4月1日から俳優、歌手など芸能人も公的な保険の対象に。労災保険の特別加入について解説

令和3年(2021年)4月1日から労災保険の特別加入の対象範囲が大幅に広がります。

今まで対象になっていなかった俳優、歌手、漫才師なども労災保険に入れるようになるのです。

今回は4月1日から拡充された労災保険の特別加入について解説していきます。

その他、令和3年(2021年)4月1日から変わる制度や法律についてはこちらの記事を御覧ください。

労災保険とは

ちょっとわかりにくい方も多いでしょうから労災保険についてから説明していきましょう。

労災保険とは雇用されている立場の人が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。

雇用されている立場の人、つまり従業員が対象の保険ではあります。

なお、労災保険を掛けるのは会社です。

労災保険には労働者の加入要件ありません。

つまり、パートやアルバイトの方も含めて雇用形態に関わらずすべての労働者が保険の適用となります。

厚生年金や健康保険と違って従業員の方の負担はありません。すべて会社の負担です。

しかし、なにかあった際には本人に給付が行われます。

労災保険の特別加入制度とは

すべての労働者の方が対象となる労災ですが、ちょっとした制度上の穴があります。

それは建設業のひとり親方など事業主となり、労働者扱いされない方です。

ひとり親方なども現場等では外注として大きな組織の一員として働く機会が多い人ですよね。

つまり、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者とあまり変わらないのです。(労働者に準じる)

しかし、労災保険は対象ではありません。

そこでその穴を埋めるために特別加入制度というのがあります。

特別加入制度は簡単に言えば自分でお金を出して労災に入れる仕組みですね。

令和3年(2021年)4月1日から対象となる範囲が広がるのです。

特別加入の対象が広がった方

具体的には労災保険の特別加入の対象に新たに加わったのは以下の方が対象です。

  • 芸能関係作業従事者
  •  アニメーション制作作業従事者
  •  柔道整復師
  • 創業支援等措置に基づき事業を行う方

特別加入すれば仕事中や通勤中に怪我や病気、障害、死亡などが起こったときに保障が受けられるようになります。

なお、従業員の方と違い、特別加入すると労災保険料が掛かりますのでご注意ください。

つまり、自分自身で保険を掛けて補償を得る普通の保険のような感じになるのです。

それでも労災保険は公的な保険ですから、一般で販売されている保険よりも条件が良いんですよ。

最近は就業不能保険なんかも流行っていますが・・・

労災事故が起こる危険がある仕事をされているなら検討の余地はあるでしょう。

これら対象が広がった業種に従事されている方は一度検討してみてくださいね。

ちなみに従業員分の労災保険料は会社が払ってくれているんですよ。

詳しくはこちらの厚生労働省の専用ページを御覧ください。

>>厚生労働省 令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります

芸能関係作業従事者

まずは芸能関係作業従事者です。

具体的には芸能実演家として

俳優(舞台俳優、映画及びテレビ等 映像メディア俳優、声優等) ・舞踊家(日本舞踊、ダンサー、バレ リーナ等) ・音楽家(歌手、謡い手、演奏家、作詞家、作曲家等) ・演芸家(落語家、漫才師、奇術師、 司会、DJ、大道芸人等) ・スタント 他

俳優さんや歌手、漫才師、司会者など芸能人の方も対象となってきます。

芸能人の方が撮影中に大怪我するとかたまに聞きますよね。

昨年もMISAさんが番組撮影中に骨折したなんて話がありました。

もし、労災保険の特別加入に加入していればそのようなときでも保険給付が受けられることになるでしょう。

また、芸能政策作業従事者として

監督(舞台演出監督、映像演出監督) ・撮影 ・照明 ・音響・効果、録音 ・大道具製作(建設の事業を除く) ・美術装飾 ・衣装 ・メイク ・結髪 ・スクリプター ・ラインプロデュース ・アシスタント、マネージメント 他
も対象となります。こちらは裏方の方ですね。
裏方の方も仕事中に怪我をすることはありえますからね。

アニメーション制作作業従事者

次はアニメーション制作作業従事者です。

具体的には以下のようなお仕事をされている方が対象となります。

キャラクターデザイナー ・作画 ・絵コンテ ・原画 ・背景 ・監督(作画監督、美術監督等) ・演出家 ・脚本家 ・編集(音響、編集等) 他
アニメーション制作作業もかなり長時間労働だったりするという話があります。
そのため怪我や病気もありえますからね。

柔道整復師

柔道整復師(柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業)を一人親方が行う事業に従事される方について、新たに特別加入の対象となりました。

創業支援等措置に基づき事業を行う方

次はちょっとわかりにくいのですが、創業支援措置に基づき事業を行う方も特別加入の対象となります。

創業支援措置とは高年齢者の雇用の安定等に関する法律第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業のことです。

2021年(令和3年)4月1日から高齢者雇用安定法で65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
  • 70歳までの継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入
  • 70歳までの継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主自ら実施する社会貢献事業
    b.事業者が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

そのうち後者2つ「70歳までの継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入」、「70歳までの継続的に以下の事業に従事できる制度の導入」で働くケースの方がこちらの対象となります。

簡単に言えば会社を退職する際に社員等としては残らないんだけど業務委託(外注先)としてなど個人事業主として業務を継続するケースが対象になるってことですね。

労災保険に特別加入する方法

労災特別加入の手続き

出典:厚生労働省 「令和3年4月1日から 労災保険に特別加入できるようになります」より

労災保険に特別加入するには特別加入団体に申込みをして「特別加入申請書」等を所轄の労働基準監督署長を経由して 道府県労働局長に提出する必要があります。

現在のところ、新設されたそれぞれの対象業種ごとの特別加入団体の設立が準備されているようですからそちらに申請をすればよいでしょう。

具体的な手続き等は特別加入団体によって異なりますのでそちらにお問い合わせください。

なお、特別加入団体はこちらで確認できます。

>>特別加入団体一覧表(エクセル)

労災保険の特別加入の保険料

なお、労災保険の特別加入の保険料は事業又は作業の類種で異なりますが、今回新設された4つの事業はすべて同じで3/1000です。

具体的には1日あたりの給付額を3,500円〜25,000円まで特別加入を行う方の所得水準に見合った適切な額を申請していただき、都道府県労働局長が承認した額がその方の給付基礎日額となります。

その1年分✕3/1000をしたものが年間保険料となります。

例えば3,500円ならば年間3,831円の保険料(3,500円✕365✕3/1000)

25,000円ならば年間27,375円となります。(25,000円✕365✕3/1000)

仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡しか補償されませんが、一般の保険と比較したからかなりお値打ちですよね。

受けられる補償

なお、受けられる補償は充実しています。

  • 休業補償
  • 傷病補償
  • 障害補償
  • 遺族補償
  • 埋葬料
  • 介護補償

などです。

具体的な支給金額はその方の給付基礎日額によって異なります。詳しくは特別加入団体にお問い合わせください。


まとめ

今回は「4月1日から俳優、歌手など芸能人も公的な保険の対象に。労災保険の特別加入について解説」と題して労災保険の特別加入の対象範囲の拡大についてみてきました。

該当するお仕事についているかたは一般の保険と比較してもかなり有利な保険ですから是非検討して見てくださいね。

なお、芸能人やスポーツ選手が個人事務所を作る理由については下記記事を御覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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