毎年のことながら4月は様々な法律、制度、ルール等が改正されます。
2021年(令和3年)4月1日からも変更されるものがあります。(昨年ほどではありませんが・・・)
今回は2021年4月から変わる制度、ルールについてまとめていきます。
「こういう法律があったな」とか「4月からこれ変わったんだよな」くらい知ってるだけでも全然違いますからぜひ頭の片隅に置いておいてくださいね。
ちなみに2019年、2020年から変わった点は以下です。こちらも合わせて押さえておきましょう。
総額表示の義務化(消費税)
まず2021年(令和3年)4月1日からの一番大きなわかりやすい変更が総額表示の義務化でしょう。
かなり前なので忘れている方も多いでしょうが、2004年から消費税込みでの総額表示が義務づけれられていました。
その後、消費税の引き上げもあり2013年から総額表示の義務を課さない特例が導入されていたのです。
つまり、税別(税抜)表示でもOKってこと。
その特例が終了するってことですね。9年特例だったんですね。
総額表示が必要となる取引は消費者向け
なお、総額表示の対象となるのは消費者向けだけです。
消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときには総額表示が義務付けられます。
事業者間での取引は総額表示義務の対象とはなりません。
出典:国税庁 No.6902 「総額表示」の義務付け
つまり、BtoCとかは対象となりますが、企業間のBtoBは今までどうりってことです。
媒体は問わない
なお、総額表示の対象となるのは媒体は問われません。
対象となる価格表示は、商品本体による表示(商品に添付又は貼付される値札等)、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビによる広告など、消費者に対して行われる価格表示であれば、それがどのような表示媒体により行われるものであるかを問わず、総額表示が義務付けられます。
なお、口頭による価格の提示は、これに含まれません。出典:国税庁 No.6902 「総額表示」の義務付け
店舗の値札やメニュー表だけでなくWEBページだろうが、ブログだろうが、ユーチューブだろうが対象となるってことですね。
特にこれらメディアを運営している方はお気をつけください。
ツイッターなど修正できないメディアはどうなるんだろ・・・
認められる表示、認められない表示
とりあえず総額の金額がわかりやすいように記載してある必要があります。
例えば税抜10,000円、税込11,000円の商品を表示する場合は以下のようにする必要があります。
- 11,000円
- 11,000円(税込)
- 11,000円(税抜価格10,000円)
- 11,000円(うち消費税額等1,000円)
- 11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
出典:国税庁 No.6902 「総額表示」の義務付け
なお、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当します。
逆に今まで認められていた下記のような表記方法は不可です。
- 10,000円(税抜)
- 10,000円(税別)
- 10,000円+税
- 10,000円
罰則はないが・・・
ちなみに総額表示の義務に関して罰則は定められていません。
ただし、行政指導などはあり得るとのこと。
また、最近は義務を履行していない企業はSNSで炎上したり風当たりが強いです。
そのため、多くの企業は総額表示に対応するとは思いますが・・・
ユニクロなど総額表示で価格を見直す企業も
ユニクロは総額表示をすることで値段が上がったという消費者への認識を与えないために実質消費税分を値下げして、今までの表示価格を総額とすることにしていますね。
他にも4月から価格を見直す企業が多く発生しています。
ユニクロの場合、今まで2,990円+税といった価格表示でした。
それを2,990円のまま税込みにするのです。値下げですね。
これは2,990円+税と表示されている場合と3,289円と表示されている場合で実際の価格は同じですが、消費者が受ける印象の差が大きいと判断したことに起因します。
マーケティング用語ではこのような価格表示を「端数価格」とかいいますが、数字が一つ上がったり、桁が増えると実際の価格差よりも消費者が受ける印象高く感じるんですよ。
ユニクロはこれによる売上減を懸念したのでしょうね。
同一労働同一賃金の中小企業への適用
働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)の目玉の一つである「同一労働、同一賃金」。
大企業にはすでに導入が始まっていますが、2021年4月からは中小企業も対象になってきます。
特に正社員以外のパート、アルバイト、契約社員、派遣社員などで働いている人にとってはかなり大きなルール変更です。
具体的には以下の3つの項目が統一的に整備されることになります。
- 不合理な待遇差の禁止
- 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
- 行政による事業者への助言・指導等や裁判外紛争解決手続の規定の整備
ぜひ制度のポイントだけでも知っておきましょうね。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
年金支給額額0.1%減
公的年金の支給額が4年ぶりの引き下げとなります。
これについてはマスコミが変に騒いでますが、そこまで驚くべきことではありません。
名目手取り賃金変動率が0.1%下がったことによるものなのです。
「名目手取り賃金変動率」とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたものです。
ちょっとわかりにくいですが、簡単に言えば現役世代の賃金が減ったってことですね。
それに合わせて年金も減ったということです。
ですからそんな騒ぐようなことでないんですよ。
マスコミはよく年金の運用が失敗したからと騒いでますが、むしろ年金の運用は上手く行っているんですよ。
年金が厳しいのは運用の問題ではなく、そもそもの少子高齢化で支える人が減ってしまうという点にあります。
介護報酬の引き上げ
介護報酬も改定が行われます。
具体的には+0.7%となります。
これは新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳 以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、 「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図る
出典:厚生労働省 令和3年度介護報酬改定の主な事項
簡単に言えば少子高齢化で厳しくなって上げましたってことでしょう。
ちなみに新型コロナウィルス感染症に対応するための特例的な評価 0.05%が加わっているとのこと。
健康保険と介護保険は少子高齢化により制度の抜本改革も含めて考えなければならないところまで来ているのかもしれません。
高齢者雇用安定法の改正
次は高齢者雇用安定法です。
こちらも2021年(令和3年)4月1日から改正となります。
簡単に言えば今までは65歳までの雇用機械を確保するという目的だった制度が70歳までの就業機会を確保となったということです。
それだけ少子高齢化が進んできてしまっているとも言えるかもしれません。
具体的に見ていきましょう。
高齢者雇用安定法とは
高齢者雇用安定法とは企業において高齢労働者の雇用についての定年や再雇用の義務や努力義務を規定した法律となります。
今回はもともとあった65歳までの雇用確保(義務)に一部ルールが追加された形となります。
70歳までの就業機会の確保
今回追加されたのが65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置として、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。
具体的には以下の通り。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
- 70歳までの継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入
- 70歳までの継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主自ら実施する社会貢献事業
b.事業者が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
あくまで努力義務ですからどこまで企業が動くのかはちょっと見えませんが、高齢者でも働ける環境を作るのはよいことでしょう。
高齢者雇用安定法の改正について詳しくはこちらを御覧ください。
労災保険の特別加入の適用範囲が拡大
次は労災保険の対象拡大です。
こちらも2021年(令和3年)4月1日から改正となります。
労災保険の特別加入とは
労災保険とは雇用されている立場の人が仕事中や通勤途中に起きた出来事に起因したケガ・病気・障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度です。
雇用されている立場の人、つまり従業員が対象の保険ではあります。
しかし、建設業のひとり親方など事業主ではありますが、現場等で大きな組織の一員として働く機会が多い人には特別加入制度というのがありました。
それが今回対象となる範囲が広がるのです。
拡大された業種
具体的には以下の業種の方が対象です。
- 芸能関係作業従事者
- アニメーション制作作業従事者
- 柔道整復師
- 創業支援等措置に基づき事業を行う方
特別加入すれば仕事中や通勤中に怪我や病気、障害、死亡などが起こったときに保障が受けられるようになります。
なお、当然ながら特別加入すると労災保険料が掛かりますのでご注意ください。
それでも一般の保険と違って公的なものですからかなり有利な条件となっています。
労災が起こる危険がある仕事をされているなら検討の余地はあるでしょう。
これら対象が広がった業種に従事されている方は一度検討してみてくださいね。
ちなみに従業員分の労災保険料は会社が払ってくれているんですよ。
詳しくはこちらの厚生労働省の専用ページを御覧ください。
>>厚生労働省 令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります
携帯電話の乗り換え時の手数料が無料化
携帯電話の会社を番号そのままで乗り換える(MNP)ときの手数料が原則無料化されます。
気軽に乗り換えやすくなりますね。
ほぼ同時期ですが、ahamo、povo、LINEMOといったドコモ、au、ソフトバンクがそれぞれオンライン専用のブランドも始まっています。
これらも含めて高い金額の携帯電話代を払っている方は乗り換えを検討してみてください。
ちなみに私はahamo、povo、LINEMOとも入らず、ワイモバイル+楽天モバイルの組み合わせにしました。
その理由等はこちらの記事を御覧ください。
子育て支援関連の利用料が非課税へ
ベビーシッターや認可外保育所、産後ケアなど、子育て支援に関するサービスが税金面で改定されます。
具体的にはベビーシッター利用については、国や自治体からの助成にかかっていた所得税や住民税が課されなくなります。
これは以前大きな問題になった税金爆死の話が影響をしているようです。
産後ケアの消費税も
また、産後ケア事業には消費税を課さないことにもなりました。
少子化がどんどん進んでいる状況下ですからそこをなんとかしたいという意思は伝わってくる制度変更ですね。
社名変更
2021年(令和3年)4月1日からは大きな社名変更がいくつかあります。
こちらも知っておきましょう。
ジャパンネット銀行がPayPay銀行へ
まずは対応が必要となる方も多いと思われるのが、ジャパンネット銀行の社名変更です。
「ジャパンネット銀行」は2021年4月5日から「PayPay銀行」に変わります。
それに伴い、一部サービスが利用できなかったり、他金融機関宛の振り込み、他金融機関からの振り込みの停止期間がありますのでご注意ください。
・他金融機関宛の振り込み、他金融機関からの振り込みの停止期間:2021年4月2日(金曜日)15時~2021年4月5日(月曜日)8時30分
また、サイトのアドレスが「paypay-bank.co.jp」に変更になります。(フィッシング詐欺等にお気をつけください)
2021年7月2日まではジャパンネット銀行名でも振込可能
また、ジャパンネット銀行に振り込みなどがある方は早めに変更しておきましょう。
2021年7月2日まではジャパンネット銀行名で振り込まれても「PayPay銀行」に読み替えて入金されます。
しかし、2021年7月3日以降は「ジャパンネット銀行」では振込受付がエラーとなります。
組戻しなどが必要となり相手先に迷惑がかかる可能性もあります。
早めに変更しておきましょう。
ソニーがソニーグループ、楽天が楽天グループに
こちらはへえ、そうなのレベルですが
ソニーがソニーグループに楽天が楽天グループに社名変更されます。
どちらもグループ企業が多いですからどこがトップなのかわかりやすくするのかもしれませんね。
他にも2021年(令和3年)4月1日から社名変更する企業は結構あります。
主なところをご紹介しましょう。
- ソニー→ソニーグループ
- 楽天→楽天グループ
- アイシン精機→アイシン
- 三菱UFJリース→三菱HCキャピタル
- アトラ→アトラグループ
- 三井製糖→DM三井製糖ホールディングス
- TATERU→Robot Home
- 夢真ホールディングス→夢真ビーネックスグループ
これら会社と取引があったり、投資を考えている方はチェックしておきましょう。
まとめ
今回は「2021年4月から変わる法律、制度、ルール等を知っておこう。変更内容をわかりやすく解説」と題して2021年4月から変わる内容を見てきました。
2020年ほどではありませんが、変わる項目がそれなりにあります。
ぜひ頭の片隅においておいてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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