めた保険料から支払われるのです。そもそも保険料の範囲で給付を行うという仕組みでの賦課方式ですから破綻しようがないのです。(もちろん少子高齢化になり年金を払う人が減れば給付も減りますが)

マクロ経済スライドが導入されている

また、日本の公的年金にはマクロ経済スライドという仕組みが導入されています。マクロ経済スライドとはそのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。簡単に言えば年金制度を無理なく継続するために年金の給付額を調整する仕組みってことです。この仕組みと賦課方式があるため基本的に年金制度が破綻することはないのです。破綻する可能性があるとすれば国がそもそも破綻するか年金の法律を大きく変えるときだけでしょう。

詳しくは国が検証したデータを見てみてください。このようなデータまで発表されているのに年金が破綻すると言ってしまう自称評論家を使うマスコミもどうかしていると思うのですけどね・・・

>>将来の公的年金の財政見通し

年金の運用も実はそれなりに上手く行っている

また、先日も年金を運用している年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が12月の株暴落を受け多額の損失を出したと大きく報道されていました。このような報道が多いため年金の運用がうまく行っていないと考えている人が多いと思います。

しかし、実際はそうではありません。リーマンショックなどがあっても年金は年3.42%の収益で運用できているのです(最新発表の平成30年度第二四半期まで)損を出した時だけ大きく報道されるのでその印象が強くでてしまうだけなんですよね・・・つまり、波こそあれど年金の運用はそれなりに上手く行っています。GPIFはある意味、理想的なインデックス投資を行っているんですよ。



国民年金や厚生年金は払った分だけ戻ってこないのは本当か?

次に「国民年金は払った分だけ戻ってこない。」という点について考えてみましょう。この点に関しては一部正解です。ただし、その面だけを捉えてしまうのは危険です。

払った分だけ戻るかはわからない

国民年金や厚生年金は終身年金です。終身年金は簡単に言えば死ぬまでもらえる年金で長生きすればしただけもらえますが、早死すればもらえません。ある意味、長生きのための保険といった性質があります。そのため早くに亡くなってしまえば払った分だけ戻らない可能性があるのです。

では現在の水準だったら何歳生きれば元がとれるのか国民年金を満額納めた方を例に考えてみましょう。

国民年金の支払は1月17,000円(平成31年は16,410円)と仮定して満額の40年支払ったとしましょう。すると支払い総額は8,160,000円となります。

年金の受給額は現状の満額年額77万9,300円が続いたと仮定しましょう。この場合、11年受給すると元が取れる形となります。年齢にすれば76歳ですね。

標準生命表によると65歳男性の平均余命は19.53歳です。つまり、84.53歳まで生きるのが平均となります。また65歳女性の平均余命は24.27歳です。つまり、89.27歳まで生きるのが平均となります。多くの方が元がとれる計算となります。

どうしても世代間格差が大きいので損をするイメージがありますが、現状の段階ではそんなこともないのです。もちろん年金の受給額が現状と同額であるという計算ですから、これが少子高齢化により少なくならばもちろん計算結果も変わってきてしまいますけどね。仮に半分として考えても22年受給の87歳まで生きれば元が取れます。

ただし、現状の水準だと年金だけで生活するというのは現実的ではないので老後も働くことやiDeCoつみたてNISAなんかを使って老後資金を用意するといったことも必要になってきていますけどね。

障害年金や遺族年金の存在

実は国民年金は公的年金ですから、払った保険料と受け取る予定の年金額だけの話だけで済まない特徴があります。それが障害年金遺族年金の存在です。

障害年金は自分が障害になったとき、遺族年金は自分が亡くなったときにその遺族に支給されます。

これらの存在は一般の生命保険で同レベルの保険に加入しようとするとかなり高い金額になるレベルの補償となっていたりします。

なお、障害年金も遺族年金も加入期間の2/3以上が保険料納付済期間であること必要がありますので未納ではもらえません。

国民年金(厚生年金)はある意味、これら保険がついたものと考えれば単純な払った分が戻る戻らないの話でないのはわかると思います。

遺族年金、障害年金について詳しくはこちらの記事も御覧ください

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国が半分負担してくれている有利な制度

また、あまり知られていませんが、基礎年金の支払いについて国が半分負担(国庫負担)してくれています。また、厚生年金についても会社が半分負担してくれています。かなり優遇された制度ということがわかると思います。つまり、一般の生命保険の商品などと比較してむしろ有利な制度なんですよね。

逆に言えば国が半分負担してくれるのに保険料を未納してれば年金を受け取れなくなって損とも言えます。

そもそも国民年金を支払うのは義務・・・

今まで見てきたように国民年金はそこまでめちゃくちゃ損な制度ってことでもないのはわかっていただけたと思います。また、そもそも論ですが国民年金を支払うのは義務です。払う払わないの選択をするものではありません。厚生年金の場合、給料から天引きですから未納はないでしょうが。

また、国民年金には連帯納付義務もあります。連帯納付義務とは世帯主や配偶者の片方は連帯して国民年金を納付しなければならないのです。最終的には強制執行されます。つまり、自分の預金や給料などの財産が差し押さえされちゃいますよってことですね。

前と違って今はかなり厳しく取り扱われているようですからくれぐれも納めないなんて考えないほうがよいでしょう。

国民年金の督促について詳しくは下記記事を御覧ください。

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まとめ

今回は「国民年金や厚生年金が破綻するという話や払い損という話は本当なのか?」と題して国民年金について見てきました。

国民年金や厚生年金といった公的年金は基本的に破綻しないということはわかっていただけたと思います。

また、国民年金や厚生年金は他の生命保険などと比較してもかなり有利な制度です。どうしても世代間格差問題は生じてしまっていますので惑わされてしまいますが長生きのための保険、障害や遺族の保険と考えれば損な制度ではないんですよ。

もし、経済的に苦しく国民年金を支払う余裕がないなら年金事務所もしくは市役所の年金課に相談に行きましょう。免除が受けられる可能性があります。また、学生も相談にいけば免除が可能です。

免除でも将来の年金に一部反映されたり、障害基礎年金や遺族基礎年金をもらえますが、未納の場合その権利も生じなくなりますしね。

そもそも国民年金の納付は国民の義務ですから免除以外で支払わないという選択肢はありませんよ。

むしろ国民年金はしっかり払って付加年金やiDeCoといった関連するお得な制度を十二分に活用することをおすすめしたいですね。

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